障害者雇用におけるノーマライゼーションの実現
- 事業所名
- 富士ゼロックス東京株式会社
- 所在地
- 東京都新宿区
- 事業内容
- 複写機・コンピューター・プリンター各種情報機器の販売・保守・システムの提供
- 従業員数
- 2,161名
- うち障害者数
- 30名
障害 人数 従事業務 視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害21 事務業務、営業、カスタマートエンジニア 知的障害 6 事務業務 精神障害 3 事務業務 - 目次

1. 事業所の概要、基本方針、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
当社は地域に密着したエリアマーケティングを実践するために設置されたゼロックス地域販売会社34社のうち、もっともポテンシャルの高いマーケットである東京23区を活動フィールドに持つ販売会社。社員数、売上、経常利益、販売台数ともに販売会社の中でナンバー1を誇っている。販売商品は、コピー機、ファクシミリ、パソコン、プリンターなどの各種情報機器およびシステム・サービスであるが、単に販売だけでなく、お客様に満足して使っていただけるサービス・ソリューションの提供を実践している。つまり、進化したIT技術や高度な機能を持つ製品を、いかに活用し、どれだけお客様の業績向上・業務効率化につなげていくかというソリューションを提供することを本来の役割と考え、お客様のベストパートナーを目指している。
(2)基本方針
当社では、「社会貢献活動宣言」を銘打ち、より良い地域社会を作り上げていくために、当社らしさを生かした社会貢献活動を継続的に行っており、今後もより一層力を入れて取り組んでいきたいと考えている。そんな中、「社会貢献」の前に存在する、「社会的責任」を全うするよう、障害者雇用に対しても積極的に取り組んでいる。
(3)障害者雇用の経緯
~ノーマライゼーションの実現~
当社は2007年10月に親会社及び関連会社の構造改革により、当社の社員が約800名増員になったことから、急激に下がった法定雇用率を満たすため、障害者を積極的、安定的に雇用することが急務となった。そこで、管理部門の代表者によるプロジェクトを立ち上げ、2007年12月、各部門からあらゆる簡易業務を請け負う「ドキュメントサービスセンター」(以下、DSC)が誕生した。ここでは、ノーマライゼーションを念頭に、障害を持つメンバーがいきいきと働きやすい職場の実現を目指し、障害を持つ社員が中心となって働くことができるよう、業務に必要な設備を整え、今後の長期的な活動を視野にいれ、業務拡大に対応できるような体制作りをした。
障害者雇用に関しては、採用活動においても、各種就労支援機関や特別支援学校との連携を強化するなど、積極的に取り組んでいる。また、契約社員として採用したり、本業とは関連の薄い特例子会社を設立する企業が多い中、当社ではノーマライゼーションをグループの方針として掲げているため、すべて本体の正社員として採用し、給与体系・評価制度も障害のない社員と同様としており、貴重な戦力として活躍の場を与えているところが特徴である。
DSCでは社内資料や顧客へのダイレクトメール、社員の名刺などを印刷するほか、展示会用のパネル作成、さらには本社に届いた郵便物の仕分けや保管といった業務も行っている。DSC設立により、法定雇用率1.8%を継続して達成している。詳細は次の「2.(1)DSC(ドキュメントサービスセンター)について)にて記載する。
2. DSCについて、フォロー体制、能力開発への取り組み、CSR活動
(1)DSC(ドキュメントサービスセンター)について
① | 設立目的 DSCの設立目的は、1.障害者雇用の法令遵守、2.社内シェアードサービスの集約化推進、3.CSR活動の活性化。 |
② | 業務内容 本社事務部門における障害者雇用の実態をもとにノーマライゼーション実現に向けた取り組みの方向性を検討し、具体策として、「誰もができるけれど、仕事量が多くて、細かい仕事」と、「障害者が応募しやすい仕事」の両面から社内業務の棚卸しを行った。その結果、ドキュメント分野の作業を中心とし、出力・製本サービス、配送サービス、回収・廃棄サービスの3つに絞られ、主に本社の簡易業務を行っている。DSCに所属する社員は10名、うち障害者は7名であり、各業務の詳細は以下のとおりである。
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③ | DSCの取り組み
![]() ![]() また、孤立することがないよう、分からない場合は教え合い、ミスを防ぐことができるよう、仕事は必ずペアで行う。また、ペアを組むことは職域を広げる目的もある。後輩社員には自分一人ではできない作業を先輩社員と一緒にやることで新たな業務の習得を目指し、先輩社員には後輩に教えることによる意識の向上を期待している。
《 ストレス回避のための日常の取り決め 》
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(2)フォロー体制
