地域に必要とされる企業を目指して
~誰もが働き続けられる企業であるために~
- 事業所名
- 株式会社第一ドライ
- 所在地
- 群馬県安中市
- 事業内容
- ドライクリーニング、ランドリークリーニング、産業リネンクリーニング、リネンサプライサービス
- 従業員数
- 186名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 しみ抜き 内部障害 知的障害 5 シーツ、浴衣、タオル類の仕上げ 精神障害 1 シーツ、浴衣、タオル類の仕上げ - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯と現状
(1)事業所の概要
株式会社第一ドライは、昭和32年3月に設立。
現在、本社工場で128名、スーパーのテナント店で58名が勤務し、企業全体では186名が雇用されている。本社工場勤務者の内訳は、正社員46名、準社員28名、外国人研修生2名、短時間パートナー社員52名である(外国人19名、60歳以上の高齢者16名、障害者7名を含む)。
業務内容は、一般家庭の衣類を対象としたドライクリーニングと、ホテルや旅館等で用いるシーツ・浴衣・タオル等の繊維製品を洗濯付きで貸し付けるリネンサプライを中心に群馬、長野、新潟、埼玉の一部で営業している。
「人に、衣類に、環境に優しい」をポリシーとして、最先端の機器やこれまでに培われた技術力による品質の確保、お客様との信頼関係の基礎である確実な納期、企業として避けて通れない公害防止システムの整備等、群馬県内のクリーニング業界のフロントランナーとして歩み続けている。
(2)障害者雇用の経緯と現状
昭和60年4月、知的障害と言語障害のある群馬県立みやま高等養護学校在籍中の生徒が先生と共に職場実習の依頼で来社した。その生徒を雇用する以上、一生を幸せにしてあげないといけない、当企業にそれだけのことができるかどうかという苦悩もあったが、結局は先生の熱意に打たれ、その生徒を卒業後に雇用し、以後、病気による死去まで21年間勤続してもらった。
身体障害者の雇用はそれ以前にもあったが、これが当企業で初めての知的障害者の雇用であった。職場実習の前には、社長自らが学校を訪問し、生徒の普段の様子や学習の様子を見学し、その後に採用を決定。就労を前提とした職場実習を受け入れる際には、現在もそのスタイルを変えていない。
障害者雇用にあたっての主な連携機関と支援制度等
採用年月 | 連携機関 | 支援制度等 |
---|---|---|
H18.4 | 県立特別支援学校 | 学校在籍中の現場実習 |
H18.7 | 知的障害者通所授産施設 | 職場適応訓練事業 |
H21.3 | 障害者就業・生活支援センター | 職場実習、障害者トライアル雇用 |
H22.4 | 県立特別支援学校 | 学校在籍中の現場実習 |
H23.9 | 就労移行支援事業所、県立産業技術専門校 | 障害者委託訓練、障害者トライアル雇用 |
<障害者が担当する業務内容>
本社工場にてリネンのクリーニングにかかる一連の作業のうち、職場実習や雇用後の実際の作業状況から、個々人の障害特性を考慮して担当可能な部署に配置している。知的障害者の担当する業務は以下の通り。
- 洗濯後のシーツを他の従業員とペアになりロール機で仕上げ。
- 乾燥後のタオル類の向きを揃え機械へ流し込み、自動カウント後梱包。
- ホテル等のガウンをたたみ機にセットしてたたみ、梱包。



2. 事業所の取り組み
クリーニング業は地域密着業である。地域のお客様を大切にすることはもちろん、従業員の雇用という面からも地元に対する大きな責任を負っている。
しかし中小企業にとって、景気の変動は会社経営に大きな影響を与える。苦しい状況にあっても雇用の継続を最優先に考えるならば、障害者も一定の生産性をあげられることが求められる。元々高齢者、小さな子どもを育てる主婦、外国人等社会的には弱い立場と思われる人々の雇用を積極的に受け入れてきたが、特に障害者の雇用に関しては、関係機関と連携を図りつつ雇用の継続性を最優先に考え、就職前の職業適性の確認を慎重におこないながら進めている。
地域から当企業に寄せられる障害者雇用への期待は大きく、民間企業として利潤を追求しながら、その期待に最大限に応えられるように、バランスを重視した取り組みをおこなっている。
(1)特別支援学校との連携による職場実習の受け入れ
地元の特別支援学校である群馬県立みやま高等養護学校(高崎市)の現場実習として、本社工場で職場実習を毎年受け入れている。期間は学年や時期により異なるが、概ね1~2週間でおこない、生徒の希望により数回繰り返しておこなうこともある。卒業後は、本社工場での就労を希望し雇用に至る生徒もいるが、全ての生徒を採用する状況にはなっていない。
本社工場での職場実習は立ちっぱなしの作業であり、社会体験の少ない生徒たちにとっては最初に味わう実社会の厳しさである。社会の仕組み、成り立ちを感じる数少ない機会であると同時に、雇用に至らずとも卒業後の進路を考える上での貴重な体験になっていると思われる。
(2)就労移行支援事業所等との連携による体験実習の受け入れ
平成19年度より、群馬県障害者職場実習設備等整備事業費補助金を受け、作業経験が乏しい障害者でも安心して取り組むことが出来るようにタオルたたみ機等の機械を導入している。
これまでにも福祉施設からの体験実習を受け入れていたが、群馬県が地域の関係機関に当企業を周知したことから、就労移行に関心をもつ事業所からの体験実習依頼が飛躍的に増加した。
こうした施設を長年利用してきた障害者の中には、就職はもとより社会経験の少なさから、体験実習の意味合いを理解し、自身の将来を想像することが難しい人もいるようである。実際に実習を実施し、作業は雇用レベルにありながら「通勤が疲れるから作業所の方がいい」との考えから雇用を希望しなかったケースもある。
普段福祉施設では、四季を通じて空調管理された環境でいすに座って作業をしていることが多い。9時過ぎから始まり15時頃には作業を終了することが当たり前になっている彼らにとって、いきなり雇用を想定した実習を行うことは酷とも言える。
そこで、その前段階として働くことの意味を考えたり、意欲を育てるための期間として体験的に実習を受け入れることが将来的には障害者本人のためにもなると考え、現在は就労移行支援事業所を中心に体験実習の受け入れを積極的に行っている。
そのような取り組みの中で本当に「はたらきたい」と思えるようになった段階であらためて雇用について検討するのだ。

