社会貢献としての障害者雇用
- 事業所名
- 有限会社伊藤総合コンサルタンツ(スズカッペリサイクル工場)
- 所在地
- 三重県鈴鹿市
- 事業内容
- ペットボトルと空き缶のリサイクル事業
(ペットフレーク、飲料缶プレス) - 従業員数
- 16名(2011年9月現在)
- うち障害者数
- 9名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 ペットフレーク、メタルリサイクル製品製造 肢体不自由 内部障害 知的障害 6 ペットフレーク、メタルリサイクル製品製造 精神障害 2 ペットフレーク、メタルリサイクル製品製造 - 目次


1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
本事業所は、1991年に設立され、ASPコンサルタント、LED施工販売、メタルリサイクル、産業廃棄物収集運搬業、一般廃棄物収集運搬業を事業内容としている。
その一環として、2009年に、ペットボトル・飲料缶を無償で収集し、製品化をして国内100%リサイクルすることによって、循環型社会を目指す三重県初の事業展開をするスズカッペリサイクル工場を立ち上げた。
CO2削減のほか、社会貢献として作業員に障害者を雇用し、法令完全遵守を徹底して、事業を進めている。ホームページには、「無償で収集するコストダウン、容器リサイクル法や廃棄物処理法等の法令に沿ったコンプライアンスを徹底し、適正に事業を実施するという法令完全遵守、障害者雇用による事業展開を行う」ことがうたわれ、これら「3つのメリットをお客様にご提供する三重県初の形態でペットボトルやスチール缶、アルミ缶のリサイクル事業を行います」と記されている。
コストダウンと法令完全遵守については、当工場で「無償で御社で排出されたペットボトル、スチール缶、アルミ缶などの飲料缶を収集し、選別、破砕、プレスを行う」とし、無償により産業廃棄物に当たらず、自社で洗浄破砕したものを提携取引会社で「繊維、日用雑貨、インテリア製品、電機部品、自動車部品などへリサイクル」と説明されている。
また社会貢献としての「障害者雇用」については、「障害者自立支援法が施行され、障害者の就業機会がますます必要となる中、景気悪化や依頼主の要請の複雑化等もあり、安定的に職場を確保することが極めて難しい状況」となっており、「そのような方々に安定的な職場を確保するとともに、高い品質のサービスを行うことで障害者の地位向上を図るなど、さまざまな側面からの社会貢献を目指す取り組み」を行っている。
「私たちはハローワーク鈴鹿を通じて、障害者の雇用を最優先と考え社会に貢献します」と宣言している。
(2)障害者雇用の経緯
もともとメタルリサイクルの関係で、空き缶収集を行っていた障害者支援施設と取引をすることになったが、その施設から障害者雇用の要望が出てきたのがきっかけであった。社長は鈴鹿市に長く住んできたこともあり、何かできることはないかということで障害者雇用を考えるようになった。
リーマンショック以降の経済情勢は、障害者の働く場を狭め、障害者の働く場の創出が緊急の課題の一つであった。そんな折、鈴鹿市にある障害者支援施設、八野ワークセンターが空き缶の回収をしており、その買い受けの際に、こうした作業所の構想が生まれる契機となった。その際、空き缶があるのであれば、ペットボトルも一緒にあるだろうと考えた。
当時は、三重県が障害者雇用率全国平均を下回り、全国最下位の状況を脱出できない時期であったことも、障害者雇用を始める動機の一つでもあったようである。
そこで、障害者を従業員として雇用している県外の企業を訪ね、準備段階として何が必要かなどを検討した。そこでは障害者がきちっとした形で仕事をしていたので、三重県でもそれが可能なのではないかと考えた。
しかし訪問した企業は、産業廃棄物として集まったものの中から空き缶とペットボトルを選り分けるという作業形態であった。そのため、本事業所では、設立当初から、それらを産業廃棄物として扱うのではなくて、有価物・資源物として扱うことを基本姿勢とした。
有価物・資源物として扱うために、従業員を使ってこちらで資源として集めに行くというスタイルをとることから、ペットボトル・飲料缶の回収は、無償で行うことにした。
