事業所名

玉屋リネンサービス株式会社

所在地

福岡県福岡市

事業内容

リネンサプライ、クリーニング

従業員数

231名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害	2	生産部門
肢体不自由
内部障害
知的障害	4	生産部門
精神障害	1	生産部門

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 取り組みの具体的な内容とその効果
4. 今後の展望

事業所外観

1．事業所の概要

玉屋リネンサービス株式会社（以下「玉屋リネン」という）は、昭和39年8月に日本基準寝具株式会社として福岡市に設立し、リネンサプライ事業を始める。この年は医療界において、シーツや布団・毛布カバー、枕カバーなどの基準寝具が指定された年であった。

玉屋リネンはこの分野の先鞭をつけた。また、ホテルに清潔なシーツやタオルなどのリネンを供給するサービスの需要が高まった時でもあった。

昭和44年に、有限会社玉屋ランドリーから資産並びに営業権を譲り受けてクリーニング部門を新設し、社名を現在の玉屋リネンサービス株式会社へと改称した。同時に現在地に第二工場を建設した。平成6年には新社屋および新工場建設と共に新システムを導入するなど、着実に成長を遂げている。

玉屋リネンの顧客は、売り上げ構成比で、ホテル6割、病院・施設2割、ユニホーム2割であり、ホテルは約110社、病院及び高齢者介護施設50ヵ所となっている。近年は医療制度改革の影響から病院市場が縮小し、代わって高齢者施設への拡大を図っている。また、福岡市は都市化が進んだことでホテル建設が進み、リネン需要が増した。近年は不況の影響でホテル稼働率低下を招いているが、玉屋リネンの顧客はビジネスホテルが中心であることから、影響が最小限となっている。しかし価格競争の波は避けられず、社員比率の高かった部署に多くのパートを配置、またパートを4時間制にするなど、効率化を図ることで対処しているのが現実である。

不況の中においても着実に成長を遂げている玉屋リネンは、リネンサプライ業界の草分けとして、品質向上、安定供給に努めている。長年培ってきた信用と実績で高い新規成約率を誇り、平成23年に九州新幹線鹿児島ルートが全線開通することで、人の往来増加に対する期待も高まる。

2．障害者雇用の経緯

玉屋リネンは、昭和61年に障害者雇用を始めた。きっかけは、責任者の身近に障害者がいたことから、「障害者に働く場を与えたい」という生産部長の思いからであった。現在は7名の障害者が働いている。内訳は聴覚障害者2名（勤続13年・女性、勤続12年・女性）、知的障害者4名（勤続13年・男性、勤続13年・男性、勤続1年・男性、勤続1年・女性）、精神障害者1名（勤続6年・男性）の7名である。なお、精神障害者の男性は高次脳機能障害で精神障害者保健福祉手帳を取得したために精神障害と分類されている。

採用経路は、地域障害者職業センターおよび、市障害者就労支援センター等の障害者雇用支援機関、知人の紹介となっている。近年の採用にあたっては、支援機関のジョブコーチを活用している。

障害者雇用はできるだけ行う意識ではあるが、障害者だけでなく、パートタイマー、外国人、高齢者などとのバランスを考えながら行っているのが実情である。玉屋リネンの特徴として、障害の有無にかかわらず、従業員の定着がよく、職場を辞めないことが挙げられる。そのため、従業員の高齢化が進むという新たな問題も出てきている。

最近は若い従業員を少しずつ採用し始めており、まさに老若男女、外国人、障害者など、「多様な人が働く企業文化」が玉屋リネンの特徴といえる。 その一環として障害者雇用があると言えよう。

3．取り組みの具体的な内容とその効果

玉屋リネンで働く障害者は、働く意識が高いようだ。仕事も十分にできると評価されている。知的障害のある4名の従業員は、仕分け、タオルたたみ、ハンガー掛けなどの仕事に従事しているが、働く意識と能力育成の理由を探ってみる。

作業風景

作業風景

玉屋リネンで働く障害者は、働く意識が高いようだ。仕事も十分にできると評価されている。知的障害のある4名の従業員は、仕分け、タオルたたみ、ハンガー掛けなどの仕事に従事しているが、働く意識と能力育成の理由を探ってみる。

(1)障害のある従業員への対処

仕事を教える工夫としては、実習時に支援機関のジョブコーチを活用していることがあげられる。また、玉屋リネンとしての工夫は、①作業内容を固定する、②一度にたくさん教えない、③家庭とのコミュニケーションを綿密にとる等がある。特に③を重視しており、保護者が熱心な場合は本人の職場適応がよいようだ。

また、聴覚障害のある従業員に対しては、連絡はファクスを用いている。工場では聞こえないことによって気づかないことから起こる事故・けがが一番心配であり、気を遣っているとのことである。その他は、コミュニケーション障害としては外国人従業員と同じ対処であるが、筆談が使えるので外国人より対処しやすいとのことであった。

(2)従業員の意識変革

玉屋リネンは昭和61年から障害者雇用を始めたが、それ以前にも従業員の中にたまたま障害者が働いていた。企業として障害者雇用を開始する前は、障害者に対する理解も不十分であったようである。障害者雇用を始めてからは、企業幹部自ら障害者に対して分け隔てなく接するように心がけた。企業としてのレクリエーションや忘年会も特別視せずにみんな一緒に参加し、同じ仲間という文化が醸成されていった。現在は、従業員の中に差別意識はほとんどなく、職場の雰囲気はよいようだ。

また、特別支援学校や、障害者就労移行支援事業所など障害福祉サービス事業所からの実習を随時受け入れるようにしており、従業員も障害者と接する機会が多い。このようにして従業員の意識変革を行ったが、外国人や高齢者、障害者、女性のパートタイマーなど、多様な従業員が働く職場であることが一番大きく影響しているようであり、「多様な人たち」の中に「障害者」もいることから、自然と意識変革されていったように思える。

(3)企業としての意識

玉屋リネンでは、障害の有無によって賃金など待遇の差をつけることはしていない。もちろん、従業員全員が同じ待遇ではない。「障害の有無」ではなく、「その人の働き」によって賃金が違っている。その考えを徹底しているので、障害者である従業員も障害のない従業員も働く意識が上がる。

このように、経営陣の意識が従業員の意識に大きく影響することから、「適材適所」を大切にしている。

4．今後の展望

玉屋リネンとしての障害者雇用に対するジレンマはいくつかある。一つは、障害者である従業員に対しても障害のない従業員と同等にハッパをかけ頑張らせたい、そしてもうワンステップアップさせたいという思いがあるが、障害による負担を考えるとなかなかそれができないというジレンマである。

障害者雇用はもっと進めたい。企業としては限界を感じていることから、ゆくゆくは障害者自立支援法による障害福祉サービス事業所（就労継続支援事業など）の運営も視野に入れている。企業経営のノウハウを障害福祉サービス事業所に活かし、障害者の働く場をもっと増やしたいというのが玉屋リネンの障害者雇用に対する考えである。

最後にひとつ、障害者雇用で玉屋リネンが一番大切にしているのが「従業員の安全」であると強調していたことを伝えたい。