事業所名

ゆうび株式会社

所在地

大分県大分市

事業内容

資源リサイクル事業・産業廃棄物処理業

従業員数

133名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	2	選別作業・事務補助
内部障害
知的障害	3	リサイクル商品の選別作業
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用のきっかけとなった理念
3. 雇用に伴う諸課題と取り組みの内容
4. 今後の展望

事業所外観

1．事業所の概要

(1)事業の内容・工程:( )内は工程の部署名称もしくは機械等の名称

(資源ごみ搬入)→ビン・缶・ペットボトル→(資源ごみ供給ホッパー)→(ビニール破袋機)→(資源ごみ供給コンベアー)→「一次選別ライン」でコンベアーに乗って流れてくる素材を①粗大ごみ・品質に対応した産業廃棄物処理、ビニール袋焼却処理をする素材群　②ペットボトル群　③ビン・カン群に立位・手動で選別する。

その後ペットボトル群は　(ペットボトル粉砕機)→再資源化して中国へリサイクル原料として輸出。カン群は　(a.スチール磁選機・アルミ選別機)→(b.スチールプレス機・アルミプレス機)→再資源化して鉄鋼メーカー・アルミ精錬メーカーにてリサイクル。ビン群は　(「二次選別ライン」で白と茶等の色部に選別の後、残渣埋め立て処理を通して色別ガラスストックヤード)→再資源化してビンメーカーにてリサイクル。

大部分が機械による処理工程の中で、「第一次選別ライン」、「第二次選別ライン」のみが、人が関わる工程である。

(2)障害者雇用の状況

従業員数　133名　(内) 身体障害者2名　知的障害者3名

(3)障害者の仕事の詳細

＊身体障害者Aさん: ビンの仕分け (本社:二次選別ライン)H14入社

＊身体障害者Bさん:事務職 (本社:事務所) H14入社（重度障害者認定）

＊知的障害者Cさん: ビン・缶・ペットボトルの仕分け(本社:一次選別ライン) H11入社

＊知的障害者Dさん: 新聞紙・雑誌・百貨店の包装紙・パンフレット等の仕分けと梱包

(百貨店本店内)H10入社

＊知的障害者Eさん: パッキングケース(空箱)の仕分け(百貨店本店内)H16入社

・今回の主たる話題は知的障害者Cさん、Dさんについてである。

第一次選別ライン

特化スペースの作業

2．障害者雇用のきっかけとなった理念

特別支援学校の方が就職の件で方々に電話依頼する中で、当社に連絡があり、後日進路指導担当の先生が訪れ、「働ける力を持った生徒たちがいっぱいいる。実習先や就労先を探しているので、是非実習をさせてほしい。」との依頼があった。平素から障害者に関心を持っていた初代社長（会長）は、二つ返事で承諾。以後学校との交流が続いている。

平成10年入社のDさんが最初の実習生である。第1回目は夏の暑い盛りに20日間、大分市内の百貨店本店で紙類の仕分けを体験した。その後、年末に同じ場所で2回目の実習を体験。本人の作業態度、仕事の精度も高かったので、年明けには採用を決定した。社長の意向で給料その他採用条件は、他の障害を持たない従業員と同一レベルで実行している。

翌年にはCさんが実習に来た。Dさんと同様の経緯で採用された。Cさんも当初は実習先であった百貨店本店の紙類の仕分けの部署で働いていたが、本社の工場拡張に伴う新設リサイクル工場の現場に異動した。現在『第一次選別ライン』の横の本人専用特化スペースで12年目を迎え、同僚と肩を並べて働いている。

現在、身体障害者2名、知的障害者3名の雇用となっているが、それぞれが懸命に働いている姿に社長はよく声掛けをされている。それが励みになっているのかもしれません、と工場長から話があった。

