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- 事業所名
- 三菱電機冷熱応用システム株式会社
- 所在地
- 和歌山県和歌山市
- 事業内容
- 三菱電機冷熱事業の冷凍サイクルの設計・製造技術を活かした、冷凍機器類の製造販売
- 従業員数
- 400名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 1 製造部門(配管加工作業) 知的障害 4 製造ラインへの部品供給、修理品等の梱包・出荷 精神障害 - 目次
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯・事業所の姿勢
(1)事業所の概要
当社は、三菱電機冷熱事業のグループ企業として、長年培った冷凍サイクルの設計製造技術をフルに活かし、冷凍・冷蔵ショーケース、農事用保冷庫等の冷凍・冷蔵応用製品やファンコイルユニット、パッケージエアコン、盤クーラ等の空調機器を製造販売する一方、三菱電機の冷熱製品や電子制御基板等の製造を担っている。
1982年4月1日、三菱電機100%の子会社として和菱産業株式会社として、設立。2009年4月、現在の「三菱電機冷熱応用システム株式会社」に社名変更し、現在に至っている。
経営理念として、「優れた技術と経験豊富な技能により、お客様に満足して頂ける製品つくり、最高の信用を獲得し、会社に貢献する。」を掲げ、①冷凍機内蔵の店舗用などのショーケース事業、②玄米・野菜等農産物保冷庫など冷熱応用製品事業、③水冷式パッケージエアコンなどの冷熱機器生産事業を本社(和歌山県和歌山市)にて製造している。
また、環境・品質への取組として、ISO14001及びISO9001を認証取得している。
(2)障害者雇用の経緯・事業所の姿勢
① 障害者雇用までの経緯
当社は、1982年4月設立の会社であるが、1989年11月に、初めて障害者を採用し、その人は現在も継続して勤務しており、勤務歴は23年になる。
それ以降、約1名前後の障害者雇用状態が続いていたが、2008年になり本格的に障害者雇用に取り組むこととなった。
その準備段階のとき、知的障害者の雇用成功事例について紹介してもらう機会があり、事例を通して、当社でも知的障害者を雇用できると判断し、アプローチ先を知的障害者に定め、その準備作業に入った。
また、同時期に特別支援学校を知る機会を得て、事前に情報収集することができた。
その後、当社の人事労務担当者は、特別支援学校の協力をいただき、実際の授業風景や教材機器の設備状況(パソコンの設置等)などについて学校施設見学を行った。その際、「名刺づくり」の工程作業を見学することができた。実際に、特別支援学校の生徒が先生の指導のもと、生き生きと「名刺づくり」に集中している姿に接することができた。また、「運動会」を見学する機会を得て、知的障害者の日頃の生活振り等をあらためて確認することで、当社での仕事にも充分従事してもらえるのではないかと、障害への不安を払拭することができた。
2009年から、本格的な障害者の採用が始まり、2009年に2名、2011年に1名の採用が決定した。
現在は、知的障害者が4名、身体障害者が1名の合計5名の障害者が各配属部署において職務に精励している。
② 事業所の姿勢
2009年から、知的障害者の雇用が社内的に正式決定したことから、社員に対して、障害者への接し方や、どういう気配りが必要かなどの基礎的な知識を事前に伝え、障害について理解をしてもらうことで、双方にとって働きやすい職場環境となるよう充分な配慮が必要であった。
その一端として、インターンシップ制度を導入し、特別支援学校の就労希望者を研修生として就業体験の場を設けることで、社員の障害への理解も深まり、職場環境づくりに大きなプラス効果をもたらした。
実際に、熱心かつ一生懸命に「実習」を行う彼らの姿は、周りの社員の障害者雇用に対する一抹の不安を即座に解消することができた。
同じ働く仲間として、職場に迎え入れる職場環境が、2009年4月には出来上がり、現在も、特別支援学校より、毎年2回(6月<1週>、11月<2週>)の進路実習を中心に受け入れ体験学習の機会を設けている。
2. 取り組みの内容
(1)業務内容及び障害者の業務
現在、当事業所では障害者が5名在籍しており、2009年に採用の2名、2011年採用の1名、合計3名の知的障害者の業務内容は、生産ラインの「払出し」(※生産に必要な部品の供給)、出来上がった製品等の「梱包」作業、そして「出荷」作業になる。
梱包作業については、出来上がった製品にとどまらず、修理用部品の「梱包」もあるため、小ロット多種類であることが多い。これらに対して正確且つ迅速に「梱包」作業をこなすには本来長年の経験が必要であるが、伝達事項・指示事項にアイデアを駆使して、「無理なく」・「時間内」に作業できるよう配慮している。
「スタンドアローン」(※一人でもマイペースに作業)にて、作業が遂行できる作業工程を意識して、できるだけ、作業の難易度を低くする工夫を重ねている。また、ペアでの作業になるようにして、孤立感を無くし、お互いが助け合うことにより、一段階上の作業に挑戦したり、切磋琢磨できるような就業環境になるよう配慮している。
