地域産業の振興と雇用創出の事例
- 事業所名
- 株式会社浜田農園
- 所在地
- 徳島県小松島市
- 事業内容
- 菌床シイタケの生産と販売
- 従業員数
- 78名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 2 菌床製造、シイタケのパック作業 精神障害 - 目次


1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
徳島県内で菌床シイタケ栽培が始まりだした昭和60年代前半から、菌床シイタケ栽培に取り組み現在に至っている。
当初より、試行錯誤を重ねながら高い生産技術を確立し、順調に生産規模を拡大していった。それに伴い、農業経営の法人化を推し進め平成9年に有限会社を設立、その後、事業が県下有数の規模となり始めた平成12年に株式会社へと移行した。
平成13年には、地域の菌床シイタケを栽培している農家と共同販売を行うため、サンマッシュ櫛渕協同組合を設立し、その中核企業として日本国内でも有数の生産量を産出する事業規模に成長している。
取引先においては、四国四県・京阪神市場・名古屋市場のみならず関東市場にも出荷している。


(2)障害者雇用の経緯
当初より、経営者の方針として、働く意欲があればその機会と職場を提供し、障害者であっても受け入れていこうという姿勢があった。
企業としての社会的貢献ということはもちろんのことながら、菌床シイタケの生産工程は細分化されており、適切な配置をすれば戦力になり得る可能性が高いということが考えられた。
最初の障害者雇用は平成14年に知的障害者の雇用から始まった。
ハローワークと連携した地域の障害者支援事業者から紹介を受け、雇用することになった。
その際には企業側だけではなく地域障害者職業センターの協力で、職務配置の検討やジョブコーチ支援を利用することにより、障害者の働ける職場環境づくりをしていくこととなった。
その後も、在宅の障害者のみならず協同組合として、特別支援学校(当時は養護学校)からの実習生や制度を使った訓練生を受入れてきた。
現在は協同組合内に1名の特別支援学校卒業生が従事している。
また、地域にある障害者施設とも長年交流を持ち、障害者雇用についての協力・理解を深めている。
2. 障害者の従事業務、職場配置
(1)募集・採用
ハローワーク・地域障害者職業センターによる、トライアル雇用やジョブコーチ支援等の制度を利用している。
地域障害者職業センターや特別支援学校、障害者就業・生活支援センター等との連携により、企業内での訓練や職場実習も行ってきた。
実習等は、本人の適性に合った職務を見つける上においても重要視している。
これは、単にその人の作業能力の適性を図るものだけでなく、受け入れる側として的確な障害の理解が出来ていなかったり、障害者についての思い込みがあるため、その人の持っている諸能力を歪んで解釈したり、過度の期待を寄せたりすることを避けるために必要であると考えている。
(2)障害者の業務・職場配置
現在、Aさん(知的障害・男性)とBさん(知的障害・女性)の2名が働いている。両名とも一般従業員と同じ職場に配属されていて、勤務時間においても同様に、8時から17時、昼1時間の休憩で実働8時間勤務、週6日の勤務となっている。
Aさんは、シイタケの菌床製造部門で菌床の袋詰め作業を行っている。4人一組の配置で、全員が一定のローテーションで持ち場を交代しながら袋詰め作業を行っている。
作業工程の最後に4個単位でプラスチックのかご(重さは約12㎏)に入った菌床を移動棚に乗せていく作業があるが、持ち場をローテーションする事によって、作業による負担の軽減につながっている。
作業自体は機械と人による流れ作業になっており、時折自動運転が止まることがある。センサーや袋のトラブルが発生した時は、機械の運転停止や起動・復旧の為の簡易なメンテナンスも、現在ではAさんが担当している。
約6時間の袋詰め作業の後、自動袋詰め機・コンベア・ミキサーの清掃・洗浄作業を行っている。
もう一名のBさんは、シイタケのパックセンターに配属されている。
センターの従業員によって、選別・計量され袋詰めされたシイタケが、ベルトコンベアのラインによって流れてくる。
担当業務は流れてきた袋に機械を使ってクリップ留めし、等級ごとに仕分けをして、決められた数量を箱詰めしていく作業である。等級の判別はラインに乗せる時シイタケの傘を上向きに乗せればA品質、下向きであればB品質という具合に分かりやすくルール化している。
パックセンター内での作業の中心となっているシイタケの選別作業は、本人にとっては得意な作業ではなく、全員と同じ作業を行うことは、個人差が目に見えて表れやすい。そのため個別の作業配置をすることで、できるだけ能力差が目立たないように配慮されている。
このことは従業員間の関係性においても重要な事のように思われる。2名の従事する業務は年間を通じて変わることはなく、習熟した作業に取り組むことによって安定した就労ができていると考えられる。
また企業にとっても効率のよい職務配置となっている。