また、事業を始める際に同時進行として、フレークを買い取ってくれるところを探すこと、空き缶プレスの買い手等を探すことを行った。それは、商品として安定して提供し購入してもらえることが、仕事を続けるための前提であったからである。
設立当初から1日10万本を生産するという目標を立てて出発し、2011年に目標を達成できたため、現在の新工場に移って、仕事を継続することになった。
最初の工場は、空いた工場を借りて作業を行ってきたため、エアコン設備がなかったが、新工場では食堂・休憩室も整備され、休憩時間をゆっくりと過ごし、昼食も一緒にとれるようになった。これらの設備(休憩室、トイレ、工場の表など)の清掃については当番制で行っている。
また、朝8時30分からラジオ体操を行い、朝礼では、一人ひとりが順番にひとこと話をすることにしており、時には社長が話すこともある。その他、一日の業務の流れを話し、作業内容と目標を明確にして、皆が目標に向かって作業を進めることができるようにしており、目標として一日の生産量を示すこともある。
従業員の給与は、障害のある人の場合、8時間労働で、三重県の2011年度の最低賃金時給717円、身体障害者(聴覚)が750円、6時間短時間労働の精神障害者は750円が支給されている。ただ、以前から本事業所で働いてきた障害者一人は、寮に入って一人で生活をし、フォークリフトの免許も有しており、月給制である。
2. 取り組みの内容
(1)募集・採用
最初の段階では、元々従業員として働いていた障害者1名のほかに、鈴鹿市にある障害者支援施設等から6名が採用された。
設立当初は、全社員10名で、「第二八野ワークセンター」から3名と「障害者総合相談支援センターあい」の紹介の3名の障害者が6名で出発し、ハローワーク鈴鹿を通して、障害者雇用を最優先に考え、社会に貢献することを目標とした。
現在の体制は、役員3名、従業員13名、うち障害者が9名、障害のない者が4名である。伊藤社長、五十部専務ほか、役員1名、竹中工場長と高齢者雇用の人、ドライバー2名である。
障害者のうち身体障害者(聴覚障害)1人もドライバーとして勤務している。
障害者従業員の年齢構成は、20歳から53歳で、20代3名、30代3名、40代1名、50代2名であり、女性2名、男性7名である。鈴鹿市(5名)、亀山市(2名)、津市(1名)から、電車、バスで通勤している人、自転車での通勤の人と入寮している人(1名)がいる。
(2)障害者の業務・職場配置
全体の流れの中で、オート化が可能な設備システムではあるが、それを敢えてしないことによって障害者の仕事が創出される仕組みとなっている。
本工場では、回収されたペットボトルを最新鋭のプラントによりラベル、キャップを取り除き、洗浄粉砕し、高品質のペットフレークを製造している。また、飲料缶は、スチール缶とアルミ缶に選別し、それぞれプレス品として国内メーカーに納入している。
ペットボトルに関して、工場のプラントシステムでは選別→ラベル剥がし→再選別→洗浄粉砕→比重分離→脱水乾燥→製品という工程があり、その流れの中には、選別作業台・ラベル剥離機・手選別コンベア・ベルトコンベア・洗浄粉砕機・比重選別機・スクリューコンベア・脱水乾燥機等の機器が備えられている。選別されたペットボトルは、ベルトコンベアーに投入され、まず前処理機でつぶした状態にする。
ペットボトルを選別する人と、ベルトコンベアーに投入する人が1名ずついる。
その後、ラベル剥がしの機械を通り、つぶされた状態のペットボトルがベルトコンベアーに流れ出てくるが、そこで残されたラベルや金属片の除去選別作業が2人(うち1人は高齢者)で行われる。その後は、すべてオートマ化された作業で、洗浄粉砕機を通り、比重選別機によりプラスチックとフレーク用に分別され、フレーク用のものが脱水乾燥機により製品化され、商品となる。商品は大きな袋にたまるようになっており、それをリフトの操作により移動させ、フォークリフトを使って並べている。
この作業は当初からの従業員が担当している。
空き缶プレスの選別作業台は、男性2人と女性2人が配置されている。ここでは、分別されていない袋を開け、ペットボトルや瓶などをそれぞれのかごに分け、空き缶だけをベルトコンベアーに投入する。ペットボトルは、隣のペットボトルのプラントシステムの人に渡され、瓶類も分別して別のケースに入れ、袋もそれぞれリサイクル用に集める。
