家庭の安心・安全をサポートする
1．事業所の概要
昭和37年7月、佐賀県経済連と福岡県購販連の合同出資で鳥栖市に農協プロパン株式会社を設立し、LPガスの充填・配送等の事業を始める。その後、平成7年に会社を神埼市に移転。平成10年からは、LPガスの充填・配送、LPガス使用状況の24時間集中管理システムを導入する。平成12年から住宅設備・リフォーム部門を新たに開設し業務拡大を行う。平成18年2月社名を「株式会社JAライフサポート佐賀」に変更し、平成19年10月には、JAグループ佐賀の合併に伴い佐賀県農業協同組合の子会社として現在に至っている。
2．障害者雇用の経緯
従業員数は129名で、その内、障害者の雇用数は5名（うち重度障害者3名）で雇用率は6.20％となっている。障害者の雇用は、平成5年、配送業務を行っていた従業員が左上肢に障害を受け、それまでの配送業務が困難になったことから、受付へと業務の配置換えを行い、そのまま雇用を継続したことに始まる。
その後、24時間集中管理システム導入に伴い、夜間対応の従業員を雇用することになり、雇用率を達成する必要性や、職場の中で電話受付・対応等の業務であれば障害者の雇用が可能という判断もあり3名を新たに雇用した。また、平成11年に配送業務を担当する従業員が、肝機能障害で平成22年度から、身体障害者として認定されたため、5名の障害者を雇用している現在の状況となっている。
3．取り組み内容
（1）募集・採用
障害者の雇用は、公共職業安定所（ハローワーク）や独立行政法人雇用・能力開発機構佐賀センター（当時）等に、障害者を雇用することを通知して募集を行い、面接の後に採用を決定した者が2名、トライアル雇用後に採用した者が1名となっている。中途障害者の2名については、通常の一般社員の募集の中で雇用している。
なお、常時24時間体制で電話対応などの受付業務を行うことで、利用者保安サービスを強化するという会社の方針が障害者の雇用を拡大させたと言えよう。
（2）障害者の業務・職場配置
障害者の状況は、肢体不自由4名、内部障害1名の計5名で、肢体不自由の障害者は緊急時の電話受付業務を行っている。勤務時間は仮眠も含めて17：00～8：30までの勤務で、ガス漏れ警報器の監視や、顧客からの問い合わせ、連絡等の対応業務を2班（2名1組）の交代制で行っている。内部障害者は、以前は配送業務を行っていたが、ガス配管業務や営業・住宅設備の業務に配置換えを行い、雇用を継続している。
4．取り組みの効果
上肢・下肢等の肢体不自由者の場合、電話対応業務を行っていくうえでは障害による業務の支障はなく、雇用の効果は一般の就労と変わりなく問題もない状況である。ただ、職場環境は配慮する必要があったため、佐賀県高齢・障害者雇用支援協会の助成を受け、トイレの洋式化、ドアノブの改修、手すりの設置等の改善を行っている。
JAライフサポートの主要業務であるLPガスの充填・配送や住宅設備工事とともに、夜間の電話対応業務は、家庭の安全・安心を守る重要な業務である。午後5時から翌日午前8時30分まで、交代で仮眠をとりながらの緊急電話対応は、苦労も伴うであろうが、やりがいのある仕事として真剣に取り組む姿勢は他の従業員の模範ともなっている。
また、顧客との電話対応には支障はなく、職場の上司や同僚とのコミュニケーションも良好である。
中途障害の2名は、当初いずれも配送の業務を行っていた。配送業務はガスボンベの充填や配送等体力が必要であるため業務の継続は困難との判断から、上肢障害の1名は、電話対応業務に変更し、内部障害の1名は設備工事や営業に業務変更を行った結果、いずれも新しい職務に順応し、特に障害があることでの支障もなく元気に就労している。
中途障害の場合、就労の継続が困難となり離職することが多い中で、JAライフサポートの場合、就労継続が可能な業務を考慮して、障害があっても働くことができる労働環境が工夫されていることが特徴ともなっていた。
5．今後の課題と展望
障害者の雇用期間は4年から22年と長期間勤務している人がほとんどで、安定した職場となっている。これは、障害者が定着していくために必要な障害特性に配慮した雇用努力がなされているためである。障害があっても電話対応業務であれば雇用が可能であり、業務の配置換えにより継続雇用を可能にする等の対応が的確になされていた。また、手すりの取り付けやドアノブの改良、トイレの洋式化等の職場環境の改善や職場定着推進チームの設置、職業生活相談員を選任するなど、雇用管理改善の取り組みが積極的に推進されていることがその背景にあると考えられる。
現在、障害者を雇用していることでの大きな課題はないが、事務職以外では戸外での仕事が主な業務内容であることから、現状では新たに障害者を雇用することは難しい状況にある。しかし、農業が主要産業でもある佐賀県において、農協の強力なネットワークを活用して、新たなニーズを開拓しながら事業展開が図られるならば、今後、新規障害者の雇用も可能ではないかと考えられる。
近年、温暖化対策が進む中で、太陽熱関係事業が進展しており、今後のLPガスの需要の拡大は難しい面も抱えており、新規事業等の開発の中で、障害者雇用の可能性を見出すことが期待される。
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