「企業の発展は人材発掘」
~障害があっても環境を整えプロフェショナルとして人材を育成~
- 事業所名
- SOC株式会社
- 所在地
- 北海道札幌市
- 事業内容
- ソフトウエア開発
- 従業員数
- 350名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 ソフト開発 肢体不自由 6 総務、サイト運営、ソフト開発 内部障害 知的障害 精神障害 1 ソフト開発 - 目次

- ホームページアドレス
- http://www.socnet.jp
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯・背景
(1)事業所の概要
① 沿革
昭和53年4月、札幌市で独立系ソフトウエア業として創業。オフィスコンピュータによるシステム開発を主体に営業を開始した。昭和62年、札幌テクノパークに新社屋を建設し、移転した。現在は社員数350名の中堅企業としての基盤を確立している。
ますます加速度を増し進化を続ける情報化の嵐の中で、常に新たな技術の習得と信頼できる技術者の育成に力を注ぎ、多種多様化する顧客ニーズに対応できるサービスの提供、社会の発展に貢献することを目標に邁進している。
② 組織構成
当社は大きく分けて経営管理本部、人事管理本部、ニュービジネス本部、事業支援本部、営業本部、第1事業本部から第5事業本部の組織構成となっている。道外拠点として第5事業本部に東北支社と東京支社を配置している。関連会社は、SOCパートナーズ株式会社他4社を有している。
③ SOCのビジョン
- 北海道IT産業の基盤作りに貢献し、北海道を世界から注目されるIT産業の基地にする。
- 首都圏の開発から、ゆとりある北海道ニアショア開発を拡大する。
- ネットビジネス事業に進出し、事業拡大と新技術を習得する。
- 就職・転職に強い地域に密着した人材教育事業を強化する。
④ SOCが求める人材
- 細かなことは気にせず、ものごとに動じない
- 積極的で社交性があり、感情的にならない
- 体を動かすことを好み、行動が機敏で決断が早い
- 周囲と協力しながら困難な状況に立ち向かう
- 手堅く粘り強く取り込み、安定的に高い品質を提供できる
(2)障害者雇用の経緯・背景
① 採用の経緯
初めて障害者を採用したのは、平成7年4月。大学の教授からの推薦で面接をし、採用に至った。障害者雇用の経験がなかったので、「本当に仕事ができるのか?」との不安もあり、一部の役員の反対があったが、代表者の「社員への刺激」と「教育の一環」との思いから採用に踏み切った。
② 背景
北海道を元気にしたい。北海道は気候が良く、ソフト産業を基幹産業にしようとするには最も適した地域。その実現のために「障害者も含めた人材登用の機会を広く設けたい」、との代表者の強い信念が背景としてあった。
2. 取り組みの内容、インタビュー
(1)取組の内容
① 最初の雇用
最初の採用では、面接時一見障害があるとは分からなかった。好印象から正社員として採用し、給与のパッケージソフト作成に携わってもらい、主にプログラミングを担当してもらった。真面目で、障害のない社員と変わらない仕事ぶりは、役員及び周囲の信頼を得ることになり、障害のない者と同じ仕事ができるかとの当初の不安を払拭し、後に8名の障害者雇用へのきっかけとなった。
現在、彼は課長代理として東京方面で活躍している。
② その後の採用
採用ルートは、主に地元ハローワークからの紹介である。最初の採用から約4年が経過し、平成21年に総務で1名女性を採用した。現在、航空券や名刺の手配等総務全般の仕事を担うとともに、障害者職業生活相談員として後任の指導にも当たっている。
同年、札幌市の「まちづくり総合ポータルサイト」の管理運営を受託。その条件に障害者雇用が含まれていたので、新たに4名採用した。現在、この4名は、当該業務の中心メンバーとして活躍している。
③ 障害者の従事している業務
現在、8名の障害者が在籍している。
- 聴覚障害者1名 ソフト開発
