すべての人たちと、光り輝く人生を共感し、生きる喜びを分かちあう
- 事業所名
- 株式会社 ひかり
- 所在地
- 京都府長岡京市
- 事業内容
- 障害者雇用
- 従業員数
- 13名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 1 清掃・フロント業務 知的障害 7 清掃・ビルメンテナンス 精神障害 - 目次
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社ひかりは、障害者雇用を目的とし、全員社員として雇用し、社会保険も全員加入している。公衆浴場清掃・管理業、ビルメンテナンス業を中心に障害者の積極的雇用を推し進め、雇用はすべてハローワークを通じて紹介を受けた人の中から、会社の主旨に合う人を採用している。
沿革
平成22年11月9日
株式会社ひかり設立 障害のない者1名 障害者6名
平成23年1月1日
本格的に事業を開始する
- 公衆浴場の清掃・フロント業務
- 取引先(株式会社クレオテック)の日常清掃
- 公的事業所の日常清掃
- 整形外科医院2か所の日常清掃と定期清掃
平成23年4月1日
- 老人福祉センターの日常清掃
- 個人住宅の定期清掃
平成23年10月1日から
従業員の指導方法については就労支援に専門性を持った福祉施設と連携し、清掃技術の習得には国内トップレベルを誇る企業と協力し、より一層障害者雇用の発展を図っている
(2)障害者雇用の経緯
当社は、代表者自身が1級身体障害をもち、自分が働けることの喜びを日々感謝し、また、障害者が障害のない者と同じように差別なく働ける場を提供するという目的と、代表者自身が中途障害者で、2年間車いす生活を経験しており、その時に周りの人々の協力、応援があったことに感謝し、何か恩返しが出来るようにとの思いもあり設立した。代表者は、以前勤めていた会社から障害を持ったことによって解雇通告をつきつけられ、医者からも「残念ながら社会復帰は無理です」と言われ、やむなく障害者手帳を取得した。それまでの営業職としての生活から一転し、働く意欲をなくし、ただ泣きながら車いす生活を送る毎日で、他人に自分の姿を見られるのがとても悔しく卑屈になり、なかなか外出することが出来なかった。そんな日が2年間続き、その間、友人、周りの人達、そして娘や家族からは色々な言葉で慰めや励ましをもらっていた。やっと自分でも外出してみようという気持ちになり、周りの人達の協力でその機会も増え、少しずつ前向きな気持ちを持つことが出来るようになり、働きたいと思う気持ちを含め本来の自分を取り戻すことが出来てきたように思えたが、障害を持った者を受け入れてくれる会社はなく、厳しい現実の壁にぶつかっていた。そんな時に、聴覚障害を持った人との出会いがあり、平成15年から障害者(身体障害者、知的障害者、精神障害者)の指導員として働かないかと声をかけられ、今までの生活から脱却し、働き始めることが出来た。
もう一度社会復帰が出来て、人のために働くことが出来ることに喜びと感謝の気持ちでいっぱいで、障害を持ったことを悔やんでいたけれど、今は障害を持ったことでこのような素晴らしい関わりを持った人生を歩むことが出来ることに感謝している。そして会社設立時、そのことに共感してもらえた事業所、経営者の人々の協力を得て、会社組織で雇用することが実現した。
2. 取り組み内容と効果
当社で働く知的障害者の多くは重度の障害者であり、これまでの職場では単純作業に従事しており、難しい仕事は出来ないという前提で責任ある仕事を任せてもらえていなかった。しかし当社では、「5名で協力して1事業所の清掃を仕上げる」「2名で1事業所の清掃を仕上げる」というチームワークでの清掃作業に取り組み、チームで責任を持って仕事が仕上げられるようになり成果も出てきている。また、各人それぞれの出来ることにどんどんチャレンジさせ、出来ることを伸ばしていく中で、それぞれの持ち場での責任感も生まれてきた。
公衆浴場でのボイラー管理、またフロント業務なども充分任せられる能力もあり、障害者の中には生活指導員資格(有資格者:障害のない者3名、身体障害者1名)を持つ人も出てきた。
事業所での清掃は当初、自分の持ち場の作業をこなすことも出来ず、トイレ清掃時、便器の洗浄をしたが、床面のモップがけは自分の作業として理解出来ず、一連の作業がバラバラだったり、トイレットペーパー・ペーパタオルの補充を忘れたりして、毎日その度その度声かけが必要だったが、マニュアルのもとでの作業を重視して、終了時に確認作業も自分たちで行えるようになった。個人個人どこでつまずいているのか、何が出来ないのか、何が分からないのか、指導員が本人の作業を見ながら指導し、指導員と現場の責任者との連携も計りながら、個人の能力を最大限に引き出すということに重点をおいている。
また、当社ではあいさつも重視しており、請負先の事務所の人々にもあいさつ出来るようになった。
また、家庭との連携も大切にし親を交えての親睦会も行っている。
個人では悩みや質問のできない人もいるので、特に一人ひとりへの声掛けを大切にして、連絡ノートの交換もしている。その中から問題点が分かるという時もある。
【 事例1 】
A君に対しては作業以外の心のメンテナンスを重視している。A君は言葉を発することが出来なくて、その場で感情を表すことが出来ず、胸に秘めてしまいストレスとなるので、毎日A君とメール交換をして、その日にあった事を報告してもらっている。