また、この作業自体が、個々の知的障害者の性格にあっているかの職務適合性については、採用前に実施されている年2回のインターンシップ(夏・冬)を体験させることにより、この作業内容とのミス・マッチを避けることを意識している。
また、生産ラインでの作業に関する、指示事項、注意事項、連絡事項については、その伝達方法として、「色(配色)」「内容の読み取り」「表示」等に工夫を凝らし、その伝達事項が「正確」に、また、「容易」に作業している者に伝わるよう、創意工夫を行っている。


このことは、他の作業改善のヒントにもなり、全体の事務・作業改善においてもその相乗効果が発揮できるきっかけにもなっている。
また、勤務歴23年のベテランの身体障害者(1名)は、現在は、配管加工という難易度の高い作業を行っている。以前は、倉庫から倉庫への部品運搬で移動を伴う作業であったが、いまでは、あまり移動作業を行うことのない配管加工作業に定着しており、従来より身体に負担の少ない作業内容となり、毎日の業務に余裕をもって取り組むことができるようになった。


(2)就業以外のフォロー
当社では、障害者を新たに採用した場合には、「本人」「父兄」「会社」の3者にて面談会を実施している。
これから社会人として、あらたなスタートを切る障害者本人も、喜びとともに、緊張する時でもあり、また、特別支援学校を卒業し、実社会に巣立っていく子の両親としても、大きな不安と期待をもっている。そのため、当社の人事担当者と面談することにより、そうした「本人」「父兄」の緊張感を少しでも和らげることができるように配慮している。
また、当社では、レクリエーション活動を通じて日頃の親睦(コミュニケーション)を図っている。
時には、観光バスを用意し日帰りの旅行を企画し、幹事役を担う担当者は大変だが、社員の親睦・コミュニケーション不足が一般的に課題になっている昨今、大切なイベントのひとつになっている。ちなみに、最近では、京都観光に行き、京都の風情を満喫した1日を過ごした。
2008年、2011年に採用された知的障害者も参加し、先輩や共に働く仲間との初めての経験である旅行に、より深く連帯感を持つことができた。
3. 障害者の処遇
勤務形態は、障害のない社員と同様のフルタイム勤務にて、AM8:30~12:15、PM1:00~5:00の勤務時間になっている。所定就業時間は、1日7時間45分であり、それぞれが、「体験実習」で経験した作業に従事しているため、無理なく集中できている。また、午前、午後にそれぞれ1回、休憩時間とは別に10分間のトイレタイムを設けており、作業時間途中での「気分転換」を図れるよう工夫を講じている。そのため、1日を通して高い作業効率水準をキープしている。
当社では、「無理なく」その作業状況に適合できるよう、知的障害者同士でペアを組ませて、その流れ作業に早く慣れるように工夫を行っている。それは、作業にミス(失敗)したとき、一人で落ち込んでしまいがちであるが、ペアを組んでいると、お互いにミスをカバーしあい、励ましあい、孤立感を感じないで作業にあたれるため、メンタル面での安定を図れる等、相乗効果を発揮している。
2009年4月に本格的な知的障害者の採用を開始するまでに、知的障害者の雇用成功事例を参考に、約1年間の準備期間を費やし、いろいろな場面にて設備・器具・備品等の活用、また、メンタル面でのサポート体制の確立等、全社あげての受け入れ態勢により、障害者雇用の処遇体制に万全の取り組みをもって臨んでいる。
4. 今後の課題と展望
2009年からの本格的かつ計画的な障害者雇用への取り組み開始から、約3年が経過したが、事前に入念な準備体制を取ったため、現在、スムーズな運営体制で推移している。
今後、計画的な採用を定着させ、従来通り、特別支援学校・ハローワークとの連携を取りながら、インターンシップ制度等を活用して、継続的に採用準備を進める手順は、今後とも継続していく予定である。
また、これまでの約3年の障害者雇用の実績・経験を踏まえ、より充実した障害者雇用の環境整備に努力していきたいと考えている。特に、メンタル的な側面で支援の充実を図り、常に働きやすい環境づくりを目指したい。
昨今、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の考え方が提唱されているが、高齢者・障害者等を含むいろいろな立場の人への雇用機会の提供が、企業としてのCSR(社会的責任)として、社会的・地域的に求められる時代を迎えている。
しかし、経済性を追求する企業として、CSRを遂行することに必要経費(コスト)が発生することも事実である。
将来的な展望として、国が担ってきた社会福祉事業に対し、民間企業としての立場で、民間の活力を活かす施策の実施が求められる時代がきているように感じられる。
企業として真摯に向き合い、そのCSR(社会的責任)を前向きに、着実に、一歩一歩進めていけるよう、国としては、その企業に対して、バックアップする体制をより一層構築していくことが重要であると考える。
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