職場での信頼関係と本人のチャレンジ精神が社会生活を成功に導いた事例
- 事業所名
- 株式会社フジファミリーフーズ
- 所在地
- 愛媛県松山市
- 事業内容
- 飲食業
- 従業員数
- 1,040名(パート社員含む)
- うち障害者数
- 14名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 調理 内部障害 1 調理 知的障害 12 接客、レジ、調理 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社フジファミリーフーズは、和食レストラン、焼肉店、洋食店、うどん店をはじめドーナツやフライドチキンといったファーストフードの店を、ショッピングセンターやスーパーに展開している企業である。現在、設立13年目であり、中四国、特に愛媛県を中心に128店舗を有するまさに躍進中の企業である。
その躍進の根底には、「満足というサービス」「お客様の生活スタイルに合わせた『食の場』の提供」「健康・安全・安心・環境への追求」という3点がある。
まず「満足というサービス」である。フジファミリーフーズでは、「食事をすることは、仲間、グループ、友人、ファミリー等の団欒の場であり、コミュニケーションの場でもある」という考えから、温かい笑顔のおもてなしで気持ちよく過ごしてもらい、お客様に満足してもらうことが、サービスの基本であると考えている。次に、「お客様の生活スタイルに合わせた『食の場』の提供」である。様々な生活スタイルに合わせ、家庭の代わりとなる食の場として、また、健康管理のサポート役として、日本(地域)にいながら世界(全国)の味を楽しめる場として、豊かな「食の場」を提供していくということである。最後に、「健康・安全・安心・環境への追求」である。お客様がくつろぎ、楽しくおしゃべりをしながら、美味しい食事をすることを基本とし、新鮮で安心の素材を吟味したメニュー、廃棄物の削減やリサイクル等、幅広い視野で、健康・安全・安心・環境への取り組みを進めている。
フジファミリーフーズは、全社員の平均年齢が30歳と若い企業である。若さ・元気・やる気あふれるスタッフが魅力ある店鋪づくりに、手応えのある仕事にと積極的に挑戦しており、若いエネルギーをばねに中四国の外食産業のリーディングカンパニーを目指し挑戦している。
フジファミリーフーズでは子どもから高齢者まで幅広い層が楽しめる「美味しい食の空間」を日々、提供しているのである。
1998年 7月14日 | 会社設立 |
2008年 4月26日 | エミフルMASAKI店 開業 |
2009年 5月 7日 | 第17回優良外食産業表彰 地産地消推進部門にて農林水産大臣賞を受賞 |
2011年 11月 26日 | 日本ケンタッキーとフランチャイズ契約締結・店舗展開開始(フジグラン神辺店) |
(2)障害者雇用の経緯
「S君は、抜けたら痛い、貴重な戦力です」上司のRさんは、そう語った。SさんとRさんは、西日本屈指といわれるショッピングモール、エミフル松前のフードコートにあるさぬきうどん店、韓国料理店、クレープ店3店舗をかけもちで働いており、Rさんはその3つの店のマネージャーである。
(フジファミリーフーズでは店主と呼ぶ)
Rさんが、当店舗の店主となった時、既にSさんは従業員として働いていた。そして、Sさんは持ち前のチャレンジ精神に加え、新たに上司となったRさんの適切な配慮にも後押しされ、業務の幅を更に拡げた。
現在、Sさんはクレープ店におけるレジ以外の業務、全店舗における接客と調理、さぬきうどん・韓国料理店におけるレジ業務を行っており、これは同じ職場の他の従業員とほぼ変わらないマルチ的な仕事となっている。彼の業務の中には、天ぷら等、障害のない社員でも敬遠する仕事も含まれており、Sさんは貴重な戦力として今日も働いている。

2. 取り組みの内容
Rさんが当該店舗に店主として着任したのは、昨年の4月のことである。Rさんが着任した時には、既にSさんは当店舗で働いていたが、さぬきうどん店のみでの業務であった。Sさんは、当時から大変熱心に仕事に取組む姿勢が見受けられ、その様子を見たRさんは、「他の従業員と同じように、もっと多くの仕事をこなせるようになるのではないか」と考えた。そこで、Sさんの調理のスピードを上げること、Sさんがこの3つの店舗の業務をマルチ的にできるようになること、2つの観点から指導を行った。
仕事を教える過程で、Rさんは、Sさんの長所を見つけ伸ばして行くことにした。具体的には、覚えた仕事は次から確実にこなしていく勤勉さ、また、まだやったことのない仕事にも積極的に挑戦するチャレンジ精神を持っているという点である。Rさんは、Sさんの長所を活かせるよう、指導の方法を考え、仕事を教えていった。
まず、小さな目標を設定した。また、覚える内容は1つずつ提示し、Sさんが覚えたことが実際にできるようになったことを確認して、次の段階に進むようにした。例えば、覚えたての、新しいメニューを調理する際は、Sさんの調理のスピードを考え、少し余裕を持たせた出来上がり時間を設定することである。また、Sさんの旺盛なチャレンジ精神の長所を活かし、他店でのレジや発注の仕事も任せるようになっている。Sさんは、さぬきうどん店にて天ぷらの調理を行っているが、天ぷらの調理業務は、当店舗の全従業員である28名中、3分の1である8名しか行うことができない。Sさんは現在、職場の中でも、多くの仕事を習得し、実践している貴重な存在となっている。
また、Rさんは、Sさんの様子を気にかけ、精神的にしんどさを感じる場面があれば声掛けを行ったり、職場での配置転換を適度に行ったりしながら、徐々にSさんのできる仕事を増やしていったのである。
一例としては、レジ業務を行う際、Sさんが自分から、「誰か手伝って」と言った場合に限って支援者を配置していたそうである。このように、あくまで、当事者が手伝いを望んだ場合に支援を行うことは、当事者が感じている困り感を支援者が勘違いして受け取る事がなく過剰な支援とはならない為、当事者の自尊心も傷つけない有効な支援となる。
Sさんは1日の就業時間は1時間だけ他の従業員に比べて短いものの、年間の総勤務時間では、他の従業員と同じだけ勤務している。残業やシフトも基本的に他の従業員と同じように組まれており、まさしく当店舗にとって「抜けたら痛い戦力」となっている。

