2011年度作成

事業所名

ネッツトヨタ栃木株式会社

所在地

栃木県宇都宮市

事業内容

自動車の販売及び整備

従業員数

428名（2011年8月現在）

うち障害者数

8名（2011年8月現在）

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害	2	車両洗車
肢体不自由
内部障害	1	事務職
知的障害	4	車両洗車
精神障害	1	車両洗車

目次

1. 事業所の概要と社会貢献活動
2. 障害者雇用の経緯・従事業務・職場配置
3. 障害者雇用の理念、基本的なスタンス
4. 取り組みの具体例と効果
5. 今後の展望と課題

ホームページアドレス

http://www.netztochigi.co.jp/

1. 事業所の概要と社会貢献活動

1967年10月、前身となる「トヨタオート栃木株式会社」が発足し、翌年2月より営業を開始。1998年8月に「ネッツトヨタ栃木株式会社」に商号変更した。現在、栃木県内全域に計23拠点を展開し、トヨタ車（新車・U−car）のほか、「LEXUS（レクサス）」ならびに「Volkswagen（フォルクスワーゲン）」の販売・点検整備事業を手がけている。

2000年12月、社会貢献活動の一環として、県内ディーラーの中でもいち早く、福祉車両「ウェルキャブ」の無料貸し出しを開始した。当時、福祉車両に関する認知度は今ほど高くなかったが、現場でユーザーの声に耳を傾け、ニーズをつかむべく周知に努めた。

福祉車両の必要性ならびに将来性に手応えを感じたことから、福祉分野への支援強化を目的に、毎年1台のペースで県内の大学病院等にウェルキャブ車を寄贈することとした。今後も病院や福祉施設などを対象にウェルキャブ車の寄贈を継続していくことにしている。

県内の販売拠点においてもウェルキャブ車の紹介を積極的に行い、専任スタッフが全19店舗を巡回する形で、毎月ウェルキャブ車の移動展示会を開催している。人気車種「ヴォクシー」を始め全7車種がラインナップし、年配者や体の不自由な人に対して福祉車両の使い勝手や魅力を伝えている。

2. 障害者雇用の経緯・従事業務・職場配置

（1）人物本位の採用・評価を実施

当社は、経営理念の中に『社会公共の福祉に貢献』するという文言がある。そうした考え方を全社員が共有し、実践する中で、障害のある・なしに関わらず人物本位の採用・評価を心がけてきた。誰しも長所があれば短所もあるわけで、私たちは個々人の長所を引き出し、伸ばしていくことを念頭に置いて採用を行っている。

（2）本格的な障害者雇用の取り組み

以上のような社風の中で、当社は「改正障害者雇用促進法」の施行に合わせた形で、本格的に障害者雇用に取り組むようになる。

2006年、洗車スタッフとして知的障害者1名を採用。宇都宮市障害者生活支援センターや外部ジョブコーチの指導・アドバイスを仰ぎながら、本人の資質・適性を見出していった。

翌2007年の障害者の採用はゼロだった。前年の経験・実績を推し量りつつ、後の障害者雇用の確固たる足かがりとすべく、社内体制・研修体制を整える期間に充てた。

2008年には一挙に5名を採用し、雇用に弾みを付けた。事務部門へ女性1名を配属するなど、人材活用面での可能性を広げる契機ともなった。

障害者雇用は、最初から順風満帆だったわけではなかった。知的障害を持つ人の採用は当社としても初めてで、まずはコミュニケーションの取り方から学ぶなど、手探りの状態から始めた。その過程では、指導した通りに仕事を遂行してもらえず、作業手順をなかなか覚えてくれないといったケースもあり、当人のスキルと会社が求めるものに大きなギャップを感じたこともあった。

そこで立ち止まってしまっては何の進展もないため、当社は、宇都宮市障害者生活支援センターを始めとする各支援機関に足しげく通い、ジョブコーチなど専門家のアドバイスにじっくり耳を傾けた。多くの時間を費やすことになったが、あきらめずに1つひとつ問題点をクリアしていった。そうした努力の積み重ねが2009年、2010年、2011年のコンスタントな採用へと結び付いていった。

（3）2012年春、新卒者を初採用

2012年4月の採用については、当社で初めて、障害のある新卒者の採用を予定している。採用面接において当人の適性・やる気を十分見極め、各種業務も問題なく遂行できると判断しており、期待は大きい。

一番大きな決め手になったのが本人のやる気、前向きさを十分に感じられ、率先して会社訪問にも何度も訪れて、会社概要、仕事内容を初め、いろいろな面で本人なりに企業研究をしっかり行い、見事合格を勝ち取った。

当人の仕事に対する意欲は人一倍強く、ゆくゆくは新車に関わる書類作成業務や販売企画への参画など、さまざまな業務フィールドで活躍してくれることを期待している。

3. 障害者雇用の理念、基本的なスタンス

（1）法定雇用率の達成に向けて

これまでに当社が採用してきた障害者数は計 10人である。2012年春には先に紹介した新卒者を含む1人を採用する予定で、退職を除き計9人になる見込みである。

個人の事情で2名は退職に至っているが、常に障害者の法定雇用率を気にかけ、毎月達成できているよう意識している。

まずは障害者雇用について常に意識いている事が大切であると考えている。

（2）障害者の採用方法

当社の障害者の採用方法は主に2つある。1つはハローワーク宇都宮が主催する「障害者合同企業面接会」である。年2回行われる面接会は欠かさず出席し、採用につなげる努力を惜しまないでいること。

