グループ就労訓練 請負型の活用
- 事業所名
- 倉敷化工株式会社
- 所在地
- 岡山県倉敷市
- 事業内容
- 自動車用ゴム部品および一般産業用防振・除振機器,建築用防振・免震
機器の開発・製造・販売 - 従業員数
- 660名
- うち障害者数
- 11名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 2 事務職・製造作業 内部障害 2 事務職 知的障害 6 製造作業 精神障害 1 製造作業 - 目次


1. 会社概要と企業理念、障害者雇用の経緯
(1)会社概要
当社は、ゴム弾性を応用した振動防止技術を柱として1964年に設立された防振ゴム専門メーカーである。
以来、今日まで我が国の基幹産業である自動車業界において、自主技術による高品質な自動車部品の供給に努め、部品メーカーとして確固たる地位を築いている。
また、1970年より、一般産業用の防振・防音関連機器の開発・販売を展開。これらの技術を産業界の各方面に応用することにより社会の要請に応え、多くの方々にご愛顧頂いているが、この先グローバリゼーションの進展に伴い、国際分業や技術開発競争が一段と激化することは必至である。当社はそのなかにあって、いかなる変化にも対応しつつ、時代の要請に一歩先んじることのできる企業をめざし、「より良い製品をより安く創り、社会の進歩に貢献する」ことを使命としていきたい。
(2)企業理念
1) | 倉敷化工は、高い品質と時代が求める価値を持った防振防音技術の提供により、顧客の繁栄と社会の発展に貢献します。 |
2) | 倉敷化工は、お客様の満足を得るために、お客様の期待を上回る商品、サービスを提供しつづけます。 |
3) | 倉敷化工は、従業員に働く喜びをもたらし、豊かな生活を提供します。 |
4) | 倉敷化工は、環境・安全・リサイクル問題に積極的に取り組み、社会的責任を果たします。 |
(3)障害者雇用の経緯
障害者が、その適性と能力に応じて適切な職業に従事することは、働く喜びや生きがいを見出していくことにつながり、「人なりに精一杯生活していく」という自立の考え方と重なるものである。 就労することで、福祉的就労で得る工賃よりも高い賃金を得ることも可能となり、それにより生活の幅も広がってくる。一般就労は、障害者が地域の事業所で一般住民とともに働くということから、「職業を通じた社会参加」という視点でとらえることができ、このことはノーマライゼーションの理念に沿ったものと考えている。
当社は、平成16年頃より、新たに知的障害者の雇用を検討し、就労・生活支援センターや特別支援学校からの推薦で数名を雇用した。その際、雇用前に本人へは工場見学や短期の実習などを行い、受入側には障害者についての教育などを行なった。雇用後の対策としてはジョブコーチを付けたがどの障害者も1年程度で退職してしまった。原因は、「他の仕事がしたかった」「周りになじまなかった」「仕事に飽きた」などであり、事前にしっかりと仕事のマッチングが出来ていれば高い確率で防げるのではないかと思った。
その後、以前よりつき合いのある障害者支援施設から「グループ就労訓練請負型」を提案され検討した結果、退職原因が解消できるのではないかと思い、平成20年から「グループ就労訓練請負型」を開始した。現在そこから3名を直接雇用し、障害者雇用の基礎を築いている。
2. 対応方法、雇用対応
(1)対応方法
障害者5名+指導者1名で1ユニットとして構成し、照明,作業台,スポットクーラーやストーブなどの設備を用意したグループ就労訓練用の特定の作業場所で、個人の能力や適応性に応じた作業を指示し、主に工具などを使用した軽作業と治具掃除を行っている。
また、数量,納期,品質については、無理のない範囲として障害者にあわせ、定期的に指導者とコミュニケーションを取り、障害者1人ひとりの状況や作業環境に問題が無いか把握するように努めている。

(2)雇用対応
グループ就労訓練から雇用へ移行する場合、支援施設と協議し、作業能力および適応性が合い、グループから独立し1人で作業できる人材を選考し、本人意思の確認や面接を行い決定する。その後、雇用後に必要な対応(ジョブコーチ,私生活対応,通勤訓練など)について支援施設と相談し準備をする。
3. グループ就労訓練によりできたこと、グループ就労訓練 請負型の考え方
(1)グループ就労訓練によりできたこと
1) 初期のストレスの緩和 |
新しい場所に1人で入る場合、心細く何もかもが新しい事の連続で、緊張したり気を使ったりしてしまい、思うように行動できずストレスを感じ、悩みの原因となってしまうことが多い。グループ就労訓練では、知っている仲間数名と指導者が一緒になって新しい場所に入るので心強く、面識のある指導者を経由して、指導・指示されるため緊張の度合いも軽減されストレスも最小限でスタートできるというメリットがある。
2) 指導・対応方法の向上 |
受入部署では指導者として事前に教育を受けても、実際に受入れてみると、指導の「タイミング・内容・言い方(強弱)・方法」などが良くわからず、障害者に理解してもらえなかったり、聞き入れてもらえなかったりとコミュニケーションが上手く行かないことが見られる。そのため同じ行動をくり返して問題となってしまうケースが多く、お互いがストレスを感じ、退職原因の一つでもある「周りになじまない」などの原因となっている。よって会社側指導者の実践的な指導・対応方法の知識・能力が重要となってくる。
