困難や苦労を栄養剤に障害をのり越えて働くベテラン社員とそれを支えるホットな職場
- 事業所名
- 奈良日産自動車株式会社
- 所在地
- 奈良県大和郡山市
- 事業内容
- 自動車の販売、点検、整備、修理、リース、保険代理業務、その他
関連事業 - 従業員数
- 183名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 2 自動車整備士
点検・検品・仕上作業肢体不自由 1 営業コールセンター顧客サービス 内部障害 知的障害 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
当社は昭和29年12月創業と社歴の長い奈良県の自動車ディーラーで日産自動車のブルーステージ店である。かつては近鉄グループに属し、社名も奈良近畿日産自動車株式会社であったが、現在は独立をして平成15年4月に奈良日産自動車株式会社に社名変更した。
企業理念に「スタッフ全員が迅速かつ機敏に適格な行動をする。」「お客様一人ひとりの立場で考え、均質で高水準な対応をする。」「お客様のニーズに合った販売とサービスを提供し、地域に貢献する。」を掲げて、183人の社員が、営業販売、サービス、整備点検修理の各分野で活躍している。
モータリゼーションの浸透につれ、かつての「車は一家に1台」の時代から、今日では、若年層、高齢者、女性、障害者へと顧客が多様化しており、当社は、奈良県内に新車販売7店舗、整備工場7件、中古車販売1店舗を配置し、自動車の販売、点検、整備、修理、リース、保険代理業務、その他の関連事業を展開している。
(2)障害者雇用の経緯
当社では、障害者雇用を企業の社会的貢献、地域雇用体制推進の一環として取組み、以前から障害者を積極的に受け入れ、障害者と障害のない者とが生き甲斐をもって一緒に、気持ち良く働けるような職場環境の整備に努めてきた。
そこには障害者を職場に迎え、彼の職務遂行を支える上司、同僚の温かいサポートがある。また、障害者自身とその家族の言い尽くせぬ苦しみ、それを乗り越える日々の努力と営みがある。
昭和50年に新卒採用で入社したAさんは、本社の自動車整備工場で主に点検・修理・整備サービスの仕事を担当してきた。この自動車整備工場の経験を経て、店頭での整備作業及びメンテナンスの受付に転属勤務していた。このころ難聴気味となり、接客業務を続けることが極めて困難になる。窮地に立ったAさんと家族が一心に病気の治療と聴力の回復に努めた。会社の方では、療養を続けて健康回復後の職場復帰を期待し、その方途を検討し続けた。やがてAさんが健康回復して職場復帰できることとなった。しかしながら、今まで従事していた店頭で、来店される顧客に直接応対する仕事(車の購入やアフターサービス、修理・整備・車検、自動車保険等のインフォメーションサービス等)に復帰することは難しいと判断された。そのためAさんの意向と意志を確かめた上で、自動車整備工場に転属し、主に点検・修理・整備サービスの仕事に従事してもらうこととした。
Aさんを職場に迎えた上司、同僚が日々熱心に彼の職務遂行を支えた。またAさんも新しい職場の一員として一生懸命努力した結果、現在では、経験豊かな整備工となり、中堅社員となり、ベテランの域にまで達した。
あの時、難聴になり職場を離れざるを得ない危機をAさんは、会社、職場の上司や同僚のサポートにより克服し、今も現役の自動車整備サービスマンとして納車前の車体にガラス系コーティング剤での「5years-coat」を施工する作業現場で活躍している。
会社は障害者の特性、経験に即応した労働条件の設定、職場環境の整備を順次手掛け、それ以来、会社都合で退社する障害者はなく、昭和50年入社のAさんのほか、平成10年入社のBさん、昭和55年入社のCさんの3人が長期勤続で活躍している。
人事・採用・労務管理の担当は本社管理本部のK係長とO主任である。O主任は平成22年度に障害者職業生活相談員資格認定講習を受講、同社の障害者雇用推進者で、障害者職業生活相談員である。これからは厳しい経済環境のなか、改正された障害者雇用促進法により求められている障害者雇用率の確保と職場定着をめざして人事・採用・労務管理業務に取組むこととしている。
