多様性の推進-企業理念に基づく障害者雇用
- 事業所名
- フェデラル エクスプレス コーポレーション
- 所在地
- 東京都千代田区/千葉県千葉市
- 事業内容
- 航空運輸業
- 従業員数
- 971名
- うち障害者数
- 12名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 2 事務作業補助 肢体不自由 4 一般社員と同様の業務に当たっている。 内部障害 2 一般社員と同様の業務に当たっている。 知的障害 1 データ入力、書類仕分け、事務作業補助 精神障害 3 データ入力、書類仕分け、事務作業補助 - 目次
1. 会社の概要、雇用の取り組みにあたっての経緯・背景
(1)会社の概要
当社は米国テネシー州メンフィスに本社を置き、世界220以上の国と地域で国際航空貨物輸送サービスを展開するフェデックス エクスプレス(フェデックス)の日本支社である。
フェデックスは1973年に米国で営業を開始、日本支社は1984年に設立された。日本支社においては、成田国際空港および関西国際空港での業務部・輸出入通関業務部、営業部、カスタマーサービス部および管理部門等が業務を行っている。
(2)雇用の取り組みにあたっての経緯・背景
当社では創業以来、「従業員を第一に考える(People first)」という理念を実践してきた。そのため、社内では障害の有無によって社員が区別されることはなく、以前から障害のある社員も数名在籍しており、通常の業務を行っていた。しかしながら、法的に定められた雇用率を達成するまでには至っていなかった。
国際航空貨物輸送業においては、空港における業務や配送拠点における業務などが多く、障害者を採用することができる職種が限定されるという問題があったため、採用対象を障害者に絞っての採用活動はなかなか進んでいなかった。
2011年春、障害者法定雇用率を満たすことは企業に課せられた義務であることや、障害者の働く場を提供することによって果たせる社会的貢献、ならびに社内における多様性の推進の必要性を考慮し、障害者雇用を積極的に進めていくとの方針を社内に向けて発信し、管理職ならびに従業員に理解を求めた。
障害者雇用の重要性については理解を得られたものの、現実問題として具体的にどのような仕事を任せるのか、どのような障害特性の人なら雇用できるかなど、検討しなければならない課題は多かった。
新たに障害者を採用するにあたり、まず千葉障害者キャリアセンターに連絡をしたところ、全面的な協力が得られることとなった。センターの担当者と今後の取り組みについて相談したり、同業種で障害者雇用を積極的に進めている企業をご紹介頂き、実際に訪問して障害者が就労する職場を見せて頂いたりするうち、知的・精神障害者が多くの企業で戦力として活躍していることが理解できた。
また、求職している障害者は知的障害者および精神障害者が多いことも分かった。こうして、初めて本格的に知的障害者および精神障害者の採用に乗り出すことになった。
2. 取り組みの内容とその効果、支援機関と連携した取り組み
(1)取り組みの内容とその効果
① | 各部門で、障害のある人たちに従事してもらうことができる業務がないか、業務内容の洗い出しをした結果、派遣社員に任せていた作業や、正社員が空いた時間に行っていた作業を見直して、複数の作業を組み合わせることにした。 |
② | 千葉障害者職業センターならびに千葉障害者キャリアセンターから業務内容に応じた候補者を紹介して頂いた。知的障害者・精神障害者の雇用に本格的に取り組むのは今回初めてであったため、当社にも不安はあったが、実習期間を設けて候補者に実際の業務を体験してもらった。 実習によって、候補者は職場の雰囲気に直接触れ、業務を体験することによって入社前の不安解消につなげた。 また、知的障害者・精神障害者にも無理なく業務を行ってもらえることがわかり、部門管理職が当初抱いていた不安を払拭することができた。 実習後、実習生自身が業務遂行について自信が持てないということで辞退するケースも数回あったが、採用後にミスマッチが発覚することを未然に防げた上、改善点を見直す良い機会となった。 |
③ | 2011年5月以降障害者枠で採用した障害者の雇用形態は、当初3ヶ月はトライアル雇用とし、その後常用雇用に移行することとした。 労働時間は業務上の必要性と、当人の希望を考慮して、週20時間から30時間で調整している。 |
④ | 実習中だけでなく、採用後も定期的にジョブコーチに訪問してもらい、当人が疲れていないか、続けていけそうか、という点についてフィードバック頂いたのは非常に有益であった。業務を指示する他の社員にとっても、ジョブコーチが一緒に説明を受けていることによって本人の理解度を確認しながら指示できるため、安心して説明することができた。 特に、精神障害を持った社員のうちの一人のケースでは、採用当初、当人も納得の上、週の実働を30時間としていたが、実際に勤務を始めたところ、無理が出ているため業務量を軽減した方がいいとのアドバイスがジョブコーチからあった。そこですぐにその社員と相談する機会を設定し、週の実働時間を20時間に変更した。 その後、その社員は病欠することもなく、安定した勤務を続けている。もしもジョブコーチのアドバイスがなかったら、当人の状況を正確に把握できなかったであろう。 |
