各支援機関と連携し、重度障害者雇用を積極的に推進
- 事業所名
- 有限会社三豊給食センター
- 所在地
- 香川県三豊市
- 事業内容
- 弁当・惣菜等調理食品の製造販売など
- 従業員数
- 55名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 パソコンによる事務 内部障害 知的障害 2 弁当箱の手洗い・ゴミ処理 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
昭和55年に有限会社三豊給食センターを設立すると、その後顧客満足度の更なる向上のためにハローランチチェーンに加入し、事業所向け日配弁当・会議用弁当・行楽弁当・スポーツ大会用弁当などを取り扱っている。また、高齢者向け宅配サービスも今後本格的に開始する予定である。その他、生命保険・損害保険等保険代理業へ参入、更にはセルフうどん店をオープンさせ、また、フードコート事業を開始するなど幅広く業務を展開している。「安全・安心の追求」を企業理念とするとともに、「私利私欲ではなく、雇用拡大のためにできる分野において事業の拡大を目指す」、「大勢が楽しく働ける場を作る」、「高齢化が進む地域社会に貢献する」、「障害者を可能な限り雇用する」ことを目標に、現在以下の店舗運営をしている。
- ハローランチ
- みつばち保険ファーム(兵庫町店・屋島店・善通寺店・イオン州本店)
- さぬきうどん麺処うまげ屋高松木太店
- フードコード「昭和みつばち堂」西村ジョイ屋島店
(2)障害者雇用の経緯
同社は現在、重度肢体不自由者1名、重度知的障害者1名及び知的障害者1名の計3名の障害者を雇用しているが、いずれもここ2年から3年の間に雇用している。「障害者雇用納付金制度」における納付金申告対象事業主ではないが、これまでも仕事上近隣にある福祉作業所への出入りや障害者福祉施設の情報などの見聞により、障害者及びその雇用について関心はあったものの雇用には至っていなかった。近年職域の拡大などによる人手不足や障害者を受け入れやすい業務もあることなどから、障害者雇用を前向きに考えるようにはなってきていた。しかしながら、障害者雇用の経験や知識の乏しい同社が、障害者雇用を進めるには様々なハードルが高かったことから、実現できないでいた。そこで、ハローワークや障害者就業・生活支援センターなど支援機関との連携を図ることとし、これらの機関を活用しながら積極的に取組を始め、1名の採用に至った。ところが、雇用した知的障害者は、残念ながら3ヶ月余のうちに退職するという事態が発生した。ここで消極的になることなく、また、頓挫することなく障害者雇用の取組を続けた。働く意欲や能力のある障害者に働くチャンスや場所を提供したいという強い思いのもと発達障害のある重度知的障害者や車いすの重度肢体不自由者の雇用に向けて、課題に正面から向きあい障害者雇用に熱心に取り組んでいったのである。
2. 取り組みの内容
① 重度肢体不自由者のAさん
平成23年5月に採用となったAさんは、20代の女性で電動車いすを使用しており、両手も不自由である。特別支援学校を卒業後、リハビリテーションセンターに入所し、パソコンの訓練に励みワード・エクセル2級を入所1年以内で取得した。同センターでは2級合格を機会に就職の斡旋をすることになっているため、ハローワークや障害者就業・生活支援センターと連携し、自宅から40分以内で通勤できる範囲での就職先を探し始めた。その結果、当該地域の障害者就業・生活支援センターの紹介で同社に応募することになった。偶然にも、在宅勤務求人であったが、Aさんは強く一般就労を希望していたことから、同社に交渉し、また、同社としてもAさんの強い就労意欲を評価し、会社勤務での雇用を決定した。しかしながら、電動車いすを使用しているAさんを受け入れるためには、事務所の改修が必要であった。現状では事務所内に段差があり、トイレも和式であった。