障害者雇用も愛と寛容の精神でノーマライゼーションを実現
- 事業所名
- 社会福祉法人真理亜福祉会
- 所在地
- 香川県丸亀市
- 事業内容
- 高齢者福祉施設、児童福祉施設の運営
- 従業員数
- 90名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 デイサービス相談員 肢体不自由 内部障害 知的障害 1 特養の館内清掃 精神障害 1 ケアハウス内外の環境整備 - 目次


1.事業所の概要
(1)沿革
平成9年7月 | 社会福祉法人真理亜福祉会設立 |
平成10年10月 | ケアハウス ベテル開設 |
平成12年7月 | 特別養護老人ホーム シャローム開設 |
平成13年4月 | シャロームデイセンター、シャロームヘルパー事業所、 シャローム居宅介護支援相談室開設 |
平成17年4月 | ひつじヶ丘保育園開設 |
平成19年11月 | チャペルデイセンター開設 |
(2)方針、特徴
社会福祉法人真理亜福祉会は、キリスト教の愛と寛容の精神を基本理念として事業を行っている。運営方針として「自分を愛するように、あなたの隣の人を愛しなさい」を第1としている。子どもたちには、愛を持ってお互いに育ちあいを大切にし、高齢者の方々に対しては、自立支援、尊厳性を重視した介護や支援を行っている。
2.障害者雇用の経緯・背景・理念
障害者雇用について、意識的に取り組んだのではなく、平成14年に特別養護老人ホームの正規職員として採用した従業員に聴覚障害があった。また、平成16年に市内の特別支援学校の先生から職場実習の依頼があり、知的障害のある生徒の受け入れを行った。そして平成17年春に就職。その後、平成22年にも別の特別支援学校から発達障害のある生徒の職場実習を受け入れ、その後就職した。従業員90名のうち障害のある職員は3名で、新たに精神障害を受け入れ現在トライアル雇用を行っている。
理事長の方針として、日頃から高齢者と子どもたちの交流を積極的に行い、地域交流を大切にしている。障害者雇用も、社会的責任や障害者法定雇用率順守ではなく、あくまでも平等の精神の元で受け入れてきた経緯がある。
3.障害者の従事業務・職場配置
(1)従事業務と職場配置、工夫等
障害のある従業員の配属は部署ごとに一人ずつと考えて配置している。
まず1人目、平成14年に採用した聴覚に障害のある男性職員について。
現在の職場配置は特別養護老人ホームのデイセンターで大学卒業の折に取得した相談員の資格を生かして業務をしている。採用当初は、介護業務で高齢者の入浴介助等を行うこととしていた。しかし、難聴のために使用している補聴器が、入浴介助に入ると蒸気により壊れてしまうため、他の仕事を検討した。また、日常業務を行う時も後ろから声をかけても聞こえていないため正面から話をすることなど、職員一人一人が配慮する必要があった。現在は、正規職員でデイセンターの相談員として頑張っており、デイセンター利用者の送迎も行うなど大切な戦力となっている。
2人目は平成17年に採用した知的障害のある女性職員について。
配置場所は特別養護老人ホームで、庶務として館内の清掃や利用者の食事の後片付け等を行っている。彼女は市内の特別支援学校から職場実習を経て就職した。実習中は特別支援学校の先生が交代で訪問し助言してくれたため、スムーズに現場にとけ込むことができた。このときが、初めての知的障害のある人の受け入れであったので、就職後は障害者職業センターのジョブコーチ支援を利用した。
仕事内容については、実習当初は洗濯の作業を検討した。しかし、業務用の洗濯機は、使用方法が複雑で使用できなかったため、3階の居室や廊下、食堂やトイレの清掃、利用者の食事の準備や後片付け等、清掃業務全般を行うこととした。就職当初、利用者とのコミュニケーションの部分で心配な点もあったが、1ヶ月もすると利用者にも慣れて笑顔でコミュニケーションをとれるようになってきた。また、現場の職員も、本人がてきぱきと清掃作業をこなすのを見て、自然に優しく声をかけるようになった。言われた業務はきちんと覚えて段取り良くできるが、突然のことがあった時などの臨機応変な対応は難しいため、周囲の職員がうまく声かけをすることでこなしている。就職当初はできなかった洗濯機の使用についても今では使いこなし、時々手伝うことができるようになった。