⑤ | ジョブコーチの支援は障害者本人に対してのみでなく、一緒に働く社員に対しても行われた。前述のケースでは、周囲の社員は当初、その社員の作業スピードが他の社員よりも遅いことを受け入れるのが難しかった。 ジョブコーチと周囲の社員が直接メールをやり取りしたり、ジョブコーチが職場を訪問した際には、周囲の社員とミーティングを行ったりして、その社員への接し方について直接相談しアドバイスをするうち、その社員への理解が深まった。今では当人の作業ペースを尊重し、できる範囲でできる仕事を任せるようになっている。 |
⑥ | 前述以外のケースでも、障害のある社員を採用する際には、周りの社員に当人に対して配慮すべきこと(障害特性や、業務上の指示の方法など)を予め周知して理解を求め、協力を要請した。 |
⑦ | 業務の指示については、担当する業務ごとの担当者が行っている。複数の業務がある場合はこの業務についてはこの担当者に聞く、などを明確にするようにしている。また、できるだけ毎日同じ時間割で作業が出来るように予めスケジュールを組み、時間が来たら毎日指示されなくても次の業務に移れるようにした。 |
⑧ | 聴覚に障害がある社員との業務連絡には、電子メールや社内専用のチャットを活用している。筆談よりスムーズに意思の疎通がはかれている。 |
⑨ | 2012年1月より、本社オフィスにて、聴覚障害の社員と希望する社員で手話サークルを開催。初回は20名の社員が参加した。社員にも大変好評で、引き続き定期的に開催を予定している。 |


(2)支援機関と連携した取り組み
① | 2011年5月以前に雇用した障害者の社員は、支援機関がついていない一般応募での採用だった。 |
② | 今回、支援機関との連携をとった雇用を初めて行ったが、雇用の準備段階から支援機関に入ってもらったので、支援機関の持っているノウハウを最初の段階から活用させてもらった。 |
③ | 支援機関にも現場を実際に見てもらったうえで、現場の責任者を交えての打合せを何回も行った。 |
④ | 社内だけでなく支援機関が入ることで、従来とは違った視点で見ることが出来て、仕事の切り出しや障害者の受入準備等をきめ細かく行うことができた。また、雇用した社員のことを良く知っている支援機関のジョブコーチ支援が受けられたことは、本人の安心感と定着に向けた頑張りに力強い味方になったことと思われる。 |
3. 業務の紹介、上司の評価、今後の課題・展望
(1)業務の紹介
① | 本社オフィスの請求管理部で請求関連書類の仕分けをする社員。請求管理部門には2名の障害のある社員が在籍している。そのうち1名は、毎月数日ずつ、人事部と経理部での書類仕分けおよび社内便発送業務も担当している。 |
② | 輸入通関部で事務補助作業(通関関係書類を決められた順番で綴じる)などを担当する社員。通関部には障害者が2名在籍しており、この作業の他、税関検査のために開封した貨物を元通りに梱包する作業や、送り状のバーコードを専用のスキャナーで読み取る作業も担当している。 |
③ | 空港業務部で専用システムにコンテナ情報や、社員のタイムカードデータを入力する社員。この社員はこの他にも、データ管理や、梱包材の在庫管理も担当している。 |
④ | カスタマーサービス部で専用システムに社員のタイムカードデータを入力する社員。この他、部内を30分ごとに巡回し、各オペレーターに書類を配付および回収する作業を行っている。 |





(2)上司の評価
取り組みを始めてから、複数の部署で知的障害者や精神障害者を雇用したが、そのうち一名が在籍する通関部の管理職からの声を紹介したい。
「以前から聴覚障害者が在籍していましたが、精神障害者を受け入れるのは初めてで、不安はありました。受け入れを決めてから最初に実習した人からは辞退されてしまい、受け入れ態勢や業務内容に問題があったかと悩んだこともありました。
その後、別の人を紹介頂き実習を行いました。彼は実習中も非常に熱心にメモを取り、常に集中して仕事を覚えようと真剣に取り組まれていて感心しました。採用後、業務を開始してからも熱心に仕事に取り組んでおり、周りの社員からも評判です。単純な業務だけでなくもっといろいろな業務をお任せできそうなので、本人の様子を見ながら考えていきたいと思っています。新しい業務をお願いするときには、本人だけではなく、事前にジョブコーチにも相談するつもりです。」
(3)今後の課題・展望
今回の取り組みを開始するまでは、障害者雇用がなかなか進まなかったが、支援機関からサポートを頂き、障害者雇用に取り組んでみると、障害のある人であっても、適材適所に配置すれば、能力を発揮して業務遂行が可能であることが証明できた。
今後は、障害者法定雇用率を満たした後においても、引き続き、障害のある人たちに従事してもらう業務があるか定期的に見直し、障害者雇用を進めていきたいと考えている。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。