ノーマライゼーション~障害者が地域の力になるために~
- 事業所名
- 株式会社HRD
- 所在地
- 鳥取県鳥取市
- 事業内容
- 電子部品 デバイス製造業
- 従業員数
- 90名(平成23年6月現在)
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 2 電子部品の組み立て、加工、検査等 肢体不自由 1 電子部品の組み立て、加工、検査等 内部障害 知的障害 3 電子部品の組み立て、加工、検査等 精神障害 1 電子部品の組み立て、加工、検査等 - 目次

1. 事業所の概要
株式会社HRDは、昭和47年11月、主に家電製品の組み立てを生業とする製造業として鳥取県岩美郡岩美町岩美に原田電機製作所を創業して以来の沿革は以下の通りである。
- 昭和48年 7月:
- 鳥取三洋電機の協力工場として取引を開始
- 昭和51年 4月:
- 鳥取市南吉方に本社工場を設立し、有限会社に方針化する。
- 昭和57年 5月:
- 三洋電機内にて完成品組み立てライン開始
- 昭和59年 4月:
- 三洋電機内で鳥取工場を開設し、LEDの製造を始める。
- 昭和59年 5月:
- 国府町糸谷へ国府工場を開設し、ガステーブルこんろの生産及びプリント基盤セットの組み立てを開始
- 昭和62年11月:
- 小型精密モーターの組み立てを開始
- 昭和63年 5月:
- 国府工場にてカメラ・ストロボ用電子回路の組み立てを開始
- 平成 1年10月:
- 株式会社HRDと社名変更及び組織変更を行う。
同時に本社工場を鳥取市南吉方1丁目63番地1に移転 - 平成 2年 5月:
- 本社工場を新築、さらに業務を拡張
- 平成10年 4月:
- 資本金を3,000万円に増資、東京営業所を開設
- 平成10年10月:
- 本社を鳥取市津ノ井に移転、新本社工場を建設
- 平成13年10月:
- ISO9001認証取得
- 平成14年 6月:
- 鳥取銀行より私募債発行
- 平成16年 9月:
- ISO14001認証取得
社長は「株式会社HRDは私が生まれてから1カ月後に原田電機製作所として産声を上げた。まさに私にとっては一心同体のような存在である。私が大きくなるにつれ、少しずつお客様が増え、同時に得られた人の繋がりや信頼が、新しい製品の研究開発へ結び付き、平成15年には自社方式での白色LEDの開発に成功した。」と述懐されている。
あかりの歴史を振り返ると、各国にガス灯が設置されはじめた1810年代以来、約60年ごとに大きな発明がある。1879年に白熱灯、1938年には今現在活躍している蛍光灯、そして1996年には現在のLED照明の原型となる白色LEDが誕生している。
LED単体の歴史を見てみると、1960年代に暗めの赤色と黄緑色のLEDが開発されて以来、早い段階から表示用途で実用化されてきた。その後の発展の契機となる93年の青色LEDの開発、またそれを応用した96年の白色LEDの開発を経て、現在に至っている。
わずか十数年で蛍光灯の効率に追いつくレベルまでに達した白色LEDは第4のあかりとしてこれからの可能性に期待が出来、さらには車載、通信、植物育成、医療などいろいろな分野での展開が期待できる。
株式会社HRDのLEDランプは人とのつながりによって生み出されてきた。今後の市場要求に応えるには、今迄以上に人の繋がりが重要になる。
HRDのHは“HUMAN”Rは“RING”そしてDは“DEVELOPMENT”を象徴。
We develop the splendid human ring「素敵な人の輪を拡げよう」を合言葉に、株式会社HRDは今後とも皆様と伴に歩み続ける。
2. 障害者雇用の概況
(1)障害者雇用に対する基本姿勢
株式会社HRDは、現在、聴覚障害者3人、知的障害者3人、精神障害者1人を雇用している。障害者雇用の支援体制は、聴覚障害者については、コミュニケーションの取り方についての配慮が必要となるが、手話が出来る人が少ないため筆談が中心で、周りの同僚や上司は身振り手振りで会話をしている。知的障害者には、基本的生活習慣(清潔・身なり・挨拶・返事)、作業態度(働く意欲、積極性、根気強さ)、健康・体力等について繰り返し、時間をかけながら指導している。
(2)A型事業所の開所について
障害者自立支援法が施行され5年が経過し、授産施設などの旧体系施設が今年度中に新体系へ移行しなければならない現状に直面しているが、いまだ多くの施設が新体系へ移行されず、鳥取県内での障害者就労の場の減少が懸念される。このような現状に鑑み、株式会社HRDの関連企業として鳥取県障害者就労事業振興センター等の支援を頂きながら、新法に基づいた障害者就労支援を行う「障害者就労継続支援A型事業所」の開所を志した。
- 設立趣旨
昨今の不安定な経済状況下、安定した仕事の受注量の確保は全ての福祉事業所にとって難問だが、株式会社HRDのLED製品の一つに植物の育成において様々な優位性を持つ製品があり、これを用いた完全閉鎖型植物工場であれば、特に精神・知的障害者の負担とならず、安定した仕事量の確保が可能だと考え、障害者に安定した就業の場を提供する事を趣旨として設立する。 - 経営理念(起業する動機・目的)
鳥取県の人口の約9%もの人が何らかの障害を抱えており、障害者は特別な存在とは言えない。そして彼らは必ずしも能力が低い訳ではなく、障害者というカテゴライズ(分類分け)だけで就職が困難となっている。実際のところ足りないのは「障害者の能力」ではなく「周囲の理解」であり、周囲の僅かな協力や理解が有るだけで、彼らは有能な労働力となることが出来る。当社はそれを証明し、障害者が地域の力になるお手伝いをする為、起業した。 - Normalization ~ノーマライゼーション 障害者福祉を通しての地域づくり
