生き甲斐をもって、一緒に気持ち良く働き、共に生きる
- 事業所名
- ラック産業株式会社
- 所在地
- 奈良県磯城郡
- 事業内容
- 繊維製品の製造販売業(婦人・紳士・子供・幼児用の肌着、マタニティー、
腹巻、防寒衣料、健康衣料、タイツ、インナー等) - 従業員数
- 40 名
- うち障害者数
- 8 名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 2 縫製、仕上げ 内部障害 知的障害 5 生地編立、縫製、仕上げ、検品 精神障害 1 生産事務 - 目次

1. 事業所の概要
昭和41年創業設立。繊維製品(婦人・紳士・子供・幼児用の肌着、マタニティー、腹巻、防寒衣料、健康衣料、タイツ、インナー等)の製造販売業である。創業以来、「最大の規模を目指すにあらず、最良の企業たらんとするにあり」との基本理念を掲げて、社会貢献の一つとして地域の人が豊かにと地域雇用体制を推進し、人々が豊かになることで、製品が受け入れられ、企業自体もお客様に必要とされる存在になるとしている。
製造は、商品の企画開発から→生地編立→天然染色→裁断→縫製→仕上→検品→包装→出荷までを、一貫して自社工場で展開する一貫生産方式である。小ロット多品種少量生産により、一品ごとの付加価値の高いモノづくりに取組んでいる。製品の企画開発の段階から製品の出荷・販売まで常にお客様第一と考え、丁寧な品質管理体制の徹底やモノづくりを追求することで、お客様に快適で安全・安心の良質な衣類をお届けしようと尽力している。
この生産体制であればこそ、昨今の厳しさ増す景気動向、雇用情勢のもと、「仕事に人を」から「人に仕事を」方式に転換され、障害者雇用にむけて職務開発・職域確保が可能となったとみられる。
なお、当地の本社・工場のほか、グループ企業として鹿児島県奄美大島に地元奄美市の誘致企業でもある「株式会社アマミファッション研究所」、そして大阪市に「アマセンエンタープライズ株式会社」がある。またグループの販売推進基地として東京と上海にオフィスを構えている。
2. 障害者雇用の経緯
当社では障害者雇用を企業の社会的貢献、地域雇用体制推進の一貫として前向きに取組み、以前から障害者を積極的に受け入れ、障害者と障害のない者とが生き甲斐をもって一緒に、気持ち良く働けるような職場環境の整備に努めている。
もう16年ぐらいも前になるが、地元のハローワークや高等特別支援学校などから1人の障害のある在校生の職場実習の要請をうけ、1週間の働く体験だけならばと受け入れたのが最初であった。
吉川社長は「きっと家族の、また先生の励ましもあってのこと、彼女は一生懸命、実習に精を出し励みました。職場の従業員もその姿に心打たれたのでしょう。職場実習で終わるところ、もう少し様子をみることとしました。」とのことである。これが卒業後の採用につながり、いまも生産現場の基幹要員として活躍している。
この障害者雇用は初めてのことであり、なんの準備もなく突然の受け入れであったので、社内にあっては、作業環境改善、作業の改善、労働条件の整備などハード、ソフトの両面で、社長、管理者、監督者、指導者、世話役、同僚が試行錯誤しながら取組まれた。また社外との関係では、ハローワーク、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、特別支援学校などの関係行政、関係団体・機関の熱心な支援を得た。
しばらく彼女1人の障害者の在籍が続いたが、平成15年に4人、平成17年に1人、平成19年に3人、平成20年に3人、平成21年に2人・・・と障害者を採用し、彼らの能力を引き出し、その真面目な勤務態度や仕事への熱い想いを身近に感じている。
平成15年に請われて合同面接会に参加した折、適格者があればと1人を採用する予定のところ、約40人の応募があり、選考に苦慮し、急遽4人の採用で対応、うち1人が今も定着するなど稀有な経験もある。こうして昨今は、ハローワークなどの障害者合同面接会には毎回参加している。
応募面接した求職者には学校卒業とともに初めて社会に出る者、転職者などの中途就職者があり、特別支援学校、障害者職業訓練校などの卒業者の応募もある。
当社では障害者を他の従業員と区別することなく、各人の能力や特性に見合った職場に配属し、労働条件や勤務形態なども業務・業績への貢献に対応した処遇で、一般の従業員と同じ扱いとなっている。
