『地域に不可欠な存在』をめざして
~障害者と共にいきいきとした人間集団をめざす~
- 事業所名
- ホーマック株式会社
- 所在地
- 北海道札幌市
- 事業内容
- ホームセンター
- 従業員数
- 5,730名(算定基礎数)
- うち障害者数
- 102名(内、重度は聴覚障害1名、肢体不自由3名、
内部障害10名知的障害2名の計16名) 障害 人数 従事業務 視覚障害 2 店舗における商品検収・補充 聴覚障害 4 店舗におけるレジ、本部での事務 肢体不自由 24 店舗における商品検収、事務、レジ、売場での接客 内部障害 10 店舗の売場での接客、本部の事務、商品管理 知的障害 56 店舗における商品検収・補充 精神障害 6 店舗における商品検収・補充 - 目次


- ホームページアドレス
- http://www.homac.co.jp/
1. 事業所の概要
(1)沿革
昭和26年12月、釧路市に株式会社石黒商店を設立。昭和62年4月、商号を石黒ホーマ株式会社に変更。1976年4月にホームセンター(石黒ホーマ1号店)を釧路市に出店。1995年8月株式会社メイク(1953年に盛岡市に設立)およびイシグロジャスコ株式会社(1992年4月にジャスコ株式会社との共同出資により設立)と合併し、商号をホーマック株式会社(ホーマックという社名は、Home Amenity Centerを語源としている)に変更するとともに、本店所在地を札幌市に移転。現在は北海道から関東にいたる東日本広域で地域住民の身近にあって住まいや暮らしを支え、役立つ商品を中心に、《快適性・向上性》の要素を加えたホームアメニティセンターとして店舗を展開しているだけでなく、経営方針の実践として、社会、環境への具体的な貢献活動も進めている。
(2)経営方針
「よかったねお母さん、ホーマックに来て。500円安く買えたよ」。お母さんにうれしそうに話しかける男の子の声。これがホーマックの創業と挑戦の礎になった。
当社の経営理念は「お客さまの喜びが私たちの喜びです」であり、経営方針は「暮らしいきいき:地域や環境と共生する、いきいきとしたアメニティライフを提案します。創造と革新を追及し、全員参加によるいきいきとしたチェーンストアシステムを構築します。信頼と尊重を基本とし、いきいきとした人間集団を築きあげます。」としている。喜んでくださるお客さまがいるかぎり、ホーマックには存在意義と価値があると考えている。「企業として成長し、もっと多くのお客さまに喜んでいただこう」という決意が原点であり、全員の原動力となっている。従って、お客さまに喜んでいただき、お客さまのお役に立って「暮らしの真ん中にホーマック」となるよう実践している。
(3)組織構成
当社は大きく分けて営業本部、人事部、総務部、財務部、開発統括部がある。営業本部には販売統括部、リフォーム統括部、商品統括部、情報システム部の4部が含まれる。販売統括部はさらに被災店舗復旧プロジェクト、店舗サービス部、業務システム部と店舗の所属する北海道ゾーン、東北ゾーン、関東ゾーンに分かれている。障害者の多くは店舗に勤務している。店舗は北海道ゾーンが16エリア、75店舗、東北ゾーンが17エリア、80店舗、関東ゾーンが6エリア、14店舗の計169店舗を展開しており、この中には対象商圏が7万人以上の「専門分野強化型」店舗(“スーパーデポ”と呼ばれる大型店舗)が含まれている。
(4)障害者雇用の理念
企業の社会的責任の観点から障害者雇用に取り組んでいる。
具体的には、①法令遵守 ②障害者と共に生きる ③地域に貢献する企業であるという3本柱をもとに具体的実践を行っている。
経営方針にある「信頼と尊重を基本として、いきいきとした人間集団を築きあげます」の理念を採用段階、採用後の能力開発(人材育成)、日常の業務遂行の場で実践することを目指しており、そこには障害のある社員、障害のない社員の区別はない。障害のある社員も障害のない社員も皆それぞれにできること、できないことがあると考え、障害の有無に関係なくできることをしてもらうという考えで雇用し、雇用してからは仕事を通して能力を伸ばす、仕事の質を高めるという方針で働いていただいている。また、コンプライアンスの観点から店舗のエリア毎に障害者の雇用人数を把握し、雇用の少ない地区に重点をおいて、エリアを担当する責任者の協力を得ながら採用を行っている。障害者雇用の取組が評価され、「平成23年度北海道障害者雇用優良事業所」の表彰を受けた。
