知的障害者の意識を高める取り組み
- 事業所名
- 三光株式会社
- 所在地
- 鳥取県境港市
- 事業内容
- 産業廃棄物処理業
- 従業員数
- 210人(平成23年2月1日現在)
- うち障害者数
- 5人
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 産業廃棄物の処理 肢体不自由 1 産業廃棄物の処理 内部障害 1 産業廃棄物の処理 知的障害 2 安全性の高い廃棄物の分別作業 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」は伝染病の蔓延を防ぐことを目的として明治時代に制定された「汚物掃除法」が元になっており(昭和29年に清掃法に改正)、昭和30年後半から40年前半になると経済の高度成長に伴って、大量消費、大量廃棄によるゴミ問題が顕在化した。また、ゴミ焼却場自体が公害発生源として、問題になってきた。昭和45年の公害国会において、「清掃法」を全面的に改める形で、廃棄物の排出の抑制及び廃棄物の適正な区分、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の向上を図ることを目的として成立した。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の制定から2年後、昭和47年9月に三光産業株式会社を境港市にて創業。以後、昭和56年7月資本金1,500万円に増資するとともに、鳥取県知事、産業廃棄物処理業認可取得、更に中国海運局、廃油処理業の許可を取得し船舶廃油処理事業を開始。昭和63年6月、境港市昭和町に産業廃棄物焼却プラント完成、平成5年4月三光株式会社に社名変更、平成14年9月潮見工場竣工、操業開始、平成15年9月江島工場内にRPF製造部門を新設、平成17年12月ISO14001認証登録取得、平成19年11月江島焼却炉、鳥取堆工場稼働、平成20年12月江島焼却炉廃熱発電開始、平成22年2月潮見焼却炉廃熱発電開始、同年12月に本社を現在地に移転し、順調に業績を伸ばし現在に至っている。
利便性の追求による、大量生産・大量消費・大量破棄の時代を経て、地球規模での環境汚染が顕在化した今、自然との共存、環境保全への配慮なしに企業活動を進めることは出来ない。そのためISO14001認証登録を取得し、環境基本理念として「三光株式会社は、人類の永続と繁栄を願って、循環型社会の構築に役立つべく、私たちの事業活動である廃棄物の適正処理やリサイクル事業を進めていくことが、地球環境保護活動に大きく寄与していることを自覚し、処理能力の向上やリサイクル技術の確立に向け積極的に取り組んで行きます。」を掲げ、具体的に「私たちが企画する清掃活動を通じて環境保護の大切さを発信していきます。エコ教室を通じて、子供に物を大切にする気持ちを伝えていきます。各種ボランティアや地域イベントへ積極的に参加させていただき、元気なまちづくりを応援します。」と環境行動宣言を行い、下記事業を経営している。
- ① 産業廃棄物の収集、運搬、保管、処理
- ② 石油製品及び各種燃料物の販売、保管、輸送、管理
- ③ 廃油の収集、運搬、保管、処理、販売
- ④ 産業廃棄物の再資源化及び販売
- ⑤ 飼料、有機質肥料及びこれからの原料の製造、販売
- ⑥ 古物商
- ⑦ 公害処理機械器具及び公害処理用資材の販売
- ⑧ 医療用器具、医療用資材及び各種薬品の販売
- ⑨ 鳶土工、コンクリート工事及び解体工事
- ⑩ 農産物の栽培、販売及び家畜、魚介類その他動物の飼育、養殖、販売
事業活動の基盤である廃棄物の適正処理やリサイクル事業を進める上で多種多様な回収車(大型ウィング車、大型フックロール車、大型ダンプ車、大型平ボディー車、大型チルトダンプ車、大型トレーラー、7tヒアブ車、医療廃棄物専用車、大型バキュームダンパー車、4tタイヤ回収車等々)100両を保有し、全国を視野に入れた回収ネットワークを広げている。
(2)障害者雇用の経緯
「私たちは人類の永続と繁栄と幸せを願い創造的に行動し、地域にとってなくてはならない企業であり続けます。」との企業理念を掲げ業務に邁進しており、障害者雇用を進めている。
障害者雇用のきっかけは、平成19年11月、障害者支援センター境港から知的障害者2名の雇用相談を受け、2名の就労支援を障害者就業・生活支援センターに依頼し、トライアル雇用後、平成20年2月に雇用したことが始まりである。
2. 取り組みの内容
(1)知的障害者の雇用
米子養護学校から毎年2~3人を職場実習生として受け入れるとともに、ハローワーク主催の障害者合同面接会に出席し、「通勤が一人で出来る」「勤労意欲がある」「挨拶が出来る」といった点を評価基準として、知的障害者の雇用を進め、廃棄物の分別作業で5人を雇用するにいたった。
危険度の低い軽作業を担当している。安全面の配慮として、KY活動(危険予知活動)の一環として朝礼時に安全標語の唱和、疲労を起こさせないための勤務時間管理(適度の休息)、作業時での手袋の着用等を実施している。
指導方針として「まずやってもらう」を基本として、毎日繰り返すことによって、これまで出来なかったことが出来るようになってくる。知的障害者の得意な分野を見つけ出すことに努めるとともに、きちんと仕事が出来るような指導を心がけている。