障害者に生き甲斐をもって一緒に、気持ち良く働けるような職場環境を整備するためにハローワーク、地域障害者職業センター、特別支援学校などの関係行政、関係団体・機関の熱心な支援を受けているが、障害者本人の努力、熱意とともに、これを支える家族のたゆまぬ、温かくも厳しい支援が大切である。職場定着について、採用の前後に地域障害者職業センター等の職業リハビリテーションサービスを受け、ジョブコーチによる支援、障害者等の職場適応を容易にする支援、それに、就業・生活支援、激励、訪問支援があり、仕事での自己実現、職業自立へのサポートがあった。
照る日、曇る日、雨の日、風の中を営々と仕事に精励し働く人が、人の役にたち、世のため必要とされ、ほめられてこそ幸せである。当社で働く障害者がその有難さ、幸せを家族とともに実感していることが何よりも喜ばしい。
3. 障害者の従事業務、職場配置
当社の事業内容は、繊維製品の製造販売業(婦人・紳士・子供・幼児用の肌着、マタニティー、腹巻、防寒衣料、健康衣料、タイツ、インナー等)である。その製品ができるまでをみることとする。
商品の企画開発から→生地編立→天然染色→裁断→縫製→仕上→検査→包装→出荷まで、一貫して自社工場で展開する一貫生産方式である。小ロット多品種少量生産で、一品ごとの付加価値の高いモノづくりに取組んでいる。
(1)企画開発
春夏秋冬、肌着を主軸に婦人・紳士・子供・幼児用の肌着、マタニティー、腹巻、防寒衣料、健康衣料、タイツ、インナー等を、デザインをはじめ、どんな糸、どんな生地、どんな色、どんな形、どんな縫い方でと研究し、商品開発する。 |
(2)素材・生地
ウール、シルク、わた、ナイロン、アクリル、ポリエステルなどの素材を編物(ニット)織物にして衣料の生地をつくる。 |
(3)染色
当社では、川や海を汚さない環境を配慮した染色をする。(草木染め)身の回りの植物を煮出した液で染める(どろ染め)泥でそめる。 |
(4)裁断
製品のパーツを型にあわせて裁断する。 |
(5)縫製
本縫いミシン、オーバーロック、2本針、ぼたん付け、穴かがりなど、色んな縫製ミシンを用いて製品をつくる。 |
(6)仕上
アイロンをかけ、しわを取り、形を整える。 |
(7)検品
キズがないか、汚れがないか、ほつれがないか、針など異物が混入してないか、不良品を除去している。 |
(8)包装
シールを貼る。見た目をきれいに包装し、お客様に内容物が何であるかをわかりやすく表示し、消費者に好感されるように包装する。 |
(9)保管・出荷
倉庫保管業務を適切に作業し、受注した製品が、品質・数量をみたし、納期にあわせて、発注主に的確に届くよう発送する。 |
こうした本社・工場における管理間接部門、製造、営業の各部門の現場のどの部署に障害者が職場配置され、どのような仕事に従事しているのかを見ることとする。
(1)企画開発
製造部門に働く感性豊かな4人の障害者が月に1~2回の企画会議に加わり商品開発に参画している。 |
(2)素材・生地
知的障害者2人が勤務(素材糸を編たて、ニット織物にして衣料生地をつくる) |
(3)染色
(4)裁断
ハサミのウデが冴える知的障害者が勤務 (製品のパーツを型にあわせて裁断していく) |
(5)縫製
知的障害者、身体障害者(肢体不自由)の2人が勤務 (色んな縫製ミシンを用いて製品をつくる) |
(6)仕上
知的障害者1人が勤務(アイロンをかけ、しわを取り、形を整える) |
(7)検品
知的障害者1人が勤務 (キズがないか、汚れがないか、ほつれがないか、針など異物が混入してないか、不良品を除去する) |
(8)包装
(9)保管・出荷
(10)事務間接部門
精神障害者1人が勤務 (パソコンで生産現場の事務作業をする) |
求職者には、学校卒業とともに初めて社会に出る者、転職者などの中途就職者がおり、特別支援学校、障害者職業訓練校などの卒業者の応募もある。当社では障害の部位、程度、職業経歴等、それぞれの障害者に対応して、「人に仕事を」方式により個々の障害者に相応しい職域の確保、職務再開発が可能である。これは当社の経営方針が大手メーカー専属、自動化・大量生産を避けて、一貫して自社工場で展開する一貫生産方式で、小ロット多品種少量生産で、一品ごとの付加価値の高いモノづくり、新商品の開発、市場開拓に取組んでいることによるとみられる。
当社で働く障害者8名の就業形態は、他の従業員と変わらず、原則として、週5日勤務、生産現場は1日に7時間、管理間接部門は8時間勤務の常用フルタイムとしている。
賃金は、基本給、役職手当、通勤手当、皆勤手当、時間外手当などを規定する全社共通の賃金体系である。
なお、障害者も全員が自宅からの通勤で、マイカー通勤が3人、電車・バスの公共交通機関利用が3人、自転車通勤が2人で、いずれも会社まで自力通勤している。
他の社員ともども1年に1回、定期健康診断、保健指導を実施して、各人の体調、健康の保持・増進に取り組んでいる。



4. 取り組みの内容
