積極雇用と安定雇用は「やさしく」そして「厳しく」
- 事業所名
- 有限会社中央市場
- 所在地
- 秋田県横手市
- 事業内容
- スーパーマーケットの運営
- 従業員数
- 711名
- うち障害者数
- 17名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 ポップの制作 聴覚障害 肢体不自由 6 商品補充・発注・伝票入力 内部障害 2 一般事務・企画業務 知的障害 3 パック・袋詰・商品補充 精神障害 5 パック・袋詰・商品補充 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の現況
(1)事業所の概要
有限会社中央市場は秋田県中央部に3店舗、県南部に5店舗を「ビフレ」という店名で展開しているスーパーマーケットである。大手小売店との差別化のため、特に鮮魚・青果・精肉・惣菜の生鮮4品に力を入れており、高い品質の商品を適切な価格でお客様に提供することを営業方針としている。
人事政策では、地元高校卒業者の定期雇用やパートタイマーの正社員登用等を積極的に進め、地元企業としての地域貢献を重視している。障害者雇用に関しても当然の社会的責務として、今後も積極的に受け入れていく考えである。
(2)障害者雇用の現況
スーパーでの障害者雇用といえば、野菜の袋詰めや品出しなど限られた職域になりがちであるが、当社では、可能な限り職域を限定せずに、本人の適性に合わせた部署に配置する方針で進めてきた。
障害者雇用の内訳は前記のとおりだが、店別・部門別の内訳は以下の通りである。
所 属 | MD | 企画 | 青果 | 事務 | 日配 | 一般 | レジ | 精肉 | 合計 |
ビフレ横手店 | 1名 | 1名 | 1名 | 3名 | |||||
食品館ビフレ | 1名 | 1名 | 2名 | ||||||
ビフレ大曲店 | 1名 | 1名 | |||||||
ビフレ東通店 | 1名 | 1名 | 2名 | ||||||
ビフレプラザ店 | 1名 | 1名 | 1名 | 1名 | 4名 | ||||
ビフレ稲川店 | 1名 | 1名 | 1名 | 3名 | |||||
ビフレにかほ店 | 1名 | 1名 | |||||||
支援本部 | 1名 | 1名 | |||||||
合計 | 1名 | 3名 | 5名 | 1名 | 1名 | 1名 | 4名 | 1名 | 17名 |
店別に見ると湯沢市にあるビフレプラザ店の4名が雇用数では最高で、最低は1名である。全ての店舗でプラザ店のようには出来ないとしても、大曲店やにかほ店では今後追加雇用の可能性があると言える。
部門別では安全性と安易性から、青果部門での袋詰やパック作業に従事するケースが多い結果となっているが、接客と金銭授受に従事するレジ部門で活躍している人も4名いる。またビフレにかほ店のケースのように単純作業だけでなく、難しい接客販売に取組んでいる障害者もいる。
2. 各店現場からの報告、取組の内容と効果
(1)各店舗からの報告
これまで店舗展開を図るなかで、各店で障害者雇用を進めている。
以下に各店舗での取組状況を紹介する。
【ビフレプラザ店】
現在4名の人々に頑張ってもらっている。1名は、日配部門での勤務で、フルタイムのホームスタッフ、あと3名は、4時間勤務と5時間勤務のパートタイマーの形で勤務している。配属は、2名が女性でレジと青果部門での作業に従事しており、もう1名は飲料を中心とした商品の補充作業に従事している。特に気をつけていることは、パートタイマーの2名は、体調を崩しやすいので、周りのスタッフが気をつけて少しでも異常を感じたときは、声掛けをして本人から申し出が無くても、早退させる様にしている。ホームスタッフの人は、人が多いと体調を崩しがちなので、お客様の多い水曜日は、原則休日としている。何れにしても、皆さん貴重な戦力であるので、ローテーションに穴が開いた時の、現場対応を柔軟に行えるよう体制を作って行くことが大切だと考えている。
【ビフレ大曲店】
当店では障害者1名に仕事をしてもらっている。午前8:30~午後3:30の一日6時間勤務で他のスタッフ同様、週休2日である。主な業務として、パソコンを活用してのポップと価格ポップの作成である。体調不良により、1~2ヶ月に数日予定外に休む事があるが、それ以外は遅刻や無断欠勤もなく頑張っている。また本人のひかえめな性格と周りの人の気遣い配慮により比較的仕事のしやすい環境かと思われる。