また、毎日の出勤状況も良く、自転車で毎朝早くから出勤している。周囲の職員とも自然にとけこみ少々話しこむ時もあるが、職場のルールを守り休まずに安定した出勤ができているなど、頑張っている姿が見られる。


3人目は平成22年春に採用した、発達障害のある男性職員について。
職場配置はケアハウスで、庶務として施設内外の環境整備の作業を行っている。彼も、近隣の特別支援学校在学中に職場実習の状況をみて採用を決めた。発達障害があり、精神障害者保健福祉手帳を取得している。実習中、特別支援学校の先生が交代で訪問し、本人の障害特性や指示の仕方等の助言を行った。元来、真面目で素直な性格、また指示内容の理解度・保持力は高いが、初対面の人と話をすることは苦手としていた。 作業内容としては、ケアハウス内の清掃(廊下・トイレ・手すり・ホール・玄関等)と施設外の環境整備を行っている。庭の草取り等、夏場の庭園整備は厳しいものがあったと思うが、疲れた様子も見せずに毎日コツコツと頑張る姿は、他の職員に良い影響を与えている。また、本人の苦手とするコミュニケーションの問題に関しては、「すれ違う人には利用者・職員・外部の人もみんなに挨拶をすること。朝はおはようございます、昼はこんにちは。2回目以上会った人には頭を下げるだけでいい」などのルールを決めておくことで、対応することができた。
就職当時は1日5時間の勤務であったが、1ヶ月後から6時間勤務に変更した。雇用保険等に加入し、現在も継続している。また、夏頃に市の評議員が見学に来た際には本人の作業の様子を見て、きちんと挨拶ができること、気を抜かずに熱心に頑張っていると褒めてもらった。挨拶や言葉遣いも丁寧で何事にも根気よく取り組むことができ、言われたことは素直に聞き、最後までやり遂げることができるため、周囲の職員からも信頼されている。

4人目は、現在トライアル雇用中の精神障害のある女性職員について。
職場配置は特別養護老人ホーム館内で、庶務として2階と1階の清掃作業を行っている。初めは県の事業であるジョブトレーニング事業を利用した、若者サポートステーションからの職場実習依頼であった。まずは5日間の実習を行い、作業内容は手すり拭きや窓ふき、トイレや居室の清掃作業を行った。本人の真面目に作業に取り組む様子をみて採用を考えたが、精神障害があるとのことだったため、障害者就業・生活支援センターの支援とハローワークの障害者雇用に関する制度の活用を依頼をした。
偶然にも、障害者就業・生活支援センターの職員が本人と面識があったことから障害や病状について詳しく知ることができ、障害特性や配慮点・勤務時間帯等について話し合いを行うことができた。またハローワークの障害者担当の職員と一緒に各種制度の活用についての相談をした結果、トライアル雇用を利用し、作業内容は実習の時と同様に、トイレ掃除や居室の清掃作業を行うこととした。彼女は、この病気になってから働いた経験がないことや現在も病気の症状があること、障害の程度を考慮し、初めは週に20時間の勤務から始めることとした。また、支援体制としては就業・生活支援センターの職員、センターの所属する法人内の精神保健福祉士が交代で週に2回職場訪問し、週に1回はセンターで本人とその週の業務と体調等の振り返りを行った。