労務管理については、今年度障害者職業生活相談員資格認定講習を1名受講させ、障害者職業生活相談員に選任し、障害者の相談体制を整えた。
障害者を雇用した効果として、障害者が働く喜びを素直に表わし、頑張っている姿を見ることにより、社員が働く喜びを再確認し、後ろ向きの発言が無くなり、仕事への取り組みが積極的になった。
(2)知的障害者の職業意識を高める取り組み
知的障害者の雇用を進めていく中で、鳥取県障害者就労事業振興センターから障害者作業所で働く障害者の職業経験の蓄積と工賃を増やすことを目的に、企業内就労に協力してもらえないかとの要請があった。社長より「地域社会への恩返しの意味で、要請に応えるように」との指示があり、テクノサイクルステーションの足利チームリーダーを中心に受け入れ態勢を整えた。
企業内就労では、作業所と請負契約を結び、作業所の支援員の指示のもと障害者が工場内で会社から提供のあった業務を行うこととしている。作業所側とは過剰な生産性を求めるあまり、障害者が頑張り過ぎて企業内就労を挫折しないよう配慮するよう協議を行った。
工場内にトイレ、休憩所を整備した作業所(わいわいすてーしょん)を確保し、遊技機の分解作業を提供。平成23年8月より1カ月の試行を経て、9月に2作業所(もみの木作業所、サンライズ作業所)と正式契約をした。勤務は月曜日~金曜日までの週5日、1日4時間30分、工賃は電気ドライバーを使ってのビス取り、プラスチックの分別など仕事の難易度により定め、歩合制とした。
作業所の企業内就労は、障害者が外に出て働く機会を得るとともに、作業所内だけでは限界のある工賃を増やせるメリットがある。足利チームリーダーは「従来社員が作業していたことを障害者に任せることができれば、社員はより付加価値の高い仕事を実行することができ、企業にとってもメリットはある」と評価している。さらに「作業能力が高くなれば、月5万円の工賃も夢ではない」とのことであった。




3. 取り組みの効果
企業内就労を始めてから約3カ月半が経過した。当初障害者の作業能力について疑問視していたが、支援者と一緒に電気ドライバーを使っての作業、指示された仕事の正確さ、作業量の多さは想像以上であった。そのため特に就労意欲があり、障害のない社員と遜色のない仕事能力がある人については、スロットマシーン本体の分解作業に従事することを提案した。1か月の試用期間後、支援員の指導のもと障害者5人が工場内で黙々と仕事をこなしている。
*サンライズ作業所 生活支援員 安達 賢さん
「こんなに早く、一部門を任せていただけるとは思いませんでした。三光さんの企業内就労の取り組みは、企業と障害者にとってはWin—Winの関係です。三光さんの取り組みを所属する機関を通じて発信し、障害者の就労に向けて努力したい。」
*もみの木作業所就職支援部 支援員 遠田 佳織さん
「作業所での作業をしている時は挨拶することが出来ませんでした。しかし、皆様がおいでになった時、元気に挨拶が出来ました。人とコミュニケーションを取ることが出来るようになりました。仕事についても三光さんから一定の評価をいただきました。これからも、たくさん働いて、たくさん学んで、みんなで成長していきます。」
作業所にメリットがあると同時に、地域貢献として受け入れた企業側にもメリットがあった。それは、付随的な業務を企業内就労の障害者に依頼することで、社員はより付加価値の高い仕事に取り組むことが出来るとともに、作業所の支援者が障害者に対して指導している様子を見ることで、社員の障害者に対する指導の仕方を学ぶ機会になったということである。
このような機会を通じて得られた経験をもとに、障害者の職場定着に向け、仕事に対して責任感を持たせる様々な業務を担当させる等、個々の性格や特性能力に応じた職域を開発し、モチベーションを高める工夫を行なっている。


4. 今後の課題
三光株式会社は経営理念が明確でかつそれを確実に実践している会社である。社業を通じて社会貢献の1つである循環型社会の推進に役立つ環境分野において先進的な技術を駆使し徹底的にリサイクルを目指す事業を展開している。更に地域との交流にも積極的で、小学生を対象にした工場見学会、廃棄物勉強会の開催、地域の清掃、ペーロンレースの参加等行っている。また、知的障害者への接し方を知っている社員がいる企業が少ない中で、作業所の支援員の接し方を見る機会を通じて雇用している知的障害者に対する指導方法を学ぶきっかけとなった。多くの企業にとって大変貴重な事例になると思う。
「知的障害者の働きたいという思いは、障害がない者と一緒で働いて得た給料でおしゃれな洋服を買ったり、美味しいものを食べたり自由にお金を使い社会的に自立することだと感じた。障害者の自立を支援するためには、企業側が労働力として受け入れる体制を整えなければならない。」と考えている。
企業内就労から本格的な雇用に結びつけるためには、もう少し時間がかかるかもしないが、関係機関の連携を密にすることで社会的に自立する障害者が一人でも多く増えると考えている。
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