きっかけは、〔障害者職業生活相談員の全店配置!〕という会社判断
- 事業所名
- 株式会社 西條
- 所在地
- 北海道名寄市
- 事業内容
- 総合スーパー・ホームセンター等、道北に12店舗展開する小売業
- 従業員数
- 1,063名
- うち障害者数
- 30名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 3 システム、売場 肢体不自由 9 売場 内部障害 1 チェッカー 知的障害 17 売場 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要
(1)沿革
1947年、西條商店として名寄市で創業。1957年、西條呉服店を設立。1973年、百貨店法による百貨店登録。その後、稚内市、士別市へ進出し道北地方有数の小売企業に躍進。1981年、社名を株式会社 西條へ変更し、現在に至る。
1990年代、中心市街地にあった稚内・士別の両店を郊外へ移転。地域唯一の総合量販店として店舗の大型化とアメニティを実現するなどし、商業をめぐる環境変化にいち早く対応したため、売上を飛躍的に伸ばした。
1990年代末以降、北海道拓殖銀行の破綻をきっかけに道内経済が低迷。各地の百貨店・量販店も苦戦を強いられるなか、西條は枝幸・東神楽・中富良野への新規出店、ホームセンター部門の移転新築(名寄)、既存店舗の大増築(名寄)、新業態への挑戦(スーパーセンター・ミニスーパー)、既存店舗のリニューアル(稚内・士別)といった積極策を次々に打ち出し、経営の安定化に努めた。株式上場を真剣に目指したのもこの時期である。
(2)会社概要
現在、本部を置く名寄市をはじめ、士別市、稚内市、枝幸町など北海道北部に12店舗(総合スーパー、ホームセンター、スーパーセンター、ミニスーパー等)を展開する小売業の会社である。地域で暮らす人々との絆を大切にしながら、地元貢献を経営の原点とし、暮らしの近くにあるショッピングセンターとして、地域のニーズに応える販売活動を通じて地域の活性化に傾注している。従業員数は1,063名、うち障害者30名で、そのほとんどが売り場に従事している。
平成23年8月期決算、年商206,26百万円。
『 感謝・奉仕・前進 』が当社の経営理念である。
地域のお客様に支えられてお店があることに感謝し、その感謝の気持ちを持って地域ニーズに応えられる商品サービスをお客様に提供させていただき、常に地域貢献を念頭に新業態にチャレンジすることを目標としている。
(3)障害者雇用の経緯
企業の障害者雇用の義務化が法制化された当初は、充分な取り組みが行われておらず、障害者雇用納付金を納付する側であった。平成16年の申告実績は、労働者数1,102名、障害者雇用数17名、雇用率1.54%であった。この無駄を省くことが積極的な社会貢献につながるというストアマネージャーの提案が障害者雇用のきっかけとなり、社全体の雇用計画で地域のニーズを第一に進めてきたことが、このような提案に繋がったともいえる。しかし、受け入れる会社側としては、既存の従業員とのコミュニケーションはうまくいくのか、仕事を教えていく上での厳しさに耐えられるのだろうか、どうしたら周囲の従業員は暖かく受け入れてくれるだろうかなど、障害者雇用への不安の声が多く挙がっていた。そのため、地元ハローワークに協力支援を依頼したり、美深高等養護学校等からの障害者紹介に応じトライアル雇用制度を利用するなど取り組んだところ、障害者への認識の変化が現われてきたのである。
その結果、会社全体(特に店長など管理職クラス)が不安要因としていた周囲とのコミュニケーション部分については、全くの取り越し苦労だったかのように、障害者本人から現場に溶け込み、周囲も違和感なく受け入れ、自然と現場に必要な戦力として認知されるようになった。これは、障害者本人の就業意欲や業務を修得しようとする姿勢、また真摯な言動と努力を見てとった現場が障害者をスムーズに受け入れたことにより、会社トップや店長クラスの危惧していた不安を一掃出来たということである。まさに「案ずるより産むが易し」これが当社の障害者雇用への取り組みの原点である。
2. 障害者の雇用状況
(1)採用方針
障害者を雇用する場合、まず、ハローワークに求人申し込みをし、ハローワークからの紹介によりトライアル雇用制度や特定求職者雇用開発助成金等を活用しながら採用している。また、地元高等特別支援学校、就業・支援施設、地域障害者職業センター、職親会等と連携を図り、知的障害者の受け入れを行っている。採用する際には仕事に対する意欲と適性、健康面に留意し、総合的に判断している。
(2)障害者雇用状況
当社には、平成23年9月時点で、30名の障害者が働いている。障害の種類は、聴覚障害、肢体不自由、内部障害、知的障害で、そのうち5名は重度障害者である。
障害者雇用率は3.40パーセントという高さであり、勤続5年以上の障害者数が16名と、障害者数の66.6パーセントを占めていることは職場定着の高さも示している。
(3)障害者の職場配置
障害の部位・程度により、事務所での伝票入力、売り場の清掃、接客、チェッカーなど可能な職場・職務を考え配置している。知的障害者は商品の品出し等が主な業務となっている。平成19年6月には精神障害者を初めて採用し、惣菜等を作る調理関係業務を担当させるなど常に新職場・職務を創出し、新しい仕事の場を広げている。
