感謝の気持ちを忘れずに、どこの会社に行っても通用する人財になる
- 事業所名
- エイティーンス電子工業株式会社
- 所在地
- 福井県鯖江市
- 事業内容
- 電装部品の製造・組立・雑貨品検品梱包出荷・DM封入・出荷代行
- 従業員数
- 38名
- うち障害者数
- 26名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 5 DM封入作業・雑貨品検品作業 肢体不自由 4 DM封入作業・雑貨品検品作業 内部障害 知的障害 9 DM封入作業・雑貨品検品作業 精神障害 8 電装部品製造・組立作業 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯・背景
(1)事業の概要
当社は、一企業として利益追求優先でありながら、従業員の3分の2が障害者であることが最大の特徴である。(就労継続支援A型事業所)
事業内容はバイクのバッテリー部品の製造、充電器の組立及び雑貨品の検品・梱包・出荷、DM封入・ピッキング・出荷代行並びに水質浄化剤の製造・輸出を展開している。
(企業理念)
○ | 新産業を創造する 新産業の未来を拓き、新しい産業を創造します。 |
○ | 先見の道を選択する 時代の変化をつかみ、世の中に役立つ固有の事業を開拓します。 |
○ | 心の価値を追求する つながりを活かし、縁あるすべての人の心の価値を追求します。 |
(経営ビジョン)
ICR-2018 | 提案力と情報を駆使し、顧客満足と従業員満足にあふれた 2018年、業界で日本一の高品質企業を目指そう! |
Iは新しい自分(I)・Cは挑戦(Challenge)・Rは革新(Renovation)、2018はあと7年で潰れない会社を作るという意思の表明である。縁を大切にし、つながりを活かし、障害者と共に高品質企業を目指す。
(品質方針)
① | 顧客の立場で作る「つくり込みの品質」集団への脱皮 |
② | 「危険予知」機能の充実と「完全品質保証」体制の確立 |
③ | 社会が認知する「品質優良企業」資格取得に挑戦する |
平成23年度中にISO9001資格取得に挑戦します
(2)障害者雇用の経緯・背景
障害者雇用に取組むこととなった経緯には、社長の長男が、生まれながらにして重度の障害を負っていた事が背景にある。最初に障害者を雇用したのは、長男が特別支援学校高等部に進学して間もなくだった。社長を含め総勢4人だった3年前、従業員募集を見てハローワークの職員から障害者を雇用して貰えないかと、うつを抱えて薬を常用している人を紹介され、長男がお世話になっている社会への恩返しになればと、その1人の精神障害者をトライアル雇用した。
その人は、副作用に苦しみながらも「仕事が出来てありがたい」と、感謝の言葉を繰り返し、仕事をする喜びに満ち溢れ作業に打ち込んだ。その姿に、社長の社会への恩返しがしたいという熱い思いは膨れ上がり、その思いに引き寄せられるように、福祉のエキスパートたちが集まってきた。
ハローワークの適切な指導、福祉施設の就労支援員の障害者をなんとか自立させたいと願う懸命な思い、社会福祉協議会の職員との綿密な情報交換など、たくさんの人々の協力・連携により、以降、障害者の採用を一人、また一人と増やし当事業所では従業員38名のうち障害者が26名を占めるに至り、企業全体では従業員70名のうち50名が障害者である。
2. 障害者の従事業務、職場配置
当社の作業内容は、ダイレクトメール(以後DMとする)封入・ピッキング・出荷工程、雑貨品の検品・仕分け・箱詰め工程、電装部品のバイクのバッテリーケーブルの製造(切断・端子圧着・半田付け・組立・検査)といった3つの作業が主体である。
各工程作業において、ひとつのことに高い集中力を発揮する知的障害者は、DM封入作業や雑貨品の検品などを担当している。