照る日、曇る日、雨の日、風の中を営々と仕事に精励し働く人が、人の役に立ち、世に必要とされ、ほめられてこそ幸せである。老若男女、若者と高齢者、障害のない者と障害者が共生・協働されている。当社で働く障害者がその有難さ、幸せを家族とともに実感されていることが何よりも喜ばしい。
2. 障害者の従事業務、職場配置
(1) | Aさんは、本社の自動車整備工場配属、主に点検・修理・整備サービスの仕事を担当し、自動車整備工場の経験を経て、整備作業及びメンテナンスの受付に転属勤務していた。このとき難聴気味となり再び自動車整備工場に転じて点検・修理・整備サービスの仕事に復帰し、いまも現役のサービスマンとして大和高田店にて活躍している。平成9年、中途障害により身体障害者手帳(聴覚障害3級)を取得した。 |
(2) | 聴覚障害を持つBさんは平成10年に入社し、本社の自動車整備工場に配属され、家族の期待とバックアップを受けて一心に職務に精励した。なによりも職場に彼を温かく見守り、その職業人としての成長のため、指導しサポートした同じ職場の上司と同僚の存在が欠かせなかった。ここで自動車整備工の仕事一筋、営々として作業し、腕を上げ、上級のテクニカルスタッフまでにキャリアアップし中堅社員として勤務している。「匠の証・安心の技術」と「まごころの応対」という日産独自の「日産サービス技術修得制度」、それに連携する国家資格への挑戦により、現在は自動車整備士2級、日産テクニカルスタッフ1級の資格を持つ自動車整備士として生駒店で活躍している。 |
(3) | 下肢障害を持つCさんは、当初は会社構内の電話交換手として勤務、やがて電話交換室が廃止になり、営業部門の事務に従事していた。 新業務においても仕入先、販売先、得意先その他外部との接触などコミュニケーションをとることが重要な業務であった。特に接客業務では当社の販売先、得意先とのきめ細かい応対がより重要であり、顧客に対して会社の顔となり応対するため、会社の提供するカーライフサービスについての実務経験と知識学習などを培う必要があった。歳月を重ねベテランのカウンタースタッフとなった。 平成16年に情報化・IT活用必須時代に対応して、会社が立ち上げたコールセンターに所属し、車の購入やアフターサービス、修理・整備・車検、自動車保険等のインフォメーションサービスに携わり、定年後も継続雇用(再雇用)フルタイムで同職場で活躍している。 |
自動車販売会社である当社が障害者をその職場に受け入れるにあたり、障害の部位、程度、各人の職業経歴、それぞれ特性を考慮する「人に仕事を」方式を取り入れて、個々に相応しい職域の確保、職務再開発が可能となった大きな要因として、販売商品が、マスプロ(大量生産)であってもマスセールス(大量販売)になじまない、高額なものであるため、企業理念として「スタッフ全員が迅速かつ機敏に適格な行動をする。」「お客様一人ひとりの立場で考え、均質で高水準な対応をする。」「お客様のニーズに合った販売とサービスを提供し、地域に貢献する。」を掲げた大量販売方式でない、顧客一人ひとりに相対して一品一品についてきめ細かい販売・サービスに真心を添える接客に徹していることにあると考えられる。今後も働く障害者が精いっぱい努め、会社が相応の処遇ができる状況を維持し続けたい。 当社の社員は皆、障害の有無にかかわらず、同一の雇用条件で正社員として勤務している。 |


3. 取り組みの内容
(1)当社の求める人財像
お客様に「ありがとう」と言われるのが好きな人を求めており、「人」が好きで笑顔をたやさず進んで気持ちよく接することが出来る人を求めている。
一人ひとりを大切にし、相手の立場に立って考え、的確な対応を行うことで、「信頼」を築ける人を求めている。
(2)「人」への投資が成長への鍵
当社の社員・自動車整備士は「匠の証・安心の技術」と「まごころの応対」という日産独自の「日産サービス技術修得制度」やそれに連携する国家資格「1級、2級、3級自動車整備士」への挑戦により、顧客に満足される「技術力」「対応力」の修得を目指して、職業生活の各ステージ毎に上位の技術・技能を身につけている。また営業・販売サービス部門については、本社では販売員が顧客との信頼関係を築きプロ(カーライフアドバイザー)として、良い成績をあげ、良いサービス提供できるノウハウを学ぶ「新人カーライフアドバイザー(CA)フォロー研修」を実施している。
