事業所と従業員との互恵共栄
- 事業所名
- 株式会社 ジー・ネットワークス
- 所在地
- 山口県山陽小野田市
- 事業内容
- フードサービス業
- 従業員数
- 1790名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 食品製造工 肢体不自由 1 飲食店、キッチンスタッフ 内部障害 1 飲食店、キッチンスタッフ 知的障害 2 食品工場作業員、飲食店ホール係 精神障害 - 目次

1.株式会社 ジー・ネットワークスの障害者雇用
株式会社 ジー・ネットワークスは、フードサービス業を中核に、英会話スクールや学習塾などの教育事業にも参画する企業である。当社が障害者雇用を開始したのは平成2年であり、現在では5名の障害者が勤務している(平成23年1月現在)。
障害者が就労しているのは、フードサービス業の部門である。フードサービス業には、外食事業(中華をはじめとした和洋食の店舗の経営)、並びに、食材を製造して各店舗に調達する事業が含まれる。5名のうち、3名が外食事業(店舗)、2名が製造事業(製造工場)の部門に配属され、事業所からの支援と自身の努力によって、その力を日々発揮している。
当社では、作業ができる人であれば、障害の種類にかかわらず、積極的に雇用する方針をとってきた。職場配置についても、当社には数多くの仕事内容があるので、障害の種類やその程度を勘案しながらうまく適合するよう努めている。
なお、県内の特別支援学校の生徒を現場実習生として毎年積極的に受け入れていることも、当社の特徴の一つにあげられる。
2.障害者雇用の展開から見えてきたこと
障害者雇用の指揮をとっている管理本部人事・総務課課長 村谷美香氏と人事・総務課主任 加藤優子氏にお話を伺った。
「障害のある方を雇用したことで、相手を思いやる気持ちがこの社内に育っているように感じます。」と村谷課長は語る。
障害のある従業員の前向きな勤労姿勢や、周囲への朗らかな言動などが、社内に温かな雰囲気をかもし出すことがある。当社でも、障害者雇用の展開のなかで、社内に思いやりや心配りの心情が育ちつつあることが伺われる。この心情は、外食事業(店舗)での接客の場面でも、食品製造の場面でも、人間関係を必ず円滑にさせることであろう。

3.食材製造事業の職場(製造工場)での支援
本社社屋に隣接した広大な敷地に、食材製造の工場がある。当工場には2名の障害者が就労しており、その支援にあたっているのが開発本部CK営業部 工場長の東裕次氏である。
早速、東工場長に工場内を案内していただいた。


(1)衛生面に関する従業員教育の徹底
現在、当工場で雇用されている2名の障害者を含めた全従業員に対し、衛生面についての社員教育は徹底している。
当工場に入るには、まず衛生管理用の白衣、マスク、頭部用ネット、白ゴム長靴を着用し、白衣の上から粘着ローラーをあて、毛髪や埃などを入念に除去する。続いて、温水で手指や爪を入念に洗浄した後に両手を消毒液に浸し、白ゴム長靴も洗浄した後に、ようやく工場に入室できる運びとなる。安全な食品を製造しなければならない責任ある工場として、衛生管理についてのこうした徹底した実践が、障害者を含め全ての従業員に対し、毎日厳格に求められている。



(2)従業員への支援の実際
①Aさん(知的障害・療育手帳「B」判定)
Aさんは、山口県内の特別支援学校の高等部を卒業して、平成7年に入社した。近隣にある自宅からJRと自転車で通勤している。現在、工場の正社員として、8時から17時まで勤務している。業務内容は、食品の冷凍作業、食品を入れた袋の密封、段ボール箱の組み立て、梱包作業などである。
食品の冷凍作業では、食品(フカヒレスープなど)をパレットに平らに並べ、それらを台車に差し込み、台車ごと冷凍庫に運び入れる。零下25度の冷凍庫で一晩かけて冷凍した食品を、翌日、Aさんが段ボール箱に梱包する。その際、凍った食品同士で互いに傷がつかぬよう、その間にクッション材を丁寧に詰めるのもAさんの仕事である。その後、食品を梱包し終えた段ボール箱を、「4個×10段」(総数40個)の山に積み重ねていく。




