障害者の持っている力を引き出すための工夫・作業環境作り
- 事業所名
- 社会福祉法人三美厚生団
- 所在地
- 徳島県三好市
- 事業内容
- 社会福祉事業(高齢者ケア、障害者支援、保育)
- 従業員数
- 122名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 2 洗車、施設内清掃、洗濯補助 精神障害 - 目次


1. 事業所の概要
徳島県西部に位置する三好市井川町にあり、高齢者施設は、清流吉野川と景勝地・美濃田の渕、阿讃の山々を展望する閑静な高台にある。
昭和42年に樫ヶ丘育成園(知的障害者更生施設)を開設後、みのだ苑(特別養護老人ホーム)、みのだ保育園(保育所)、みのだデイサービスセンター(通所介護)、みのだ在宅介護支援センター(在宅介護支援事業)、みのだデイサービスセンターひだまり(認知症対応型通所介護)等を開設し、運営を行っている。
高齢者ケア
名 称
|
種 別
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みのだ苑 | 特別養護老人ホーム |
みのだデイサービスセンター | 通所介護事業所 |
みのだデイサービスセンターひだまり | 認知症対応型通所介護事業所 |
みのだ在宅介護支援センター | 在宅介護支援事業所 |
障害者支援
名 称
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種 別
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樫ヶ丘育成園 | 知的障害者更生施設 |
保育
名 称
|
種 別
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みのだ保育園 | 保育所 |
・沿 革
昭和42年9月: | 社会福祉法人三美厚生団として設立認可 |
昭和42年9月: | 知的障害者更生施設・樫ヶ丘育成園開設 |
昭和50年5月: | 特別養護老人ホーム・みのだ苑開設 |
昭和53年4月: | 保育所・みのだ保育園開設 |
昭和62年2月: | 通所介護・みのだデイサービスセンター開設 |
平成 6年4月: | 在宅介護支援・みのだ在宅介護支援サービス開設 |
平成 8年3月: | 認知症対応型通所介護・みのだデイサービスセンターひだまり開設 |
・サービスの内容
特別養護老人ホームみのだ苑は、利用者が要支援、要介護状態になっても、住み慣れた住居や地域において可能な限り自立した生活を営むことが出来るようなサービスを提供している。
また、「敬・愛・信」の法人理念、介護保険法の理念のもと、地域に根ざし、信頼され親しまれる施設、開かれた施設づくりに努め、地域社会における高齢者福祉の推進、社会貢献を常に実践している。
2. 障害者雇用の経緯と状況
障害者雇用に至っているのは高齢者ケア部門のみではあるが、同法人には、知的障害者支援施設も設置しており、障害者支援も行っている。その為、当事業所は常日頃から障害者雇用においては念頭にあり、それが少しでも社会貢献に繋がればという強い考えを持っていた。そして、ハローワークや障害者就業・生活支援センターと連携を取ることで、初めての障害者雇用に至った。
最初に雇用したのは、知的障害者Aさん女性。それまでは、三好市にある知的障害者の授産施設に通所していた。通所している当時から、誰よりも真面目に働き、働くことが大好きな人ということで、Aさんを是非一般就労させたいという授産施設側の強い意向もあったが、それよりも一番はAさん本人が一般就労を強く願っていた。色々な人たちの一般就労への強い思いがあり、Aさんを当事業所に受け入れることになった。
当事業所は障害者雇用については前向きな考えであったが、経験がなく、いざ受け入れの話になった時には、職場の現場内での対応はどうするべきか、どのような作業内容がAさんに適しているのか等、戸惑いや不安があり、簡単には常用雇用には至らなかった。その不安を少しでも解消するために、常用雇用ということではなく、まずは、トライアル雇用を利用して3ヶ月間Aさんの仕事ぶりを観察し、その後、継続して雇用するかどうかを決定することになった。
また、現場の職員が付きっきりで指導するというのは時間的にも余裕がなく難しいと感じた。障害者への仕事の役割や指示の出し方においても初めてのことなので、理解が十分に足りないということで、トライアル雇用と同時に、ジョブコーチ支援事業を利用して、専門的にジョブコーチが支援に入ることになった。
現場の職員とジョブコーチは、その都度Aさんについて、相談や情報交換しながら、一緒に仕事の役割を決定し、改善が必要なところはそれに応じて改善していき、より働きやすい環境作りに努めてきた。
このようなAさんの成功例があったので、続いて二人目(Bさん)の職場実習受け入れに至った。
3. 障害者の業務配置
(1)Aさん 知的障害者 女性
作業内容は、当事業所で使用している公用車の洗車作業と、デイサービスで使用している室内の清掃作業を一人で担当している。
勤務時間・・・ | 13:00~17:00(月・水・金曜日) 13:00~17:30(火・木曜日) 土日祝日は休み |
作業内容(時間)・・・ | ①洗車作業(13:00~15:30) |
②デイサービス内机上片付け、掃除機かけ(15:30~16:30) | |
③デイサービス内トイレ掃除(16:00~17:00) | |
④デイサービス他トイレ掃除(17:00~17:30)(火・木曜日のみ) |
① | については、毎日、職員が洗車する車を用意する。道具はAさんが自分で準備する。洗車から車内清掃までを一人で担当している。一台が終了する毎に、職員のところへ行き、報告を行う。毎日、2台から3台の洗車作業を行っている。 |