2. 障害者雇用の経緯・背景
当社の障害者雇用の歴史は30数年前に遡るが、当初は障害者枠で採用したものではなく、一般枠での採用であった。こうして採用された障害者は商品部のバイヤー、店長や管理職を勤めるなど幅広く活躍している。
平成7年、商号をホーマック株式会社としてスタートしたのを機に「お客さま第一主義」を基本に、「地域に浸透してホーマックにできる貢献とは何か」、「地域に不可欠な存在」をめざしていくために何をすべきかを会社全体で考え、活動していく中で障害者の更なる積極的な雇用の風土が醸成されてきた。平成7年度には行政のアドバイスもあり重度の知的障害者を1名採用し、現在も店舗において商品補充の業務を中心に働いている。平成7年度末にはすでに11名の障害者を雇用している。その後も障害者を積極的に雇用し、平成14年度末には43名の障害者を雇用している。更に、平成15年12月には、人事部を中心に障害者職場定着推進チームを設置し、障害者の職場環境の整備と定着を図った。
その後、平成18年度末は64名、平成19年度末は77名、平成20年度末は92名、平成23年度現在は102名になり、本部に14名、78店舗に88名が雇用されている。店舗は全部で169店舗であり、5割弱の店舗で障害者を雇用している。
3. 取り組みの内容
(1)障害者の雇用ソース
以下のようなさまざまなソースを利用している。
イ | 高等特別支援学校の卒業生 |
特別支援学校の生徒については、2年生の時に2週間程度の現場実習で受け入れ、3年生の時には卒業後の進路を見据えた前提実習という形で1ヵ月強の実習で受け入れてその時に能力・適性等を判断し採用をしている。
特に3年生の時は就職を前提とした実習であるので、卒業後に居住可能な地区にある店舗で実習受け入れを行っている。過去3年間では、全員が3年生の時の現場実習先へ就職している。
特別支援学校に共通していることであるが、実習期間中は教員も実習に同行しさまざまな指導や面倒を見てくれており、採用後も必要に応じ職場に顔を出し、卒業後3年間は巡回訪問なども行っている。知的障害者を雇用する場合の大きなソースとなっている。
ロ | ハローワーク就職合同面接会 |
大都市では年2回、小都市では年1回開催されているハローワーク就職合同面接会に参加している。
ハ | その他 |
その他、就業支援センター、ハローワークから直接紹介のある場合や、一般枠で採用する場合もある(一般枠で採用後、障害者であることが判明する場合もある)。
(2)障害者雇用に関する管理者層への徹底
イ | 店舗の管理者(主任以上)に昇格した場合には、その新任研修時に必ず当社の障害者雇用の取り組みについて説明し理解・周知を徹底している。 |
ロ | 特別支援学校の障害者の実習の時には、人事部から店長に当人に関して障害の種類、程度、そして従事できると思われる業務内容等について情報を与える。 |
ハ | 特別支援学校の生徒の実習の時には先生が同行してくるので、各生徒に関する具体的な注意事項については先生と話しあうことにより徹底を期している。 |
ニ | 取材した店舗では店の三役(店長、販売主任、運営主任)が実習の指導に当たっていた。実習した生徒の採用の可否は、当該店長が判断している。 |
(3)障害者の従事している業務内容
障害者の配置は大きく分けて店舗と本部に分かれ、102名の障害者の内、88名が店舗、14名が本部で勤務している。
店舗業務には以下にあげる業務がある。
- 検収:倉庫で荷受を行う。この仕事では、店が補充で発注した品物とお客様が注文した品物の検収を行っている。
- 補充:倉庫にある商品を店舗に搬入し、陳列棚に置く。
- レジ:キャッシャー業務
- 事務:店員の勤怠管理、現金管理、店の経理業務。
- 伝票:商品の伝票管理。