訪問するスタッフが本人の障害特性や対応の仕方を現場職員に伝え、また本人に対しては現場の職員の方の行動や言語を気にしすぎず、自分の行うべき作業に集中して取り組むよう助言をした。その他施設長より、トライアル雇用の初日から本人に「報告書」を書いてもらい次の日に提出する習慣にしたことが、その後の定着状況に大きく影響したと思われる。「報告書」には、1日の作業の流れと気がついた点・感想を書くようにしており、次の朝に提出して施設長が所見を書いて本人に返すこととした。本人がスタッフと1週間の振り返りをする時にもこの報告書を見て作業状況等を確認し、連携ができたことが本人の安心につながったといえる。
トライアル雇用の開始直後は、勤務の曜日を土・日を含んだ4日間にしていたが、本人が土・日に調子を崩しがちだったことから、スタッフから平日のみの勤務への変更を提案し、1ヶ月目の後半から平日のみの勤務体制になった。本人をよく知るスタッフとの綿密な連絡調整、相談によって作業内容・勤務形態についての相談ができ、現場や施設長も速やかな対応をしたことから現在も継続できている。本人の病気の症状・障害の状態は決して軽度ではないが、仕事に対する熱意は非常に高く、作業に取り組む姿勢も常に一生懸命であった。また、言葉遣いがとても丁寧できちんと挨拶もできることから、現場の職員にも受け入れられ、トライアル雇用後も継続して雇用することを検討している。
(2)取り組みの内容
現在の障害のある職員のうち知的障害・精神障害のある人たちは皆、職場実習を行い作業の適性を見て本人のできることを検討した。また、特別支援学校の先生や関係機関が職場を訪問し、現場で本人に直接助言することにより、本人もスムーズに職場にとけ込むことができた。清掃業務に従事している障害のある職員は、それぞれ別々の部署で配置されている。そのため、一人で作業を行う必要があるが作業指示と報告をする職員を決めておいたこと、毎日の作業をある程度一定の量に決めたことなどにより、戸惑うことなく作業に取り組めた。
また、それぞれの障害特性に合わせて、清掃作業の中でも職務を検討したほか、バスの時間に合わせた勤務時間にしたこと、本人との報告書のやりとりを行う等、その人それぞれに合わせた対応が出来たことが現在の定着状況につながっていると思われる。その背景には、本人を知る関係機関との連絡調整がうまくできたことだけでなく、障害があるという差別意識ではない、それぞれのできるところを見て伸ばしていく姿勢が職員一人一人にあったためといえる。
4.取り組みの効果
現在の障害のある職員は皆、真面目で熱心に仕事に取り組む姿勢がみられる。出勤状況もよく、臨機応変な対応を苦手としていてもその一生懸命な姿は他の職員に好印象を与えて良い見本となっている。
また、それぞれの職場配置を別々の部署にしたことによって、各施設の現場の責任者や職員がその現場で対応する必要があった。どの部署の職員も彼等を温かく迎えることができ、またそんな周囲の職員を見て彼等も自らの仕事にやりがいを感じ、現在も継続できている。彼らの臨機応変な対応を苦手とする姿を見て、今では現場の職員が本人たちに積極的に声をかけることが自然にできている。
各施設では、常に外部からの来客もあり、利用者やご家族とも廊下等ですれ違うことが多い。そのため、挨拶や言葉遣いはより重要になり、障害のある職員がきちんと挨拶することや丁寧な言葉遣いができていることは、他の職員にとっても好感をもたれている。
5.今後の展望
当法人での障害者雇用は、平等の精神の元で自然に受け入れ、障害のある職員たちは今では大切な存在となっている。現在、それぞれの施設に配置し清掃業務を行っているが、清掃の仕事だけを考えた時には、部署に一人ずつの配置となってしまう。また、職務としても身体障害の方の受け入れは難しいことがあるため、今後さらに障害のある人たちの働く場の確保のためには、職域をいかに広げていくかが課題となると思われる。
これからも、働きたいと希望する彼等の力を発揮できる部署や職務を考えて、今後もさらに定着しやすい職場環境づくりや地域づくりに取り組んでいきたい。
センター長・主任就業支援ワーカー 高田 裕子
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