② | については、デイサービス利用者が帰られた後の机上の片付け(湯呑やお菓子の片付け、机拭き)、床の掃除機かけを一人で担当している。 |
③ | 、④については、デイサービス内のトイレ清掃を担当している。トイレのゴミを捨て、便器や床を磨いて清潔を保っている。 |
(2)Bさん 知的障害者 男性
作業内容は、当事業所の各居室トイレ、共同トイレ、フロアの清掃、洗濯補助の作業を担当している。こちらは一人ではなく、他に2名の女性パート職員が一緒に働いているが、分担して行っている。
(※)女性パート職員は、10:00~15:00までの勤務
勤務時間・・・ | 8:45~16:45(日・祝日は休み) 他はシフト制で平日休みの時もある。 |
(※)勤務時間については、Bさんの通勤手段である公共バスの運行時刻に合わせて調整を行った。
作業内容・・・ | ①トイレ清掃 |
②フロア清掃 | |
③洗濯たたみ(他の作業の場合有り)(15:00~16:45) |
①については、女性パート職員の指示に従い、2階、3階のトイレ清掃を一人で実施していく。
②については、シートモップでゴミを取り、その後、濡れモップで綺麗に拭いていく。


③については、女性パート職員が帰った後に、洗濯場の職員の補助作業を行う。また、他に一人で出来る作業があれば、その都度職員が指示を出す。
4. 取り組みの内容と効果
(1)事例紹介I
洗車作業、室内清掃を担当しているAさんの事例について。
Aさんの場合、平成22年2月1日より3ヶ月間トライアル雇用を利用する。
トライアル雇用と同時に、ジョブコーチ支援事業を利用する。
始めに、当事業所と障害者就業・生活支援センター、ジョブコーチとAさんを交えて、Aさんには何が出来るかを検討した。以前は、職員が仕事の合間を見て、公用車の洗車作業を行っていたため、なかなか実施出来ていなかった。Aさんは、授産施設に通所している時に洗車作業の経験もあり、また、清掃が大好きであった。一人でもコツコツと真面目に取り組める性格ということもあり、結果、今の作業に至った。
そして、ジョブコーチ支援が入り仲介役としてAさんや職員と相談を行ってきた。Aさんが困っていることや希望していること、悩んでいることなどが把握でき、Aさんが一人でも働きやすくするために、様々な工夫を行ってきた。
冬場の寒い時期での洗車作業では、冷たい風を遮るためにブルーシートで作業場の周囲を囲み、少しでも寒さを軽減した。また、最初は水しか出なかったところを、お湯が出るように配水管を新たに引いた。Aさんの作業効率を上げるために、防寒具や長靴を準備し、働く上での作業環境を少しずつ整備していった。
洗車作業中は、ほぼ一人で行うことが多い。確実に一人でも作業が出来るようにするために、また、後で職員が確認出来るために、「洗車日誌」というチェック表を活用し、日々の仕事の状況を把握している。当初は一部洗い忘れることがあり、綺麗に出来ていなかったことが度々見られたが、今はそのチェック表を活用することで、作業手順の中でうっかり忘れることが無くなってきている。完璧に毎日こなせるということではないので、職員の確認も必要ではあるが、安心してAさんに仕事を任すことが出来るようになった。
そして、平成22年4月30日トライアル雇用を終了し、常用雇用となった。

