事業所名

株式会社アシヤパッキング製作所

所在地

大阪府大阪市

事業内容

各種工業用ゴム製品加工販売

従業員数

24名

うち障害者数

1名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害	1	ゴムシートの裁断加工
精神障害

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 障害者を雇用するにあたって配慮した事項について
3. 雇用を継続する中で出てきた課題と対応について
4. まとめ

事業所外観

1．事業所の概要、障害者雇用の経緯

各種工業用ゴムシートの加工、販売の事業を50年以上にわたり行っている。素材や納期の相談など、大きな会社にはないきめ細やかな対応を心がけている。

障害者雇用について検討を始めたのは、2008年にハローワークに求人を出した際、障害者の採用の可能性について担当者から尋ねられたことがきっかけである。それまでは障害者雇用の経験がなく、障害者の雇用をどのように進めて行けばよいのか相談したところ、大阪市内の障害者職業能力開発施設を紹介された。この施設に見学へ行くと、様々な障害者が職業訓練を受講しており、中でも知的障害者が物流作業や弱電作業に取り組んでいる姿を見て、この人たちならできる仕事があるのではないかと感じ、雇用を進めることになった。

工場内の様子

2．障害者を雇用するにあたって配慮した事項について

障害者を受け入れることが全く初めてであったため、職業訓練施設の指導員が会社を見学し業務を把握した上で、製造業を希望していたTさんを候補者としてまず実習から始めることとなった。

会社内の様々な業務の中でどのような作業に従事するべきかを熟考し、ゴムシートからパッキンの部材を打ち抜く機械の操作で様子を見ることになった。これは、刃物を型取りした木型の上にゴムシートを載せてプレス機で打ち抜く作業で、シートの位置に注意を払う必要はあるが、工程はそれほど多くなく短期間で習熟できるのではないかと考えられたためである。

Tさんは寡黙な性格で、職業訓練施設でもコツコツと作業に取り組む姿勢が評価されていたが、会社においても指示された手順を守り確実に製品を仕上げていく点を高く評価された。実習当初は作業指示や注意などをどのように伝えればよいのか、またこれにどの程度対応できるのか不安であった。しかし、職業訓練施設の指導員との話やTさんの様子を見ていく中で、指示の内容が複雑にならなければ十分作業に対応できることが分かった。

2週間の実習を終了し、Tさんもこの仕事で就職したいと希望されたため採用となった。

Tさんの作業の様子

3．雇用を継続する中で出てきた課題と対応について

入社当初は、指示や注意をどのように伝えるか迷いながらの面もあったが、Tさんの様子を見ながら時には厳しく注意をすることもある。慣れた作業なので時には漫然と過ごしてしまいがちになるが、注意をすることで緊張感を持って仕事に取り組むことができている。部署の人たちはTさんの性格や状況をよく把握した上で注意をするため、パニックになったり落ち込んで出社できなくなってしまったりすることはない。

Tさんが働き始めてからの2年半で欠勤は1日しかなく遅刻も全くない。仕事ぶりにはとても安定感があり、生産量の予測がつくため計画を立てやすい。作業速度は他の従業員よりはまだ遅いが、実習時から着実に進歩が見られる。ただ、他の従業員であれば習熟するとともに省くような手間を省かないところが速度向上の妨げとなっている。例えば、他の人であればパッキンを打ち抜いた後のカスが周辺に多少残っていても次の工程に進むが、Tさんは確実に取り除いた上で次の工程に進むのである。しかし、この姿勢が製品の品質の安定にもつながっており、Tさんが生産する製品の不良品発生率はとても低くなっている。

入社して1年ほど経過した頃には大きな課題に悩まされた。これは作業中に非常に強い眠気に襲われるもので、立ったままでも眠ってしまうほどの状態であった。この時にはまず、会社から職業訓練施設へ連絡があり、担当指導員が会社を訪問し状況を確認した。次に担当指導員が家庭へ連絡をして本人の生活リズムに乱れはないか確認をし、睡眠時間確保のための働きかけを依頼した。この対応だけではすぐに改善は見られなかったが、出勤時間を午前のみに変更するなど対応することで眠気の課題は解消した。Tさんは現在、朝から夕方までの勤務に従事している。

会社の方の指導を受けるTさん

4．まとめ

Tさんが入社して2年半が経過したが、当初は学生気分が残り社会人としては未成熟な点が目に付いたものの、職場の人達の厳しくとも温かい指導と家族の支えにより、社会人として大きく成長したことが感じられる。初めは周囲の人に言われたから来ているという様子であったが、徐々に自分の仕事をするという意識が出てきたようだ。会社に自分の居場所を見つけているようで、仕事が好きだという気持ちが伝わってくる。

職場の仲間は、障害者雇用について初めは戸惑いながらも、Tさんがより良く働けるようにはどうしたらよいかという視点から、様々な可能性について検討し実践した。この期待に応えるようにTさんの成長があったのではないかと考えられる。このような信頼関係に基づいた事例を、新たに障害者雇用に取り組む事業所に少しでも知っていただけるよう願っている。