(4)障害者が従事している業務内容
① 聴覚障害者 3名: | システム(1名)、売場(2名)を担当している。 |
② 肢体不自由 9名: | 全員売場を担当している。品出、陳列、接遇、鮮度チェック、定番商品発注、他売場での全業務を担当している。 |
③ 内部障害者 1名: | チェッカー(レジ)を担当している。 |
④ 知的障害者 17名: | 全員売場を担当している。品出、陳列、パッキング、賞味期限切れ商品撤去、他、開店前準備作業を担当している。 |
【作業施設の整備・改善 例】
① | 肢体不自由者のチェッカー配属では、チェッカーまで届かない為、専用の踏み台を作成し業務に支障の出ない工夫をする。 |
② | 聴覚障害者には名札に障害者であることを表記(保護者、本人の承諾を得る)することで、売場でのお客様とのトラブルもなく接客業務についている。 |


(5)教育訓練
各店舗に障害者職業生活相談員が配置され、業務指導するとともに生活相談等にもあたっている。知的障害者については作業になれるまで、シフト制で二人体制での作業実施など専門担当者を配置し、働く現場で実際に作業をおこなうことによるOJT研修を行っている。また、ジョブコーチの派遣を受けたり、フォローアップのためのミィーティングや家族との話し合いなど定着のための取り組みも行われている。

3. 取り組みの内容、取り組みの効果
(1)取り組みの内容
「国の障害者雇用推進」への経営トップの理解のもと、平成17年前後から障害者雇用の積極的取り組みを開始する。
最初に取り組んだのが、当社全店店長の「障害者職業生活相談員資格」の取得である。その為には、札幌で開催される「障害者職業生活相談員資格認定講習」への遠方(稚内店等の)からの出席に関わる時間と費用の問題をクリアしなければならなかった。二日間にわたる講習なので、中には前泊を含めて二泊三日を要す該当者もいたが、ここは会社の理解を得てクリアすることができた。その翌年には店舗所属の後方系マネージャーの同資格取得、以降人事異動等で資格保有者不在となる都度に、「障害者職業生活相談員資格認定講習」へ人材を送り込んできた。
また、障害者雇用納付金・給付金制度の趣旨を全社に浸透させ、その給付を各店において責任按分するルールを作成した。障害者雇用率の高い店舗には経費として多くを還元し、障害者雇用率の低い店舗からは徴収するというものである。
また、毎月開催される店長会議において障害者雇用の成功事例、ジョブコーチの活用例を紹介・発表して会社のノウハウとして共有を図ってきた。
(2)取り組みの効果
上記取り組みの結果、「障害者職業生活相談員」の全店配置、特に大型店における複数配置を実現し、障害者を受け入れる環境作りが進んできている。このことによりジョブコーチによる対応可能業務の発掘等と合せて障害者の安定就労(=勤続年数の長期化 5年以上勤務者66.6%)にも繋がってきている。
障害者雇用納付金制度においても、平成17年度までは納付する側だったが平成18年度から今年度までは調整金の給付を受ける側にいたっている。
障害者雇用優良事業所として平成19年度に「障害者雇用促進協会長表彰」、平成21年度に「北海道知事表彰」、平成23年度には「厚生労働大臣表彰」を受賞した。
店長・マネージャー・同僚、当事者からは次のようなコメントが寄せられている。
店長談: | 一人の障害者をある部門に投入すると、障害者本人とのコミュニケーションは勿論ですが、障害者を支えていくために、その部門の既存社員間でのコミュニケーションの活性化が必要になり、結果として、その部門全体のコミュニケーション・行動力が向上するという想定外の良い効果がもたらされました。 |
マネージャー談: | 一度修得した業務に関しては、他の従業員と比べて全く遜色ないレベルの結果を残してもらっています。今では、部門内の日々の業務オペレーション上、必要不可欠な人員としてシフトに組み込んでおります。また、その期待を裏切るようなことが1回もないので、さらなる業務対応範囲の拡大を図ろうと思います。 |
同僚談: | 仕事への取組姿勢がすばらしく、決められた業務は、求められる時間内にしっかりと消化しています。全く障害のない者と変わらず、普段も楽しく仕事しております。 |
障害者談: | 入社して間もないころは不安もありました。でも、回りの先輩達が、何度失敗しても、根気よく私が分かるまで(出来るようになるまで)仕事を教えてくれました。その期待に応えたい、そう思って頑張ってきました。できることも少し増え、今はお客様と接することのできる売場にいることが楽しく思えます。 |
4. 今後の課題と要望
今後は、一人でも多くの障害者が、また様々な障害を持った人たちが働きやすい職場環境を構築するよう地域社会に貢献していきたいと考えている。
障害者が職場に定着し、継続して仕事を続けるには私生活への支援も大切であることが分かってきたが、現時点では、社内での様々なサポートは行っているが、社外での生活や行動への支援までは十分な対応はできていないところである。障害者が安定した生活を送ることができれば、職場でも意欲をもって仕事に取り組むことができることから、私生活面でのサポートにも取り組んでいきたい。
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