ノーマライゼーションの実現のために~共働・共生・共遊~
- 事業所名
- 長野リネンサプライ株式会社
- 所在地
- 長野県長野市
- 事業内容
- リネンサプライ
- 従業員数
- 122名
- うち障害者数
- 40名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 3 伝票入力、タオルたたみ 内部障害 知的障害 37 洗濯業務、投入仕上げ・検品業務 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要、経営理念、障害者雇用の動機・経過
(1)事業所の概要
当社は昭和38年の設立以来、ホスピタルリネン・ホテルリネン・ユニフォームなどの販売・リース・クリーニングを手がけてきた。長野工場、須坂工場を中核にグループ会社として株式会社戸上リネンサプライ、株式会社太陽セランド長野、長野クリーンシステム株式会社、社会福祉法人廣望会を加え、堅実な経営と長年にわたる企業努力が実を結び、社会生活全般に役立ち、消費者から信頼される商品とサービスを提供している。
また、近年の高齢化・多様化するヒューマンニーズにお応えするため、介護用品の販売・リースにも参入し、奉仕の心をかたちにして真心のこもったサービスを心がけている。
(2)経営理念
和 | 独立した人格が和の精神をもって力強く連携した生活共同企業体を創造する |
奉仕 | 奉仕の心でお取引先との永続的共存共栄に全力をかたむける |
幸福 | 和と奉仕によって得た社会からの還元物を個人及び地域社会に適正に配分し真の幸福を実現する |
この三本柱の理念を大切にし、実践に努め、社会福祉に貢献することが真の幸福を掴み取ることであると同時に会社の発展につながる道であると確信している。そして、誰もが活き活き働き・生き生き生活し・愉快に遊べるという地域社会を築き、心の壁を取り除き障害のある人もない人もともに普通の暮らしが出来るノーマライゼーションの実現を目指す。
(3)障害者雇用の動機・経過
障害者の雇用については特に企業の社会的責任をふまえ、障害者それぞれの個性を活かし、持っている能力を最大限に発揮し、障害のない人々と一緒になってお互いの努力により社会人としての自立を目指し、それが幸いにも企業実績に反映することができれば、職業人としての充実感と共に社会参加の証とすることができる、という観点に立って雇用を進めてきた。
納富ランドリーから長野リネンサプライ株式会社に経営拡大した折、長野県リハビリテーションセンターより3名の重度身体障害者の職場における実習を受け入れ、その結果、雇用に踏み切った。障害を持つ人たちも努力し、その中の2人はクリーニング師の国家試験にも合格した。
そして、長野県職業安定課や社団法人長野県雇用開発協会等から行政的な指導を賜りながら、昭和55年9月には、病院寝具の専門工場を長野県須坂市に建設した。工場建設にあたっては、身体障害者9名と知的障害者7名を迎え入れ、障害のない人9名を含めて25名で労働省認可の障害者雇用モデル事業所として操業を開始した。また、須坂工場開設と同時に、徒歩数分の場所に障害者のための社員寮も建設した。現在は社会福祉法人廣望会が運営するグループホームとして利用している。
さらに、昭和59年には本社・長野工場を現在地に移転し、ホテルリネン専用のこの工場も障害者雇用を始め、平成2年には重度障害者多数雇用事業所として認可され、現在では3名の身体障害者と22名の知的障害者が就労している。
2. 指導員による雇用管理と支援
障害者が働きやすい職場環境づくりと障害にあった機械の設置と整備に取り組み、昭和62年には自動化機械の導入等により、作業上の安全管理と能率の向上を図る一方、工場長・各職場の責任者によるマンツーマン指導や障害者同士の教え合いを仕組み、障害者のよりよい就労の場づくりに心がけてきた。
さらには、平成5年からは、障害をもつ社員の健全な社会参加と社会生活技術の向上などを意図して、障害指導課を設置した。この部署では2号ジョブコーチを含めた数名の専任スタッフが、障害をもつ社員の社会生活上の諸問題に配慮し、余暇活動を企画している。障害をもつ社員が積極的に社会参加することで生活を豊かにし、生きがいや生活に張り合いがもてるよう指導・支援している。
また、新しく障害をもつ社員を雇用しようとする時は、ハローワークや地域障害者職業センターからの紹介や助言をいただきながら、職場実習を経て求職者も納得する中で雇用をさせていただいている。職場配置については、各職場を経験した後、配属先を決めてその職場のスペシャリストを目指す。労働条件は賃金等も障害のない人と同一水準であり、通勤や勤務時間等他の条件について一般従業員と何ら区別はしていない。
雇用管理面については、障害者と共により良い環境づくりと職業生活の充実を図るための努力〔ノーマライゼーション〕をし、作業指導はもとより、人間関係や職場環境についても細かい気配りをしている。アフターケアについても、定期的に本人や家族と情報交換を行っている。現在、須坂工場では勤続30年を越える障害社員が3名もいる。
指導員・2号ジョブコーチの職務分掌
- ア 障害社員の指導・助言〔個人指導、家庭連絡、家庭訪問、集団的計画指導、シリーズ学習、カルチャー教室、フライディミーティング〕
