多様性の推進-企業理念に基づく障害者雇用
- 事業所名
- フェデラル エクスプレス ジャパン株式会社
- 所在地
- 千葉県千葉市
- 事業内容
- 道路貨物運送業
- 従業員数
- 729名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 4 事務所内勤務事務作業と貨物取扱作業。 内部障害 1 配送業務。 知的障害 2 洗車、倉庫内清掃。書類整理。貨物取扱補助等。 精神障害 1 事務所内勤務事務作業と貨物取扱作業。 - 目次
1. 会社の概要、雇用の取り組みの経緯・背景
(1)会社の概要
当社は米国テネシー州メンフィスに本社を置き、世界220以上の国と地域で国際航空貨物輸送サービスを展開するフェデックス エクスプレス(フェデックス)のグループ会社である。
フェデックスは1973年に米国で営業を開始、日本においては1984年にサービスを開始した。当社では、主に日本国内の集配業務およびサプライチェーン業務を行っている。
(2)雇用の取り組みの経緯・背景
当社では創業以来、「従業員を第一に考える」という理念を実践してきた。そのため、社内では障害の有無によって社員が区別されることはなく、以前より障害のある社員も数名在籍しており、通常の業務を行っていた。しかしながら、法的に定められた雇用率を達成するまでには至っていなかった。
国際航空貨物運輸業においては、車輌の運転を伴う集配業務が大部分を占め、障害者を採用することができる職種が限定されるという問題があったため、採用対象を障害者に絞っての採用活動はなかなか進んでいなかった。
2011年春、障害者法定雇用率を満たすことは企業に課せられた義務であることや、障害者の働く場を提供することによって果たせる社会的貢献、ならびに社内における多様性の推進の必要性を考慮し、障害者雇用を積極的に進めていくとの方針を社内に向けて発信し、管理職ならびに従業員に理解を求めた。
障害者雇用の重要性について管理職等の理解は得られたものの、現実問題として具体的にどのような仕事を任せるのか、どのような障害特性の人なら雇用できるかなど、検討しなければならない課題は多かった。
新たに障害者を採用するにあたり、まず千葉障害者キャリアセンターに連絡をしたところ、全面的な協力が得られることとなった。センターの担当者と今後の取り組みについて相談したり、同業種で障害者雇用を積極的に進めている企業をご紹介頂き、実際に訪問して障害者が就労する職場を見せて頂いたりするうち、知的・精神障害者が多くの企業で戦力として活躍していることが理解できた。また、求職している障害者には知的障害者および精神障害者が多いことも分かった。こうして、初めて本格的に知的障害者および精神障害者の採用に乗り出すことになった。
2. 取り組みの内容とその効果、千葉障害者キャリアセンターとの連携
(1)取り組みの内容とその効果
① | 配送部門担当管理職に障害者雇用の重要性について人事部から説明を行った。まずは東京江東区にある国内最大の営業所において障害者採用を進めることになった。知的障害者・精神障害者の採用は初めての試みであったため、同営業所の管理職には、どの程度の仕事を任せることができるのか不安があった。そこで、前述の通り、人事部担当者とともに営業所の管理職も他企業の職場を訪問し、実際に業務を行っている様子を見せて頂いた。また、その際に人事部門の担当の人々から、障害者雇用に取り組んで、採用、定着に至るまでの話を詳細に聞くことができ、当社でも知的障害者の雇用を実現することができるはずだと確信することができた。 |
② | その後、千葉障害者キャリアセンターの担当者に当社の営業所での一連の業務を実際に見て頂き、障害のある人たちに従事してもらうことができる業務がないか、業務内容の見直しを行った。ひとつの部門ではまとまった量にならない業務でも、複数の部門での業務を組み合わせることにより、一人分の業務量になることが分かった。我々の視点では、どの業務が障害のある人に向いているか判断できなかったが、センターの担当者が実際に業務を見て、業務ごとに障害者でも遂行可能かどうかのアドバイスを頂いたことは有効だった。 集配に使わない車両を障害のある社員が洗車し、洗車した車両をローテーションして集配業務に使い、毎日洗車業務が確保できるようにした。さらに、顧客に提供する梱包材の準備や、通関書類を他の部署に届ける業務などといった業務も組み合わせ、毎日同じ時間割で作業が出来るようにスケジュールを組み、時間が来たら毎日指示されなくても次の業務に移れるようにした。 千葉障害者キャリアセンターが紹介した候補者2名に、実習期間を設けて実際の業務を体験してもらった。実習によって、候補者は職場の雰囲気に直接触れ、業務を体験することによって入社前の不安解消につなげた。 また、同じ支援機関で訓練を受けた2名を同時に採用するとともに、常に同じ作業を行わせることにより、作業内容を確認しあうことができ、指導する社員がそばに付いていないときであっても孤独を感じることがなかったことも良い結果を生む要因であったと考えられる。 |