- 肢体不自由者6名
(内訳)
総務1名
サイト運営2名
ソフト開発3名 - 精神障害者1名 ソフト開発
精神障害者は、睡眠を取りにくいという軽度の障害で、昼間の業務には全く支障がない。
当社では現在、「ミキモール」という通販サイトを運営しており、農産物等の北海道の特産品を扱っている。これには、「SOC IT SCHOOL」で学んだ障害者に入社してもらい、生産者の選定、価格交渉等を一貫して手掛けてもらっている。

④ 施設の改修と職場環境の整備
ハード面ではエントランスにスロープと障害者用トイレを設置した。このため札幌市へ助成金の申請を行い工事の負担を軽減した。ソフト面では、社員間で障害のある人、ない人という分け隔てはなく、職場の同僚としてごく普通に交流しており、特に配慮を要したことはない。障害のある人が働くようになって、特別に変化したこともない。
⑤ 全ての障害を持っている方を受け入れるために
当社では現在、「全ての障害を持っている方に門戸を開く」をコンセプトに「障害者雇用プロジェクト」を推進している。プロジェクトメンバーは、役員の推薦により選定し、どのような仕事があるか洗い出している。内容は、障害の程度によりどんな仕事にどのように配置するのか練り上げることから始めている。
ある団体からの提案で、仕様書の製本、印刷等であれば職域を広げることができるのではないかとの提案も頂いた。プロジェクトを立ち上げてから日が浅いため、具体的な進行には時間を要するが、今まで採用した障害を持った社員も立派に社内評価を得ている実績があるので、必ずハードルは超えられると確信している。
⑥ IT技術者の養成
当社は、IT技術者養成機関として、「SOC IT SCHOOL」を運営している。
目的は、IT技術者不足を打開するため、職業訓練の場を増やしIT関連企業・部門への就職支援事業としてスタートしたが、現在は障害があっても一緒に受講している。このスクールから1名当社の社員として採用されている。

⑦ 障害者の雇用拡大と定着について
障害者雇用プロジェクトで検討しているが、採用した障害者の意見や就業状況を勘案しながら雇用拡大を模索し、定着に向けた物理的・人的、社内環境を整備していく予定である。定着については、本人がやり甲斐を実感することが大切だと考えている。
当社は、「キャリアデザイン制度」を採り入れており、自ら「キャリアルート」を作成し、例えば3年後に自分がリーダー(役職)になるという目標を立てた場合、そのために必要な情報処理技術者やITパスポート等の資格を取得する。このステップを経ることで、責任感とやり甲斐が芽生え、大規模事業への参加意識を醸成させている。
⑧ 活用した助成金・受けている調整金等
- 特定求職者雇用開発助成金
- 試行(トライアル)雇用奨励金
- 障害者雇用調整金
- 第1種作業施設設置等助成金
(2)インタビュー
障害を持っている社員は周りに溶け込んでいます。ITの仕事は、顧客の要望をしっかり受け止め、システム構築をして納品となりますが、それだけでは終わりにならないと思っています。実際にそのシステムを使う方が、「今までの仕事が大幅に楽になった。」、「時間が短縮できるようになった。」、そんな現場の声を聞いたとき、一番達成感があります。反面、納期が近づき仕様変更があった時は、大変苦労します。
しかし、ユーザーが喜ぶ姿を何度も見ていますので、いつも前向きに努力するようにしています。この達成感は、障害の有無は全く関係ありません。
(人事管理部部長 H・T氏談)
平成21年に入社した、Y・H氏(25歳)にQ&A方式でインタビューをした結果
Q 入社のきっかけは?
A | 私は、江別のIT関係の大学を卒業しました。在学中は一般採用で就職にチェレンジしましたが、残念ながら就職を決めることが出来ませんでした。その後、半年位ブランクがありましたが、地元ハローワークのみどりの窓口に障害者枠で登録して、そこの紹介で面接を受けたのが当社でした。幸運にも採用が決まりましたが、当初は不安で一杯でした。 |
Q 最初の仕事は?