また、販売店では、先輩たちによる実践に即した指導「OJT(職場内教育)」、新型車発売の前にカーライフアドバイザー(CA)全員集合して行う「商品勉強会」、商品説明に重点を置いたロールプレイングを中心とした「新型車勉強会」などを実施している。
前述以外にも、外部での教育研修として、キャリアにあわせた様々な講座が用意されている日産ビジネスカレッジ(NBC)での集合教育など、きめ細やかな研修を実施している。
新人教育から管理職研修まで、知識吸収だけでなく、受講者一人ひとりに「気付かせる」こと、新しい発見のヒントを得られるようなスタイルになっている。
社員全員で自分のお客様への考えや営業方法を出し合い、対話の中から成長のヒントを見出して日々の販売成績の上昇、高品質な販売サービスの向上につなげている。
4. 取り組みの効果、今後の課題
創業以来、当社の基本姿勢に、「スタッフ全員が迅速かつ機敏に適格な行動をする。」「お客様一人ひとりの立場で考え、均質で高水準な対応をする。」「お客様のニーズに合った販売とサービスを提供し、地域に貢献する。」との基本理念を掲げ、さらに障害者雇用を地域雇用推進の一環と位置付け、障害者を雇用することは企業として当たり前のことだと考えて積極的に取り組み、障害者と障害のない者とが生き甲斐をもって一緒に気持ち良く働けるような職場環境の整備に努めている。
社員一人ひとりの個性や特性を引き出し、これを仕事での自己実現、職業自立へと繋げている。営業販売サービス、自動車整備工場で働く3人の障害者にもこの喜びがある。
ときには障害者と障害のない者がお互いに遠慮したり、距離感があって、問題が起こったりしたことと課題もあったが、関係各方面に相談したり、社内で話し合いを重ねることで解決してきた。障害のない者、障害者ともども「心とからだの健全、バリアフリーを求め、共に働き、共に生きる」そんな状況になっている。
当社では、職場の上司、同僚、部下に恵まれて、困難や苦労を栄養剤にハンディキャップを克服しながら、自分の仕事に誇りをもち、努力して自らの力で生活する障害者が長年にわたりフルタイムの正社員として活躍している。
現在のところ、障害者雇用率は1.88%を確保できているが、定年後、再雇用契約をしたCさんの再雇用終了期限が近いこともあって、学卒者採用、中途採用を通じて障害者雇用が重点課題の一つとなっている。
障害者には、その人に応じた仕事・職務で活躍してもらう方針で、
- 顧客、取引先、社員やその関係者等にアンテナを張り、積極的な情報の収集
- ハローワーク障害者雇用集団面接会トライアル雇用を通じての雇用
- 学校教育機関、特別支援学校、障害者職業能力開発校、専門学校等とのインターンシップ、職場見学・職場実習を通じての雇用
- 地域障害者職業センター、障害者就業生活支援センターとの連携
- その他障害者求職情報の収集
などと募集活動を一層推し進めていきたいと考えている。
さらに今後の課題や取組みとしては、障害者の職場定着、職域拡大を目指し、
- 職域開拓、仕事の仕組みを構築・改善する
- 簡単でやりやすい作業方法の開発
- 仕事のミスをなくし正確にできる工夫
- 能力を見極めながら職域拡大への挑戦
- 社員みんなのモチベーション一層の向上
- 「いってきかせ、やって見せ、やらせてみて、ほめる」
- 理屈よりも体で習熟、体験型で技術・技能を習得
- 健康と安心・安全の増進
- 勤務が長くなる人の加齢対策
- 設備改善、作業環境の改善
- 職場適応援助者の養成配置
- お客様の立場に寄り添う顧客サービス
などが挙げられる。
これからも、“お客様に「ありがとう」と言われるのが好きな人に”をモットーに「その職場になくてはならない一人となる」を念頭に置いた職場配置の工夫、多様な就業形態の活用、健康・安全管理、教育訓練、作業環境の改善などの各分野での就業支援が期待される。
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