- 売場:店舗は広くかつ取り扱い品目が多種類に渡り、全品目の売場を一人が担当するのは困難なため、商品群毎の売場に分け、売場毎に配置している。売場に配置された社員は各売場で接客、担当商品に関する発注、陳列棚の商品の入れ替え等を担当している。障害者の配置されている売場は以下の通り。
売場(HE): | 住まいを充実させる電化製品を主とする商品を置いている。 |
売場(HI): | 住まいを手軽に改善、補修することのできる商品を置いている。 |
売場(HK): | 日常生活を快適に保つための商品を置いている。日用消耗品、文具、ダイニング・キッチン、バス・トレタリー、ホームベーカリー、食品・酒を置いている。 |
売場(HL): | 趣味を充実、余暇を快適にする商品群。カー用品、スポーツ・玩具、自転車、レジャー、ペット用品を置いている。 |
売場(PG): | ペット用品、園芸用品を置いている。 |
売場(植物): | グリーン、ガーデニング用品を置いている。 |
障害種別の従事業務内容
イ | 知的障害 56名(内、2名が重度) 当社における障害者の中では知的障害者が一番多いが、54名が店舗における業務に従事しており、2名が本部の業務に従事している。 ①店舗勤務 54名 a.補充業務 36名(内、2名が重度) b.検収業務 13名(内1名はレジも兼務) c.売場(HK) 2名 d.売場(植物) 2名 e.売場(PG) 1名 ②本部勤務 2名(1名は植物を育てる製造部門、1名は事務に従事) |
ロ | 肢体不自由 24名(内、3名が重度) 19名が店舗で、5名が本部で業務に従事している。 ①店舗勤務 19名 a.補充 5名(内、1名が重度) b.売場(HI) 4名(内、1名は園芸部門も兼務) c.レジ 3名 d.事務 3名(1名は伝票・事務を担当。1名はレジも担当) e.検収 2名(内、1名が重度) f.売場(HE) 1名(レジも担当) g.売場(植物) 1名 ②本部勤務 5名(財務に2名、便利サービス部、宅配センター、グルー会社を統括するSSC札幌センターで各1名ずつ従事) |
ハ | 内部障害 10名(全員が重度) 心臓機能障害が6名、腎臓機能障害が4名おり、前者の内2名は店舗勤務、4名は本部勤務である。また、後者の内3名は店舗勤務、1名が本部勤務となっている。 ①店舗勤務 5名 a.売場(HL) 2名 b.売場(HI) 1名 c.検収 1名 d.補充 1名 ②本部勤務 5名 業務システム、環境、トレーニング、グループ会社の総合管理事務の部門に従事しており、内2名が管理職、2名が主任となっている。 |
ニ | 精神障害 6名 ①店舗勤務 5名 検収業務に3名、売場(HK)1名、補充に1名従事している。 ②本部勤務 1名 事務業務に従事している。 |
ホ | 聴覚障害 4名(内、重度1名) ①店舗勤務 3名(内、重度1名) 2名が売場(PG)、1名がレジ業務に従事している。 ②本部勤務 1名 マネジャーとして販売計画推進業務に従事している。 |
ヘ | 視覚障害 2名 2名とも店舗勤務であり、1名は検収業務、1名は補充業務に従事している。 |
(4)就業時間・休日等
イ 正社員: | 就業時間08:50~17:35で実働7時間45分。 週休2日(変形労働) |
ロ 正社員以外: | シフト勤務で1日の実働4時間と6時間以上があり、個人によって異なる。週休2日(月度調整) |


(5)障害者の雇用、就労で留意していること
イ 知的障害者 |
- 知的障害者の場合は、採用前の実習でどのようなことができるかをしっかり観察し、採用後は各個人ができることをしてもらっている。また、実際に採用の時点では、配属される店長にはどのようなことができる障害者なのかをしっかり伝え、採用後の指導に当たってもらっている。実習時点の店長と採用時点での店長や担当者が異動等により異なる場合も多いため、この確認は重要である。また、実習は雇用を考慮した場合の、通勤可能な店舗で実習をしてもらっている。このような配慮により、直近3年間の特別支援学校生徒の採用にあたっては、全員が3年生の時に実習した店舗で採用されている。
- 実習生が実習をしている時には、お客さまに判るように、腕章や胸章をつけて実習生であることを明示している。