グループ就労訓練ではグループの指導者が実際に指導・対応しているところを見聞きし、「タイミング・内容・言い方(強弱)・方法」などを学ぶことができる。
また、雇用をした後も本人の内容を指導者が知っているので相談しやすく、1人ひとりに合った指導・対応をすることができる。
3) 定着させ能力を十分に発揮させる。 |
グループ就労訓練は、工場見学や短期の実習とは違い、訓練期間が2年程度と長く作業能力や適応性などを確認できるため、雇用後の本人の能力を十分に発揮できるような配置をすることができる。
また、適材適所に配置することにより、「適している仕事=好きな仕事」となり、障害のない者以上の能力を発揮し、雇用後に「仕事が合わない」「職場になじめない」など問題が起こり難く、職場環境もグループ就業訓練の流れから雇用につなげるため、環境の変化がほとんど無く定着しやすい。
この事により、今までのように、その作業が合うのかどうか把握しきれないまま雇用した結果、「仕事が合わない」や「みんなに迷惑をかける」などの悩みを持ちつらい思いをして辞めていくのを防止することができるようになった。
また、本人が能力を十分に発揮することでスムーズに雇用へつながり、障害者雇用が「難しい」,「対応が面倒」などの考えが無くなり、障害者への見方を変えることが出来き、雇用機会を確実に増やしているのも事実である。
4) 就労訓練の場として活用 |
グループ就労訓練により、雇用につながらなかった場合でも障害者本人の就労訓練となり、仕事の考え方,会社規則の遵守,周囲への順応性などが身につき、次へのステップへとつなげることができる。
(2)グループ就労訓練 請負型の考え方
一般に「請負」とは主にある一定の作業を他の業者に依頼し、数量,納期,品質などについては請負側(支援施設など)が責任を持って行う作業中心での考え方であるが、グループ就労訓練請負型での「請負」は意味合いが変わってくると思う。
一方、グループ就労訓練の趣旨は主に「障害者雇用の拡大」,「実際の就業訓練の場」,「職場開拓」であり、そのため企業は「請負」の作業中心の考え(数量,納期,品質)ではなく、支援施設などと協調し、障害者を受入するために必要な環境・体制を作り、障害者雇用で必要な知識・経験を学ぶ場と考え、障害者と共に働ける環境を目指すことである。
また、企業と支援施設でお互いが歩みより良い関係を気づき無理なく進めて行ける環境づくりをするべきである。
4. 今後の課題と障害者雇用について
今後は障害のある人の就職までの支援体制の充実が進む一方、就職後も継続して働いているかについても把握も必要である。せっかく就職できてもその後続かずに退職してしまうと、本人の就労意欲をそぐだけでなく、我々企業にとっても今後の障害者雇用の後退につながりかねない。当事者、企業のみの責任とせず、就職後も周囲も含めた継続的な支援が不可欠である。障害のある人の働き方は、一般企業、施設のみではなくさまざまな形態があり現在、障害のある人の就労=企業などで働くこと、というイメージが広がっていることは否めず、その結果企業へ就職ができそうな人のみ支援するといった事態を招くことが危惧される。我々のような企業以外にも本人の持っている力に合わせた多様な働き方が必要であると思われる。単に収入を得るためだけではなく、働くことが権利として保障され、権利を保障するための支援が必要とされていることは確かである。就労自体が目的ではなく、さらに充実した毎日を送るために就労があるという考え方の周囲の認識も大切であることを認識している。
この人は一般企業で働くことはできないだろうとか、働けるのは一部の障害のある人のみ、という先入観を周囲が持つということは、障害のある人の就労を阻むことにつながり、障害のある人が働くことは当然の権利として保障されるべきものである、という考えを私たち一人一人が持ち、その上で本人が望む働き方が実現するような支援を考えることが、本当の意味での就労支援の第一歩であると考える。障害のある人が働くことが特別なことではなくなるような社会環境、障害のある人を中心に据えた支援が今求められていると強く感じる昨今である。障害者雇用を広げる場合、作業の種類や場所を増やさなければいけないが、出来る作業が限られることや環境整備(対応者の教育,安全対策)がすぐに出来ないことから、思うようには広げられないのが実情である。今後は、出来る作業の検討や新たな作業場の開拓を進めていき、障害者が能力を十分発揮できる作業環境を作り、基盤となる基本パターンが出来ればと思っている。
障害者の雇用契約に基づく就労の機会の窓は今後も常に広げ、就労の機会を提供し、一般就労への移行を実施していきたいと思う。
そして今後も障害がある人の特性を地域の支援機関、社会福祉施設などと連携することで把握し、技術力、知識や技術を高めて結果的に生産性の向上にもつなげていきたいと思う。また、“就労の場”を通して、障害のある人もない人も、共に働き、共に生きていく社会の実現を目指していきたい。能力開発、職場定着など、総合的な就労支援を倉敷の地から展開すべく今後も企業として努力をしていきたいと思う。そして障害者雇用とその定着の成功例として他社にも自信をもって発信できるよう、障害者自身の体験談、他従業員の意見にも傾聴しよりよい企業になれるよう、これからもチームワークで強い組織にしていきたいと思う。
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