A | 札幌市からの受託事業である「ふるさと再生雇用プロジェクト」を当社が手掛けるようになり、札幌市エルプラザのサイト作成で、CMS(ポータルサイトの改修等)を担当しました。 |
Q どんな不安を持っていたか?
A | 入社してこれからちゃんとやっていけるのか?漠然とした不安はありましたが、仕事をこなしていくと楽しんで仕事をしている自分に気付きました。納期が迫っている仕事では遅くまで残業することもありますが、自分には目標がありますので気にはなりません。 |
Q 社風はどうですか?
A | 仕事をしていると、自分で分からないことやミスを他の社員に聞いたりアドバイスを受けて修正したり、チームワークが必要です。仕事をしてお金を貰うのですから、大変なのは当たり前と思います。当社は仕事をしている時と、離れたと時のメリハリがはっきりしていると思います。そのお陰でストレスを引きずることはありません。 |
Q 現在の仕事は?
A | 「ふるさと再生雇用プロジェクト」が3年目の最後の仕事となります。つぎはスマートホンのアプリ開発で、電子書籍の検品作業を担当します。 |
Q 3年後の目標は
A | 現在の仕事で精一杯ですが、3年後はリーダー(役職)になりたいです。そのために、ITパスポートの資格取得を目指しています。 |
Q 障害を持っていることについて?
A | 障害を持っていても自分は自分なので、自分で出来ることを精一杯行うことが大切と考えています。例えば、力仕事を頼まれても自分には出来ません。そんなとき「NO」と言えることを心掛けています。 |
Q 通勤はどうされていますか?
A | 私は、公共交通機関です。他の障害を持っている社員は、バス・地下鉄、自転車等自分で通勤しています。 |
Q 後輩へ一言
A | 失敗を恐れない。失敗してもやってみる。結果は後からついてくる。失敗しても得るものはある。成功したら「御の字」私はいつもこう考えて仕事をしています。 先ずは「トライ」です。 |

3. 取り組みの効果、今後の課題と展望、編集後記
(1)取組の効果
前述のように、平成7年からの取り組みで歴史は浅いが、社員には障害のある社員、障害のない社員の区別意識はなく、障害者も完全に同化している。ITの仕事はハンディがあっても、仕事の中身においては障害のない社員と全く同じである。
当社は、障害者の雇用について特に社員に周知をしていない。それは、物理的なサポートは必要となるが、仕事の成果に関しては同じフィールドで結果を導き出せると考えるからである。
障害者雇用から数年経ち、彼らが経験を積み、成長し戦力として活躍している姿は、障害のない社員への良い刺激となっている。
(2)今後の課題と展望
当社は、まだ350名体制で北海道の一企業に過ぎないが、1,000名体制を一つの区切りと考えている。それは、IT業界で影響力を持つための第一のステップと考えているからである。これを実現させるため、今後も障害者に多くの就業機会を与え、教育し環境整備を進めていこうと考えている。障害者雇用は、採用してから出来る仕事を作り出すよりも、先ず、どんな仕事を任せることが出来るのかを真剣に考え、実際にポジションを作ってから配置する方が、本人も企業にとっても大切と考えるからである。
今後は、どんな障害を持っていても採用するために何をすべきか考え、実践することが課題と考えている。
(3)編集後記
会社の雰囲気が「障害者と仕事をしている。」そのために何か特別なことをしているような空気は全く感じられず、自然体であった。また、デスクで淡々と仕事をする姿からは障害があるとは全く感じられなかった。
Y・H氏のインタビューのため、別室へ移動するときも、慣れた動作で車いすへの移動サポート。インタビューでも3年後の目標をはっきり持っていて、リーダー(役職)になることを目指し、資格取得のキャリアルートも明確にしている。障害があっても、課長代理に昇進し、一線で活躍している先輩がいる。そのような実像が大きな刺激となり、やり甲斐となっていることは間違いないと感じた。「北海道を元気にしたい。」そのエネルギーを存分に感じた取材だった。
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