その結果、大曲店でも勤続13年のベテランとなっている。出勤すると各部門から価格ポップの作成依頼があり、本人は早速その業務にあたる。開店準備は猫の手も借りたいくらいなので、売り場つくりとパソコンによる価格ポップの作成は、作業を分担し効率的に行なう必要があり、仕事を任されると責任感も生まれ、当店ではうまく連携している状況にあると思われる。また価格ポップ作成のパソコンはもう一台あるので、必要であれば他のスタッフも作成しており、仕事量の多さでプレッシャーとなる事もないと思われ、無理を頼まず、多くを望まずでちょうどいいようである。問題点としては、業務に慣れてきた結果、若干積極性に欠けているよう見受けられる点があるように思うことである。お願いした仕事が終わると手が止まっている時があり、仕事もすべてを快く受けないなど、多少のムラが見受けられる。
それでも障害者雇用は我々企業の社会的義務でもあり、今後も永く仕事をしてもらうためにも、本人とよく話し合いこちらの問題点を改善し、今まで同様温かい気持ちで接していくつもりである。

【湯沢食品館ビフレ】
食品館では、障害者雇用でTさんに青果部門で勤務してもらっている。朝8時、Tさんは、「おはようございます。」と大きな声で挨拶して作業場に入って来て、誰にでも大きな声で元気がよく挨拶してくれ気持ちがいい。Tさんの仕事の内容は、品出しと野菜と果物を詰めることである。約10年食品館に勤務しているので、スピードも早く正確な仕事ぶりで、とても助かっている。
青果部門で心がけていることはTさんとのコミュニケーションである。午前中の休憩時間を一緒にお茶を飲みながら談笑したり、冗談をいいながらコミュニケーションをとっている。Tさんもいつもは物静かであるが、その時は笑ったり自分からも話したりしてくれるようになってきた。そんなTさんであるが、後片付けが少し苦手なようで、仕事で使った道具を出したまま帰る時がある。その時は注意して直るが、時間が経つと元に戻ってしまう。何回も同じ事を繰り返すようではあるが、怒ったりせずに注意していくことが大事だと思っている。
【ビフレ東通店】
東通店に於ける障害者雇用の現状は8時間勤務者が1名、5.5時間勤務者が1名の合計2名である。8時間勤務の人はレジ部門にて、5.5時間勤務の人は事務所内にて価格や販売促進などのポップを作成する企画部門の仕事を担当してもらっている。
2名に関しては、障害の程度は低く業務には障害のない社員と同様の取り組みをお願いしている。言語もハキハキと丁寧な口調であり、接客は勿論、電話の応答も問題なくこなして頂いている現状である。二人とも実直で頑張り屋な性格である。我々が心配する事と言えば、障害者の人が疲れやストレスを溜め込んだり、悩みなどが無いかなどであり、普段から自然なコミュニケーションを図る様に努めている。
【ビフレにかほ店】
Kさんは青果部門に勤務するようになって今年で3年になる。時の経過とともに、日常的な仕事の流れについては大分慣れてきている。現在、行ってもらっている作業は、出社後のもやし・野菜の水煮の品出し、こちらは賞味期限をしっかり確認できるようになってきている。
特に品質チェックの際には、部門内の賞味期限の付いた商品のチェックを行ってもらい、期限が近いものについては報告してもらい対策を講じている。
繁忙日については、店頭での対面販売等お客様と接する仕事に従事してもらっている。
この店頭販売を通じて少しずつであるが、お客様とのコミュニケーションも図れるようになってきており、入社当初は、指示された作業を黙々と始業から15時まで行い、退社するといった感じであったが、最近は部門内の従業員との商品や仕事の内容等を含めて少しずつ会話をするようになってきた。
今後も、店頭での対面販売や部門内を通じて人と人とのコミュニケーションをもっと図れるようになってくれるようにと考えている。
未だ、一般的なパート従業員に比べて作業範囲が狭いので、商品の包装ラップや野菜の2分の1カットなど包丁を使った作業も安全で正確にできるように、繰り返し指導していきたいと思っている。青果物の商品を通じて、季節の流れ、商品の名前、価格のつけ方、商品の陳列の仕方等、全般においても一人で物事を考え、積極的に取り組んでいけるように仕事環境を整えて行きたいと思っている。又、仕事を通じて社会人としての心構えや、小売業全般についても教育指導を行っていくつもりである。

【ビフレ横手店】
横手店は現在全従業員約100人中、障害者手帳をもっている人は3名いる。内訳は、8時間フルパートが1名、5時間が1名、トライアル雇用で4時間が1名となっている。いずれ、トライアル雇用の人とも契約をする予定であり、現場の人々も、障害者手帳を持っている人に対し、他の従業員と変わらない対応をしている。仕事の内容も同じであり、なかには正社員となんら変わらぬ仕事をしてくれている人もいる。
