共に働き 共に生きる働いて 輝いて 笑顔がいっぱい
- 事業所名
- 株式会社トモニー・きずな
- 所在地
- 岡山県岡山市
- 事業内容
- 環境整備、洗濯・たたみ業務、運搬業務、飲食店の運営業務
- 従業員数
- 62名
- うち障害者数
- 41名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 環境整備 聴覚障害 1 室内清掃 肢体不自由 内部障害 2 タオルたたみ 知的障害 33 環境整備、タオルたたみ、室内清掃 調理補助 精神障害 4 環境整備、タオルたたみ - 目次
1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社トモニー・きずなは、平成20年3月障害者自立支援法に基づいて、就労継続支援A型と就労移行支援事業を行うことを目的に創設されたものである。設立にあたり、有限会社トモニーが親会社となり、社会福祉法人旭川荘の事業受託や荘の職員、利用者さらに地域住民の日常生活用品のサービス提供を目的として運営を行っている中で、平成23年6月重度障害者多数雇用事業所として登録して、障害者の就労の場として障害があっても障害のない者と共に生き生きと働き成長し、自立した生活を可能にすることを目的としている。
株主 | : 有限会社トモニー、旭川荘役員、利用者の親、学識経験者、その他 |
資本金 | : 300万円 |
(2)障害者雇用の経緯
親会社である有限会社トモニーは昭和62年、社会福祉法人旭川荘の当時の理事長(現名誉理事長)江草安彦先生は荘内の利用者の働ける・働きたい障害者の就労を計画し、あちこちの事業所に対して就労の依頼をしたが、全く相手にされず困っていた。そこで荘内職員や利用者の利便を図る意味で、荘内車庫を改造して食堂を開店し、昼食として定食、うどん、喫茶の店を始め4人の障害者(知的)が就労したのが始まりである。
その後、旭川荘も規模が大きくなり、職員、利用者も多くなったので、食堂、日用雑貨の売店に加えて各施設内の清掃、荘内の環境整備、事務用品、利用者の生活用品(おしめ・タオル・紙おむつ・洗剤など)の外商部門、更に利用者の衣類の洗濯やタタミ作業、運搬作業などの事業を行っている。
障害者自立支援法の施行に伴い、岡山県では株式会社として初めて、全国でも9番目に設立したもので、旭川荘の事業及び有限会社トモニーの事業の一部を受託している。
2. 仕事の内容
(1)食堂事業
① | 旭川荘職員、利用者等を対象にしたゆずりは食堂で、ダシ取り、食材の下処理、食 器類の洗浄、配膳洗い作業、ウエイトレス、清掃作業をしている。また、地域で開催されるお祭りに屋台を出したり、福祉施設のイベントに出展して交流会もしている。 |
② | 荘内厚生専門学院内食堂においては、学生、職員を対象に前記作業に加えて弁当毎日150食以上(多い時は300食)の盛り付け、配置作業、残さい処理作業をしている。 |
③ | 西大寺食堂においては、老人ホーム、デイサービス、障害者作業施設への食事提供。 前記①の作業に加えて、盛りつけ配膳、下膳、利用者との対応(障害者や高齢者施設への出張出店販売サービス)をしている。 |
④ | 瀬戸内市からの依頼により、一般住民を対象に市有施設である保健福祉センター内1階のカフェテラスの運営、前記①の作業に加えて(土)(日)にはバイキング形式による食事を提供している。 |
(2)売 店
旭川荘職員、利用者、付近住民に対して日用雑貨、生活用品、食品、弁当、パンの販売の商品、陳列、補給、作業に加えてレジ作業も行う。各施設への出張出店サービスも実施している。更に外商部門として、介護福祉用器具、資材物品、日用雑貨、シーツ、布団などを各施設への物品納入配達業務を行っている。
(3)環境整備
広大な旭川荘敷地内の多くの樹木の剪定、枝材木残さいの処理、落葉の処理、草刈り、草取り、廃棄、防虫剤散布作業等をしている。
(4)室内清掃
旭川荘の数多くの施設の事務室、病室等各室や廊下、トイレの毎日の掃く、拭く、磨く、ワックスがけ等、毎日作業している。また、毎日排出される膨大なごみの搬出、廃棄を行っている。
(5)洗濯作業