- 仕事の遂行に当たって特に留意していることは、指示の具体化、明確化である。指示の仕方が曖昧であると、迷いが生じミスが出たり、指示した側の意図の一部だけしか伝わらなかったりするため、具体的に特定して(細かく)明確に指示するように留意している。また、指示を聞く時には必ずメモを取るように指導している。このことにより、指示の受け取りのミスが大幅に削減された。
ロ 知的障害者以外 |
身体的、精神的にも無理をさせない、負担をかけないように留意している。聴覚障害者の場合はお客さまに前もって障害のことを伝えた上で接客をしたり、また他の従業員も気をつけてフォローしているので、特に問題もなく働けている。
精神障害者の場合も、業務については負担のかからない様にできることを徐々に増やして行くように配慮している。例えば、検収、補充業務はその手順を援助者が手本をみせながら繰り返し行う。接客対応の仕方は、毎日朝礼後に援助者が対象者と一緒に予習、復習で教えている。また、精神障害者の場合は、仕事に没頭しすぎる傾向があるため、援助者が時間管理を行い一定時間毎に休憩を勧める等、体調不良や精神の不安定を招かぬよう配慮している。無理はしないことを本人に伝えている。
内部障害者(心臓、腎臓)については、体に負担のかかる業務を避けるとともに通院等に配慮した勤務としている。
(6)活用した助成金、受けている調整金等
イ | 特定求職者雇用開発助成金 平成7年から。 |
ロ | 重度障害者職場適応助成金 平成7年~平成12年。現在は廃止されている。 |
ハ | 試行(トライアル)雇用奨励金 平成19年から。 |
ニ | 障害者雇用調整金 平成19年から。 |
4. 取り組みの効果
前述したように当社の障害者雇用は30数年の歴史があるため、社員には障害の有無の区別意識はなく、全員がそれぞれできる仕事をする、能力に応じた仕事をする、指示をされる方の理解力・能力に応じた指示をするという意識で働いている。この意識は障害者のお客さまへの応対の時にも生きている。また、知的障害のある社員への指示の時には、具体的、特定して(細かく)、明確に指示することに留意しているが、このことが、障害の有無に関係なくコミュニケーションのあり方、指示の仕方を考えるきっかけとなり、通常のコミュニケーションの改善にもつながった。
取材した障害者自身からも、楽しく仕事をしている様子であり、「職場が楽しい」、「楽しく仕事をしている」、「最初は仕事が難しかったけど、やっている内に慣れてきた」、「この店でずうっと働きたい」という積極的・前向きのコメントが聞かれた。
5. 今後の展望と課題、最後に(編集後記)
(1)今後の展望と課題
前述の当社の障害者雇用の理念に則り今後も障害者の雇用に努めて行きたい。施設についても平成21年6月の本社屋移転の際にはバリアフリー仕様としている。更に、お客さまに喜んでいただくという理念に基づき、今年2月には、介護を受ける方とそのご家族が、少しでも快適に生活されるための総合窓口として「福祉サポートショップ」をスーパーデポ西岡店2階にオープンし、専門知識を持つ有資格者を相談員として配置し、さらに「指定居宅介護支援事業所」を併設し、ケアマネジャーが介護支援にあたっている。今後も有資格者の確保も併せ店舗を増設することも検討している。
(2)最後に(編集後記)
当社は上記に紹介した障害者雇用、介護への取組に積極的だけでなく、経営方針にある「暮らしいきいき」の実践として樹林化活動にも取り組んでいる。昨今は立派な経営理念を掲げながらこれに反する行動をとる企業が多い中で、経営理念を大事にし、経営方針に沿って確実に企業活動を実践して行く、「意思」のある企業である。
障害者の自立のためには、仕事をし自分でお金を稼ぐことが必要となる。障害者の自立に貢献しているということからも『地域に不可欠な存在』となりつつある企業との印象をもった。
CDA(キャリア・ディベロプメント・アドバイザー)
C&Cビーコン 代表 湊 和生
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