障害者の皆さんは仲間であり、貴重なパートナー。 障害者の皆さんを支援し、夢の実現の応援を。

1. 事業所の概要
昭和21年7月1日、丸庄赤穂メッキエ場として創業した当社は、めっき加エー筋に取り組み、平成元年、株式会社駒ヶ根電化と社名を変更した後も、研鑽と革新を重ねつつ、今日に至っている。
めっき加工は、装飾性への要求からスタートし、産業界のさまざまなニーズに応え、素材はもちろん、加工方法も飛躍的に発展を遂げている産業である。多彩な外観、優れた防食性、多岐にわたる高度な機能を付加する技術として、あらゆる産業に不可欠の役割を果たし、私達の生活を根底から支える重要な基幹技術と言える。
当社も創業以来、亜鉛めっきを主カブランドとし、高耐食性合金めっき、高機能めっき、さらには地球環境に配慮しためっき技術の開発に取り組み、お客様から高い評価と信頼を得ることを目標に進んできた。次代を見据えた技術開発、若いエネルギーと柔軟な発想で新分野開拓へと、常に挑戦し続ける企業集団を目指している。
また、当社が変わることなく取り組んできたのが「人と自然と技術の共存」である。技術開発と環境保全は、当社の追い続けている継続テーマと言える。昭和34年に自動排水処理装置の導入以来、ふるさと駒ヶ根の美しい自然を守るため、新しい排水処理システムの開発、そして環境に負荷を与えない水のリサイクルの追求等、豊かな自然を美しいまま未来に引き継ぐことができる企業活動を進め、全社員が環境を保全する意識の向上、雰囲気づくりを心掛けている。
また、当社が生産拠点を置く駒ヶ根市は、長野県の南部に位置し、西に中央アルプス、東に南アルプスの雄大な山並みを望み、中央を天竜川が流れる「人と自然にやさしい活力ある文化公園都市」と言われている。交通については、主要道路は国道153号線、鉄道はJR飯田線、高速道路は中央自動車道を基幹とし、首都圏、中京圏にもアクセスが良く、将来的には、中央新幹線や三遠南信自動車道により、名実ともに地の利を十分に生かせることが期待でき、電子、精密、機械工業を中心とする高度技術集積型工業の発展が予想される素晴らしい都市である。自然とテクノロジーが共存する地で、駒ヶ根電化は生きていく。
2. 障害者雇用の経緯
当社では、市内外のグループホームで生活する30代~50代の知的障害者を中心に、全従業員数の1割に当たる7名を雇用している。長年職場実習を受け入れていた駒ヶ根市にある知的障害者総合養護施設「西駒郷」の地域移行の際、雇用した人達である。
この「西駒郷」は、昭和43年7月に開所されている。当社における「西駒郷」からの職場(所外)実習の受け入れは、昭和44年頃から始まっている。当初は2~3名から始まった職場実習も、最大で12名まで受け入れた時期もあり、「西駒郷」と当社の間を、当社所有のマイクロバスが送迎を行っていた。当時は、まだまだ手でめっきをするラインが主であり、職場実習では、一般社員のアシスタント的な仕事をお願いしていたようである。
その後、事業拡大、設備の自動化と共に仕事の内容も変化することになる。主力製品である自動車部品、電子部品等をめっきする為には様々な装置が必要となる。特に自動車部品をめっきする全自動の処理装置では、いわゆる「引っ掛け」と呼ばれる前段階の準備作業が必要とされる。この作業は、どうしても人の手が必要となり、さらに、作業は同じ動作の繰り返しが続き、若い人たちから敬遠されがちな仕事と言える。準備作業に携わる人員の安定確保が当社には必要不可決であるが、その問題を解決し、その重要な仕事の中心的なスタッフとして、安定して働いていただいているのが知的障害者である。
障害者の住居が分散されるグループホームに移行することが決定した際には、通勤等について懸念されることもあった。以前は、マイクロバスで一定の場所との送迎を行っていたが、移行することにより、各自それぞれ自分の足で通勤することになったため、通勤途中の安全について心配した時期もあった。しかしながら、移行後のトラブル等の発生も無く、しっかりした足取りでみなさん会社まで歩いていただいている。しかし、いつ何時トラブル等の発生も起きないとも限らないため、引き続き、通勤状況の確認や、意識的に安全歩行の呼びかけを随時行っている。
このように時代と共に仕事の内容は変化しても、障害者に当社の重要な仕事をいつも担っていただいている。知的障害者は当社にとって円滑に事業活動を進めることのできる貴重なパートナーである。