旭川荘の数多くの利用者の衣類、上下着ソックス、タオル、布団等各施設から集めたものを大型洗濯機5台で洗濯、更に大型乾燥機6台をもって乾燥している。
(6)運搬作業
旭川荘の各施設の利用者の衣類・タオル・布団等を集荷し、トラックに積み込み洗濯場へ毎日運搬。洗濯・乾燥し終わった衣類等を各施設ごとにカゴに詰め込み、衣類のタタミ作業場へ運搬する。毎日平均5~6tを処理している。
(7)衣類タタミ作業
洗濯工場から運ばれた洗濯済みの衣類は、上着・下着・ソックス・布団など各施設ごと各部屋ごとに分類され、各人ごとにまとめられてきちんとたたみ整理したものをそれぞれの所有者のもとへ配送し届ける。
(8)ベントリー
極端に汚れた衣類は、前記とは別にして別な場所で特別な処理により洗濯、消毒、乾燥して各人のもとに収める作業をしている。
(9)農作業
障害者や高齢者に食生活の改善を趣旨として、身体にやさしい安心できる食材を生産している。基本的に有機減農薬農業を推進し、新鮮な野菜、根菜、実種、葉野菜を中心に栽培し、食堂で使うことを目的に実験的に取り組んでいる。
3. 障害者の仕事紹介
4. 今後の取組みの方針として
(1)障害者雇用の推進(就労支援)
障害のある人も障害のない者と同じ生活をすることが原則であり、当然可能になるということを信じて、支援をねばり強く実施する。福祉施設から一般会社員としての雇用を図る。
そのための方策として
①各人の能力にあった就労支援
障害はあっても各人のもつ能力を見出すこと。例えば、知的障害者であれば複雑な判断が苦手だが感情や体力は障害のない者に劣らない能力を持っている。他人に対して優しい心づかい、思いやりの心があり、体力も大差はない者が多い。その能力を最大限に見つけ出し伸ばし高める支援をねばり強くすること。
②誇りと自信の持てる仕事をさせる
社会の役に立っている、必要とされている、人に喜ばれているという事実の積み上げを日々の指導、支援の中で実感させること。
就労のみに目を向けるのではなく、長期的な生活・習慣・礼儀作法の支援を必要とする。就労前のラジオ体操や日々の朝礼、支援者からの言葉ばかりではなく、障害者からの発言を促すことによって「あの人がやるのだから、私でも出来る、やりたい、やってみたい」の思いを引き出すなど、何かに挑戦させその積み重ねをすることで達成感、充実感を味あわせる指導が良いと思われる。
そのためには仕事の進め方についてはマニュアル化にこだわらず、日本古来の風習でもある親方と弟子のような関係が有効になることが多いと思われる。
③仕事の仕分けによる就労分野の見直し拡大
例えば、食堂の厨房作業の中でも食材の洗い、皮むき、きざみ、運搬、残廃物処理、食器類の片付け、洗浄、配膳など、一連の仕事の流れを見直し仕事内容を精査しながら、作業を出来るだけこま切れにすれば、必ず障害者のできる部分がある。
この作業を根気強く指導支援することで本人にマスターさせることが充実感、達成感となり自信となることが多い。
同一の作業が得意な者もいれば、変化のある作業を好む者もあり、また得意な仕事と不得意な仕事の見分けなど指導者が固定観念にとらわれることなく柔軟な支援から得意な個性の発見がある。
失敗の積み重ねや忍耐から学ぶことも多く、障害者も支援者もこのことで自信を得て成長すると思われる。
(2)仕事と余暇のバランスへの取り組み
人は誰でも仕事のみでは精神的な安定は得られない。仕事と生活そしてレクリエーションのバランスを考えることで、次のステップにつながり成長すると思われる。
生活では家庭との連絡・情報交換、休んだ時の金銭の使い方・付き合う相手など情報交換など重要と考える。更に日ごとの礼儀・種々の作法、目上の人や同僚などとの会話の仕方など、普通のことを普通にねばり強く、ほめたり、注意したり家庭と協力しながら、色んな方法で生活訓練をしているうちに、少しずつ改良されてくるものと考える。また年に数回は少し豪華な旅行や宴会をすることで、リフレッシュし次の仕事に大いに好影響を与えると考えている。
特に経験の少ない障害者には大きな魅力、楽しみであり、「我々でも皆と同じだ。みんながやっていることは私にもできる」という励みになり相互の信頼関係・絆が生まれると考えられる。