③ | キャリアセンターにおいては、実習開始前にも、当社で行う予定の業務に合わせた訓練を行っていたとのことで、実習開始の際の業務においても非常に役に立った。 |
④ | 2011年5月以降障害者枠で採用した障害者の雇用形態は、当初3ヶ月はトライアル雇用とし、その後、常用雇用に移行することとした。労働時間は業務上の必要性を考慮して、午後1時から勤務開始、週30時間勤務で調整している。 |
⑤ | 実習中だけでなく、採用後も、最初の1週間は毎日、千葉障害者キャリアセンターからジョブコーチに同行いただいた。さらにその後も1ヶ月程度は定期的に訪問頂き、当人が疲れていないか、続けていけそうか、という点についてフィードバック頂いたのは非常に有益であった。 業務を指示する他の社員にとっても、ジョブコーチが一緒に説明を受けていることによって本人の理解度を確認しながら指示できるため、安心して説明することができた。 その後も、他の部署の障害者採用の取り組みのため、ジョブコーチが同営業所を訪問する機会も多いが、そのたびに最初に採用した2名が休憩時間にジョブコーチと歓談している。その様子から、彼らとジョブコーチの間の深い信頼関係が伺える。 |
⑥ | 周りの社員に、当人に対して配慮すべきこと(障害の特性、業務上の指示の方法など)を予め周知し、協力を要請した。知的障害者の雇用は営業所においては初めての試みであり、取り組む前は営業所内において不安の声もあったが、他社を見学して得た情報や、キャリアセンターの支援があることなどを管理職たちに説明し理解を得た。業務開始後、彼らが毎日明るく元気よく周りの社員に挨拶をし、業務にまじめに取り組む姿は周りの社員にも良い影響を与えているようだ。 |
(2)千葉障害者キャリアセンターとの連携
① | 今回の採用に当たっては、雇用の準備段階から千葉障害者キャリアセンターに相談して雇用を進めた。 |
② | 障害者雇用の現状を知るために、千葉障害者キャリアセンターから紹介を受けて先進的取り組みをしている他社の見学を行った。 |
③ | 障害者に担当してもらう業務は、白紙の状態で現場責任者と本社人事担当者及び千葉障害者キャリアセンターの担当者が現場を見て検討することから始めた。 |
④ | 既存の業務の切り出しだけでは、2人分の業務を確保するのは困難であったため、いくつかの業務の組み合わせを考える一方で、発想を変えていくつかの新しい仕事を考えてみることとした。 |
⑤ | いくつか候補が上がった中で、従来、ドライバーが業務の合間に行っていた「営業車の洗車」を新たな業務として切り出すことができた。 |
このように、支援機関と連携をとることによって、支援機関の持っているノウハウと情報を有効活用するとともに、ジョブコーチによる定着支援を受けての雇用を進めることが出来た。
3. 業務の紹介、評価、今後の課題・展望
(1)業務の紹介
1日の業務の流れ:
13:00 | 洗車や営業所内の清掃、備品の整理整頓など |
15:00 | 書類整理(配送担当者が持ち帰る駐車場や高速道路の領収書を決められた順に台紙に貼り付ける作業など) |
16:00 | 休憩 |
17:00 | 顧客への梱包材準備など |
18:00 | 通関書類を他の部署へ運搬する |
19:30 | 業務終了 |


(2)評価
上司の声:
「二人は非常にまじめに仕事に取り組んでくれております。知的障害者というと、日々の指導が大変と思われるかも知れません。しかし、1日の業務の流れが時間ごとに予め決まっており、この仕事のときはこの人に聞くということを明確にしているので、手をわずらわすこともありません。入社して半年以上経過した今では、無くてはならない存在だと思っております。」
周りの社員の声:
「二人はとても意欲的に仕事に取り組んでくれています。明るく元気で周りの方たちにきちんと挨拶をしています。初めの頃の不安は今では思い出せないくらいです。半年前に比べると仕事量は数倍になり、“任せてください”と言われるようになりました。私は、二人に心から感謝しております。寒い日も暑い日も我慢して頑張ってくれて本当にありがとう!」
(3)今後の課題・展望
今回の取り組みを開始するまでは、障害者雇用がなかなか進まなかったが、支援機関からサポートを頂き障害者雇用に取り組んでみると、障害のある人であっても、適材適所に配置すれば能力を発揮して業務遂行が可能であることが証明できた。
今後は、法定雇用率を満たした後においても、他の営業所でも同様の取り組みを行い、障害者雇用を推進して行きたいと考えている。
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