この美しい地球を未来へ!資源リサイクルと障害者雇用の推進
- 事業所名
- 株式会社エコシステム
- 所在地
- 福井県福井市
- 事業内容
- 産業廃棄物の中間処理、粉砕・選別
- 従業員数
- 19名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 廃棄物の手選別作業 内部障害 知的障害 4 廃棄物の手選別作業 精神障害 2 廃棄物の手選別作業 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯と背景
(1)事業所の概要
① | 事業所の概要 株式会社エコシステムは産業廃棄物の粉砕、選別工場である(中間処理)。FKエコグループ全体で高度循環社会に対応した廃棄物リサイクルシステムとして、産業廃棄物の収集・運搬・粉砕選別・固形燃料の製造・固形燃料の販売を営んでいる。これらの中で当社は、このリサイクルシステムの中の混合廃棄物選別処理と木質系廃棄処理を担っている工場である。 混合廃棄物処理は大量な廃棄物にも対応し重機による粗選別、選別ラインによる手選別から廃プラスチック・紙屑・木屑・繊維屑・金属屑・可燃物(砂状廃棄物含む)・不燃物(がれき類・石膏ボード・硝子陶器屑)とそれぞれの用途毎に分別する。 木質系廃棄物破砕処理は木質系廃材の家屋解体材・梱包廃材・廃パレット・長尺の木質系廃材・間伐材・剪定廃材等を粉砕し木質チップ燃料として、また廃プラスチック類・紙屑・木屑・繊維屑は、関連会社の㈱エコ・クリーンにて固形燃料(RPF)として製造される。木質チップ燃料、固形燃料(RPF)は化石燃料の代替燃料として、地球温暖化防止を目的とするCO2排出量の削減に大きく貢献している。 |
② | 企業理念 信用を重んじ、勤勉を旨とし、常に正々堂々の社業の前進によって、会社の繁栄と従業員の幸福を求め、職務を通して社会に貢献する。 |
③ | 経営ビジョン 廃棄物の回収と環境に負荷をかけない処理方法の可能性を追求し、又資源のリサイクルに積極的に取り組みます。
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(2)障害者雇用の経緯と背景
平成20年工場立上計画と同時に、廃棄物の中間処理分別の手選別作業に障害のない者と併せて障害者の雇用が出来ないか、また業務上どういった障害者が適切なのか等、障害者雇用に対しハローワークへ求人の相談を実施。業務の内容から、定着性を考えると、障害のない者より、障害者を雇用した方が継続性、定着率は高いと考えていたからだった。
また、ハローワークへの相談やアドバイスを受けていく過程の中から福井障害者職業センターを紹介してもらい、トライアル雇用や、ジョブコーチ支援といった支援制度の活用も含め、障害者雇用における関係支援機関との連携を図る事の大切さを相談の中から情報も含め得ることが出来た。そういった背景の下、ハローワークと相談し障害者採用に向け面接会を実施しトライアル雇用をスタートさせた。
聴覚障害者2名、肢体不自由者2名、知的障害者1名、精神障害者1名の計6名、トライアル雇用を経て、正規雇用へと展開して行った。
ハローワーク・福井障害者職業センター・就労移行支援事業所等関係機関との連携による就職後の障害者の就業面、生活面の一体的な支援が、障害者が安心して働ける環境と職域の拡大とともに障害者雇用率向上につながり、関係支援機関との連携を図る事が大きな要素であることは言うまでもない。
2. 障害者の職場配置・従事業務、取組の内容
(1)障害者の職場配置・従事義務
廃棄物リサイクルシステムのラインの中で重機による粗選別と選別の工程があり、作業場所は高所のためヘルメット、マスク、安全ベルトを着用しての作業でもある。
立上当初は聴覚障害者2名、肢体不自由者2名、知的障害者1名、精神障害者1名いずれも産業廃棄物の中間処理分別作業の手選別作業で、それぞれのエリアでベルトコンベアーから流れてくる廃棄物を自分の担当する種類のみ選別してピットに落とし込む作業に従事していた。
障害者の中で聴覚障害者については、1名が軽度だったので、口を大きく開けて説明する事で理解ができ、その指示はもう1名に手話で説明するといったコンビネーションで、聴覚障害者同士のコミュニケーションにより仕事の習熟は順調で騒音ストレスを特に感じない面がこの手選別作業には有効だったのだが、立ち仕事なので持病の腰痛により1名が就業できなくなったことと、もう1名も内臓疾患治療による県外入院にともない退職となった。障害者の種別の構成は変遷があり、現在は肢体不自由者1名、知的障害者4名、精神障害者2名となっている。
作業配置状況は
- 知的障害者4名のうち1名が、同社別ライン木質系廃棄物処理でリサイクル(木チップ燃料) する木屑の選別を主に担当している。
- 知的障害者4名のうち1名は、焼却行きとして、可燃物(廃プラスチック類・紙屑・繊維屑等の中で砂状廃棄物含む)の選別を主に担当している。
- 知的障害者4名のうち1名は、金属屑を磁選機と合わせて有価物を担当している。
単独選別することが基本ではあるが、がれき類・ガラス陶磁器屑コンクリート屑等、不燃物を埋立等行き先ごとに複数選別も始めた。
肢体不自由者1名・精神障害者2名・知的障害者4名のうち1名の計4名も、それぞれ行き先毎の手選別を担当しているが、メインのリサイクルRPF(固形燃料)行きを3ピットにラインを増やし廃プラスチック類・紙屑・繊維屑等の選別を共同選別することも始めた。
