地域に根ざした福祉をめざして~障害者雇用のとりくみ~
- 事業所名
- 社会福祉法人輪光福祉会 輪光無量寿園
- 所在地
- 鹿児島県曽於市
- 事業内容
- 特別養護老人ホーム、短期入所生活介護、通所介護事業所、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所、保育園、養護老人ホーム
- 従業員数
- 144名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 介護補助 内部障害 知的障害 3 介護補助 精神障害 - 目次


1. 事業所の概要
輪光福祉会は、浄土宗本願寺派の輪光寺を母体とし昭和39年に社会福祉法人を設立。昭和39年12月輪光保育園開設、昭和47年2月県内で7番目に特別養護老人ホーム輪光無量寿園として開設した。
特色としては、母体が輪光寺ということもあり、毎月の輪光寺住職による法要や輪光保育園児との交流を踏まえた誕生会や慰問を通じて心のケアに取り組んでいる。
また、「ありがとう」「おかげさま」という報恩・感謝の心をモットーにご利用者様、地域住民の皆さまの快適で穏やかな生活の一助となればと考えている。
(1)事業所の業種
- 施設サービス
特別養護老人ホーム 輪光無量寿園
輪光無量寿園 短期入所生活介護 - 在宅サービス
輪光無量寿園 通所介護事業所
輪光無量寿園 訪問介護事業所
輪光無量寿園 居宅介護支援事業所 - 保育サービス
輪光保育園 - 市指定管理
曽於市養護老人ホーム 清寿園 - 自立支援
指定障害福祉サービス事業 相談支援事業所
(2)事業の内容
- 食事・入浴・機能訓練・日常生活においてのお世話や相談援助等
- 利用対象:要支援・要介護の方
(3)障害者雇用の状況
従業員数 144名
内訳 正規職員 59名
パート(臨時)職員 85名
内 身体障害者 1名 知的障害者 3名
仕事の内容
A 高齢者介護
B 介護補助
C 洗濯業務
勤務態様
日勤看護職員 | 8時00分 | ~ | 18時00分 |
A超早介護職員 | 6時30分 | ~ | 15時30分 |
B早出介護職員 | 7時00分 | ~ | 16時00分 |
C早日勤介護員 | 8時00分 | ~ | 17時00分 |
D日勤介護職員 | 8時30分 | ~ | 18時00分 |
E日勤介護職員 | 9時00分 | ~ | 18時00分 |
F日勤介護職員 | 9時30分 | ~ | 18時30分 |
G遅出介護職員 | 10時00分 | ~ | 19時00分 |
H夜間勤務職員 | 17時30分 | ~ | 9時30分 |


