同じ働く仲間の一員として、職場の一躍を担う
~スーパーにおける身体障害者雇用の取り組み~
- 事業所名
- 株式会社 松源
- 所在地
- 和歌山県和歌山市
- 事業内容
- 食品スーパーマーケット
(生鮮食品・惣菜等食料品を中心とした日常必需品の販売) - 従業員数
- 2,468名
- うち障害者数
- 39名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 10 品出し(整理・陳列),発注業務,一般事務(在庫・売上管理、伝票整理) 内部障害 4 一般事務(在庫・売上管理、伝票整理) 知的障害 22 品出し(整理・陳列),発注業務 精神障害 3 品出し(整理・陳列),発注業務 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯・背景
(1)事業所の概要
当社は、現在、和歌山県内25店舗、大阪南部12店舗の合計37店舗を展開し、地域密着型の食料品を中心とした日常必需品の販売、特に生鮮食品及び惣菜に力を注ぎ、ここ数年新店舗を出店し、業容の拡大を図っている。
経営理念として、高い志の基、食文化への貢献、地域の皆様のお役に立つ松源として、「鮮度」「品揃え」「品質」「安さ」「接客」の5項目の同時実現を目指すことを信条とする。
また、当社は充実した教育研修制度を実施しており、接客の在り方については、専門の接客・サービス研修を受講したキャッシャーたちが現場で活躍している。男女を問わず、「能力」や「資質」があれば、若くして店長や管理職に登用される社員も少なくない。障害者も、他の社員と同様に「能力」や「資質」があれば、「能力」や「資質」をおおいに発揮できる職務に従事できる職場風土を全店的に構築している。そのことが、数字的にも、2007年~2011年の4年間で障害者の雇用数が27名から39名と12名の増加に表れている。
(2)障害者雇用の経緯・背景
①障害者雇用までの経緯
当社は、従来から障害者雇用を行っていたが、平成に入り、当時の人事部長は、障害者雇用推進について、地域密着を信条とする企業としての社会的責任を強く認識し、同考え方について、社長も同じく賛同するに至った。
それから、全社をあげて積極的な取り組みを行い、その後20数年が経過した現在、業容の拡大=新店舗の出店とともに、障害者雇用数も増加の一途を辿っている。また、平成19年度「和歌山県障害者ワークフェアー」において、当社は、障害者雇用優良事業所として、県知事賞を受賞、また平成22年度には障害者優良事業所として厚生労働大臣賞を受賞している。
②事業所としての姿勢
平成元年当時、障害者雇用推進に積極的な対応を始めてから、その精神は歴代の人事部長にも受け継がれ、障害者雇用に対する考え方は途切れることなく継承されている。
また、当社は、企業としての障害者雇用の取り組み方等についての周知・啓蒙活動も積極的な対応を行っている。その活動例として、平成21年8月には当社人事課長が、「障害のある人の採用から雇用管理、職場環境整備について」と題した講演の講師を務めた。その講演では、障害者雇用のポイントは、先ず、本人がスーパーで働きたいという思いを最大限、尊重したい。そして、次に、採用=雇用の機会(チャンス)を与える。そのことの重要性を熱く語った。その結果として、働くことに対する熱意と能力は、障害者も障害のない者もなんら変わらないことが実感でき、36名(その講演当時、現在では39名)の雇用増加につながっている状況を披露した。また、平成22年10月には、「障害者の方も活き活きと働ける社会、その為の就労支援について」のシンポジウムのパネラーとしても、参加している。
