関係機関との連携・協力により美容室用タオルクリーニングという新職務により雇用が進んだ事例


1. 事業所の概要
事業内容 | 美容室23店舗 SPAエステ2店舗 経営 (2011年5月現在) 愛知県19店舗、岐阜県4店舗、三重県1店舗の美容室を経営。 |
設立 1977年10月
資本金 2,040万円
社員数 468人 男:165人 女:303人 (2011年5月現在)
美容室としては、郊外型サロンで中心地から少し離れたロケーションの良いところで店舗展開している。駐車場は各店20~30台駐車するスペースがあり、お客様は遠方からも車でご来店いただいている。
全店、木造の店舗展開で懐かしさや木造の風合いを感じていただける店舗である。
店内は吹き抜けになっており、ゆったりした空間の中でヘアスタイルをお客様に提供している。スタッフは400名を越えているが、地元のみならず、北は北海道から南は九州、沖縄まで全国各地から入社している。営業以外にもヘアショーや美容コンクールへの参加、ボランティアカット、社内講習会、運動会、社員旅行などさまざまなイベントを行い社内の活性化を図り、スタッフが成長し、お客様の満足が得られる風土の更なるレベルアップにチャレンジしている。2004年からは岐阜県可児市と2007年に愛知県小牧市の店舗にてエステサロンの併設をし、ヘアのみならずエステによる全身のケアも含めての店舗展開を試みている。今回は永年のテーマであった障害者雇用に対しての社会的責任を果たすべく、別部門としてTJ天気予報専用タオルクリーニング工場である「TJリネンファクトリー」を開業し、地域社会への貢献を目指している。
社歴の概要
昭和52年10月 一宮市丹羽町に美容室TJ OPEN
昭和61年7月 (株)美容室TJ設立
平成5年9月 有限会社 美容室天気予報 設立
平成9年9月 株式会社ティジェイ天気予報設立 美容室TJと有限会社天気予報 合併
2. 障害者雇用の経緯
当初、美容室では、障害者雇用はまったく無理という考えでいた。実際に美容室内で出来ることが、ほとんどなく、しかし、企業としての社会的な責任を考えるととても重い重圧を感じていた。単純に雇用すればよいというものではなく、そのための人件費の増加ややりがいの持てる業務の提供が難しく、毎年の課題ではあったが、実際に手をつけられず、平成19年から障害者雇用を3年計画で進めていくこととしていたが、もともと採用していた事務の身体障害者1名のみで採用が滞っていた。
いよいよ計画最終月直前になり、ハローワークからの熱心な助言もあり、店舗外清掃の業務を行うことに決めた。ハローワークからは当社への障害者の紹介や障害者雇用の面接会への参加で店舗清掃の職務で障害者8人を一気に採用した。店舗清掃は毎日、全員が駅に集合し、ミニバンで各店をまわり、ひとつの店舗の庭や駐車場の掃除が終われば、次の店舗に行き、次が終わればその次という感じで各店を交替で回っていた。さまざまな問題点があり、雨の日は店内の一部の清掃以外は清掃箇所が見当たらず、また、店外の清掃も週に1回まわるだけでも翌週にはまだ草も伸びず、やりがいのある安定的な業務の提供が出来ない状況だった。
また、夏は、異常なほど暑くなる日もあり、天外での作業には熱中症などの不安もあり、当社としては心配な中での業務の提供だった。他の業務で何か考えられるものはないかと思案していた折、面接会で独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の存在を知り、各種助成金などのサポートがあることを知った。検討した末に、それまで店舗で使用している美容室用タオルは専門の業者から利用していたが、助成金の中には、障害者のための作業施設に対する助成金があることを知り、障害者の安定した仕事としてタオルのクリーニング工場を設立することを検討した。それぞれの美容の店舗ではなく、一箇所に集めてクリーニングすることを計画し、助成金を含めた工場設立を試算した結果、新たな事業部門として稼動可能の目処が立ったので、助成金の申込申請を行い、許可がおりたため着工し、平成22年9月18日にTJ天気予報専用タオルクリーニング工場として「TJリネンファクトリー」を開業するに至った。開業時は、スタッフが仕事に慣れてくれるかどうかの不安や実際に順調に運営が行くかどうかの不安があったが、さまざまな人の協力も有り、スムーズに稼動し始めることになった。また、洗濯水の放出に伴う中和処理などの環境への配慮など、今まで想像もしなかった事柄も解消することが出来、現在は順調に運営している。今回の業務用タオルのリネン部門を設立することで、長期にわたる障害者の雇用の確保と雇用継続の安定を図ることができた。