① | 評価制度の実施 当社では障害者も正社員として採用しており、給与体系だけでなく、評価制度においても障害のない社員と同様とし、徹底したノーマライゼーションの実現を目指している。 具体的な評価の方法として、まず、個人の障害レベルに合わせ「実績目標」を立て、その実績目標を達成するための「プロセス目標」を細かく立てていき、その評価を本人・上司が行うというもの。目標設定はグループ長が一人ひとりの社員と2~3回個人面談をし、本人に考えさせながら進めるため、多くの時間を要している。このように時間をかけて、社員の個人レベルにあった、本人も納得した目標を設定することにより、具体的に行動を起こすことができ、社員のモチベーション維持・向上につながっている。更に、上司からの評価と社員の自己評価を比較し、ギャップが大きい目標については上司の求めているものと本人の意識のすり合わせなども行い、社員のレベルアップを図っている このように評価制度を充実させることで、OJTによる個人の大きな成長へとつながり、障害者を貴重な戦力へと育てている。 |
② | 地域との連携 障害のある社員がいきいきと働き続けるためには、企業だけでなく家族や地域支援機関などとの連携が欠かせない。当社では就労支援センターや障害者職業センター、通勤寮など社員を取り巻く様々な関係者と連携を図ることで二重三重のフォロー体制構築を目指している。これにより、緊急時にトラブルを最小限にとどめることができるのと同時に家庭や職場での様子を情報交換することで新たな一面を見つけ、障害に対する理解を一層深めることに繋がると考えている。 |
③ | 学校との連携 各種特別支援学校との連携を図り、定着に向けた受け入れ側の教育についてアドバイスをもらうとともに、障害者が社会に出た際のGAPを最小限にできるよう、学校側への情報提供も行っている。 |
(3)能力の開発への取り組み
① | デモンストレーション大会 「デモンストレーション大会」を開催している。本大会はメンバーが使用する機械の取り扱い説明をメンバー自身が考えて準備し、ひとり5分ほどで発表してもらうというもの。ねらいは、デモンストレーションによって各自のスキルレベルを把握するということや、DSC以外の社員にその発表を見てもらい練習を行うことである。これらの経験が活かされ、DSCメンバーがお客様に説明することができるようにまでなった。 |
② | QCサークル活動 当サークルでは『名刺内製化』をテーマに取り上げ、人事時の大量名刺作成の問題点・課題を活発に討議し、ピーク時に対応できる仕組みを作るなどして、納期短縮・外注費用節減に貢献した。この改善事例はDSCが所属するマーケティング本部発表大会(’09年12月開催)にて敢闘賞を受賞した。 |
③ | 改善提案活動 改善提案活動を開始してから、常に社員が業務改善に関心を持ち、半期に1件以上は改善提案を提出している。その結果、職場の至る所に社員による工夫・改善がみられた。たとえば、オンデマンド印刷機の中に製本の際に、用紙の端が裁断され、そのクズがたまるボックスがある。そこに段ボールを斜めに敷くことで、くずが手前でたまらなくなり、ボックスに溜まったくずを捨てる回数が格段に減り、業務効率が上がった。他にも定規を立てるボックスの作成、社内メール便配送用のオリジナルメール袋などがある。 |
(4)CSR活動
当社は、企業としての責任を果たすとともに、社員の視野を広めたり、自己実現につながるものとして、社会貢献活動を積極的に支援している。
- かけはし倶楽部
- スペシャルオリンピック支援
- ラブジャンクス ダンスライブ支援
- 東京グリーンショップアクション 自然観察指導員講習会
3. 社会貢献活動への取り組み、取り組みの効果・障害者雇用のメリット、今後にむけて
(1)社会貢献活動への取り組み~拡大教科書作成支援~
当社は2003年より「拡大教科書」を作成するボランティア団体を対象に、教科書の拡大カラーコピーの支援を行っている。月に2~3回ボランティア団体の職員が実際に当社を訪れ、機械を使ってプリント・製本している。ボランティア団体からはこれらの機械の無償貸与によって、手作り製本から自動製本機による製本が可能になり、製作時間が5分の1に短縮し、大変助かっているとの声が多くあがっている。
(2)取り組みの効果・障害者雇用のメリット
名刺内製化においては、障害者の職域を拡大しただけでなく、納期の短縮、名刺作成経費の削減(外注費用の半分以上削減)を実現することができた。また、DSCにおいても、本社事務部門における障害者雇用の実態をもとに、「誰もができるけれど、仕事量が多くて、細かい仕事」を本社事務部門より移行したことで、本社の業務効率化および障害者の職域拡大を実現している点は、企業における障害者雇用の理想の形であると言える。
(3)今後にむけて
当社では、社会貢献活動を継続的に行っており今後もより一層力を入れて取り組んでいきたいと考えているが、「社会貢献」の前に存在する「社会的責任」を全うするよう障害者雇用に対しても積極的に取り組んでおり、今後も継続して取り組んでいくことで障害の有無に関係なく誰もがいきいきと働ける会社を目指している。
特に、今後は大卒の障害者を採用し、営業・システムエンジニア・メンテナンスなどの業務へも障害者の配置を実現したいと考えているが、障害者の定着支援のために、入社後の彼らのキャリア形成をどのように立てていくかが課題である。
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