明るく働きがいのある職場の形成
- 事業所名
- 那覇空港グランドサービス株式会社
- 所在地
- 沖縄県那覇市
- 事業内容
- 航空機地上支援業務
- 従業員数
- 315名
- うち障害者数
- 6名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 被服管理及び各種身分証管理業務 内部障害 知的障害 5 機内清掃業務、旅客手荷物取扱業務 精神障害 - 目次

1. 事業概要、障害者雇用の経緯
(1)事業概要
1988年(昭和63年)11月30日に沖縄エアポートサービス株式会社(OAS)の子会社として設立され、OAS社からの出向者を含め47名にて客室清掃業務の一部を受託し、事業をスタートした。
以来、旅客運送業務、搭降載業務、旅客手荷物取扱業務等の受託業務領域の拡大とともに、OASグループ会社(4社)における人財交流及び協業体制を図り、那覇空港内にてJAL/JTAグループ便の安全運航を支える地上グランドハンドリング業務を担っている。
(2)障害者雇用の経緯
当初は、空港構内及び航空機周辺での作業ということもあり、セキュリティー面や安全性の問題や労務管理等での不安もあるため、なかなか職場環境の整備が簡単には進まず、どうしても障害者雇用には消極的であった。
しかし、委託業務量が拡大するにつれ社員数が増える一方で、障害者の雇用義務数に不足が生じたことから、企業の社会的責任である法定雇用率達成を目指すとともに、地域への貢献も含め障害者の雇用促進に積極的に取り組む事となった。
① 取り組み
はじめに、OASグループ会社の採用担当者やハローワーク専門援助部門担当者との意見交換を行うとともに、障害者雇用推進者講習及び障害者職業生活相談員資格認定講習会へ担当者を派遣し、いろいろなノウハウを取得させることとした。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の主催による事業主間視察・交流会へは弊社役員が参加し、県内の障害者優良事業所や沖縄県立高等特別支援学校等を視察して意見交換を行う事につれて次第に障害者雇用に対する認識が高まり、障害者雇用の促進及び職場環境の整備に向け、迅速に対応する事となっていった。
現場においては、障害者雇用に対する企業の責務や考え方を説明するとともに、労務管理等の問題点を抽出して、受入れ時の不安を解消してもらい、安全面を考慮した上で受入れ部署の選定を行なうと同時に、社員への意識改革や職場環境の整備に努めてきた。
求人活動については、県内の沖縄県立高等養護学校(現:沖縄県立高等特別支援学校)等からインターシップを受入れ、手荷物の仕分け業務や航空機内の清掃業務を体験してもらい、本人の「適応能力」、「やる気」、「労働意欲」を見極め、適材適所で配置することができ、これまで高等特別支援学校からは5名が採用された。
また、ハローワークへの求人掲載や障害者雇用支援月間に開催される障害者就職面接会への参加などで求人活動を行なうとともに、各障害者福祉サービス事業所との連携を図り、自立に向けて「働きたい」、「働く場所がほしい」という障害者の要望に応え、1ヶ月間の職場体験を通して彼らの持っている能力や適性を把握し、採用にあたってはトライアル雇用を活用することによって、確実な雇用の確保に繋げている。
② 各種関係機関との連携
障害者を雇用し、障害者が職場において十分に能力を発揮し、生き生きと働けるような職場環境を目指し、社員のサポートをはじめ障害者職業生活相談員を配置して取り組んでいる。
しかし、職場においては障害者が直接、心境や悩みを相談するなど本音を話すことは少なく、実際には出身校の就職担当者や各事業所の担当者へ相談することが殆どであるという現状であるため、相談員(採用担当者)は定期的に学校の就職担当者や各事業所のジョブトレーナーとのコミュニケーションや連携を図ることで、障害者(相談者)の心境や悩みなどを把握し、その障害者にあった内容の改善を行なっている。
2. 障害者の従事業務・職場配置レポート、障害者の声
(1)障害者の従事業務
弊社では、現在計6名(身体障害者1名、知的障害者5名/勤続年数1年~7年 2012年2月末現在)の社員が各部署に所属しており、各々業務内容は異なるものの基本作業を徹底し、自主的に取組んでいる。
空港のグランドハンドリングは、一見華やかに思えるものの、直接利用者と接する仕事ではなく裏方的な業務が殆どであり、常日頃から利用者の視点で物事を考えつつ、安全で品質の高いサービスを提供する縁の下の力持ち的存在と言える。
その中で各部署(客室部客室課、手荷物サービスセンター、総務部)にて活躍している3名の障害者を現場レポートにて紹介する。


