2010年度作成

事業所名

社会福祉法人緑風会 介護老人福祉施設緑風荘

所在地

徳島県海部郡

事業内容

特別養護老人ホーム、通所介護、居宅介護支援、訪問介護

従業員数

74名

うち障害者数

2名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害	2	施設内清掃
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 障害者の従事業務・職場配置
4. 取り組みの内容
5. 取り組みの効果及び課題
6. まとめ

1．事業所の概要

徳島県南部の温暖な気候と、豊かな自然に囲まれた環境に1985年に開設。 常に【やさしい笑顔】をモットーにサービスの提供に努めている。

・『個』を大切にした空間づくり

入所者個々の声に耳を傾け、その人らしい生活ができるよう「個」を大切にした生活空間づくりに努める。

入所者一人ひとりが尊厳ある生活を送れるよう、可能な限り入所者のリズムに合わせながら、出来るだけ入所前の生活に近いような生活が出来るよう支援していく。

・専門性の確立・サービスの高品質化

『ありがとうを作る仕事』

常に、プロフェッショナルな介護力・看護力・厨房力・オフィス力の向上を目指し、“笑顔”と“安心”を提供する、尊厳ある生活援助の場としてのケア提供に努める。

・地域社会での在り方

設立25周年で築き上げた地域との強い絆で、これからも地域社会の核となり地域の活性化、地域の方々の介護予防・健康づくりに励んでいく。

2．障害者雇用の経緯

当事業所として最初の障害者雇用は、公共職業安定所よりの紹介で特別支援学校からの実習生の受入れから始まった。

在校時より就業体験・現場実習を経て、平成21年3月より1年間の職場適応訓練を開始。翌年、平成22年3月から雇用となる。続けて平成21年9月のふれあい就職面接会にも参加し、在宅の障害者にも就労の機会を広げる。先の面接会で採用が決まっていた障害者が、平成21年11月より雇用となり3階の担当に配属される。

3．障害者の従事業務・職場配置

2名ともトイレ・洗面台・居室・フロアー等の清掃、洗濯物集配業務等

4．取り組みの内容

業務内容については、本人の能力を発揮できる適材適所に配置するということで、現在、二人とも清掃業務（窓ふき、トイレ・洗面台掃除等）に従事しているが、外見からは障害特性がわかりづらい面がある。

Kさんの場合、特別支援学校の就業体験から始めた。教員が付いてくれている時には緊張感があったせいか動きもスムーズであった。しかし実習が終了し、職場適応訓練を進めていく中で、ある程度支援担当者や周囲の従業員が視野に入っている時は見られなかった問題も支援の目が離れるに従い、作業に取り組む姿勢等に変化が見られるようになった。職場から連絡を受け、早急に問題解決を図る必要があり、支援側から事業所に対し、本人の特性（自閉症スペクトラム）を含む具体的な問題点と配慮事項をまとめ協力をお願いすることになった。

■Kさんの障害特性と配慮事項について

①わかっていないのに「はい」と返事をする。

→返事を重要視するあまり、わからなくても反射的に「はい」と返事する時がある。

指示をする場合、返事ではなく本人の行動を観察し、理解の度合いを判断する。

②その場で注意しないと分からない。

→間違った事については、時間をおかずその場で注意しないと効果がない。

場面毎に注意する。

③物事の同時並行が難しい

→一度に複数の事を指示すると混乱してしまい、仕事が中断したり、ミスが頻発する。

優先順位をつけ、一つずつ指示する。

④自分で考えて行動することが苦手

→やるべき事はあいまいな表現は避け、本人が理解できる方法（言葉・図示等）でする。

そして終われば必ず報告させ次の指示を聞くよう指導する。

（基本的に1日の予定は紙に書いて貼り出したりするのが効果的）

1日のスケジュール以外の事をさせる時は、時間・場所・方法等について本人が

理解できるよう具体的な指示をする。

仕事と休憩の区別を明確につけ、仕事中は暇な時間を与えない。

以上の事を支援機関と職場で共通認識として持つことにより、これまで障害者に対しどのように対応して良いのか不安を抱えていた従業員も、それぞれが工夫するようになった。こうした従業員の意識改革や障害特性に対する理解・協力により、これまで場の空気が読めない、暗黙のルール等について想像力が働かない、段取りがわからない、計画的にできない、自分で適当に判断ができない等で職場に十分には適応できていなかったのが、日々のちょっとした周りの配慮により本人の行動に変化が見られるようになり、それが直接業務遂行に影響を与えることとなった。

5．取り組みの効果及び課題

・ 助成金等公用支援制度を利用することにより、障害者雇用を進めやすくなった。

・ 障害者雇用による波及効果及びメリットは、関係行政機関（ハローワーク等）や地域等から障害者雇用に対するノウハウの照会等が増えた。

・ 職場内で従業員同士の連携が深まった。

・ 障害者支援に対する各関係機関の連携が強まり、より迅速に対応できるようになった。

最初は従業員が指導に時間をとられることで負担が多く、戸惑いを感じていたが、それでも繰り返し指導していくことで彼らがゆっくり成長し、やがて昨日よりは今日、今日よりは明日というように出来なかったことが出来るようになっていくことで、自然にお互い同じ職場で働く人間としての絆が結ばれつつある。

当事業所では、障害者雇用以前にインドネシア人を雇用するという試みをしている。 障害の有無や、外国人であるかにかかわらず、人に働いてもらう時に指示は言葉よりも見本を示し、「やってみせる」「させてみせる」「ほめる」を繰り返しながら次第に業務に習熟していくのを見守ることが大切であることを実感している。

知的障害のある人には、「できること」と「できないこと」がある。「できないこと」については、「させなくてよい」ことではなく、指導や支援を行うことで改善できたり、できるようになることもあると感じるようになり、お互いのスキルアップに繋がっているように思う。

0さんについては、最近ヘルパー2級を取得した。将来的には彼女の能力を見ながら新たな業務（入所者との関わり業務）へのステップアップを図りたいと考えているようだ。また、直接業務以外でも本人の特技（ピアノ演奏等）や能力を発見し、利用者の方々への余暇支援の一貫として生かしたりしている。

こうした取り組みにより、以前にも増して職場内の空気が和やかになったり、利用者の笑顔が増えつつあるように感じる。更には仕事に対する意欲向上にも繋がると考えている。

6．まとめ

障害者雇用に当たっては、あくまでもその会社のトップの考え方で左右される。これには、障害の有無に関わらず、事業主の考え方が従業員に伝わり心が一つになることが重要であろう。

最近の厳しい景気・雇用動向の中で障害者を巡る雇用環境にも厳しさがみられるが、 当事業所は障害者の「働きたい」という意欲の高まりを真摯に受け止め、今後障害者雇用に向けて着実に門戸を広げていこうとしている。現在は知的障害者に限定されているが、今後障害の種別にとらわれず個々の職業的適性条件に十分配慮し、安全で安心して働ける職場環境の整備に努めていきたいと話す管理者の姿勢に大いに期待したい。

我々も一支援機関として、必要な時に必要な支援が提供できるよう、今後とも事業所や各関係機関等と十分連携をしながら支援の充実等を図っていきたい。

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