もう1つは、特別支援学校のインターンシップへの協力である。雇用体験により当人のやる気や適性を見極め、その結果、正式採用に結び付いたケースも少なくない。

ちなみに、面接会など採用の可否を判断する重要な場面においては、人事担当責任者（取締役）と人事担当者が出向き、当人とじっくり向き合い、適性・やる気を判断している。互いに意思疎通するまで話し合うことが大切で、面接においては「社風に合っているか」など、当人の個性に関する見極めも重要となっている。

（3）専門家のサポートでスキルアップ

正式配属までの職場実習（スキルアップ研修）などは、外部ジョブコーチと二人三脚で進めている。万が一、実習・研修機関を経てもスキルの習得に心配や不安が残る場合については、ジョブコーチのサポートの元で一定期間、実務に従事しながら覚えるまで指導を仰ぐことを行なっている。

仕事に慣れるまでの職場実習等は、一般の社員の努力も必要であるが、ジョブコーチの方のサポートが欠かせません。栃木障害者職業センターを始め、関係機関のていねいな対応、手厚い支援は、一企業として心強く感じている。

他にも企業として大変、心強いサポートの1つが特定求職者雇用開発助成金（特定就職困難者雇用開発助成金）である。この制度は6ヵ月に1回の申請で全3回まで適用になり、金額についてはその雇用者により異なるが、助成金として援助していただいている制度である。

このような助成金も活用させていただき、しっかり企業をサポートしてもらえるので、当社としては、非常に心強い。

4. 取り組みの具体例と効果

（1）社員のアイデアから生まれた「ありがとうカード」

当社は、これまでの障害者雇用の経験を踏まえ、当人たちの働きやすさを念頭にさまざまな工夫を凝らし、ベストな職場環境づくりに取り組んできた。

事例の1つが聴覚に障害のある洗車スタッフのための「ありがとうカード」である。例えば、店舗の屋外スペースに置かれた展示車の洗車は毎日欠かせない業務である。常に展示車の間を行き来している洗車スタッフは、見学するお客様との距離感も近く、作業中にお客様から声をかけられることもしばしばである。

そうしたとき、お客様とのコミュニケーションが難しい場合は「ありがとうカード」を差し出し、他の社員にバトンタッチするようにした。パウチされたカードは胸のポケットに入るコンパクトサイズで、文字もイラストも女性社員による手書き。ぬくもりいっぱいのお手製カードには、お客様への配慮はもちろん、洗車スタッフへの思いやりが充ち満ちている。社員のアイデアから生まれた、取り組み事例である。

あくまでも裏方の仕事ではなく、可能な限りお客様、スタッフとの関わりをもってもらい、自分が携わった仕事が店舗の売り上げに繋がり、お客様に大満足を得ていただける仕事をしているという実感が湧く事で、障害者にとって仕事の原動力の源になると考えている。

（2）悩みに寄り添う「一言業務日誌」

もう1つの事例は、精神に障害を持つ洗車スタッフへの対応である。普段はなかなか言えない仕事上の悩みを、1人で抱えることなく少しずつ吐き出せるように、「一言業務日誌」を付けるよう提案を行った。

その日にあった出来事や、自身が抱える悩みを短く書いてもらい、そのコメントに対し、聞き手役であるセンター長がアドバイスを添えるというもの。深刻な悩みが書いてあったときは直接相談に乗るなどして対処し、少しずつ互いの理解を深めてきた。その甲斐あって現在では、模範的な勤務態度で問題なく仕事に従事している。

時には、コミュニケーションを取るのが難しいケースもあり、聴覚障害の社員にはゆっくり慌てず話し、知的障害の社員にはわかりやすく簡潔に話すことを心がけている。互いに理解し合うことが、何よりも大切であることを痛感している。

障害者雇用は企業にとってハードルが高いと思われていますが、企業としての社会的責任を果たすことのほかに、さまざまな障害を持つ人々に働く場を提供するといった意味合いが大きいと考える。地域に深く根を下ろし、地元密着型の業務を展開する当社にとって、大きな責務であることは間違いありません。こうした考え方が障害者雇用に取り組む原動力になっている。

5. 今後の展望と課題

当社は今後も、企業の社会的責任として障害者雇用を積極的に推し進めていく予定である。これまでの取り組みを振り返ると、障害者の法定雇用率に達したかと思えば、予期せぬ社員数の増減で突然下回ってしまうなど、さまざまな状況を経験してきた。そうした中で気づいたことは、やみくもに法定雇用率の達成のみを追いかけることではなかった。

当社の障害者雇用への取り組みは、真の意味からすると始まったばかりである。未だに胸を張れるような実績はないが、法定雇用率の達成だけではなく、働く当人の資質・適性に目を向けることである。応募者の適材適所を考え、当社の社風に合う個性を持っていれば、積極的に採用を行いたいと考えている。人と人との“ご縁”を大切にしつつ、障害を持つ人がやりがいを持って活き活きと仕事ができる場を提供するのが私たちの使命であると考えている。

今後、他企業における障害者雇用のヒントとなるよう、引き続き、障害者雇用の推進を行なっていく事が重要であると考えている。

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