周囲の人達とともに障害を乗り越え、共に働き、共に生きる
- 事業所名
- タビオ奈良株式会社
- 所在地
- 奈良県北葛城郡
- 事業内容
- 流通業(タビオ株式会社の物流部門を担う子会社:靴下の物流を中心に、 検査、研究)
- 従業員数
- 103名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 靴下のオリジナルプリント
つぼ押し加工肢体不自由 1 パッキンの組み立て、梱包
ハンディ・デジタルピッキング内部障害 知的障害 6 パッキンの組み立て、梱包、荷受
出荷検品
ハンディ・デジタルピッキング精神障害 - 目次

1.事業所の概要
親会社のタビオ株式会社は、「靴下屋」をはじめ様々な靴下専門店をプロデュースしている企業である。靴下、この小さな命に温かい愛情をこめて一流品を提供しようと、研究開発、生産、流通に取り組んでいる。当社は株式会社ダン(現タビオ株式会社)と靴下メーカーが結集して平成4年4月に設立した協同組合靴下屋共栄会が前身で、その後平成19年6月にタビオ株式会社の物流部門を担う子会社として、現在のタビオ奈良株式会社に組織変更された。
事業内容は、靴下の物流部門を中心に靴下のオリジナル刺繍・プリント加工などのオーダー商品の生産や、靴下の商品テストや品質テストなどの検査・研究を手がけている。 そのうち特に物流業務においてはコンピュータシステムを活用したデジタルピッキングシステムを導入している。
品質管理体制の徹底や物流効率を追求することで、お客様に一足一足の良質な靴下をお届けしようと尽力している。
2.障害者雇用の経緯
障害者雇用は、企業の社会的貢献として、タビオグループの各社ともども前向きに取組んでいる課題である。平成19年6月に現在のタビオ奈良株式会社に組織変更されて数年と年月が浅いが、障害者雇用率の達成に努めている。
早々とハローワーク(公共職業安定所)や障害者職業センター、高等特別支援学校などとの連携をもって、平成21年に7名、平成22年に2名の障害者を各職場に受け入れることができ、その方々の真面目な勤務態度や仕事への熱い想いを身近に感じている。当社では一般の従業員と区別することなく、各人の能力や特性に見合った職場に配属し、労働条件や勤務形態なども一般のパート従業員と同じ扱いとなっている。前述のごとくハローワーク、障害者職業センター、特別支援学校などの関係行政、関係団体・機関の熱心な支援をいただいた。
こうした障害者の雇用とその職場定着に取組んだ経過を振り返えるとき、働く障害者本人が、働きがい、生きがいを持って共に普通に勤務していることの有難さ、幸せをご家族とともに実感されていることが何よりも喜ばしい。
3.障害者の従事業務、職場配置
当社で働いている障害者の職場、そこでの従事業務をみると、パッキンの組み立て、梱包、出荷検品、荷受、ハンディ・デジタルピッキング、靴下のオリジナルプリント、つぼ押し加工などの仕事がある。
障害者8名の就業形態は、1週5日勤務、1日に6~7時間としている。賃金は時間給制で、賃金体系が、時間給、役職手当、通勤手当、皆勤手当、時間外手当などを規定する全社共通の賃金体系である。
なお、全員が自宅からの通勤で、マイカー通勤が3名、電車・バスの公共交通機関利用が5名で、いずれも会社まで自力通勤している。他の従業員ともども1年に1回、定期健康診断、保健指導を実施して、各人の体調、健康の保持・増進に取り組んでいる。
4.取り組みの内容
(1)障害者の受け入れ
障害者の受け入れについては、平成19年6月にタビオ株式会社の物流部門を担う子会社として、現在のタビオ奈良株式会社に組織変更から数年と年月が浅く、当社としては初めてのことであり、戸惑いと不安があった。ハローワークや特別支援学校の熱心な要請、その前後に障害者職業センター等の職業リハビリテーションサービスを受け、ジョブコーチによる支援、障害者等の職場適応を容易にする支援、それに、就業・生活支援、激励、訪問支援があり、仕事での自己実現、職業自立へのサポートがあった。
(2)職場の選定、職務内容
これは、一般の新卒採用や中途採用に際しても同様で、障害者本人の意思・希望を確かめながら、能力・性格や仕事ぶりを見極め、適性を判断し、適材適所の配置を心がけている。配置の結果、仕事ぶりや適性に疑問がある場合には、従事業務を単純化し、シンプルな作業内容の職務をマスターするよう指導を行う。そうして習熟していけば、従事する職務内容について、同じひとつの職種であっても業務の進み具合や熟練度が高まるとともに、さらに一段高いレベルの仕事へとチャレンジする機会を用意し、働く本人の就業意欲を喚起するよう心がけている。
また、当社では年に数回、高等特別支援学校の実習生数名を受け入れて、職場実習を行っている。近頃は障害者である従業員も実習生の指導係として積極的に参加している。このとき先輩と後輩が労働の現場で短時間ながらも身近に接して、仕事に対する社会人としての自覚を学び身につける大切な場になっている。
(3)人間関係面の配慮
障害の種別や等級などが同じであっても、個人のもつ性格や特性、経験や能力が違うこともあり、対応は一律にというわけにはいかない。そのことを理解しながら、個別に話し合いの場を設けて対応している。