3. 取り組みの内容
(1)知的障害者の受け入れ
知的障害者の受け入れに当たっては、西駒郷地域支援センターのスタッフの援助をいただいた。採用の条件としては、真面目で、一人で安定した仕事のできることを条件とさせていただいている。
職場に於いての管理監督は、製造部長である勝本、製造課長である倉田が中心となり、常に一般社員が傍にて仕事の段取りを行っている。「引っ掛け」の作業は、単調な作業が続く。始めた頃は張り切っていた作業も、時間の経過と共に、緊張感の欠如等も見られることも多々あったが、最近では比較的、良好な状態を維持できるようになった。西駒郷地域支援センターのスタッフによる適度な来社と、職場管理者の声掛けが適度な刺激となり、安定した作業へとつながったと思われる。
平成15年から始まった、グループホームからの受け入れだが、常時7名の雇用を維持させていただいている。その間、実家に戻った人が1名、定年の延長後に継続雇用し、最終的には体力低下により仕事を断念した人が1名、その補充として、新たに新規に2名を雇用した。仕事への嫌悪から当社を辞めた人はおらず、定着率は高いと言える。
(2)障害者の職場定着をサポートする体制
当社では、3名の社員が障害者職業生活相談員の資格を取得しており、また、安全衛生委員会内に障害者業務遂行支援チームを置くことで、定期的に障害者の皆さんの職場の悩みや人間関係の相談に対応することができている。
相談員には専務取締役の山下、衛生管理者の木下、主担当として技術部の宮下が日々の相談業務にあたっている。さらに、障害者に働いていただいている職場に関わる製造部長の勝本、製造次長の吉沢、製造課長の倉田、総務部長の池田を加えた計7名のメンバーにて障害者業務遂行支援チームを設置し、障害者に対して、きめ細かいサポートが出来るよう組織化している。この組織は、定例的(月1回)に行なわれている安全衛生委員会に属しており、問題点等は速やかに共通認識されるよう、社内の体制を整えている。
トラブル等についても、内容別に担当分けされている。日常的によくある日常生活に関するトラブルについては、地域支援センターに同時に支援をお願いしながら、総務部長が対応している。人間関係等のトラブルについては製造部部長、次長、課長が現状把握を行い、相談員と共にトラブル解決を図っている。
障害者業務遂行支援チームで対応したものの中には、こんな悩ましい問題もあった。障害者に長期的に勤めていただく中で、一人の女性を巡っての恋愛騒動が起きたこともあった。実際には相談員、障害者業務遂行支援チームメンバーでは最終的には対応できず、地域支援センターに対応をお願いすることとなってしまった。障害者のみなさんから頼りにされる障害者業務遂行支援チームのメンバーだが、この問題については白旗を揚げざるをえなかった事例である。
当社には、日々の出来事について相談員が障害者から定期的に聞き取りを行っている月報がある。これらの記録は貴重であり、障害者の成長の足跡を垣間見ることができる心温まる記録も随所に出てきている。
ここで、その記録をご紹介したい。
ある冬の記録からである。
「新人のKさん、初めての出社です。他のグループホームの皆さんとの関係も問題なさそうです。初めての作業ですが、無難に進めています。先生も立ち会っていただいていますので安心感があるようです。」
「Kさんも2週目に入りました。私への挨拶も、ニコニコしながらしっかりしていただいています。これなら大丈夫と太鼓判です!」
「今週は、この冬一番の冷え込みとなりました。初めての作業と、この外気温の変化に対応するのは一般社員でも大変です。声をかけてみましたが、いつもと同様元気な返事が返ってきました。Kさんの頑張っている姿をみて、私自身も頑張るぞと元気が湧いてきました。」
こんな記録もあった。
「Gさん、ちょっとイライラしているようです。些細なことで、他のグループホームの皆さんと喧嘩をしてしまったようです。何か原因が他にあるような気がします。」「イライラの原因がわかりました。Gさんが結婚されるようです。その準備が大変なんですね。」
「いよいよ来週はGさんの結婚式です。仕事も生活も一生懸命頑張ってきたGさんですから、幸せになってもらいたいです。私たちもしっかり応援させてもらいます。」
相談員は、障害者の仕事のサポートを中心に、人としての触れ合いを大切にしながら業務を遂行している。相談員からは、この業務を通じ、改めて自分自身を見つめ直す良い機会になったという言葉が寄せられている。
(3)就労時間外における生活面のサポート
就労時間外におけるサポートは、企業からみれば難しい問題と言える。当社では、グループホームの管理者、支援センターの方々と密に連絡を取り合い、出来る限りサポートするように心掛けている。体調管理、当社への通勤時における安全確保等、今後共サポート体制の強化を進めるためにも、密な連絡を取り合うことが重要と考える。



4. 今後の展望
今後についても、当社では、障害者の雇用を積極的に進めていく予定である。特に、当社の全自動処理装置では引き続き仕事量の増大が予想され、「引っ掛け」と呼ばれる作業の重要度は増すばかりと言える。障害者が活躍できる、そして、さらに夢の実現を可能とする職場を提供し続けることは、当社の使命である。

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