(3)県立産業技術専門校との連携による障害者委託訓練の実施
平成23年度より群馬県立高崎産業技術専門校(高崎市)と連携し、障害者委託訓練の実践能力修得訓練を実施している。本訓練は、クリーニング業での就労時に必要な基礎知識や技能を身につけるための内容で実施する。
最初に国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(高崎市)から知的障害者の職場実習の依頼を受けた例では、その障害者が一般企業での就労経験はあるものの、同じ様な職種での就労経験がなく、また長期間就労していないこと等から比較的長期間の訓練が必要と思われた。のぞみの園と障害者就業・生活支援センター エブリィ(高崎市)に相談したところ、本訓練を提案された。
実施にあたっては、当企業と高崎産業技術専門校、のぞみの園、障害者就業・生活支援センター エブリィが連携しながら進め、訓練終了後はその障害者を採用した。

(4)従業員教育
日常的に障害者の職場実習を受け入れるようになって、障害者本人やその人を支える人たちの一般就労への関心の高さを、自然に従業員たちも感じるようになっている。同時に事業所に寄せられている期待、地元企業としての役割等を理解し、障害者をサポートする気持ちが芽生えている。
障害者の職場実習受け入れや、実際に雇用することで、会社全体の親和性が高まる、社員のモチベーションが上がる、感謝の心が生まれる、気配りを良くする作用が働く、チームワークが向上する等、良い作用が働き、結果として好業績につながっているのではないかと考えられる。
また、これまで障害者の受け入れにあたっては、工場長を中心に長年の職場経験を活かした指導をおこなってきた。多くの障害者を受け入れるようになってから、障害の多様性を認識し、その対応を適切に行っていくために、障害者職業生活相談員資格認定講習を既に4名受講させている。
そして、障害者の新たな職域の開拓に向けてより専門的な知識を積んだ人材を配置する必要から、平成23年に第2号職場適応援助者を配置した。
(5)関係機関との連携
障害者の就労に向けた職場実習の受け入れに際しては、職業適性の把握の他、衣食住を含めた生活面での安定性があるかどうかも見極めるようにしている。企業は障害者の生活支援まで行うことはできないが、就労を継続していくためには重要な要素となる。そのためには、本人をサポートする家族はいるのか、家族がいなければ障害者就業・生活支援センター等と関わりはあるのか、等を確認している。
家族はいるが高齢で障害者本人のサポートが難しいケース等もあり、その様な場合は支援機関と相談してグループホーム等の利用を勧めるようにしている。
日常生活は自立できているが休日はただ寝ているだけ、ではなく地域の活動に参加したり、自分なりの余暇の過ごし方を身につけていることも求められる。ただ働くだけでは「何のために働くのか?」ということになり、就労意欲の維持が難しくなるからである。
そういった面から、障害者本人を取り巻く環境を事前に確認し、心配があるときには就職するまでに環境を整備できるように、関係機関と連携をとることが重要になると考えている。
3. 今後の課題と展望
当企業のような規模の民間企業が障害者を7名(カウント上は11名)雇用し、更に今後拡大していくことは容易ではない。受注量は季節、景気による変動があり、むやみに雇用を増やすというわけにはいかない。設備投資が必要となればリスクも伴う。そこで今後は障害者でも従事可能な職域の拡大をおこないながら徐々に雇用を増やす方法を考えている。
その一例として、障害者が担当できるように障害者作業施設設置等助成金を活用し、最新鋭のガウンたたみ機を設置した。この機械は、ひとりでもガウンが簡単に、スピーディにたためるという機械ではあるが、障害のない社員が障害者の指導を行ううちに、社員ひとりで作業するよりも障害者同士でも2人で作業すれば効率がアップするのではないかと気付き、更なる障害者の雇用の拡大につなげた。
また、老朽化したロール機があり、この機械はロールが回転し、その間を通すとシーツ類が乾燥され、たたまれる機械であるが、速く回すと厚手のものが乾かず、繁忙期以外は停止していた。しかし、この機械の回転数を落とし、スピードを落として稼働させれば、厚手のものが乾き、作業の遅い障害者でも対応可能となるのではないかと社員が気付き、障害者の職域拡大につなげた。
毎月のように受け入れている職場実習が、出来る限り雇用につながるように、職域の拡大、環境作りを模索し続けている。
民間企業としてはまず事業の継続が必要であり、その上で更に地域社会からの期待に応え社会的役割を果たすべく、バランスを取りながら障害者の雇用に取り組んでいる。そのことは障害者だけでなく、誰もが働き続けたいと希望する限りは受け入れる、雇用を維持していくという当企業の強い意志の現れである。
所長 就業支援ワーカー 下山 雄二
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