最近の具体的な障害者雇用の取り組み施策としては、特別支援学校からの要請もあり、実習の場を提供し、特別支援学校とのインターシップ制度を利用して、実習形式で雇用確保を行っている。また、労働条件面も障害のない人と同様とし、パートナーチャレンジ制度(パートから正社員へ登用する)により、2名の障害者をパート社員から正社員として、登用している。雇用管理については、会社として、障害者に対する職場における、特段の管理を行うには限界があることもあり、家庭との連携を密にすること、関係機関による(JOBコーチの依頼等)相談、継続支援及び、社員教育が、それを補足するうえにおいて、重要であると考えている。特に、店長-チーフ-パート等に対し、日頃から、障害者雇用に対するあたたかい・配慮ある心で接する等の職場雰囲気(職場風土)の形成に心がけている。
採用方針と採用計画では、1店舗に1人の障害者雇用を目標としているが、毎年の採用数は決めておらず、特別支援学校等からの申し入れや、特別支援学校の卒業生からのくちこみ等で就労希望者を適宜採用している。また、就労場所は、家庭に近い店舗等へ就労できるよう配慮している。
障害者を受け入れる各店舗としては、当該障害者の程度をよく把握した中で、障害者ができる仕事を検討し、担当してもらう業務内容を決定している。考え方としては、「このような業務は無理」との観点からではなく、「障害者に、十分に任せられる業務は何があるのか」との観点で、業務内容決定の判断基準としている。
勤務形態では、フルタイム勤務または短時間勤務の選択は、障害者本人の希望を尊重した中で決定しており、障害者自身の働く意欲を第一に優先している。
2. 取り組みの内容
(1)業務内容及び障害者の業務
○ | 商品加工・商品品出し業務および一般管理事務 |
当社の39名の障害者が担当する業務内容は、主に商品加工、商品品出し業務であるが、一方、その障害者の適正等を勘案し一般管理事務にも、従事されている人も多い。
今回、訪問した吉礼駅前店(総人員40名)では、1名の障害者が、配属されている。当人は、勤務年数が10年目で、左上腕部が不自由だが、本人の懸命なリハビリの結果、パソコン操作を行うことができるまで、左上腕部の機能が回復した。パソコン操作の基本は、本人が、当社へ就労前に、和歌山県子ども相談センター(琴の浦)の施設において、習得した。そこでは、パソコン操作習得、野球等の運動、また、各種勉強会等を体験して、就労における役立つスキルアップ等の基礎力を培ってきた。
当人は、パート社員として入社後、本人の努力により正社員に登用され、吉礼駅前店が5カ店目で、入社以来、一般管理業務を任されているが、その業務内容は、①たばこの在庫、②伝票の整理、③昨日の売上の締め、④管理システムへのデーター(伝票)入力等、また1ヶ月単位の業務として、1ヶ月分の請求書の整理等、吉礼駅前店の後方管理事務を毎日精力的に消化している。特に、経費の締切日が20日であるため、20日・21日が締め切り時間等の戦いであり、多くにデーター処理を効率的に正確に処理し、当店舗の重要な戦力の一員となっている。伝票整理、売上金の確認等についても当初時間を要したが、永年の経験・慣れにより自然に身に付き短時間で処理している。


一人で全般の事務処理
仕事がオフの時は、現在、5歳(男の子)と2歳(女の子)のよき父親であり、2人の子どもと楽しく遊ぶのが楽しみな休日の過ごし方ですと、明るく語って頂いた。
また、当人は、優秀勤労障害者として表彰を受けたこともあり、働くことができる充実感を常に感じ取って、日々の業務に精励している様子を窺うことができた。
吉礼駅前店では、店長をはじめ、店舗全体の社員が明るく、笑顔でいきいきと働いている様子を見ることができ、非常に明るく活気のある職場風土を全社的に取り組んでいる結果が現われていることに実感できた。吉礼駅前店は、和歌山電鉄貴志川線吉礼駅に近くに位置し、また、近くには、和歌山市でも有数の菖蒲が丘団地や和歌山信愛女子短期大学があり、特に、午前中からお昼にかけて、同店舗を利用するお客様が来店している。その来店するお客様一人ひとりに対する、社員の活気のある接客が明るい職場作りにも通じ、また、それが同時に障害者雇用の明るい職場作りにもなっていることをあらためて感じ取ることができた。当社は基本姿勢として、店長・チーフ・パート等に対し、障害者に対してあたたかい・配慮ある心で接するという職場雰囲気(職場風土)の形成に心がけるよう伝えているが、その精神が、言葉だけでなく、実践=行動として機能し、社員教育を通じて日頃から機会をみて行っていることがよく理解できた。