(2)事例紹介II
トイレ、フロアの清掃、洗濯補助作業を担当しているBさんの事例について。Bさんは、平成23年3月に特別支援学校を卒業した。卒業後の平成23年3月14日よりAさんと同様、3か月間トライアル雇用を利用し、トライアル雇用と同時に、ジョブコーチ支援事業を利用する。
Bさんは、在学中に当事業所にて職場実習を二度に亘り行っていた。その時の評価が良かったということと、先に常用雇用になっているAさんが成功していることから、スムーズに受け入れが決まった。
働き始めてから、Bさんには課題が多くあった。毎日、同じ作業の繰り返しということで、集中力が欠けてしまうことがあった。集中出来ていない時には、作業遂行力も低下しがちであった。時々ではあるが、仕事中も眠たそうにしている。
トイレ清掃においては、一人で進めていく。しかし、一人では十分に出来ないことがよくあった。ペアになってするほどの人員にも余裕はないので、一人でも手順通りに出来るように、「作業チェック表」を作成し、それを活用することになった。「作業チェック表」は、一緒に清掃を担当している女性パート職員とジョブコーチとで話し合い作成した。
一つのトイレ清掃が終了する毎に、自分で手順通り出来ているか、見落としがないかをチェックするようにし、全部出来ていたら○印をし、次へ進んでいく。
それを活用するようになってからは、本人の作業意識も高まり、単純なミスが軽減されてきた。一緒にしている女性パート職員らの指導や励ましもあり、毎日欠勤や遅刻をすることなく、就労出来ている。
仕事中、眠たそうにしているのは、睡眠不足が原因ということであった。Bさんは、グループホームへ入居しており、そこでの生活面についてもグループホーム職員や世話人に協力を依頼し、早めの就寝やホームでの過ごし方について、日頃から話をしてもらっている。Bさん自身で「自己チェック表」という睡眠時間等のチェックを付け、それを女性パート職員が確認をし、必要に応じて助言や相談を行い、日々の安定に繋がっている。
そして、平成23年6月13日トライアル雇用を終了し、常用雇用となった。


5. さいごに
障害者を雇用することは難しいのではないか?一人では何も出来ないのではないか?そのようなイメージを持たれている事業所は少なくはないのではないだろうか。
しかし、出来ないことを出来るようにするためには何が必要か?どういった手段をもってすれば一人でも任せられるのか?工夫(アイデア)や環境作りによっては、障害者であっても一人の職員として十分に力を引き出せることがあるのだ。
そのようなことが事業所だけでは困難と感じた時には、様々な関係機関を上手に利用すれば良いのである。それらを交えて話し合い、一つずつ解決していけば、きっと良い結果に結び付くであろう。
当事業所の障害者雇用に対する柔軟な考え方や対応、熱心に取り組んでいる姿は、今後の安定した障害者雇用に大いに期待させられると感じた。とどまることなく未来へと繋げていただきたい。
第1号職場適応援助者 下泉 美幸
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