2. 障害者雇用の経緯
特別支援学校の実習を受け入れた事があり、その後毎年特別支援学校の職場体験学習を1~2名受け入れていた。その事がきっかけとなり、雇用に向けての検討が始まり、平成21年4月、鹿児島障害者職業センターからのジョブコーチ支援を利用することで、新規卒業の知的障害の女性Aさんの雇用がスタートした。
介護の現場としては「人と接する仕事」はコミュニケーション力が必要、知的障害のある彼女を受け入れ、一緒に働く事でトラブルはないのか、仕事はスムーズに覚えられるのか、伝えたことがどのくらい理解できるのか等初めは不安が多かったが、雇用開始にあたっては、鹿児島障害者職業センター、牧之原養護学校、おおすみ障害者就業・生活支援センター、Aさんの住居となるグループホームの担当者等が集まってのケース会議を開催するなど、就労時の役割分担や本人の生活面も含めて多くの支援機関の協力があり、問題等も少なく無事スタート出来た。就業後は、本人の作業内容の理解や周囲の方に対する作業の教え方のアドバイスを行うために、定期的に地域障害者職業センターからジョブコーチが派遣され、指導や助言等を行い、多少の問題等はあるが介護スタッフの一員として育ってきている。
Aさんもとても意欲的で、居住のグループホームから通勤がかなり遠いこともあり周囲としては不安もあったが毎日頑張り、介護の知識増加、技術力の向上により、周囲のフォローなしでも介助が出来るようになってきた。最近は本人の前々からの希望が叶い、ホームヘルパーの資格取得へ向けての受講に施設の協力を得て頑張っている。
また、職員会議において、「知的障害の理解について」をテーマに障害者就業・生活センターから講話の時間を設定し、知的障害者の特徴や傾向、仕事を共にしていく上で気をつけることなど、勉強会も実施した。
その後、Aさんの頑張りと雇用主側の理解、支援機関の関わりもあり翌年の平成22年に更に2名の知的障害者が雇用された。
また、おおすみ障害者就業・生活支援センターの紹介で更に身体障害の男性も採用され4名の障害者雇用となった。
3. 取り組みの経緯、背景と取り組みの効果
(1)取り組みの経緯、背景
3名の知的障害の女性は、作業内容の理解についてはそれぞれ担当のスタッフ(プリセプター)を配置することで常にわからない部分は即対応できる体制がとられていた。
洗濯や清掃作業についても慣れるまで時間がかかったが、担当のスタッフの根気強い関わりにより、くりかえし伝えることで徐々に技術が向上していった。
本人達の作業を効率よく進めるために洗濯場に新しい乾燥機と清掃用の機械器具を独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構からの助成金を利用して購入した。
担当スタッフが指導のなかで伝え方等に迷った部分については定期的に訪問する地域障害者職業センターのジョブコーチのアドバイスを受けることで解決していき、就職当初は、介護業務より清掃、洗濯業務がほとんどで直接介護に関わることは少なかったが、徐々に入所している高齢者とのコミュニケーションも上手にとれるようになり、食事介助や入浴介助から始まり少しずつ介護の仕事も経験を重ねていった。
高齢者に「ありがとう」といわれることが働く喜びにつながり笑顔も増え、笑顔がさらに入所者を笑顔にするという相乗効果も表れてきた。
多くのスタッフの中で働く上で人間関係など、悩むこともあったが、彼女たちの共通した課題としては、家庭環境に問題があり仕事が終わって帰宅してから悩みをしっかり受け入れてもらえる人がいないことが上げられる。
職場の担当スタッフや職業センターのジョブコーチも、介護や作業の技術的な指導や助言よりもこの悩みや、思っている事を聞いて受け止めることで、気持ちを安定させることに気をつかったとのこと。信頼関係をつくっていくために担当スタッフと交換日記をするなども行った。
昼休みや少しの休憩時間に話を聞いて共に笑ったり悩んだりできる関係づくりが仕事の定着に繋がっているように見受けられる。
また、一人の身体障害の男性については、介護の経験はあるがマヒのある手でどの程度自分ができるのか、利用者やスタッフに受け入れて頂けるのかと不安な思いで就職したが、高齢者介護に対する熱心な思いが伝わり現在はユニットの責任者として指導の立場で仕事をしている。お話しする度に「この仕事について良かった。輪光無量寿園で働けてよかった。」と話をする。
輪光無量寿園は障害があっても、自分のできる力を十分に発揮して誠意をもって仕事に臨めばしっかり評価してもらえる。そんな職場なのだと感じる。
(2)取り組みの効果
特別支援学校の職場実習の受け入れを試みたことで、一人の知的障害の女性の雇用に始まり、多くの就労支援機関の存在や役割を理解される中で現在では4名の雇用をされている。
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構からの助成金を利用して購入した乾燥機と清掃用の機械器具は、本人達の毎日の作業を効率よくする上でとても効果的である。
清掃用の機械器具も同様に本人達が使いやすい器具を選定して購入したため作業の能率も上がりスピードアップにつながっている。
又、毎日の多量の洗濯物を乾燥機で処理して畳んで仕分けしていく作業を行っているが、新しい乾燥機が設置されたことで作業のスピードもあがり、その短縮された時間で高齢者の方への声かけや介護にあたることができるようになった。
「この方たちが、ここで仕事をされていることがとてもありがたい事です。彼女たちの笑顔が入所されている高齢者の方を笑顔にしています。彼女たちが輪光無量寿園で働いてくれることが私たちの喜びです。」と副施設長さんのことばが印象的だった。
常に優しく声かけをして頂き、そのことが彼女たちの自信へもつながっているのだと思う。また、一般のスタッフにも理解がひろがり全体の雰囲気も明るくなったとのことだった。
特別支援学校からの新卒の採用とあって、学校の担任や進路指導の先生の関わりが密にもてることもプラスに働いている。問題が発生した時に学校へ連絡し学生のときはどうだったのか、そんなときはどう対応したらよいのかの助言を受ける事ができる。
鹿児島障害者職業センターのジョブコーチの訪問も彼女たちの定着支援に大きな効果を発揮している。ジョブコーチが関わる中で技術面はともかく、仕事以外での悩み(家庭での環境の変化や家族との関わりなど)が作業に影響することもあり、そのような場合でも早めに本人から直接聞く事で、学校や障害者就業・生活支援センターに繋げ連携した対応をしている。どこかの機関が抱え込むのではなく、関係機関が一緒に考える体制が定着してきていると考える。
就職した全員が一人も辞めることなく定着につながっているのは、施設側の常に早めの対応と多くの関係機関の連携した取り組みの成果だと考える。
4. 今後の展望と課題
特別支援学校の職場実習の受け入れは今後も継続される意向とのこと。それを機会にまた更に特別支援学校からの卒業生の雇用を検討して頂きたい。
大隅地域では大きな企業が少なく、障害者雇用についても積極的な事業所も多くはない。そのような状況のなかで、輪光無量寿園の取り組みを地域の事業所に広く知って頂くことは障害者雇用を意識づけしていく上で大切なことである。おおすみ障害者就業・生活支援センターとしても色々な場面で紹介していきたいと考えている。
知的障害者の就労について常に課題となるのは通勤の問題である。多くの場合、自動車運転免許を取得していないため、自転車やバスの利用や親の送迎が必須となる。輪光無量寿園の場合も同様で、3名の知的障害者の女性についても通勤距離が遠く、不便な思いをしている現状がある。
輪光無量寿園では、研修委員会で年間の研修計画を立て毎月1回勉強会を3施設の全員が参加して実施している。職員会議やこのようなスキルアップのための勉強会の機会が多い施設である。
せっかく頑張って日常の業務に励んでいるので会議や研修もしっかり受けて技術的にも精神的にも更に向上してほしいというのが事業主側の考えであり本人達もそのように希望しているが、なかなか参加できないでいるのが現状であった。そこで今回、施設としては現在の3名の利用と今後更に障害者雇用の可能性を考えて敷地の近くに障害者用のグループホームを新設される予定(計画中)である。今後、実習の際の利用も相談が可能とのことで画期的な取り組みである。
地域に根ざした福祉をめざすという目的を実践する意味で、この新設されるグループホームの利用についても、輪光無量寿園で働く障害者だけでなく、地域の企業に就職したが通勤手段に困難があり、必要とする人には利用の相談に応じたいとのこと。
保育園の運営から高齢者施設、障害者雇用、グループホーム運営と地域の人の幼児期から高齢者・障害者になってもすべての人生で貢献できる施設へと努力している。又、この他に今年4月よりボランティアの推進や地域での福祉活動を更に理解して頂くために、ボランティアグループGENKIを発足し活動している。
今後は更に多くの機関と連携しながら、現在働いている障害者ができるだけ長く、安心して楽しく続けることができるように応援していきたい。



アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。