- イ 社員間交流〔障害のない社員の啓発、花見会、暑気払い、社員旅行、クリスマス会の企画運営〕
- ウ 保護者会の運営〔総会、保護者の集い、親子レク、会報の発行〕
- エ 職場実習の受け入れ〔職業センター、特別支援学校、障害者支援事業所、高校、中学校の職場体験〕
- オ 障害者の採用〔実習~民間委託訓練~トライアル雇用~正規雇用〕
- カ 助成金の申請〔報奨金、トライアル雇用、特定求職者雇用開発助成金、民活委託料など〕
- キ スキルアップ〔全重協などの会議やセミナーへの参加〕
- ク 他機関との連携〔職業センター、ハローワーク、特別支援学校、技術専門学校、医療機関、障害者支援事業所、障害者職場定着推進チームなど〕
- ケ その他〔障害者スポーツ大会への参加、ケース会議など〕
★全重協長野県支部の事務局や重度障害者雇用地方相談協力員などの業務も委嘱されている。

3. 障害者の採用基準と事例
仕事への意欲、協調性、障害の自己理解が出来ることが、採否のポイントとなる。具体的には、①規則正しい生活習慣が身についていること、②身辺処理が自立していること、③挨拶が出来ること、④わからないことは質問や相談ができること、⑤1人で通勤が出来ること、⑥職場の決まりを守れること、⑦安定した状態で仕事に取り組むことが出来ること、⑧保護者からも協力が得られることなどである。
障害者の採用方法
実習~民間委託訓練~トライアル雇用~正規雇用という流れとなっており、人事担当者による面接だけで決定はしない。実習を通しながら適性を判断する。作業のスピード、理解力、人との関わり、現状の課題など総合的に確認をしていく。面接には保護者や紹介者も同席する。最終的には本人の長野リネンサプライで働きたいという強い意欲と、会社側の思いがマッチングした状態で採用が決定する。
最近の採用事例
A君。21歳。知的障害B2〔重度判定〕
B特別支援学校高等部に在学中、長野工場で実習を行う。本人及び保護者も卒業後、当社への就職を希望していた。その後、当社のグループ事業所である社会福祉法人廣望会に入所し、所外実習・訓練で須坂工場にて日中活動を行っていた。
そんな矢先、須坂工場で障害社員の欠員が出たため、障害者民間活用委託訓練〔知識・技能習得訓練コース クリーニング科〕を実施した。その5名の受講生の中に彼もいた。しかし残念ながら彼は採用にはならなかった。その後、彼は須坂工場で所外就労・訓練を行う日々が続いた。
平成22年の秋に彼が希望する長野工場で障害社員の欠員が出た。2週間ほど長野工場で所外就労・訓練を行い、ハローワーク、技術専門学校のコーディネーター、ジョブコーチ、当社の指導員、保護者などでケア会議を開き、就労移行支援事業を利用し採用への道のりを検討した。彼は責任感が強く、大変几帳面ではあったが、神経質で不安が強く、コミュニケーションに課題があった。
民間委託訓練を2ヶ月実施し、その後トライアル雇用を3ヶ月実施した。当社の指導員がマンツーマンで支援を行い、働く場のルールを理解させ、共同作業を通し協調性を養い、ストレスをためることなくコミュニケーションをとり、より良い対人関係が築けるよう指導をした。また、作業時間も一般社員と同じにした。
トライアル雇用を通し、作業スピードは徐々に一般社員と同等になってきたが、人と話すタイミングや周りの空気を読むことが難しいためか、自分からは積極的に取り組むことが出来ない状況であり、また、集中力に欠けている状態であった。しかしながら、指導員のアドバイスや同じ職場の人の支援により、同僚や先輩の名前も覚え、話しを出来る人も増えていった。不安が少しずつ解消されていくと作業能力にも成長のあとが見られ始め、再度ケア会議を開き正規雇用に至った。
現在では、社内行事にも積極的に参加し、伸び伸びと働いているが、ストレスをためやすいため、今後も定期的に相談時間を持ち、職場での声がけなど支援を継続していく必要がある。
4. 障害者を雇用して~今後の課題~
作業の特性から、身体障害者より知的障害をもつ社員を多く雇用しているが、知的に障害をもつ社員は出勤率からみて大きな戦力となっている。また、仕事を覚えるまでには時間を必要とし、同じことを繰り返し指導する必要性があるため指導には根気が必要だが、熟練してしまえば根気よく仕事を継続し、陰日向なく集中できる美点がある。但し、生活上の喜びや楽しみは、サポートする必要がある。
このような長年の障害者雇用の実績に対しての地域からの期待の大きさを、障害者の働く場がまだまだ不足している今、痛切に感じている。その歴史の中で、障害のある親の高齢化、そして死、さらに本人の高齢化・能力低下等、様々な場面にぶつかる中で、この子供たちの将来を案じて、平成10年には社会福祉法人廣望会を設立し、共に活き活き働き・生き生き生活し・愉快に遊べるという障害者への総合的な支援を構築してきた。将来は、障害者の高齢化に伴う障害者のための高齢者介護施設の運営も考えている。
最後に、障害者雇用を柱とした長野リネンサプライグループの長年の実績を社会に還元し、雇用の場・生活の場・就労訓練の場、そして躓いたらいつでも帰ってくることができる施設の体制も整え、障害者の総合的支援を創造して参る所存である。そして、共に夢の描ける社会を築いていきたいと考えている。
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