安定している精神障害者は、電装部品の切断・圧着の機械作業や、手作業での組立と、障害の特性に合わせた人員配置を行なっている。
現在、聴覚障害者の5名はDM封入作業及び雑貨品の検品作業に従事している。平均して、封入封緘や雑貨品の袋詰めのスピードが速く器用である。障害のない社員の方が、速さのコツを教えてもらうことがある。
肢体不自由者の4名も同じくDM封入作業及び雑貨品の検品作業に従事している。不自由なほうの足や手に負担がかからないような立ち位置や並び位置を心がけている。本人たちも、どう動けば効率的なのかを考え、努力している。
知的障害者の9名も同様にDM封入作業及び雑貨品の検品作業に従事している。難しい作業はできないが、コンベアーにチラシを置く・パッケージから中身を取り出すなどの単調な作業に、障害のない社員にも真似できないような集中力で取り組んでいる。
精神障害者の8名は前述通り、電装部品の切断・圧着や半田付け等の機械を使用しての作業や、手作業での組立に従事している。神経を使う細かい作業である。
特にDM封入作業は、複数の障害者によるベルトコンベアーでの流れ作業で、品種が日替わりで切り替わるので、その変化に対応出来るかが心配だったが、逆にそれが刺激となって、各々がどうすれば少しでも早く確実に、仲間に迷惑をかけずに作業できるかを考えるようになり、それが働く意欲に通じていると感じる。
適材適所で障害者の特性が武器になる工程の配置と作業がマッチしているものと考える。


3. 取組の内容
障害者雇用を進めて行く中で、今までの会社で適切な指導や仕事の提供がされなかった従業員に、時には諭すように、時には厳しく、ことの是非を正確に伝えるようにしたり、常に仕事があるという喜びを感じてもらう環境、仕事に打ち込める環境作りをしたりしてきた。
① | 障害福祉向上会議の開催(支援体制について) 当社の一番の特徴といえるのが、週一回の福祉向上会議である。 障害のない社員が集まり、障害者の一週間の様子を報告しあい検討する。 休み時間や昼休みの何気ない会話の中から、生活面で変わったことがないかを見つけ出していくことに重点をおいている。 |

特に外出の機会が少なく心身のバランスを崩しがちな土日での変化を見逃さないように、障害のない社員がフォローする。昼食時は食堂でみんなそろって食べながら仕事のことや、
プライベートの事など情報を共有する。ここでは、障害者同士が固まらないように障害のない社員が間に入り目を配り気を配っている。
誰か一人、崩れてきている予兆があれば、必ず個別に話をする。原因を明確にし立ち直るきっかけを作るフォロー体制が整っており、相談事がある障害者は、社長、係長への直通電話体制で話ができるようになっている。組織全体で変化に対応できる体制作りを行っている。
また、日々の作業の中では、朝礼時、必ずメモを取ることを指導徹底。作業前5分間ミーティングを実施し細かい内容を指示する。聴覚障害者については筆談にて表情を良く見てコミュニケーションを図る。その中で聴覚障害者同士が手話にて分からないところはフォローし合う。
会社からのお知らせは掲示板に貼り出し、朝礼・終礼で周知徹底している。親にどう伝えていいかわからない知的障害者には、家族にチラシ及び電話にて連絡を取る様にして、情報の共有化を徹底している。
② | 適材適所を考える。 |
精神障害者の細やかさ、知的障害者の集中力が武器となる工程を作り込む。たとえ、聴覚障害があっても身体障害があっても、できる作業は必ずある。適材適所を考えれば、必ず仕事はある。その観点から仕事を取り込み環境を作る。そうする事によって、打ち込む仕事があるからこそ、自分で考え責任を持ち緊張感をもって作業に取り組むようになる。
③ | 障害があっても仕事は仕事。 |
「仕事は仕事。障害は言い訳にならない。」社長の考えである。この厳しさが社長の愛情表現であり、厳しさに堪えることができて、初めて障害者の自立の一歩につながってくる。自分に無理そうな仕事でも出来るようになると何事にも自信がつく。その効果は波及し、仕事の意欲につながり、仕事が出来る喜びにつながる。これにより職域拡大と継続雇用へとつながっていく。