(1)障害者の受け入れ
選考採用面接に際し、過去の経験に照らし、まず個々の応募者が当社で働くことが真に本人のためになるのかを確かめる。判断基準は、当社での就業が彼の幸せにつながるか、生き甲斐がある職業人生活を確信できるか、ならば採用対象とする。そして当社で彼が従事できる仕事を用意できるかを検討する。
(2)職場の選定、職務内容
他の新卒採用や中途採用と同様で、障害者本人の意思・希望をたしかめながら、特性、能力・性格や仕事ぶりを見極め、適材適所の配置を心がけている。配置の結果様子を見て、仕事ぶりや適性に疑問がある場合には、従事業務を単純化し、シンプルな作業内容の職務をマスターするよう指導する。習熟につれ同じひとつの職種であっても、さらに一段高いレベルの仕事へとチャレンジする機会を用意し、働く本人の就業意欲を喚起するよう心がけている。
また、特別支援学校の実習生を受け入れているが、近頃は障害者である当社の従業員も実習生の指導係になり、これに積極的に参加している。
(3)人間関係面の配慮
障害の種別や等級などが同じであっても、個人のもつ性格や特性、経験や能力が違うこともあり、対応は一律にというわけにはいかない。そのことを理解しながら、個別に話し合いの場を設けて、本人の気持ちを聞き体調を把握し、コミュニケーションを密にと挨拶応答、プラスワンの挨拶「おはよう」「今日は」に一言、「お元気ですか、どちらへ」等の挨拶をする。報告、連絡、相談(ほう・れん・そう)の励行を呼び掛け指導している。
以前、聴覚障害者が一人在職していた時に、職場では手話を勉強し、聴覚障害について理解を深め、周囲との心の交流、職場の絆を強めてコミュニケーションの深化が図られていた。
(4)職場定着
当社では、障害者の職場定着推進策として、より良い職場環境を作っていくために、本人との話し合いはもちろん周囲の同僚たちとも定期的に話し合いの場をもっている。
仕事は分かりやすく根気よく教える。失敗すればどうすればうまくできるかを一緒に具体的に考えて仕事に挑戦する。出来たところはその場できちんと評価し、ほめて励ます。
誰もが当社での就業が初心者であるため、特に安心と安全、労働安全衛生については「やるべきことは必ずやる。してはならないことは絶対にしてはならない。」と指導を徹底している。
(5)各種支援策とその活用
①トライアル雇用(障害者試行雇用)
②ジョブコーチ(職場適応援助者)の支援
③各種助成金
トライアル試行雇用奨励金、特定求職者雇用開発助成金、障害者介助者助成金などを活用している。 |
5. 取り組みの効果、今後の課題
創業以来、当社、ラックグループの基本姿勢に、
企業理念の原点:「神の前に有用な企業たらん」
基本理念:「最大の規模を目指すにあらず、最良の企業たらんとするにあり」
Big < Best
目指す将来の姿:「ピカッと光るユニバーサルカンパニー」
との基本理念を掲げている。
さらに障害者雇用を地域雇用推進の一環と位置付け、障害者を雇用することは企業として当り前のことだと考えて積極的に取り組み、障害者と障害のない者とが生き甲斐をもって一緒に、気持ち良く働けるような職場環境の整備に努めている。
一人ひとりの個性や特性を引き出し、これを仕事での自己実現、職業自立へと繋げる。たとえば朝礼の場で、すてきなセンスの持ち主だと社長に見出され、商品開発企画会議に参加することとなった製造部門の4人の障害者の喜びがある。
最初は障害者と障害のない者がお互いに遠慮したり、距離感があって、問題が起こったりと課題もあったが、関係各方面に相談したり、社内で話し合いを重ねて、当社の障害のない者、障害者と共に、ようやく「心とからだの健全、バリアフリーを求め、共に働き、共に生きる」そんな状況になっている。
今後の課題や取組みとしては |
職域開拓、仕事の仕組みを構築・改善する 簡単でやりやすい作業方法の開発 仕事のミスをなくし正確にできる工夫 能力を見極めながら職域拡大への挑戦 社員みんなのモチベーション一層の向上 「いってきかせ、やって見せ、やらせてみて、ほめる」 理屈よりも体で習熟、体験型で技術・技能を習得 健康と安心・安全の増進 勤務が長くなる人の加齢対策 設備改善、作業環境の改善 職場適応援助者の養成配置 |
などが掲げられている。 |
これからも「心とからだの健全、バリアフリーを求め、共に働き、共に生きる」をモットーとして、「その職場になくてはならない一人となる」を念頭に置いた職場配置の工夫、多様な就業形態の活用、健康・安全管理、教育訓練、作業環境の改善などの各分野での就業支援が期待される。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。