現場において、障害者の人々に対し特別な取り組みは正直していない。障害者も他の従業員同様の戦力と思っているので、ジョブコーチ等もつけていない。
以前、「体調が悪い」、「他の人と差別を受けている」等と言って退社した人もいたが、今働いている人々に同じ内容の仕事を与えても、黙々とやってくれているし、休まず出社してくれている。多分、本人達の「働きたい」という気持ちが強いからだと思っている。
今後も、働きたいという気持ちが強い人がいれば、積極的に採用をしていこうと思っている。
【ビフレ稲川店】
ビフレ稲川店では、去年の4月に入社した1名が、現在も勤務している。地元の特別支援学校の出身で、在学中には湯沢店・稲川店で研修を行った。現在は青果部門担当で、主に袋詰めなどを行っており、明るい性格と若さでがんばっている。
障害者を企業や店舗で受け入れて、業務が遂行できるよう支援することは非常に難しいこともある。私にとっては、一緒に働くこと自体が初めてで、部門を決めることに苦慮したが、研修時に体験してもらった青果部門に決めた。
仕事を見るかぎり、一生懸命言われたことをこなそうと頑張っている。現在も、外部の支援サポートの人々が定期的に臨店してくれており、その中で現在・3年後・5年後の目標を具体的に決めて仕事を行っている。以前、悩みなどもあったようであるが、今後もサポートの人々の支援をいただき、仕事がしやすい環境にしていきたいと思っている。
(2)取組の内容と効果
当社では、秋田障害者職業センターから数か所の店舗でのジョブコーチ支援など協力を頂いている。また、職場復帰支援や職場実習などの支援もいただいている。
秋田障害者職業センターが開催した職場復帰支援に関する研修会にも参加させていただき障害者の職場定着へ、会社をあげて取り組んでいる。
雇用している障害者の勤務平均年数が5.9年と、辞める人が少ないことも特徴である。その要因として、社長の方針のもと、助け合いの精神を大切にしていることが挙げられると思われ、また働いている人のほとんどが地元出身の人であることも、障害者の人にとっても親しみやすい環境になっていると思われる。
特に、職場内での雰囲気やチームワークを重視しており、障害のある人が活き活きと働いているかどうかが、職場環境が良好であるか否かのひとつの指標と言ってもよいかもしれないと思っている。
大曲店では、勤続13年の視覚障害者が価格ポップの制作などで働いている。初めは体調面の不安や仕事など慣れないこともあったようであるが、職場実習等を行った中から、価格ポップ制作の作業が適していることが分かり、その後は店長や周囲の従業員が、体調や視力の状況を考えて仕事量の調整等の配慮を行った。仕事の幅を少しずつでも広げるよう取り組み、今ではベテラン従業員となっている。このケースの場合は外部からの継続的な支援は必要なかったが、周囲の従業員の理解や配慮は、本人のみならず、他の障害者の人にとっても、働き続けるうえでの大切な要素になっていると思われる。
3. 今後の展望、終わりに
(1)今後の展望
地元企業として、引き続き障害者雇用を積極的に進め、地域の障害者雇用の促進に貢献していきたいと考えている。
職場においては、ノーマライゼーションの理念を具体化できるような職場環境づくりを目指していきたいと考えており、今後は定年退職者も控えていることから、経験やスキルが豊富なベテラン従業員に障害者の指導・フォローにあたってもらうなど、コラボレーションを図っていけたらとも考えている。
地域の支援機関には、当社の障害者雇用についていつも真摯に対応いただいているところであるが、支援が必要な人は継続的な支援を行っていただくなど、今後も力を発揮していただきたいと思っている。
(2)終わりに
・障害者が活き活きと働くために
これからも職場内での雰囲気やチームワークを大切に障害のない社員と障害者が共に働くことで、障害者を理解し、障害者雇用に関する課題を一つ一つ解決して行き、ますます職場環境が良好になるよう取り組んでいくつもりである。
限られた職種ではなく、いろいろな職域で活躍できるよう本人の適性を見極め配置していく取組みをこれからも進めたいと考えている。
積極雇用と安定雇用は「やさしく」そして「厳しく」をモットーにこれからも障害者が活き活きと活躍できるよう、地域の支援機関とも連携しながら取り組んでいこうと考えている。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。