3. 取り組みの内容と効果、今後の課題と展望
(1)取り組みの内容と効果
働く意欲のある障害者については、職場実習等で働く経験の場と機会を積極的に提供してきたことで、地元からも厚い信頼と期待を寄せられるようになった。
また、障害者理解については、経営者自ら従業員に語らなくても、皆が一緒に働く中で、彼らの苦手な部分をカバーしたり、必死に作業に取り組む姿を見て、彼らの頑張りを少しずつ認められるようになったり、お互い良い刺激を与えたり受けたりしながら、自然と障害のある人への認識と理解が深まるようになった。
具体的に、Aさんは以前にも就労経験はあり、基本的な作業遂行力は概ね備わっていたが、社会人としてのルールやマナーが確立できておらず、それが原因で様々な問題を起こしてきた経緯がある為、ジョブコーチ支援事業を活用することになった。支援のポイントと、具体的な内容については以下①②のとおりである。
① | 正確で効率的な作業の習得
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② | 職場のルール・必要な対人対応の習得
そんな中、現場のリーダーや周りの従業員が、本人の不満や不安な気持を聞いてくれたり、その日の体調を見ながら作業の増減を調整してくれたりと、何かと気遣いしてくれることで精神的な安定が維持できるようになった。 その他、障害者就業・生活支援センターの生活支援担当者が家庭訪問し、通院支援や栄養管理のアドバイス等、健康面に留意しながら継続出勤を促すことで、安易な欠勤も減りつつある。 職場では、BさんもAさんと同様ジョブコーチ支援を活用することになった。支援のポイントと、具体的な内容については以下のとおりである。 |
③ | 職場適応のための支援
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(2)今後の課題と展望
当社では、AさんとBさん以前にも、数名の障害者を受け入れ雇用した経緯があるが、最終的には定着できず職場を去ることになってしまった。
その原因として、単なる本人の我が儘による退職もあるが、雇用促進による各種の制度を利用し、ある程度見極めができ、支援者の手も段々離れ周りが「もう大丈夫だろう」と過信した時にさまざまなトラブルが発生し、最終的に本人の意欲が減退してしまったように思う。
職場としても修復する手間と労力を考えると、その煩わしさからついつい支援機関任せになってしまった。こうした反省から、現在雇用中の彼らには、先ずは活躍できる「環境」をつくり、チャンスを与え、彼らの自助努力を根気強く促す努力を怠らないことと、彼らが何を考え、どのように思っているかを日々聞き取りながら信頼関係を築くことが大事であると感じている。
障害者には、自分の意志や主張を表明できる人もいるが、中には意思表示が苦手な人や、明確な理由説明が行えない人も少なくない。こういう時には、本人の気持ちを押し図りながら支援機関と連携を取り、関係者からの情報と絡み合わせることで、原因理由を明らかにして対応策を検討していかねばならないと考えている。
更に、単に障害があることに目を向け、そこにこだわることなく、一従業員また一労働者であることを意識しながら、彼らを「人」として見ていくことが大切であると感じている。
事業所として従業員に望むことは、「真面目に就業時間内きちんと働ける人」である。これは障害種別、また障害の有無に関わらず全ての従業員に通ずる。
平成24年4月には、地元に発達障害に特化した『徳島県立みなと高等学園』が開校となる。当事業所としては、これまで以上に働く場の門戸を広くし、一人でも多く“共に働く仲間”として受け入れたいと考える。
就業支援ワーカー 多富 英昭
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