有資格障害者と知的障害者の雇用促進で雇用率向上を実現
- 事業所名
- 医療法人杏林会
- 所在地
- 青森県八戸市
- 事業内容
- 病院、介護老人保健施設、認知症高齢者グループホーム、精神障害者グループホーム、訪問看護ステーション、在宅介護支援センター
- 従業員数
- 1,190名(内短時間27名)
- うち障害者数
- 15名(常用 15名(うち重度2名))
障害 人数 従事業務 視覚障害 2 マッサージ、介護補助(清掃) 聴覚・音声言語機能障害等 2 介護補助(清掃)、リハビリ(言語聴覚士) 肢体不自由 2 X線撮影、看護 内部障害 知的障害 7 介護補助(清掃) 精神障害 2 看護、介護 - 目次

(みちのく記念病院)外観
1. 法人の概要、障害者雇用の経緯と雇用状況
(1)法人の概要
平成2年1月に創立した医療法人杏林会は、昭和63年に開設した青森県八戸市の「みちのく記念病院」(414床)を母体として、平成4年5月に介護老人保健施設「リハビリパーク(開設時リハビリ保養館、平成14年に新築、名称変更)」を八戸市に開設、さらに平成11年5月「老人保健施設リハビリパーク仙台東」(定員100名)を宮城県仙台市若林区に、平成12年5月「介護老人保健施設リハビリパークみやび」(定員100名)を宮城県多賀城市、平成12年11月「介護老人保健施設リハビリパークさくら」(定員100名)を宮城県柴田郡、平成14年5月「介護老人保健施設リハビリパーク花もよう」(定員150名)を宮城県石巻市、平成15年5月「介護老人保健施設リハビリパークあやめ」(定員100名)を宮城県大崎市(旧古川市)、平成15年6月「介護老人保健施設リハビリパーク高砂」(定員100名)を宮城県仙台市宮城野区、平成17年5月「介護老人保健施設リハビリパーク目黒」(定員120名)を東京都目黒区に開設している。
また、平成19年4月には「新横浜こころのホスピタル」(病床数218床)を神奈川県横浜市に、同年同月に岩手県花巻市では、廃止された旧岩手労災病院の後継医療機関として、新たに「イーハトーブ病院」として開設し、さらに、同年8月には「イーハトーブ病院」に併設して「イーハトーブ介護リハビリセンター」(定員150名)を開設している。また、その他宮城地区には「高齢者グループホームくつろぎ保養館仙台東」を開設している。
このように、現在、病院3か所、老人保健施設9施設のほか、精神障害者グループホーム、認知症高齢者グループホーム、訪問看護ステーション、在宅介護支援センター等を運営している。さらには、関連法人の「社会福祉法人杏林会」は「特別養護老人ホームリハビリパークえんぶり物語」、「ケアハウス(軽費有料老人ホーム)華物語」、「アイリスデイサービスセンター」を運営している。
当法人では、「自己決定の尊重」、「継続性の尊重」、「残存能力の尊重」の高齢者ケアの3原則を基本理念としながら、人々が安心して歳を重ね、高齢期においても誇りをもって暮らせる社会や、また年齢や障害の有無に関わらず誰もが自由で独立した存在として尊重される豊かな福祉社会の形成を求めて、法人内及び関連法人の病院・施設間、さらには地域の関連機関との連携を密にし、包括的なサービスのネットワークを構築しながら、医療・リハビリ・看護・介護・(支援)相談の各チームの共同アプローチを実践し、地域の医療・介護ニーズに応じたサービス、利用者のための質の高いサービスの提供をめざし、日々努力を重ねている。
(2)障害者雇用の経緯と雇用状況
① | 障害者雇用の経緯 法人概要にあるように平成11年から急速に事業を拡大していく過程で、平成18年4月に言語聴覚士(身体障害者)、平成19年3月に診療放射線技師(身体障害者)、平成20年3月看護師(精神障害者)の有資格の専門職員を採用していたが、特段障害者の職域拡大を図っての募集ではなく通常の募集であった。 また、平成20年4月に宮城県立名取養護学校から知的障害者(重度外)の紹介があり、当時、「リハビリパーク仙台東」では清掃員に欠員を生じていたこともあって、試行的に採用した。この時の実績と現場における評価が、後に介護補助(清掃)分野の採用拡大へと繋がっていく先駆けとなっている。 