また指導者からすれば、宿に泊まり一緒に寝起きすることや宴会を通して合同でごちそうを食べるその中で、各人の日頃の生活態度、クセ、生活習慣等すべて判明し、風呂に一緒に入ることで骨格や身体の特徴を把握することとなり、その後の指導に大きく役立つと考えている。
余暇の中で個々の個性を把握する最大の機会であり、支援の方針を見定めるチャンスと思われる。
(3)農業分野への取り組み
当社が経営する食堂は4店舗ある。食材は市場を通して調達しているが、安全で安心のできる新鮮、有機減農薬農業の野菜が望まれており、要望もある。更に精神障害者の職場として、農作業が有効であるとの報告が多数寄せられておることもあることから実験的に自社消費用として多品種少量野菜の栽培を始めた。規模拡大のための問題点を洗い出して、更に検討を進めることとした。
今後この実験栽培が軌道に乗れば、真空パック製品化も検討し、食材供給に向けて更に社会福祉法人旭川荘のフードセンターに対しても納品したいと考えている。
(4)経営の安定と障害者雇用の推進のバランス
企業として利益の確保を図り、その一方で障害者の雇用の推進・拡大を図る。このバランス、両立させることが経営者に求められている。
基本的には、支援、指導する職員の生活の安定、給与など待遇面の改善を図ること、これら職員の障害者に対する精神面を含めた支援技術・技法などの能力アップのための研修、実習の実施は重要なポイントであると認識している。
一般社会の経済状況は世界的に見ても予断を許さない状況である。そのような状況の下で障害のない者の雇用も非常に厳しい現状である。ましてや障害者の雇用はなおさら厳しいものであり、更に障害者人数は増加の傾向であり、就労は一層厳しいと言わざるを得ない。
このような状況においても、当社は障害者の就労支援から一般雇用に向けて一層の情熱を傾ける努力をしなければならないと考える。このことが当社の使命であり、社会福祉法人旭川荘が目指しているところである。
① | 支援者・指導者の一層の能力アップ研修、そして人間性の向上、資質の向上、技術・技能の向上 |
② | 仕事の開拓 各事業者間の緊密な連絡・連携。同業種・異業種を問わず事業者間の連絡・協力をすることにより障害者の個々の特性に合った仕事・作業の開拓・発掘が図られ雇用の拡大が期待できる。 また仕事においても一連の作業の流れを精査することにより必ず、障害者に適した仕事があることからこの取組みも必要である。 |
③ | 行政、医療、福祉、就労、生活支援センターとの連絡・連携の強化。とくにハローワークなど労働関係機関、高齢・障害・求職者雇用支援機構や国や県の施策の方向、きめ細かい指導、相談窓口との連携をすることが経営にとって重要であると考える。 |
④ | 特別支援学校等教育機関と事業者との情報交換と連携が障害者の就労に大きくかかわってくることから、作業実態に即した学校での教育(訓練・実習)と職場での実習・訓練の実施が有効となると考える。 |
(5)触法障害者の就労支援への取組み
当社の親会社として活動している有限会社トモニーにおいては、平成21年4月から知的障害を有する刑務所出所者(触法障害者)の社会復帰の支援を目的として就労支援を行っている。これは国において犯罪者の確実な社会復帰を目指し、また再び法に触れる行為に及ぶことを防ぎ、善良な市民として地域社会に定着し、その発展に積極的に貢献できるよう、就労支援をはじめとする自立支援の為の施策を国として推進されているものであり、この国の方針に沿って日本で初めて有限会社トモニーが正式会社員として雇用しているものである。そしてその結果として大きな問題もなく職場では同じ仲間と仲良く働き、介護ヘルパーの支援を受けながら民間アパートにおいて、一般社会の中で普通に生活を日々送っている。この雇用については、本人の働く意欲、すなわち働ける、働きたいという強い意志があったが、仕事があり、適当な収入があり、住む家があり、心の通う仲間があり、社会の支援があれば、社会復帰は可能であると考えており、当社もそのノウハウを受け継いで導入することは可能ではないかと考えている。
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