- ① 障害者に就労の場を提供する。
- ② 障害者の地域経済活動参加を促す。(障害者が地域の消費者となる。)
- ③ 障害者を納税者にする。(障害者が地域の力となる。)
- ④ 障害者の社会参加を促す。
- 事業の概要
太陽光に近い波長の植物育成用LED(①参照)を用い、乳酸菌などの善玉菌を利用した水耕栽培(②参照)による完全無農薬であるにも拘らず虫が全く付かない野菜を、気候の変動に左右されることなく、かつ自然に近い環境の下で安価に安定生産し、加工食品として付加価値を高めて販売する。
- ① 植物育成用LED
植物が必要とする波長を選択的に照射し尚且つ発熱の非常に少ないLEDを用い、完全閉鎖型植物工場にて植物に近接する照明として利用し、省スペース省コストにて安価で安全な野菜を生産する。 - ② 善玉菌を利用した水耕栽培
通常の植物工場は極力細菌を持ち込まないように管理し、液肥をUV照射により殺菌するなど、腐敗を促進する菌を持ち込まないという思想の基に成り立っているが、当社は作物用土壌改良剤で実績のある善玉菌類(乳酸菌、酵母菌)を用い、予め善玉菌類で液肥を満たすことにより、腐敗を進行させない環境を作る。これにより、より自然環境に近い状態で健康的な野菜が生産できる。これらの善玉菌類には、水質浄化する作用があり、殺菌行為の無い閉鎖的環境でも水の交換が殆ど不用な為、増設の際に配管工事等が不要で、安価で簡便に増設ができ、野菜の生産計画に柔軟に対応でき、停電時などの液肥の供給ができない等の問題も回避出来る。
- ① 植物育成用LED
こうしたコンセプトにより会社名:株式会社HRDiDEAL、企業形態:株式会社、資本金1百万円でA型事業所として県に申請し、平成23年5月に認可を受けた。
3. 雇用支援の取り組み内容
植物工場建設等に準備期間を要するため、当面は電子部品の組み立て、シール貼りを業務として、障害者を雇用することになった。6月初めに事業所説明会を開催して求人活動を行った結果、現在、聴覚障害者1名、肢体不自由者1名、知的障害者8名、精神障害者10名を雇用している。
サービス管理者をはじめスタッフは、規則正しい生活、仕事の習得、職場の人間関係等について支援を行っている。その中で6月中旬採用されたAさんから「LED組み立て作業は難しい」との申し出があった。Aさんは鳥取障害者職業センターの職業準備支援修了者で、事業所説明会には職業センターが同行し、さらに面接においても評価アシスタントが職業準備支援受講時の状況について補足説明をするなど雇用に向けての支援を受けていた。
このように入社前から支援を受けていた関係で、Aさんの職場適応に係る支援について、鳥取障害者職業センターに相談し、7月中旬に社長、サービス管理者、職場指導員、生活支援者、職業センターカウンセラーが出席しAさんの支援会議を開催した。
カウンセラーよりAさんについて
「明確な目安・目標がわかりにくかったこと、同僚の仕事ぶりが気になること等が要因として考えられる。本人の特性を考えると
①初めのうちは、自分がその日よくできた部分に目がいくようにすること。
②気になって聞けなかったことや自分の思いをノートに記述させる等、振り返りの工夫をするとよいのでは」とのアドバイスを受ける。
社長からは、「現在、まだ支援者との信頼関係が築けていない段階と捉えているので、ハードルを上げ過ぎないように進めていきたい。まずは本人の安定を図る(満足度を上げる)支援を行っていきたい。」との考えが示された。
このほかにも、カウンセラーからは、障害者全般に係る支援について様々な助言をもらっている。たとえば支援ノートの活用では、長々としたコメントを書く必要はなく、ハンを押して担当者が読んだことが分かるようにしたり、1つ2つ短く返事を書いたりして、「ちゃんと読まれている」「アドバイスをしてくれる」等の目に見えることを行うことが重要であることや、事業所の努力目標である挨拶の励行について、他人の行動が気になって挨拶が疎かになる障害者に対する支援については、出来ている部分はフィードバックした上で、「○○するともっとよい」などと併せて伝え、自分の挨拶を客観的に考えさせる機会を設けることが大切であるなどのアドバイスを受けた。
職業センターからのアドバイスや社長の思いを基本にして、障害者とのコミュニケーションを深めることに重点を置いた就労支援に取り組み職場定着に努めている。
4. 取り組みの効果、今後の展望と課題
(1)取り組みの効果
鳥取障害者職業センターとの連携を深めることにより、サービス管理者をはじめとしてスタッフ全員が「あせらず、怒らず、飽きずに我慢し、小さなことでもでもしっかりほめる」をモットーに障害者の支援に当たり、現在20名の障害者がLEDの組み立て、社内の清掃等の業務に就いている。


(2)今後の展望と課題
植物工場での就労を目的としてA型事業所を設立したが、諸般の事情により植物工場の竣工が遅れている。そのため、つなぎとして現在LEDの組み立てを中心に作業をしている。
しかし、取材を通じて「周囲の僅かな協力や理解があるだけで、彼らは有能な労働力となることが出来る。当社はそれを証明し、障害者が地域の力になるお手伝いをする」という社長の思いはA型事業所のスタッフは勿論、本社部門の社員にも浸透しており、植物工場は必ず竣工され、目標である30人雇用が出来るものと確信している。

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