この時点では、雇用する障害者は4名であり、法定雇用率は依然未達成のままであった。 このような時期に、公共職業安定所からの指導、勧奨もあり、法定雇用率の達成を経営環境の一つとして受け止めるよう方針の転換を図ることとし、平成20年度から、各施設の所在地において、地区の特別支援学校への訪問や、ハローワーク主催の障害者就職面接会の場に参加し、障害者雇用の拡大に結び付けていった。 当時、「リハビリパーク花もよう(宮城県石巻市)」では、介護補助員(清掃)の高齢化が目立ち始めており(定年65歳以後の再雇用者がほとんどであった。)、介護補助(清掃)分野での若手および障害者雇用を検討するよう指示を出していた。そんな折、ハローワーク石巻主催の障害者就職面接会の案内があったので、この面接会に参加し、身体障害者1名、知的障害者2名を採用し、介護補助分野で一挙に3名の障害者雇用を達成した。 この事例を含み、平成21年4月から平成22年6月1日までの期間内に9施設において12名を採用し、その間、1名の退職者があったが、雇用障害者は15名(カウント数では18名)で雇用率2.45%(病院・老健:除外率40%)となった。 その後、平成22年7月に実施された除外率10%削減実施後の平成23年6月1日現在でも、2名(カウント数では3名)の退職者を上回る4名(カウント数では5名)の採用が実現し、17名(カウント数では20名)となり、雇用率は2.30%と法定雇用率を上回って推移している。なお、平成23年度(平成24年2月1日現在)は採用者4名(内1名採用後障害者)、退職者3名となり、15名(カウント数では17名)となっている。 平成23年9月には、障害者雇用に対する積極的な取り組みとその成果が評価され、平成23年度障害者雇用優良事業所として独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(現在の独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)理事長努力賞を受賞している。 |
② | 各施設での障害者雇用状況 平成24年2月1日現在、障害者が在籍する施設の状況は、次の通りである。
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③ | 障害者の業務内容
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2. 取り組みの内容
(1)採用
病院、介護老人保健施設という職場の特色として、その職種において資格・技能が必須な場合が多く、職員募集にあたっては、障害の有無に係わらず、応募を受け付けている。これまで、各施設とも、いろいろな障害を持った人達と面談をする中で、優秀な埋もれた人材に出会うことも多くあり、ごく限られた採用枠内での人選に苦労している。
また、平成20年以降、毎回ハローワーク主催の障害者就職面接会に参加し、雇用促進を心がけているが、各会場とも介護補助(清掃)の求人に応募が集中する傾向にある。
応募者の業務内容については、障害の程度をよく分析し、可能な職務を抽出した上で、試行雇用し、当該職種分野での職域拡大を可能な限り図っていくという方針をもってあたっている。
(2)介護業務からの職域拡大と各施設への波及
平成20年4月に宮城県立名取養護学校(現在の宮城県立名取支援学校)からKさん(知的重度外)の紹介があり、当時、リハビリパーク仙台東において、清掃員に欠員が生じていたこともあって、試行雇用した。Kさんは手先があまり器用ではないが明るく素直な性格で、自分に与えられた役割は責任を持って果たすので、安心して仕事を任せることができている。このKさんの実績と現場における評価が、後に法人全体で介護補助(清掃)分野の採用拡大を展開していくきっかけとなった。
平成21年10月にハローワーク石巻主催の障害者就職面接会があり、「リハビリパーク花もよう(石巻市)」において身体障害者1名、知的障害者2名の計3名を介護補助スタッフとして平成21年11月採用した。また同月に「リハビリパークみやび(多賀城市)」においても、知的障害者(重度)1名を平成21年11月に採用(平成23年8月退職)した。