(2)就業以外のフォロー
当店(吉礼駅前店)は、社員数が40名中、1名の障害者の職場である。ここで働く上述の当人は、フルタイム勤務として勤務し、休みは、「月曜日」「水曜日」の週休2日制である。毎日の仕事の大部分が、一般管理業務のため、パソコン操作が就労時間の主な時間となる。そうした職場環境に対し、ここの吉礼駅前店でも、店長をはじめ、社員全員が自然体のなかでそのコミュニケーションを大事にしている。職場で働く社員全員が、当社の基本姿勢として、働きやすい職場環境を企業全体で取り組んでいこうとの考え方(想い)をよく理解しており、日頃の当社の社員教育の効果がよくわかる。
当社全体では、日頃からスポーツ活動が盛んであり、松源相撲部は特に有名である。第39回西日本実業団相撲選手権大会(平成22年6月27開催)では、見事優勝した実績がある。ちなみに、当社人事課長の中村氏は、松源相撲部の監督でもある。また、軟式野球部も大会上位入賞の常連でもあり、当社の社風として、スポーツを通して、心も身体も健康な社員の人間形成に寄与するというものを感じる。その精神は障害者にも相通じており、障害者も同じくスポーツ活動(レクリレーション活動)は盛んである。
ある人は、ソフトボールの現役選手で、仕事と趣味(ソフトボール)の両立を図っているし、また、ある人は、社内ボーリング大会を勤務する店舗代表選手として、参加している。障害者も仕事がオフの時は、スポーツを愛しレクリレーション活動に励んでおり、それが、いつも活気に満ちた職場環境の源になっている感がある。
3. 障害者の処遇、今後の課題と展望
(1)障害者の処遇
当社では、積極的に障害者雇用を推進しているが、賃金体系、就業時間等において、障害のない社員と同等の処遇条件になっており、障害者本人の「能力」「意欲」「資質」等が前向きであれが、当然ながら、一歩上を目指し、そのキャリアアップを行っていくことが可能である。
そのことは、障害者が働きやすい職場風土を長年にわたり、作り上げてきた結果が結実している側面でもあり、同じ処遇体制を実のある形で、運用できる環境を構築してきた、今までの当社の努力の成果でもある。
当社では、障害のない社員と障害者が混在する職場であるため、お互いによく理解しあうことが、なにより大切であり、当社では、そのことが、職場風土として自然体の中で作り上げられている。なんら意識することなく、お互いの立場をよく理解し、同じ職場で、一つの仕事に責任と誇りをもって、その業務に専念する。それが、当社の障害者雇用の基盤であると考えられる。
(2)今後の課題と展望
当社は、平成に入り、障害者雇用の重要性を意識し、その後、その精神が当社の歴代の人事関係者に受け継がれている。
また、いろいろな機会を捉え、積極的に地元企業としての立場で、障害者雇用推進に向け、地元経営者団体の要望に応え、「障害者雇用の実践例」について講演を当社の人事部門が講師を務め、また、シンポジウムのパネラーに参加するなど、他の地元企業への障害者雇用に関する啓蒙活動にも積極的に参加し、その活動を続けています。
当社の経営理念である、「地域に皆様のお役に立つ松源」としての同じ考えのもと、企業としての地元和歌山おける、地域貢献のひとつとして、障害者雇用推進の「行動」でもって、示されていることに感銘を受けるところである。
いま、現在、今回面談させていただいた、元気に働いている吉礼駅前店の障害者をはじめ、当社の各店舗で働いている障害者(総勢39名)及び周りの社員や当社の人事関係者が日々築き上げている積み重ねが、「障害者が元気に明るく働ける」社会環境の道筋として、その後に続く障害者の道しるべとなるよう、今後とも、当社の障害者雇用対策を見守りたいと強く感じた。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。