その結果、A君は以前より明るく、多少の会話も出来るようになり、笑顔も出て、毎日楽しく出勤できるようになった。清掃以外にボイラー操作も自信を持って、一人で出来るようになった。取引先(株式会社クレオテック)での作業は気持ちが安定したことによって二人一組での作業が自信を持ってスムーズに出来るようになり、ミスも減った。





A君のコメント
「自分の居場所が出来て、毎日楽しく作業が出来るようになった。今までさせてもらえなかった作業にも挑戦できるようになった。」
【 事例2 】
B君は平成23年8月31日、トライアル雇用を終了し、常用雇用となり、作業内容は公共事業所の館内清掃と公衆浴場の清掃をしている。B君は重度の知的障害者であり、前職場では対人関係でトラブルを起こすことが多かったが、B君に対しての指示系統を統一し、組織図を用いて指導にあたった。
その結果、作業内容が明確になり、自分の持ち場の作業を確実にこなすことが出来るようになった。コミュニケーションが取れず、自分の気持ちを上手に伝えらなくて暴れることが多かったが、精神的にも安定し、それが無くなった。
公共事業所では人の出入りが激しく、その度に立ち止ってしまい作業が進まず、指導員が目を離すことが出来なかったが、作業はとても丁寧できれいに仕上げることが出来るので、いい所を褒めて自信を持たせることで、事業所の人に会うと「おはようございます」「こんにちは」と挨拶が出来るようになり、同時に作業の手を止めることなく進めることが可能となり、心身共に安定して作業をこなせるようになった。また、指導員にも自分から話しかけることも多くなったことから、引き続きB君には常に声かけをすることを心掛けている。


B君のコメント
「ひかりに来てよかった。楽しいです。」
【 事例3 】
C君は身体障害1級である。C君の病気は心不全でCRT-D(ペースメーカー)を装着している。
C君の仕事の内容は、障害者の社員のサポートであり、障害を持った社員一人一人のフォローアップを意識した業務を行っている。そのため障害のない者より社内で気を使わなければならない。「疲れやすくなる」「動悸がする」「少し歩いただけで息切れを起こす」などさまざまな症状が現れやすく、3ヶ月に一度、C君の主治医の先生と相談しながらさまざまな業務に従事してもらっている。知的障害とは違ったサポートが必要だが、体調をみながら今後のC君の活躍に期待している。
3. 今後の展望と課題
現在、様々な障害を持つ者(身体障害者、知的障害者、精神障害者)の雇用を行っている。その中でも知的障害をもつ社員の割合が多く、彼らを取り巻く労働環境を中心に整える事が当社の障害者雇用の理念に繋がると考えている。
① | 個々の障害者の特性を踏まえた作業内容の適所化 一概に知的障害といっても、個々の能力や特性は一人ひとり異なり、重複障害を伴っている者も少なくない。例えば自閉症を伴う社員は他の人々と関わりながら仕事を進めることが苦手であるなど、人により様々である。依って、作業現場の特性の位置づけを行い、障害の種類と度合いを加味したうえでの人材の配置を行っている。 |
② | コミュニケーション能力に応じたツールの選択化 例えば、知的障害の特性の一つであるコミュニケーションの苦手な社員は自分の思いを伝える事や仕事内容及び相対人の思いを理解することが苦手である。そのため「連絡ノート」を用意し、それを介して、その日一日の「出来事」「思い」「悩み」を伝えやすい環境整備をしている。 |
③ | OJTと教育訓練 社員一人ひとり障害の度合いが違うように、理解力も三者三様である。依って、一同に介しての教育訓練ではなく、その人、その現場に即した、そしてその時々に応じた指導(OJT)を実施し、よりクオリティーの高い仕事を日々目指している。それが社員達の「血となり肉となり」会社のためだけにとどまらず、社会への貢献に繋がることとなり、彼らの大いなる自信に繋がるものと確信している。 |
④ | 安全管理 特に高所(脚立使用)での作業が予想される現場では、必ず指導員及び障害のない者が立会いの下で作業を進められるように日時調整を行っている。その他、危険が予想される現場でも同様である。 |
⑤ | 健康管理 自己管理が苦手な為、職場への出勤率が低下することがある。一日の大半を過ごす家庭と職場にて密接なる関係を保ちながら連携を図り、健康管理を行っている。 |
以上、日頃悪戦苦闘しながら進めている当社の5本柱だが、課題が山積みである。当社では現在、視覚障害者の雇用を目指しており、業務を委託して頂いている船戸湯様にて、より満足をして頂けるサービスの提供を行う為、視覚障害者によるマッサージ業務を計画している。視覚障害者の雇用の場(作業現場)を確保することができれば職域拡大に繋がり、新たな障害者の雇用が可能になる。上記5項目をより細やかに、そしてより専門的見地から彼らを指導できる体制が不可欠になってきていると感じており、社員の更なる社会貢献を目指すうえでも確固たる知識と自信を持った指導員が必要と感じている。
また、障害者雇用には社会の理解が必要であり、現在、雇用の場(作業現場)が少なく、今後企業に障害者をより多く雇用してもらえるように協力を求めたいと思っている。
どのような障害を持つ者であっても、障害者が社会貢献出来るように働ける場を広げていき、障害者雇用を円滑に、より積極的に進めていくことを目指している。
執筆者:株式会社ひかり 指導員 佐藤 みや子
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