空き缶は、ベルトコンベアーに設置された磁石により、アルミとスチールが分類され、一定程度カゴにたまったところで、プレス機械に投入し、プレスされたものがでてくる。この作業は、一番若い20歳の男性が担当し、彼はその間に分別も行っている。
プレスされた空き缶は、フォークリフト用のパレットの上に集められ、まずその重量を量り、メモをとってから、大きな運搬用に手作業で並べ、積み上げていく。自治会からのものについては、有価で取り扱っている。有価で引取ることにより、その代金を自治会活動費にあてていただいている。
職場配置に関しては、それぞれの特性を見極めて、その人の特性に合った配置を心がけ、現在とてもうまく作業が流れている。
竹中工場長が現場を見ながら、判断しているということである。
安全性の面では、リフトの動作の時には安全を徹底するため声かけをするようにしている。また割れた瓶が混ざっている場合もあるが、安全に作業をしているとのことである。安全装置としては、ロープを引くとプラントの機械が止まるようになっているなどの対策がなされている。
3. 取り組みの効果・障害者雇用のメリット・障害者自身のコメント、今後の課題と展望
(1)取り組みの効果・障害者雇用のメリット・障害者自身のコメント
皆に役立っていることの自覚が、一生懸命働く姿になって現れる。また、日ごろから、当事業所の従業員であることを自覚するために、「人に会ったら挨拶をすること」、「自立のために一人で通うこと(電車、バスの通勤)」など、いつでもどこでも社会人としてのマナーを身につけるよう指導している。作業も頑張っており、来客者が「本当に皆さん障害者なんですか」と驚くくらいにしっかりと仕事をしている。
竹中工場長の話しでは、「皆さんが真面目に作業してくれているから」ということである。
仕事上のトラブルに関しては、ミーティングで解決するようにしている。お互いに調整しながら、トラブルの起こらないように対応している姿も見られる。話をすることによって解決の方向を探り、お互いに納得しているようである。
休憩時間は、10時・12時・15時の3回である。猛暑の時などは1時間おきに水分補給をするように対処している。
昼食に関しては、お弁当をもってくる人、仕出し弁当を注文する人、皆一緒に食堂で食べており、談笑したり、テレビを見たりしながら昼休みを過ごしている。
会社が休みのときには、一緒にボーリングに行ったりしているようである。このように特にコミュニケーションに配慮したことが功を奏してか、暑さ寒さにもかかわらず、ひとりも休まず遅刻もせずに仕事に励んでいる。
「近くに部屋を借り、工場に通って働きたい」という人や、「これまで掃除しかさせてもらえなかったが、ここでは仕事ができて嬉しい」「働きがいがある」と話す人がいるように、「皆が生き生きと仕事に取り組んでいる」という効果が現れている。
生活面での支援として親睦会も計画され、毎月千円の積み立てをして、ぶどう狩りや忘年会等の季節ごとの行事も催している。また家族とのコミュニケーションとして、親御さんには、電話や文面にて連絡を取り、いつでも様子を見に来ていただけるように対応している。
(2)今後の課題と展望
今後の課題としてあげられるのは、冬場に少なくなるペットボトルの回収を増加させる工夫をすることで、ペットボトルの回収量をいかにして増加させるかである。この12月は、作業日程を週3日に減らし継続しているが、本来なら冬場でも一定の材料を回収し、安定した労働環境を提供できるようにしたいところである。そのために、新聞の取材を受け入れて、報道してもらうことも一つの対応策として実施している。
また、飲料関係の企業などは、ISO(環境マネジメントシステム)の関係から、ペットボトルを産業廃棄物として出さなければならないことになっている。これに対応するためには、産業廃棄物中間処理施設としての許認可の取得することも一つの対応となる。
許認可を取得することにより賛同していただく企業もある。法律による規制によれば、容器包装リサイクル法は家庭から排出される一般廃棄物に含まれる容器包装廃棄物のリサイクルを趣旨としており、産業廃棄物については再商品化義務の対象外となっている。
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