地域に根ざす企業として、共に働きやすい職場環境づくりの実現を
- 事業所名
- 浜田ビルメンテナンス株式会社
- 所在地
- 島根県浜田市
- 事業内容
- 清掃業務・警備業務・設備管理業務・建築物環境衛生管理業務
- 従業員数
- 119名(平成22年12月末現在)
- うち障害者数
- 3名
-
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 総務・経理業務 内部障害 知的障害 1 清掃業務 精神障害 1 清掃業務 - 目次

1.事業所の概要
①事業内容
昭和59年11月に浜田ビルメンテナンス株式会社として設立し、清掃業務を開始。平成10年に警備業務、平成12年には設備管理業務と業務拡大をし、ISO14001:2004・ISO9001:2008を取得。本社所在地は浜田市港町で、益田市・出雲市に営業所を置き、総合ビルメンテナンス事業を展開している。
②経営方針
地域社会に貢献することを目指し、より良い技術力で清掃・警備のサービスを提供し、ビル内の快適な環境を確実にお客様に提供するために、品質マネジメントシステムを採用している。また、お客様の求められているものへ的確に対応し、お客様に満足していただけるサービスを提供することを目指し継続的改善を行い、持続可能な運営を行っている。
③組織構成
総務部3名(内障害者1名)・事業部116名(内障害者2名)の合計119名である。
④障害者雇用の理念
障害者雇用については、障害のある者もない者も同じく、各人の体力、知力、年齢、特性に応じた手法や用具を活用することや、コミュニケーションを図ることで、効率のよい仕事に取り組んでいる。
2.障害者雇用の経緯・背景
以前から身体障害・知的障害の人を雇用している。精神障害者1名については知人から紹介があり、平成21年4月からハローワーク浜田の障害者トライアル雇用制度を利用し、浜田障害者就業・生活支援センターレント(以下、「レント」という)からのアドバイスを受けながら、雇用につなげられるよう計画を進めた。
現在、3名の障害者を雇用し、業務は他の従業員と一緒に同じ作業を行っている。
3.取り組みの内容、効果
① 求人から採用までの流れ
身体障害・知的障害の人は、助成制度など支援機関が関わって雇用した経緯はなく、一般の求人に応募があり、面接のうえ採用するという状況であった。精神障害の人は、知り合いからの紹介にて雇用を検討している時に、ハローワーク浜田の障害者担当者、「レント」の就労支援ワーカーから精神障害に関する特性や助成金制度などの説明を受け、平成21年4月よりトライアル雇用制度を3ヵ月間利用して、本人の特性やグループで仕事をするためのコミュニケーションがうまく取れるかなどを見極めた結果、常用雇用(正社員)での採用となった。
② 障害者の従事している作業内容・勤務形態等
・身体障害 経理、その他幅広く総務に関する事務を担当している
・精神障害 清掃業務 本社の清掃員として従事している
・知的障害 清掃業務 本社の清掃員として従事している
③業務内容等の紹介・説明
清掃業務に従事している精神障害のAさんの勤務時間は、8時~17時で、昼の1時間が休憩の実働8時間勤務であり、1時間程度の残業をすることもある。 週5日勤務だが、シフト制の勤務を組み、土・日・祝日でも出勤することがある。
知的障害者のBさんは、週3日勤務のパート雇用である。業務内容は、依頼された清掃先へ行き、フロアのワックスがけや窓ガラスを磨く作業を中心に行っている。高い位置に窓ガラスがある場合は、脚立やはしごを使用して作業することもある。清掃先には複数名の従業員で行き、そのグループのリーダーから当日の役割の指示を受け作業に取り組んでいる。
【Aさんのある日のスケジュール】
この日は午前が「窓ガラスの洗浄」、午後から「フロアの表面洗浄」作業に従事した。
作業の手順は、それぞれの作業にある「作業標準書」に従って行っている。
<午前> | 業務の内容 | <午後> | 業務の内容 |
---|---|---|---|
7:50 8:00 8:10 8:30 10:00 11:30 12:00 |
出 勤 朝 礼 準備・現場へ出発 現場へ到着、準備 安全確認 【作業①】開始 休 憩(10分) 作業再開 点検、後始末 会社へ戻る 休 憩 |
13:00 13:30 15:00 16:20 16:50 17:00 |
準備、出発 現場へ到着、準備、 安全確認 【作業②】開始 *作業内容は以下に記載 休 憩(10分) 作業再開 点検、後始末 会社へ戻る 備品等の片付け 退 勤 |
【作業②】「フロアの表面洗浄」の作業標準書
No | 作業の順序 | 作業の要点 |
---|---|---|
1 | 準 備 | ①表面洗剤を希釈して洗浄液を作る ②ワックスをワックス容器に準備する ③機械器具を点検し準備する |
2 | 安全確認 | 特に滑ることの多い作業であるので、滑り止めカバーの着用の厳守、作業中はあせらず、絶対に走ってはならない |
3 | 什器備品などの移動 | ①什器備品などは室外に運び出す ②軽い椅子・ゴミ箱などは机の上にあげる ③巾木・書棚の下等を養生テープで養生する |
4 | 作業表示板を立てる | 見やすく邪魔にならない所に立てる |
5 | 養生シートを敷く | 出入り口を決める |
6 | 床を掃く | ①自在箒または乾式モップで床を掃く ②固着物はその都度、パテナイフで取る |
7 | 滑り止めカバーを着ける | |
8 | 隅々コーナーの処理 | 洗浄液を塗布する前に隅々コーナーを全員で長柄ホルダーにつけたハンドパッドでこすって洗浄する。また、超重度の汚れの箇所がある場合は、必ず落としておく。 |
9 | 洗浄液の塗布 | ①洗浄液を専用モップで塗布する |
10 | 洗 浄 | ①塗布した洗浄液が乾かないうちに、ポリッシャーで洗浄する ②重度の汚れは、廻し洗いで洗浄する |
11 | 汚水を取る | ①汚水が乾かないうちにフロアスクイージーで取る |
12 | 滑り止めカバーをはずす | |
13 | 拭き上げ (仕上げ拭き) |
①床が乾かないうちに拭き上げる ②回数 ・軽度の汚れの場合は2回 ・重度以上の場合は、1回(荒拭き)、2回(中拭き)、3回(仕上げ拭き)を行う |
14 | 床面の乾燥 | 床面を完全に乾燥させる |
15 | 床維持剤の塗布 | ①床面の乾燥を確認して、専用モップで塗布する ②塗布の回数 ワックスの塗布は、床面の汚れの程度に応じた洗浄の度合によって1~3回塗布する |
16 | ワックスの乾燥 | 送風機を使用。その他、窓の開放、暖房設備を利用する |
17 | 什器備品の移動などの片付け | ①什器備品、椅子などを元の所に戻す ②養生テープをはがす ③作業標示板と養生シートを片付ける |
18 | 点 検 | 洗浄不十分、ワックスの塗りもれ、ムラや巾木などについていないかをチェックし、あれば手直しを行う |
19 | 後始末 | 機器・器具の手入れや資材の処置を行う。後始末 |
【作業標準書No.3】