3．雇用に伴う諸課題と取り組みの内容

（1）第一次選別ラインの『特化スペース』の専任に

百貨店本店からの異動で新工場に来たCさんは、当初第一次選別ラインのスタッフとして6～7人の仲間とビン・缶・ペットボトルの仕分けを受け持った。しかし、コンベアーの速さについていけず、「目が回る」「追いつかない」等の苦情が出た。そこで、ペットボトルのみというように、1つの物のみを選別することに専念させ、慣れてきたら2つの物を選別するという具合に少しずつ種類を増やしていく指導に切り替え、うまく選別できるになってきた。

しかし、なんとなく以前に比べて下を向いて作業することが多く、Cさんの明るさが消えたように感じていた工場長は、ラインの一部を取り出しCさんに特化することとした。

ジュースやコーヒーの液体が缶やペットボトル等に残ったまま蓋がされているものをそのまま処理すると、機械が汚れたり、故障したりする原因となり、悪臭のもとでもあったため、第一次選別ラインの課題となっていた。そこで、リングプルがついたままの未開のカンや蓋がついた中身の残っているペットボトルやビンはラインの途中で取り出し、集められたものをCさんのもとに持っていき、Cさんがヘラ状の器具を使ってリングプルを開けてコーヒー等の液をぬいたり、ペットボトルやビンの蓋をねじって中の液体を捨てる。そのようにして空になった容器をペットボトル・蓋・アルミ缶・鉄缶・ビン・ゴミに選別仕分けする作業に特化した。勿論周囲が常に様々な液体で汚れるので、その周辺の清掃も彼の仕事の一つである。この特化スペースの仕事に専任したことで、以前の明るいお話し好きなCさんに戻った。

座位のほうがやりやすい仕事と、立位のほうが効率の上がる仕事を、自分なりに工夫して仕事に励んでいる。「今は仕事が楽しくてたまらない。給料でCDや本を買ったり、休みに学校時代の友達とデートをするのが嬉しい」とのことであった。

（2）交通機関を乗り継いで単独通勤ができる生徒であれば仕事ができる・・・採用基準

Cさん・Dさんを採用した結果、知的障害者の採用基準が漠然とできたようだ。「どのような条件をクリアすれば採用可能ですか」と問いかけた。まず単独通勤を挙げられた。「仕事はひとり一人の能力で探せば必ずある。日常の生活行動もほぼ一人でできる。少し難しいことでも励ましの援助があれば頑張る。自分のできることに取り組んでいるときは気持ちが安定している」等、経験値をお話しいただいた。

（3）定着・継続の秘訣は

・ 学校や障害者職業センター等との密な連携

学校の推薦で実習・採用の形をとれば、何かトラブルがあった時にすぐ対応が可能であるし、就職後のフォロー・職場訪問等が徹底しているので助かる。一人で通勤ができるように教育して卒業させてくれる。

・ 新規採用当時の不安定な時期の気分転換

仕事の上で負担をかけない配慮、特にノルマ等への負担感の軽減、慣れるまでの辛抱、一度にいくつもの課題を出さない等。単純な仕事に倦怠感を持たせない工夫、いつもと違う仕事、たとえば本社に行くパッカー車の助手として乗せる等。

・ 仕事上の迷いを払拭

これもいい、あれもいいではダメ。駄目なことのみを具体的に厳しく繰り返し指導する。特に安全指導ではこのことを徹底する。

・ 生活指導の必要性を周囲が自覚する

体調が悪くて欠勤をするときに本人が連絡してくることを徹底・・・できたときは真剣にほめる。

・ オーナー（会長）が常に声をかけて励ましたり、感謝の気持ちを表す

社内を回りながら丁寧に励ましの言葉をかける。Cさんがパラリンピックへの出場が決定したとき工場長に、「あなたも是非一緒に行ってパラリンピックを見てきてください。」と会長から指示があった等。

4．今後の展望

障害者のためにということでもないが、日本の将来を考えたときにこれからは「食」が一つのテーマである。杵築市に5,000坪の農地を購入している。現在は前の持ち主が残した柑橘類のカボスやキウイフルーツ等が植えられているが、将来は障害者を多数雇用して、彼らをバスに乗せて現地に行き、野菜や果実を育てて、生産物を市場に卸す『ゆうび・スカイファーム』の構想を温めている。