障害者の勤務についてはいずれも午前8時から午後5時の8時間勤務である。


(2)取組の内容
① | ジョブコーチ支援の活用 精神障害者については職場に適応可能か確認しながら本雇用に進むトライアル期間から配置し早期定着を図るべく職場適応支援をお願いした。 作業自体は難しい作業ではないが、作業者が理解出来るように仕事の手順等職場リーダーからの指導方法に助言をもらい作業遂行力の向上につなげた。 また、当初はベルトコンベアーから流れてくる廃棄物の中で、担当する種類を選別するという作業内容は理解しているが、自分の手元だけの部分的に見える範囲内でしか処理が出来ていなかったり、スピードが遅いといった状況がみられた。担当する廃棄物が未選別のまま後ろに流れ負荷がかかる問題も生じた。そこでジョブコーチのモデリングという見本の提示方法がより効果的ということで、一緒に作業をやって見せて、流れてくる廃棄物の表面から見える部分だけ取るのではなく、片手ではなく両手を使って掻き分けるようにして下まで全体的に選別するようにと、きめ細かく実技指導しながら徐々に選別エリアを拡大させスピードアップにつなげ、不具合の解消へと結びつけた。 またこういった例もある。 周囲から厳しいことを言われると出勤が滞るようになる。ジョブコーチによる家族も含めての相談と職場リーダーとの連携で持ち場を変更して職場環境を変えると共に、ジョブコーチが職場メンバーへ障害者特性も含め理解を深める対話を実施する等、ジョブコーチ支援により勤務の継続性へとつながっていった。 |
② | 作業の実技訓練はマンツーマン方式で時系列に沿って繰り返し指導。職場リーダーが状況及び指導内容をメモを取りジョブコーチに相談しながら進める。作業そのものは難しい内容ではないため、短期間で習熟することが可能である。 |
③ | 精神障害者の場合、作業現場が高所でもあるため、パニック状態となった場合、走り回ると危険である。安定した状態で作業に従事させる事のひとつとしてトイレの利用がある。 1名はトイレの頻度が高いが、作業場からトイレまでの移動距離が長いため、トイレに行く事で、ある程度の解放された時間が、集中力の途切れた状態を気分転換が図れると考えられるため、頻度について指摘はしないようにしている。ただし、リーダーにトイレに行く時、戻った時の連絡は確実に実施することとしている。そして障害特性を同じ職場のスタッフに理解してもらうよう説明し作業環境の安定として合意を得ておくことも必要だ。 また直接指導には、ゆっくりと時間をかけて説明するようにし、指摘に関しては、目的、状況、今後の対応等、特に細心の注意を払い精神的圧迫にならないよう説明するよう気をつけている。 |
④ | 勤務時間の変更 ・精神障害者について 精神障害者を仕事や職場環境に慣れさせるため、当初の勤務時間は午前勤務または午後勤務というように、短時間勤務として設定し、体調に合わせて徐々に長くしていくといった勤務形態をとり、メンタル面の不安定な部分をフォローしながら定着につなげた。 また仕事や職場環境に慣れてくる頃に必ず長期休暇(GW、お盆休み、年末年始休暇等)に入ったり、周囲から厳しい事を言われると出勤が滞るようになることなどに配慮して、その都度、短時間勤務に切り替えたり、本人とのコミュニケーションをとりながらメンタル面の不安定な部分を地道に根気強く指導しフォローしながら定着につなげた。 |
3. 取組の効果と今後の課題
(1)取組の効果
関係支援機関との連携を高め、トライアル期間のジョブコーチの集中支援により障害者の早期職場定着とトライアル終了後の移行支援、フォローアップによる就業面、生活面の一体的な支援を活用する事で障害者と事業所・家族・同僚との連携による障害者の能力を発揮する場として職域を確立できた。
当初1日の就労が困難な対象者が、協力体制が合致したことにより1日2時間が半日、半日が1日と就労時間が延びるという実績がついてきた。
また、職場内での障害のない社員の障害者に対する理解とサポート体制を確立することができた。
(2)今後の課題
会社も「これで大丈夫」と安心していると、長期休暇後に元の状態に戻って出勤できなくなるという苦い経験を、どのように活かして有効な対策を講じていくことができるかは引き続き課題として検討しながら進めていく。
また、立上当初から障害者と共に3年間、2年半就労していた精神障害者が仕事自体は何の問題も無く適応していたが、メンタル面での不安定さの原因をその都度、責任転嫁してしまう特性に、自己管理も含め繰り返し改善に取り組んできたが対処できず離職するといった苦い経験も踏まえ、障害者同士での職場環境構築をどのような方法で築いていくのが良い方法なのか定着に向けての体制作り等、今後の課題として取り組んでいく。
最後に、タイトルになっているように、この美しい地球を未来へ!と、高度循環社会に対応した限りある資源のリサイクルと共に社会全体で連携しながら「One for all,All for one(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」の精神で障害者雇用を進めていく。
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