事業所名

トピー海運株式会社

所在地

愛知県豊橋市

事業内容

港湾輸送業（内航海運・港湾物流・自動車運送等）

従業員数

204名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	3	物流倉庫荷役作業
内部障害
知的障害	4	自動車ホイールの梱包作業
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 従事する業務～新たなラインの創造～
4. 取り組みの内容
5. まとめ

事業所外観

1．事業所の概要

港湾海運業

1940年（昭和15年）に共信運輸株式会社として東京都港区芝浦で設立され、東京湾において艀（はしけ）を利用して回漕する「艀回漕業」を開始した。その後、1974年（昭和49年）に現在の「トピー海運株式会社」に名称を変更し、2000年（平成12年）に本社を愛知県豊橋市に移転し、現在に至っている。

主な業務は、港湾において船舶・自動車・特殊輸送機器を利用した工業原料・製品の輸送業、それらの製品を保管する倉庫業、工場・倉庫の建設業である。特に親会社であるトピー工業株式会社の豊橋製造所と豊川製造所が生産する鋼材、建設機械用部品、自動車用部品の運搬はもとより、同製造所内にある発電所への石炭輸送、製鋼原料の揚荷役、構造物(橋梁などの巨大重量貨物)の輸送など、通常の運送業では成し得ない海陸一貫輸送システムを構築して事業を展開している。

2．障害者雇用の経緯

親会社の実践から学ぶ

親会社トピー工業株式会社の豊橋製造所では、知的障害のある人を中心に10名程度の障害者を採用している。こちらでは、障害者を通常の工場内に配置するのではなく、工場敷地内に作業場を建設して、その場において2名～3名の一般従業員の支援の下に、廃棄予定の工業資材を金属、木、ゴム、ビニールなど手作業で選別作業を行っている。加えて、生活面の支援も含め採用から定着にあたって、ハローワーク、地域障害者職業センター、ジョブコーチ、相談支援事業所と連携することで安定的に就労できるよう配慮している。

特に地元の相談支援事業所とは、障害のある従業員の生活面の支援について連携して支援を行っており、職場不適応(欠勤、遅刻、早退、健康状態の悪化など)が起きた時には、家族、出身学校・授産施設と連携し、生活面からも支援をしている。

これまで輸送業に障害者を雇用することは、安全性やルーチンワークの確保が困難なため限定的なものになってしまうと理解していたが、トピー工業株式会社の実践を参考にすることで、障害者が従事できる業務を検討することにした。また、当社の代表者は以前、トピー工業株式会社豊橋製造所に勤務しており、その実態も理解していた。このことも障害者雇用を促進することの要因となった。

3．従事する業務～新たなラインの創造～

まずは社内において障害者が従事できる業務について検討した。

当社ではトピー工業株式会社豊川製造所で生産している自動車用ホイールの梱包、運送、保管を担っている。自動車用ホイールを段ボールケースに入れ、出荷している。当時はトピー工業株式会社豊川製造所工場内で作業に当たっていたが、その場において障害者に従事してもらうには、安全性の確保や効率化に懸念があった。そこで、前述のトピー工業株式会社豊橋製造所および同製造所にかかわったジョブコーチからアドバイスを得て、倉庫内に梱包ラインを新たに設置し、そこで業務にあたってもらうことが適当との判断に至った。

自動車用ホイールの梱包作業は4名の知的障害者が従事している。2009年（平成21年）11月に2名を、そして、2010年（平成22年）2月に2名を採用した。4名のうち、2名は業績悪化から当時勤務していた会社をリストラなどにより離職した者、2名は授産所などにおいて福祉的就労に就いていた者である。それぞれ、就職前にハローワーク、地域障害者職業センター、ジョブコーチなどの支援を得て、職場見学、面接などを行い、加えてトライアル雇用を経て正式採用に至った。

1人目は工場から運び込まれた自動車用ホイールをひとつひとつラインのレールの上に乗せていく。キズなどをつけてはいけないので慎重さが求められる。2人目はそれをクッション材で包み段ボールケースに入れていく。ここでもクッション材を的確に使いキズなどをつけてはいけないので慎重さが求められる。3人目は段ボールケースのフタをクラフトテープを使って閉じる。専用機械を使うためその操作ができるスキルを要する。そして、最後の4人目がその段ボールケースをパレットに乗せ積み上げていく。一定の重さがある製品を持ち上げるために体力を必要とする作業である。

その4人の知的障害者に対して1名の従業員が常時支援しており、作業全般の確認、運び込まれた梱包前後の自動車用ホイールのリフトによる移動、トラブル発生時の対応などを担っている。

このように4人の知的障害者が従事できるように業務を細分化、単純化し、リフト操作など知的障害者に難しい業務については、一般従業員が行うことで一貫した梱包作業を実施している。

ラインのレール上に乗せる作業

ダンボールケース入れ作業

4．取り組みの内容

①親会社の実践を参考

障害者を雇用することに関して、効率化、安全の確保など現場に負担をもたらすのではないかとの懸念があった。しかし、親会社トピー工業株式会社の豊橋製造所が実際に雇用することで、社会的な責務を全うしながら、一定の成果を上げているという実践を目にすることで実施に踏み切ることができた。

特に、社内に別途作業場を作ること、就労支援機関（ハローワーク、地域障害者職業センター、ジョブコーチ、地域の相談支援事業所）との連携を密に行うことがポイントとなった。

②ジョブコーチとの連携

障害者雇用を踏み切る要因を、もう一つあげておきたい。それはジョブコーチ制度の利用である。

特に当社では、トピー工業株式会社豊橋製造所の障害者雇用にかかわったジョブコーチに依頼し、採用時からトライアル雇用、本採用、そして現在に至るまで一貫して支援を得ている。具体的には、新たなラインの創造時にその設置や業務の細分化にかかる工夫について助言を得ることができた。また、障害者本人の作業上の得意な点、必要な配慮などを含め、従事業務の支援に直接現場でかかわってもらいながら障害者本人の特性についても情報を得ることができた。

すでに雇用後1年以上経過しているが、このジョブコーチは今でも月1回程度来社し、担当従業員はもとより、一人一人の障害者に声をかけ勤務や業務の従事状況について確認してくれている。このことが安定就労にもつながっている。

ダンボールケースのフタしめ作業

③トライアル雇用の利用

雇用当初は障害者本人にこの業務があっているかどうか不安もあったが、これはトライアル雇用制度を利用することで解消した。

トライアル雇用により3ヶ月間試行的に雇用することで、障害者本人が当社の業務について理解することができたようだ。他の従業員も障害者それぞれの特性を現場で理解することができ障害者雇用の不安感を一掃できた。

結果的にトライアル雇用が終わると同時に4人全員の採用に至った。

5．まとめ

輸送業、倉庫業など障害者雇用が困難であると見られている分野でも、当社においては作業環境を創出することで可能となった。しかも、ジョブコーチやトライアル雇用などによる就労支援策を利用することにより、雇用当初から定着まで安定的に進めることができた。

採用を計画したときには、2008年（平成20年）に発生した金融危機まっただ中であり、経営環境は最悪の状況であった。しかし、就労支援機関との連携を確固たるものとし、親会社トピー工業株式会社豊橋製造所の協力も得て、今回の障害者雇用につなげることができた。引き続き安定的な雇用を確保していきたい。