そこで、同社の雇用推進者である専務は、リハビリテーションセンターの担当者とともに助成金窓口機関を訪問し、助成金活用による環境整備を協議した。その結果、障害者雇用納付金制度に基づく第1種作業施設設置等助成金の活用が可能であることが判明した。整備の内容について関係者で協議を重ね、改修工事は事務所玄関の入口へのスロープ設置、裏口ドアの改修、スロープ両脇に車いすの転落防止コンクリートの設置、通路に雨よけテントの設置、事務所からトイレや裏口までのドアをアコーディオンカーテンに改修、和式トイレから洋式トイレに改造など、車いすでの移動や利用に十分配慮した内容になった。専務は多忙な中、Aさん宅にたびたび面会に行った。平成22年5月には、申請していた助成金が認定され、Aさんに直接内定通知書を渡した。ところが改修工事を発注した同年11月にAさんの体調が悪くなり、入院を余儀なくされてしまった。自宅での療養を経て23年5月2日にようやく正式採用となったわけであるが、Aさんの体を慣らすために、自宅での勤務から始めて少しずつ通勤できるような配慮を行った(関係官庁とAさんのケースでの在宅就労について調整を行った)。Aさんの仕事は、パソコンによる販売支援文書、チラシ、ホームページの制作などで、在宅時はメニューのチラシ原稿作りをメインにしている。出勤時は、電話対応や入力業務を主に行っている。通勤はJRを利用しており、最寄駅まで会社や家族が送迎している。介助が必要なときは社員がサポートしている。Aさんの就労については、専務を始め会社、家族、関係機関の担当者が連携・支援しているが、最近は体調不良で休みがちなのが気掛りである。一方でAさんは積極的であり、平成23年度アビリンピックかがわへの申込みをされていた。残念ながら体調不良により出場は叶わなかったが、来年は是非参加してほしいものである。
② 重度知的障害者のBさん
Bさんは特別支援学校を卒業後、就職したものの業務縮小に伴い1年後に退職した。地域の障害者就業・生活支援センターや作業所に通い相談や利用を行っていたところ、同社について紹介があり、同社で職場実習を実施した。その後、ハローワークのトライアル雇用を経て平成22年4月1日に採用されるに至った。Bさんの業務は、弁当製造時に出るゴミや弁当回収後の残ったゴミなどの処理、弁当箱の洗浄、ゴミ袋の運搬作業などが主である。Bさんには自閉症の発達障害があり、挨拶はできるが会話が続かない、問いかけに返事ができないなど、コミュニケーションがうまく取れないことが多い。会社としては知的障害者の雇用に不安があったこともあり、Bさんの職場定着に向けて地域障害者職業センターのジョブコーチ支援を受けた。自閉症に関する一般的な障害特性の伝達や特性に応じた作業指導のポイントや関わり方などについて助言を受け、特にコミュニケーション面で課題が出る可能性があることから、実際にジョブコーチの指導場面などを従業員に見てもらうことを通じて、雇用管理のノウハウの蓄積を図るように指導、支援を受けた。Bさんに対しても本人にわかりやすいように作業手順を整理するとともに、必要に応じて手順書を作成するなど視覚的にもわかりやすい作業習得指導が行われた。また、従業員とのコミュニケーションに関する支援として職場での必要な報告や質問などについての指導も行われ、仕事で必要なやり取りができるような職場配慮・環境整備指導がなされた。更に家族に対しても体調管理などの協力が依頼され、必要に応じて支援経過について報告を行うなどした。
関係機関連携については、地域の障害者就業・生活支援センターや作業所及びハローワークなどとケース会議を通じて協議を行い、Bさんの職場定着のサポートが行われた。また、このようなジョブコーチ支援とは別に、障害者雇用納付金制度に基づく障害者介助等助成金(業務遂行援助者の配置助成金)も活用している。製造部門のリーダーがBさんの業務遂行援助者となり、ゴミを集めるタイミングや分別方法、弁当箱の洗い方や収納方法などについて直接声かけを行い指導している。