(a)実感を伴う具体的な指導の積み重ね
これまでAさんには、実感を伴う具体的な指導が積み重ねられてきた。例えば、段ボール箱の開閉部分をテープで閉じる作業の指導では、東工場長はAさんの目の前でわざと「良くない貼り方」を実演した。当然底が抜け、中の品は床に落下してしまう。この一連の様子をAさんに見せたのである。続いて、底抜けが起こらぬようにするには、どのように貼る必要があるのかを丁寧に教えた。
こうした具体的な指導の積み重ねにより、Aさんの技能は次第に高まっていった。
(b)自分で考えさせ、その後でアドバイスする
従業員に仕事上の失敗が起こったとき、上司がどのように指導すればよいかについては、一般的に上司が抱く悩みの一つと思われる。
「仕事がうまくこなせなかった時には、それがなぜなのか、まずAさんに考えさせ、その後にアドバイスするようにしています。そうすることで、自分の力で新たな場面に応用していく力がつきます。こうした対応が、Aさんの成長につながるものと期待しています。」
Aさんの成長につながる指導の積み重ねが、Aさんの技能を向上させ、安定就労を支えていることが伺われる。またAさんは、職場での長年の学びにより、その技能を向上させてきた。その点を、東工場長は次のように語る。
「Aさんは、数字の理解が苦手です。でも、職場での長年の学びによって成長しています。例えば、4つの段ボール箱を10段重ねると全部で40個になりますが、Aさんは苦手なかけ算のかわりに、これまでの経験に基づかせて、全部で40個になることを学び取りました。」
Aさんの努力もさることながら、東工場長による根気ある長年の指導の賜であろう。
また、東工場長は次のように語り、目を細める。
「Aさんは、くよくよしない性格ですね。心が後ろ向きにならない人です。」
Aさんの明朗な性格が、自身の技能の向上をさらに促し、同時に職場を活気づけていることも伺われる。
(c)「三行提報」の実践
「三行提報」とは、今日の出来事(うまくいったこと、あるいは反省など)を、三行くらいの文章に綴り、それらの内容を職場の従業員で共有する試みである。小さな気づきも、黙っていては共有されず、作業の改善につながることはない。現在、従業員全員が各自のパソコンから文章を入力しており、これらはメールで送信され、情報として皆に共有される。Aさんも毎日夕刻にキーボードに向かい、例えば次のような文章を打つ。 「今日は○○の失敗をしました。明日は失敗しないように、□□に気をつけます。」
今日一日の自分自身を振り返り、対応のあり方を含めた気づきを毎日文字に置き換えることは、その日の喜びや反省をその心に深く認識させる効果があるため、今後のさらなる成長の糧となろう。そして、職場の作業改善と活性化につながることも期待されよう。
②Bさん(聴覚障害・身体障害者手帳「6級」判定)
Bさんは、平成12年に入社した。近隣にある自宅から自家用車で通勤している。現在、工場のパート社員として勤務している。両側感音性難聴であるが、補聴器は使用していない。周囲が大きな声で語りかければ聞こえるため、日常的な意思交換にほとんど支障はない。



業務内容は、段ボール箱の組み立て、冷凍食品の袋詰め(ギョーザやシューマイ)、梱包作業などである。
Bさんは難聴のため、瞬時の言語指示理解を必要とする機械操作や、フォークリフトなどが移動する通路での作業を避けている。工場内では、Bさんに向けて、周囲の従業員が大きな声で語りかけている。
「工場内では従業員は皆マスクを着用していますから、小さな声はマスク内でこもってしまいます。ですから、Bさんには大きな声でしっかり話しかけるようにしています。」と東工場長は語る。
工場内では、衛生上の観点から鉛筆などの筆記用具の持ち込みは禁止されているため、Bさんとの筆談などはできない。それゆえ、この大きな声が意思交換の方法となっている。
「この大きな声が、従業員同士の気合いを工場内に生み出すことにもつながりました。」と東工場長。Bさんの入社を機に始まった大きな声での意思交換の習慣が、工場内に活発な雰囲気をもたらすことにもなった。
4.食事業の職場(店舗)での支援
①Cさん(知的障害・療育手帳「B」判定)
Cさんは、山口県内の特別支援学校の高等部を卒業して、平成2年に入社した(当社で初めての障害者雇用)。現在、山口県周南市内にある中国料理のレストランの店員(パート社員)として、10時から15時まで働いている。市内に自宅があり、自転車で通勤している。業務内容は、主にバイキング料理の提供、配膳、食器類の後片付けなどである。料理の補充は上司からの指示に従うが、食器類の補充はCさん自身の判断によって進めている。
当レストランでは、年に数回の大繁忙時(お盆、年末・年始など)がある。この時期の接客は、Cさんにとって精神的にも負荷がかかりやすくなる。そこで、精神的な疲労を与えぬよう、長時間勤務は避けるように配慮している。
②Dさん(下肢障害・身体障害者手帳「4級」判定)
Dさんは、平成20年に当社に入社した。現在、兵庫県宝塚市内にある居酒屋風レストランの調理場作業員として働いている。右変形性股関節症による右股関節全廃のため、人工股関節を装着している。歩行スピードは若干遅いが、ひざの屈伸も可能であり、仕事上の支障はない。業務内容は、調理補助や食器片付けなどのキッチン作業である。他の従業員と変わらずに勤務しているが、身体的、精神的疲労を与えぬよう、勤務時間には配慮している。また、不調時には、無理をさせず、休養をとらせるようにしている。
③Eさん(心臓機能障害・身体障害者手帳「1級」判定)
Eさんは、平成18年に当社に入社した。現在、福岡県福岡市内にある洋食料理のレストランの店員として働いている。入社前に心臓ペースメーカーを装着したが、仕事上の支障はない。業務内容は、オーダー取り、料理の提供、食器片付け、キッチン調理業務などである。健常の従業員と変わらずに勤務しているが、体調がすぐれぬ時などは、無理をさせず、休養をとらせるようにしている。
5.自分の人生を自分でつくる
当社には、障害のある従業員を一人の責任ある社員とみなしながら、支援を根気よく続ける上司や、理解を示す同僚がいる。そして当社からの支援のもと、障害のある従業員5名は、それぞれの部署で今日も元気にその力を発揮している。その働く後ろ姿からは、就労を通して社会参加していることの誇りとともに、自分の人生を自分でつくっていこうとする姿が伝わってくる。
株式会社 ジー・ネットワークスは、経営理念に「互恵共栄」を掲げている。この理念の実現に向けて、障害者就労の現場でも日々真摯な取り組みが続けられている。事業所からの支援と本人の努力とが車の両輪にように共にかみ合ってこそ、この互恵共栄が実現する。
障害の有無にかかわらず、人は皆、その持てる力をこの社会で発揮し、社会参加したいと願っている。株式会社 ジー・ネットワークスは、就労を通した社会参加という理念の実現に向け、企業としての社会的責任も果たしていく経営を今日も続けている。
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