現在、全店から集めたタオルを毎日5~6000枚洗濯と乾燥、たたみを業務を身体障害者1名(リーダー)、障害のない者2名(サブリーダー1名含む)、知的障害者5名の総勢8名にて運営している。スタッフの多くは知的障害者で、タオルの洗浄、タオルの乾燥、タオルのたたむ作業など、比較的単純な作業であり、何より毎日決まった業務内容を習得すれば、天候に左右されず、季節に左右されずに業務があり、美容室を運営するにはなくてはならない部門であり、やりがいと雇用の安定を満たせると考えている。
3. 取り組み内容と効果
それまでの店舗清掃と違い、毎日の安定した業務量があるので、スタッフもやりがいがあり、洗濯機の操作以外は指示に従って業務をこなすことが出来る。
毎日、出勤は知的障害者5名全員でバスにて出勤し、朝一番の掃除はみんなで手分けして行っている。本作業のタオルクリーニングは、各スタッフがペアを組み洗濯機班、乾燥機班、タオルたたみは全員で役割を分担、交替で協力しながら作業を行っている。
作業自体は、覚えやすく、一度覚えれば自ら行動が出来るようになった。人によっては、タオルたたみ機での作業も出来、効率アップにも効果がある。
問題点は、洗うタオルの量が、繁忙月と平常月での差があり、お客様動向により、リネン工場の稼働率に影響が出るため、特に繁忙月の業務の仕方が今後の課題として考えられる。
会社全体から見れば、店舗も以前のタオルより仕上がり感やタオルの臭いもなく、お客様、美容スタッフともに快適になったという声が上がり、良い効果を上げている。
また、障害者雇用に関して、美容スタッフからは、「会社が障害者の人たちを雇用することによって、貢献できることに誇りを感じる」といった意見も出るようになり、企業としての障害者雇用に対しての社会的責任を現場スタッフも感じられることが出来たことは、大きな成果と感じる。
また、特別支援学校や障害者支援施設からは学生の見学やタオルクリーニングに対しての実習の要望があり、実際に1名の訓練生と1名の特別支援学校生の受け入れを行い、実習をしてもらうまでになった。
4. 今後の展望
経営理念と自らの役割の理解によるやりがいの職場に。
私たちTJ天気予報は『魅力ある人財』づくりを目指している。
美容業界はもちろんのこと、一般企業の中でも、一流企業、優良企業を目指し活動している。
【経営理念】
『お客様を第一に考え、誠意と情熱を持って奉仕する』
職場を単なる働く場所としてではなく、人格を磨く場所、自分を信じあらゆる困難にチャレンジしていく可能性のある場所ととらえ、お客様のよろこびを我が喜びとできる心豊かな人物に成長して頂きたいと思う。
『TJ天気予報は人間を作る学校です』
服装、髪型、言葉使い、気配りなど、美容師である前に、ひとりの人間、ひとりの社会人としてどこに出ても恥ずかしくないような人間に育てる。
『一緒に歩いてきた仲間たちと、少しでも長く働ける会社をこれからも目指します』
私たちには多くの仲間がいる。一人ひとりの能力を引き出し優秀な社員を育成して、やりがいを持って長く働ける環境を整備する。
美容スタッフは「のれん分け」をして、真の経営者を目指して頂くのも良し。女性の場合は結婚し、出産して、子育てが一段落したあとも戻ってきて美容の人生を愉しんで頂くのも良し。リネン工場スタッフも自分の自立を目指し人生を楽しむ。それぞれの人生を一日でも長く送れるよう会社として全力でサポートする。
以上を経営理念とし、美容を通して人のお役に立てる会社を目指している。
タオル工場に勤務するスタッフにも、経営理念を踏まえ、自分たちの仕事が、各店舗のお客様満足につながる大事な仕事をしているという自覚を持ってもらうよう伝え、人のためになる仕事の喜び、やりがいを持って胸を張って業務に取組んでいただく。
今後については、タオルクリーニング枚数にまだ余裕があるため、しばらくは現在の稼動状況で事足りているが、今後、店舗数が増えた場合は、人員の増員と交替勤務による稼働時間を延長するということも考えられ、その体制づくりに対応する予定である。


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