3. 取り組みの効果、今後の展望と課題
(1)取組みの効果
Sさんが、以前勤めていた職場から当店舗に来て約2年になる。Sさんは、「仕事にはだいぶ慣れてきた」とのことで、その理由として、「この職場は皆良い人で働きやすい」と笑顔で語っていた。Sさんへのインタビューはバックヤードで行ったが、取材中でも周囲の従業員に気軽に話しかけられる場面もあり、明るい職場の中、終始笑顔で進めることができた。
掲示板には、新年会の告知のプリントが貼ってあり、Sさんは、お酒は飲めないが、新年会には参加したいと語っていた。
Sさんにやりがいのある業務について尋ねると、おむすびを握ることとレジ業務を挙げた。Sさんのメインの職場は、さぬきうどん店である。ここで、Sさんは出勤すると平日はおむすび、土日はいなりずしを握る。その数は1時間余りで100個にも及ぶ。この業務は、丁寧さとスピードが要求される作業であり、Sさんは、ふっくらおいしく見えるように注意しながら握っていると語っていた。また、いなりずしは、皮が破れないように注意しながら握っているそうだ。
次に、レジ業務である。この業務では、支払い金額に過不足がなくなるよう注意して行っているそうで、一日の終わりに収支を計算した際、収支が一致する時にやりがいを感じるとのことだった。
Sさんは、当店舗での仕事の中で、レジが一番楽しいと語っており、それは、単にお金の入力だけでなく、お客様に対する言葉遣い、調理を行う前にお金を触った手をアルコール消毒する等、多くの作業が含まれている。実際に、Sさんのお客様に対する接客を見せてもらったが、Sさんは生き生きと、楽しんでいるように見えた。
仕事の内容としては、カウンターでお客様に対面してうどんの注文をとり、調理を行い、お客様がセルフサービスでおにぎりやうどんに乗せる具材を選んでいる間にレジへ移動、手をアルコールで消毒し、もう一度お客様に対面してレジを打つという一連の作業を無駄なく行っていた。特に、レシートやお釣りの渡し方が大変丁寧で、両手を添えて、お客様の目を見て渡しており、大変気持ちの良くなる接客であった。Sさんは、お客様を大切に考えており、感染予防とエチケットのため、自主的にマスクをつけ、接客にあたっていた。
一方で、仕事をしていて、辛いと感じることもあるそうだ。それは、作業面に多く、例えば、ソフトクリームを作る際、形が崩れてしまったり、コーン(カップ)からこぼれてしまったりすることがあり、苦手であると恥ずかしそうに語っていた。また、仕込みで野菜を切ったり、出汁を作ったりする際は、分量や終了時間といった指示が無いとまだ一人で行うことは難しいと語っていた。石焼ビビンバや冷麺も、他の従業員のようにうまく作れないと語っており、調理面に課題を感じている様子であった。
しかし、Sさんはチャレンジ精神旺盛な人で、現在、仕入れ発注の仕事を始めている。本人は、発注の仕事は大変で、できないこともあるが必死に頑張っていると語っていた。さぬきうどん、韓国料理、クレープと系統が違う3つの店でバックヤードを共有しており、また、3つの店舗で使用する食材も異なるため、バックヤードは大変食材等の種類が多かったが、発注を行う上で、倉庫のどこに何があるかを大まかに把握して行っていると語っていた。
具体的には、発注の仕方を覚える際にメモをとる、また分からないことは周囲の人に聞くことを心がけていると語っていた。実際にメモを見せてもらうと、発注に関して自分なりに計算を行い、大変綺麗な字で几帳面にまとめていた。調理面についての記述もみられ、Sさんのチャレンジ精神、課題を克服しようとする努力を感じることができた。メモの中には、勤務時間も詳細に記入されており、自己管理を徹底して行っている様子が伺えた。
Sさんは、特に趣味は無いそうで、休日も何もしていないと語っていた。しかし、近い将来パソコン教室に通うことを目標にしているそうだ。現在、メモは全て手書きで書いており、家族はパソコンを使えるものの、自分は出退勤の入力程度しかパソコンを使うことができないそうだ。Sさんのチャレンジ精神があれば、パソコンをマスターし、近い将来、業務に生かすことができるようになるだろう。



(2)今後の展望と課題
株式会社フジファミリーフーズでは、現在、2つの理由から障害者の雇用を積極的に進めている。それは、企業としての社会的責任と、法律に規定されている法定雇用率1.8パーセントの達成である。フジファミリーフーズでは、これらの理由から、一人でも多くの障害者が働ける環境を作っている。今後も障害者の社会参加のために、雇用を進めていくことだろう。
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