④ | イベントの実施と参加について(コミュニケーション向上) |
親睦会があり春夏秋冬と4回/年の全員参加型のイベントを実施している。
春 → お花見を兼ねたバーベキュー
夏 → 研修会(公共施設を利用する時の注意事項研修も含む)
秋 → ソフトバレーボール大会
冬 → 忘年会(または新年会)
冠婚葬祭以外は全員参加が原則。障害のない社員が役員を務め、その補佐に障害者がメンバーに入り企画運営を実施しており、実行委員のメンバーへは自発的に立候補し参加している。仕事を離れた場所でのイベントを通じて、公共施設利用の心得や、相互理解を高める機会とし、コミュニケーションが深まることによって連帯感を生み活力につながって行く。そして仕事がやり易くなると考える。
⑤ | 5S運動の委員会への参画 |
ムダ・ムリ・ムラを撲滅する為、5S運動に取組んでいる。委員会のメンバーに障害者も自ら立候補し積極的に参画し改善に取り組んでいる。自ら積極性と意欲が湧き、目指す目標意識も高くなってくる。
⑥ | 教育訓練について |
入社一週間は勉強会で、決めた事、決められた事を必ず守ることを徹底する。
挨拶の徹底・障害のある事を言い訳にしない・かわいがられる人になりなさい等、まずは精神面での教育訓練が主体となる。そして確認テストで100点を取らないと次のステップに進めないシステムとなっている。
技能の習熟に関しては、最初は投入からスタートし後工程へ行くほど技能が高くなる。
最終出荷工程迄全てこなせるようになれば一人前。出来るまで、障害のない社員が繰り返し根気よく教えていく。
また社長の計らいにより、障害のない社員も積極的に研修会へ参加させていただく機会に恵まれ、そこで得た知識を支援会議の場で報告し情報を共有化し、水平展開しながら障害者への指導につなげている。
4. 取組の効果と今後の課題
(1)取組の効果
①の福祉向上会議によって、生活面や気持ちの崩れを未然に防ぐことに成功している。この三年間での離職率の低さは7%である。
前述の雇用第一号の障害者も、三年たった現在は、薬の服用をしなくてもいいほどの回復ぶりを見せている。それが自信と精神の安定につながり、他の従業員の手本となる存在になっている。ある身体障害の従業員も、来た当初は投げやりな態度だったが、今では「ここで働けることは本当にうれしい」と、変化を見せ始めている。
②・③によって仕事への意欲と積極性が高まり多能工化と頻繁な品種切り替えへの追従が出来るようになった。(多品種少ロット)
④・⑤・⑥により、イベントにて感謝の気持ちが表れると共に、社内のコミュニケーション向上と障害者自らの積極性と意欲の向上から、時給アップ、正社員を目指す目標意識が高くなった。
障害のない社員は、障害者の手本となり支えとなる存在であると同時に、障害者から学ぶことも多く、それが障害を理解することにとつながっていく。
(2)今後の課題
問題点を挙げるなら、慣れからくる気のゆるみだろうか。些細なことではあるが、タイムカードの押し忘れ、下足箱の乱れ、返事をしなくなる、が危険信号の初期である。ここを見逃さず、見つけたらすぐに注意をすることで軌道修正を図っている。
精神障害者が崩れると長期化する。遅刻・早退・欠勤が増えてくる前に、変調を最小限にいかに止められるかが課題であり、精神障害に関するエキスパートからの勉強会を計画し実践につなげて行く。
また、会社の知名度が上がると、障害者なら誰でも受け入れてもらえるとの思いから、公共機関を通さず、飛び込みで訪問してくる人が増えてきている。
福祉施設ではないので、一般企業としての厳しさがあることを理解してもらう必要がある。
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