平成22年4月には「リハビリパークあやめ(大崎市)」において身体障害者(重度)1名を採用(平成23年9月退職)し、同月「リハビリパークさくら(柴田郡)」において知的障害者1名を採用。同12月には「リハビリパーク(八戸市)」において身体障害者(聾)1名を採用し介護補助スタッフとした。
さらに、平成23年4月「リハビリパーク(八戸市)」において知的障害者1名(介護補助2名となる)、「リハビリパーク仙台東」において知的障害者1名(介護補助2名となる。)を採用した。
この時点で、9施設ある老健のうち7施設に介護スタッフとして身体障害者3名、知的障害者8名は配属され各施設への波及は進んでいった。しかし、平成23年8月、9月に老健2か所においてそれぞれ1名の退職があり、現在5老健となっているが、これまでの経験を生かして、促進中である。
(3)通常の業務管理体制の中で把握、問題処理
障害の有無に関わらず、問題把握、問題処理は現場の管理体制の中で行われている。また、介護補助業務を担当している職員は介護部署に所属しており、他の介護職員の声がけ、確認に支えられながら業務を遂行している。
(4)助成金等活用状況
これまでの採用者のうち9名について障害者試行雇用奨励金を活用した。また、特定求職者雇用開発助成金を9名について受給している。
(5)取組みの効果、障害者雇用のメリット
知的障害者の定着率が良く、平成20年初めての採用以降、9名採用しているが現在も7名が職務に励んでいる。また、有資格者については、障害のない人と変わらない能力を発揮し重要な即戦力となっている。
3. まとめ
医療、介護老人保健施設の現場では、その構成する職種において資格・技能が必須な場合が多く、身体障害者及び知的障害者の就業が一般的に困難であると認められ除外率制度が設けられている。しかし、近年、ノーマライゼーションの理念から見てこの制度が適切でなくなってきたことや、技術革新により障害機能を補完する機器の発達や、職場環境の整備等が進む中、様々な職種において就業の可能性が高まってきていることなどから、除外率制度は廃止に向けて段階的に縮小していくこととされている。現在、医療・老健の分野は、平成16年、平成22年の10%削減を経て30%となっている。
しかし、平成23年6月1日現在、16か所ある青森県内で病・医院、老健を経営する常用労働者数が200人(除外率適用後)を超える医療法人、財団法人等における平均障害者雇用率は1.43%であり、法定雇用率を達成している法人は4法人(25%)と少ない。それぞれ、青森県内の民間企業における平均障害者雇用率1.67%、法定雇用率達成企業割合46.8%より低い状況で推移している。
このような状況の中で、当法人は、雇用率を高めていくために、各病院・施設に対して障害者就職面接会への参加を積極的に促すとともに、通常の募集においても、障害者の応募を積極的に受入れ面接を行うよう心掛けてきた。採用後に障害を負った職員の雇用も継続してきたが、有資格者の雇用のみで雇用率を高めることは困難であった。
しかし、平成20年に介護補助者として採用した知的障害者の実績が、その後の障害者の業務モデルとなり、知的及び身体障害者の雇用を積極的に推し進めた結果、4施設でこの雇用モデルが適用され、それぞれの施設の雇用率が向上したため、法人全体の雇用率向上に繋がった。
応募者の障害の特徴、程度をよく分析し、現在、行われている業務から可能な職務を抽出し、職域拡大を図りながら、そこに身体障害者のみならず精神障害者、知的障害者を雇用していくことが、雇用拡大の有効な手段であることを当法人の取り組みは示している。
ちなみに、前述の16法人で雇用されている知的障害者の総数は12人(短時間以外10人、短時間1人)であるが、そのうち8人(短時間以外)は当法人で占めている。また、精神障害者の総数は2人で当法人で雇用されている。
このように、組織全体で障害者雇用促進を行い、短期間に法定雇用率を達成し、CSR(社会的責任)の一環として、さらなる障害者雇用の充実を目指している当法人の取り組みとその結果は、他の法人において大いに参考となる事例であろう。
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