(2)職場配置レポート
① 旅客手荷物取扱業務(2名配属)
手荷物サービスセンター所属 Aさん 勤続年数:1年7ヶ月
始業前には、当日、到着する便について出発空港からのメッセージを確認し、引渡し手荷物の個数や特別に取扱う必要がある特殊な手荷物がないかを確認する。
実作業においては、到着した引渡し手荷物の返却作業時、便名に間違いがないかひとつひとつ確認を行いながら、利用者が手荷物を受取り易いように取っ手を外側に向けるなどの配慮をして回転台に並べていく。もし、手荷物に汚損や濡損がある場合は拭き取りも行う。また、自主的に手持ち時間を利用して備品や作業エリアの美化に努めている。
そのことから、今年の当社創立記念式典では作業エリアの美化活動が評価され特別賞を受賞した。


② 客室清掃業務(3名)
客室部 客室課所属 Bさん 勤続年数:1年10ヶ月
利用者が降機後、到着便の機内清掃を行う。座席周辺のゴミを回収し、シートベルトを整えるのが主な仕事であるが、作業時間が限られており、迅速かつ確実な作業が求められる。その他には、セッティングルーム内にて、搭乗記念に小児に提供するノベルティーのセッティングや機内搭載物品の準備も行っている。
機内清掃の際に、忘れ物(財布等)を年間通して多数発見し、無事利用者の元へ届けられたことが、質の高いサービスの提供と認められ、当社創立記念式典にて特別賞を受賞した。


③ 事務職(1名)
総務部所属 Cさん 勤続年数:1年3ヶ月
被服管理業務、各種身分証申請・管理業務及び庶務を行っている。OASグループ社員400名以上もの被服管理を一手に引き受けており、社員の新規採用及び退職時には被服の発注や返却があり大変な作業となる。
また、全社員の身分証管理は個人データが必要となり、個人情報保護の点からも非常に気を使う仕事である。
(3)障害者の声(総務部所属 Cさん)
他社にて働いていたものの、転職を希望していたため、ハローワーク専門援助部門担当者の勧めにより、障害者就職面接会に参加しました。当時、事務職にて求人を出していた当社の面接を受け、平成22年11月に入社することとなり総務部へ配属となりました。
事務職希望といってもパソコンの基本操作やその他資格経験もなく、職場の雰囲気にも圧倒されていましたが、総務部の皆さんが優しく受入れてくれ、基礎的なビジネスマナーやパソコン操作など色々と教わることができました。
お陰さまで、今は一般的な資料作成(パソコン)は普通に出来るようになりました。
また、当社に入社してから色々なことにチャレンジする事が出来ました。
① 先輩社員からのアドバイスもあり高校に入学することが出来ました。
② 会社の保健師の勧めにより禁煙することが出来ました。
③ 人間関係についても協調性が身に付いてきました。
特に高校入学にあたっては、総務部の皆さんの支援もあり無事二年次に進級することができました。
また、会社生活においては、時に社会の厳しさを目の当りにしながらも、日々、成長していく自分自身がいることにやりがいを感じています。
3. 各部署の取り組み、社員の声、障害者の処遇、今後の展望と課題
(1)各部署の取り組み
① 各社員とのコミュニケーション、サポート体制の構築を図っている。
② 社内行事への積極的参加を推進。(社内レク、本島縦断駅伝、ボウリング大会等)
③ 一定の業務範囲で責任を与えている。
(2)社員の声
① 挨拶がしっかりしており、気持ちがよく好感が持てる。見習わなければならない。
② 仕事に取組む姿勢に直向さを感じ、自ら周りに馴染むよう努力している。
③ 作業エリアの整理整頓を自主的に行い、作業環境の改善に繋がっている。
(3)障害者の処遇
雇用形態は契約社員と位置付け、他の障害の無い契約社員と同等の労働条件と待遇であり、十分に能力が発揮できる環境を整えている。 また、労働意欲及び能力次第では、嘱託社員へのステップアップもある。
(4)今後の課題と展望
定着率は高いものの、ある程度限定された同一作業を実施していることから、高いモチベーションをどう維持してもらうかが重要な課題である。そのため、能力を見極め更なるスキルアップを図るとともに、職務の再設計を行うことや、他部署への配置転換を検討する予定である。また、今後は職業生活相談員等の育成にも力を入れ、新たに相談員を配置し、気軽に心境や悩み等を相談できる窓口を開くことで、障害者にとって、より明るく働きがいのある職場の形成を目指す事としている。
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