銘柄鶏「ありたどり」で満足を届ける
1．事業所の概要
昭和44年6月、池田洋一商店と久留米食鳥により有田食鳥を創業する。昭和51年7月に有限会社有田食鳥を設立、平成7年7月に「ありた株式会社」に組織変更を行う。平成13年4月に新社屋・工場が完成し、オンライン化された中で食肉処理・惣菜加工を一体的に行う。平成18年2月には、2005食肉産業展「地鶏・銘柄鶏食味コンテスト」にて自社ブランド「ありたどり」が優秀賞を受賞し、県内はもとより全国に販路を拡大している。
障害者の雇用は、昭和44年6月の創業と同時に、久留米食鳥から聴覚障害者を紹介されて雇用したことに始まる。その後、地元の特別支援学校やハローワーク等からの雇用要請を受けて、継続的に雇用を続け、平成23年1月現在、6名の障害者を雇用し現在に至っている。
2．障害者雇用の経緯
従業員数は110名でその内、障害者の雇用数は6名（うち重度障害者4名）で雇用率は9.1％となっている。障害者の雇用は、昭和44年有田食鳥を開業した時に、聴覚障害者を1名雇用したことが始まりで、その後、特別支援学校やハローワーク、障害者施設からの紹介等もあり、順次雇用を拡大してきた。聴覚障害者が4名と多いが、これは、聴覚障害者の場合、独自のネットワークにより、聴覚障害者が雇用されていることを知り、雇用紹介や要請を受けて雇用が増加してきた。上肢に障害がある従業員は、本人をよく知っていたこともあり雇用した。知的障害者の雇用は、障害者施設から雇用要請があり職場実習の結果、実習状況・態度が良好であったため雇用したものである。
3．取り組み内容
（1）募集・採用
新卒者の場合は、ハローワークを通して雇用している。障害のない者と特に区別はしておらず、障害者として別枠で雇用することはない。ただ、知的障害者の場合、施設としての就労支援のシステムがあり、職場実習で本人の作業状況や対人関係、仕事への理解等を職場実習で把握し、協議のうえ雇用するかどうかを判断することになっている。
（2）障害者の業務・職場配置
勤務時間は、配送の関係で午前7時から午後4時までとなっている。障害者の業務・職場配置は、障害者一人ひとりの能力・状況によって作業配置を行っている。上肢に障害がある者は、包丁を持って作業することが難しいため、出荷工程の計量・包装作業部門に配置している。聴覚障害者と知的障害者については、午前中は主に荷受工程での計量やラインに「ありたどり」を懸ける作業や、脱毛工程で屠鳥・放血作業等を行っており、午後は、解体作業が主な業務となっている。
「ありたどり」の処理工程は、7工程で21の作業部門があるため、個々の状況に応じた作業配置が可能となる。ただ、聴覚障害者の場合、言葉でのコミュニケーションが困難であるため、最初は仕事を教えるのに、障害者・会社側ともに苦労があったが、今は筆記や身振り手振り等で対応できるようになった。聴覚障害者が隣同士で作業をすると手話でコミュニケーションを行うため、作業の手が止まってしまうということもあるが、他の従業員との共同作業も特に問題はなく仕事に取り組んでいる。
4．取り組みの効果
知的障害者の場合は、とにかく仕事に対して一生懸命で、真面目に働いており、そのことが他の従業者によい影響を与えている。上肢障害者の場合、作業工程を配慮すれば何ら他の従業員と変わらず作業効率も同じである。聴覚障害者の場合、明るい性格の人が多く、周りを明るくしてくれ、ムードメーカーになっている。全体を通して障害者は責任感が強いという印象がある。
作業を行う上でのルールや指示が必要な場合、少しずつ説明すれば理解してくれる場合が多い。これはダメと早急に結論づけるのではなく、条件を説明したり、こうすればよいと具体的に説明すれば、納得してくれる。言葉での理解が十分できなくての小さなトラブルは時として起こることもあるが、コミュニケーションを取ろうとする姿勢があれば問題は解決できている。また、勤務経験が40年以上の障害者も多く、一般の従業員は後から採用されていて、仕事上の先輩関係にもなるため、仕事を覚えていくとともに障害者への対応も理解が進むという職場環境が既にできている。
5．今後の課題と展望
障害者の雇用が比較的長期間になっていることが、ありた株式会社の特徴ともなっているが、これは障害者が定着するために、障害特性に配慮した職場環境を作っていることがその要因と考えられる。多くの作業工程の中から、障害状況を考慮した作業部署に配置したり、聴覚障害者の場合は、作業上の理解を促すためのコミュニケーションをとる上の配慮がなされており、工場内の主要な作業工程でイキイキと働く障害者の姿があった。
現在、会社の業績は横ばい状況である。このため、販路拡大や広告のために、大型店に出店したり、大手デパートの催事販売に積極的に参加している。今後の業績にもよるが、障害者の雇用については、障害者と他の従業員との区別はしておらず、定期雇用の中で検討していく方針とのことであった。
ありた株式会社は、知的障害者、肢体不自由者、聴覚障害者と比較的障害種別の多い職場となっている。このような職場が有田町という地域の中で活躍していることは、地域で暮らす障害者にとっても心強く、元気になれるし、働くという目標が身近に存在することは大きな励みになっていると思われた。
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