Bさんは自宅が島にあることから、船・バス・電車・自転車を乗り継いで通勤している。障害の特性上、コミュニケーションに問題はあるものの、まわりも少しずつ理解できるようになってきており、人間関係などのトラブルも特にない。会社も家族との情報交換を密にして、体調や仕事の管理を行っている。
③ 知的障害者のCさん
Cさんは平成24年2月1日に採用されたばかりであり、まだ1ヶ月も経っていない。地域の障害者就業・生活支援センターの紹介により、ハローワークのトライアル雇用を経て採用された。会社での仕事は、Bさんと同じ製造部門に配置され、弁当箱の残飯処理作業、ゴミ袋の運搬作業などを行っている。職場ではよく喋り、自転車で通勤している。まだ日は浅いが特に問題はないようである。


3. 取り組みの効果、今後の展望と課題
(1)取り組みの効果
障害者雇用の知識や情報の乏しかった同社では当初障害者を受け入れることに対して、不安感や仕事に対するマイナスイメージがあったが、実際に車いすを使っているAさんや知的障害のあるBさんや、Cさんと一緒に働くことによって、今まで持っていた障害者に対する考え方に変化をもたらしている。働くチャンスや場所があれば、会社の戦力になることを確認・理解できるようになった。もちろん、障害者に対するサポートや配慮は必要であるが、そのことが逆に会社全体に互いに労りあう気持ちを醸成する効果をもたらしている。また、障害者を雇用するために行った施設や設備の改善による職場のバリアフリー化によって、会社全体での衛生面、安全対策、作業効率や生産性の向上にもつながっている。障害者が安全で働きやすい職場環境を整えることは、全ての社員にとっても同様の効果があることとなる。また、職場環境の整備によって、今後も継続した障害者雇用の展開が期待できるはずである。
(2)今後の展望と課題
同社の障害者雇用で特徴的なことは、障害者就業・生活支援センターをはじめとする各支援機関と密接に連携しながら、障害者、特に重度障害者の雇用に積極的に取り組んでいることにある。重度障害者の雇用は、会社にとっても大きな負担になる。ましてや障害者雇用の経験や知識の乏しかった同社にとってはなおさらである。それにもかかわらず、障害者に対する専務の熱い思いのもと、会社一丸となって障害者雇用に取り組んでいる点は特筆に値する。一方で、今後障害者を雇用していくうえで留意しなければならない点もある。障害者、特に重度障害者を雇用するための支援やサポートは欠かせないが、障害者を特別扱いする必要はない。むしろ特別扱いすることが、かえってマイナスに作用する場合もある。例えば、障害者の賃金については、職務遂行能力や職務内容、責任の範囲、在籍期間などの一般的基準に基づいて決められるべきであり、他の社員と比べ明らかに作業効率が落ちるとか、習熟に相当期間を要する場合などは他の社員とのバランスを考慮する必要があるが、障害者の賃金も一律に設定するのではなく、本人の職務遂行能力や業績を賃金に反映させて、モチベーションの維持を図ることが重要である。次に留意する点は、障害者の雇用定着を図ることである。せっかく採用してもすぐ退職することは、会社にとっても障害者にとっても大きなマイナスである。幸い同社は、障害者の雇用にあたり、職場実習やトライアル雇用、ジョブコーチの支援・活用などを行っており、雇用のミスマッチを防ぎ、障害者が円滑に職場に適応できるよう取り組んでいる。今後更に職場でのサポート体制を作っていくことが望まれる。障害者が職場で十分に能力を発揮できるよう人間関係や職場環境の改善などを必要に応じて行える効果的な体制を作るには、支援機関や家族との連携とともに、社内で障害者の指導や相談ができる専門的知識を有する人材を育成・配置していくことが大切である。同社の業績は順調に推移しており、今後新たな事業への進出計画も検討されている。働く意欲と能力を持っている障害者の働くチャンスが拡大されることを大いに期待する。
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