会議室の床の表面洗浄を行うため、机や椅子など什器備品を廊下へ移動している。表面洗浄終了後、元の位置に備品を戻して置かなければならないため、配置を覚えておくことが必要となる。当初は何も考えずに備品を移動させて、備品の配置を忘れていたため、リーダーから何度も注意を受けていた。今は、経験のある清掃先であれば指示されなくても、元の配置を覚えておくことができるようになった。
【作業標準書No.10】

入社して1年位はポリッシャーを使って作業することはなかったが、多くの作業現場の経験を積んで仕事の内容も把握できるようになってからは、リーダーの指導のもとポリッシャーを使用することができるようになった。
作業中に、電源をとるためのコードが長いため、コードをうまく取扱うのに相当苦労をしていたが、作業マニュアル(ポリッシャーの操作要領)を確認のうえ、他の従業員の作業場面を参考にしながら、徐々にではあるがスムーズな洗浄作業ができるようになった。
【作業標準書No.19終了時】

この日はポリッシャー作業の担当。1つのフロアが終わり、次の工程は他の従業員が行うためポリッシャーを片付け、次の段取りのための準備をする。現場によっては、次に何をするのかひとりで判断するのは難しいため、リーダーの指示により次の行動に移るようにしている。どのような場面でもグループのメンバーとコミュニケーションをとりながら、作業手順を確認することができるようになった。
④障害者雇用をするに当たって留意したこと
Aさんに関しては、今まで精神障害の人を雇用した経験がなく、当初は、どのように接していけば良いのか、どう教えていけば良いか不安だった。また、清掃業務に関しては、個人の力量だけではなく、日々現場でのメンバーも変わりグループでの勤務となるため、従業員全体でサポートしていく必要があった。そのため、トライアル雇用期間中に、全従業員を集め「レント」の就労支援ワーカーを講師に、「障害者の理解と職場での対応について」と題した職員研修を開催し、障害者を身近に感じ、障害者に関する理解を深めてもらった。業務では、各グループのリーダーが作業の指示を出し、他のメンバーが協力して指示に従った業務をこなす体制を取っている。
⑤職場定着の取り組みについて
Aさんは、トライアル雇用期間中は休むことなく順調に出勤できていたが、勤務開始から半年位経過した頃より少しずつ体調を崩すことがあり、欠勤する回数が徐々に増えてきた。もともと軽いてんかん発作があり、以前までは仕事中に発作が出ていても、すぐに治まり引き続き仕事が出来ていたが、この頃は、発作や体調の不調も増えてきている状態にあった。
本人は単身生活をしていたので、家での状況がわからず、生活面でどうしていたのか、服薬していることは聞いていたが、きちんと薬を飲んでいるのかまったくわからなかった。そこで、「レント」に相談し、体調・食事を含めた生活面での支援をお願いし、会社と本人の間に入って調整をしてもらうこととなった。生活面での様子を聞いてみると、服薬はきちんと決められた時に飲んでおらず、通院もしていない状況だった。
そこで、服薬・体調管理や定期通院など生活面全般において「レント」に支援してもらうようになってからは、少しずつ生活も改善していき、徐々にではあったが出勤率も上がってきた。現在では、ほとんど欠勤することなく働くことができ、時々残業になっても、作業の終了までしっかりと働けるようになり、てんかん発作もほとんど出ないようになった。
また、最近では職場の忘年会・新年会にも積極的に参加するようになり、他の従業員とのコミュニケーションもしっかり取れるようになってきた。
4.今後の課題・展望等
清掃業務で勤務している方には、作業スピードを高め、効率よく作業できるよう取り組んでいきたい。そのためにも、障害のある従業員の能力を活かせるように、全社員の障害についての理解と協力が必要となる。今まで以上に障害に合わせた職場配置や業務に対する教育・訓練方法なども検討していきたい。そして、最終的には障害者がリーダーとしてグループを引っ張っていけるようになってもらいたい。
また当社では、清掃業務以外にも警備・設備管理業務を運営しており、障害者が生き生きとして働ける場面が他にもある。厳しい経済状況下ではあるが、職場実習等にも協力しながら支援機関のサポートを得て、障害者雇用の促進に取り組んでいきたいと考えている。
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