聴覚障害者が一人在職しているが、職場ではその人を講師として週に1回程度手話の勉強会を開き、聴覚障害に関しての理解を深め、出席者や周囲との心の交流、コミュニケーションが図られている。
(4)職場定着
障害者を採用し始めて歳月浅く、勤続1~2年3名、勤続1年程度5名が在籍している。去年からの採用なので、定着状況について判断できる時期ではないが、当社では、障害者の職場定着推進策として、より良い職場環境を作っていくために、本人との話し合いはもちろん周囲の同僚たちとも定期的に話し合いの場をもっている。
仕事の指導についても「優しく、わかりやすく、辛抱強く」を心がけて、指導者が、親身になって根気よく世話をする。くりかえし具体的にわかりやすく説明し、やって見せ、相手に実際にやらせてみて、注意するところ、ポイントを説明し、復唱させて良い点をほめ、作業を習熟させるようにしている。
初心者であるため、安心と安全、労働安全衛生については「やるべきことは必ずやる。してはならないことは絶対にしてはならない。」と指導を徹底している。
いままでこの2年間に採用した障害者は11名で、現在8名が定着し、3名が離職した。トライアル雇用で採用したが「体調の悪化などが原因で」本採用に至らず期間満了による離職となっている。
(5)各種支援策とその活用
①トライアル雇用(障害者試行雇用)
ハローワークの紹介を受け、職業経験、技能・知識等から就職が困難な障害者の雇用期間を最高3カ月と限定して試行雇用する。その間に適性や能力を見極め、その後の常用雇用・本採用への移行を目指す制度を活用している。
②ジョブコーチ(職場適応援助者)の支援
重度障害者が職場に適応できるよう、入職から数カ月にわたり、ジョブコーチの定期的な就業現場への訪問を受けている。そのときには、現場の担当者として苦慮していることがあれば、すぐに相談するようにしており、職場の改善に関する助言を受けている。
③各種助成金
試行雇用奨励金、特定求職者雇用開発助成金、障害者介助等助成金などを活用している。
(6)具体的な雇用事例
Aさん
20代のパートの女性従業員で、ハローワークからの紹介をうけて採用された軽度の知的障害者である。3カ月のトライアル雇用期間を終了し、現在は本採用となり活躍している。仕事は、物流部門での検品作業・ピッキング作業を担当している。集中力があり、いまでは自分で作業を進められるようになっている。特に検品作業においては、他の新規従業員への指導や助言もできるようになり、真面目で一生懸命に職務にあたるので、同僚からの評判もよい。
所定労働時間は9:00から17:00までの7時間(その間休憩60分)である。
Bさん
40代のパート男性従業員で、Aさん同様にハローワークからの紹介で採用された。3カ月のトライアル雇用期間を終了し、現在は本採用で活躍している。
仕事は、商品の棚積み、パッキン組み立て、荷受などを担当している。作業グループの同僚は7人ほどであるが、職場と仕事によく馴染んで、仕事に関するコミュニケーションもとれている。
所定労働時間は9:00から17:00までの7時間(その間休憩60分)である。そして繁忙期には、他の従業員と同様に残業もできる。
5.取り組みの効果、今後の課題
障害者の仕事に対する前向きな態度や意欲など、他の従業員が見習うべき部分も大いにあり、いろいろな環境や状況に置かれた者同士が、お互いに協力して一つの職務を遂行することが、当り前のこととして受け入れられた職場環境を醸成するように努めている。障害者本人たちも、全員最初はパートとしての採用であるが、将来的には正社員をめざすという目標に向かって、やりがいをもって勤勉に職務をこなしている。その真摯な姿勢が、他の従業員たちの目にうつり、互いに良き刺激を受けあうという好ましい職場環境づくりに繋がっている。
最初は障害のある者とない者がお互いに遠慮したり距離感があって、問題が起こったりと課題もあったが、関係各方面に相談したり、内輪で話し合いを重ねて、ようやく「心のバリアフリーをめざして、共に働き、共に生きる」そんな状況になっている。
また特別支援学校の生徒の職場実習生の受け入れや、繁忙期を一丸となって乗り越える中で、ともどもに意識が高まり、障害者各人の意識も高まって、周囲との連携プレーを取ることもできるようになりつつある。
たしかに障害者を職場に迎えることにより、企業や職場にとっては、なにかと配慮すべき点が多くなり負担はあるものの、職場の受け入れ態勢を整え、障害者各人の能力に合わせた適材適所の仕事に就くことにより、その能力を十分に発揮することができる。そのことは、まず企業にとっての社会貢献だけではなく、地域社会全体の利益へと繋がってくる。
障害者雇用を契機に、働く職場の雰囲気が明るくなった。障害者も普通に働く、仕事振り、能率、できばえ・・・なにひとつ違いがない。あたたかい心のこもった働き甲斐のある職場であるからノーマライゼーションがそこに見出される。
当社では、「心のバリアフリー」「その職場になくてはならない1人となる。」を念頭に、障害を乗り越え、共に働き共に生きる職場づくりを目指して、職場配置の工夫、多様な就業形態の活用、作業環境の改善などの各分野での就業支援を常に検討し、取り組みを行っている。
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