2012年度作成

事業所名

多摩川リンクス株式会社

所在地

長野県飯田市

事業内容

清掃、事務補助、製品組立

従業員数

12名

うち障害者数

9名

 

（内訳）

障害	人数	従事業務
聴覚障害	1	清掃
肢体不自由	1	事務補助
内部障害	1	総務
知的障害	4	製品組立、清掃
精神障害	1	事務補助
発達障害	1	事務補助

目次

1. 事業所の概要・特例子会社設立の経緯、障害者雇用の状況
2. 取り組みの内容
3. 取り組みの効果、今後の展望

1. 事業所の概要・特例子会社設立の経緯、障害者雇用の状況

（1）事業所の概要・特例子会社設立の経緯

多摩川リンクス株式会社は、多摩川精機株式会社の特例子会社として多摩川精機グループ4社の集まる敷地内に事務所を置き、事業を展開している。

多摩川精機株式会社は、地域に根ざし、地域に貢献するという会社の基本方針に基づき、昭和56年に障害者雇用を開始し、その後も障害者雇用を推進してきた。そして、更なる雇用促進を目指し平成20年11月21日「福祉関連会社設立準備室」を設置した。多摩川精機株式会社や関連会社で障害者に適した業務を検討し、その上で長野障害者職業センターや飯伊圏域障害者総合支援センターと連携して、業務の精査や働きやすい環境作り等の準備を行なってきた。

平成22年12月21日「多摩川リンクス株式会社」を設立した。“リンクス”とは、多摩川精機グループ間の連携、障害者就労支援の関係機関や地域との連携を深めることを目指して命名された。はじめは社長を含めて4名で事業を開始、平成23年4月までに雇用拡大し、特例子会社設立を試みて平成23年3月に2名採用するも、東日本大震災の影響で一時中止を余儀なくされた。その後も経済状況は不安定であったが、親会社の方針に従い、多摩川精機グループの障害者雇用推進の中核となるべく、地道に業務開拓をして雇用の拡大に取り組み（4月2名、10月2名、11月1名、12月1名採用）、その年の暮れには社員12名（障害者9名）となった。

平成23年12月27日に特例子会社として認定され、社員は会社の事務所を中心に個々に応じた職場で業務に当たっている。会社としては、障害者の社会参加や、障害のない人達の障害者に対する理解を深めるため、一つの職場に限定せず、障害のない人達と同じ職場・同じ環境で働くことをこころがけている。

（2）障害者雇用の状況

①  労働状況と人員構成

②  業務内容

• 身体障害者で内部障害のある人は総務として従事すると共に、障害者の職場指導員としての任務も遂行している。肢体不自由の人は事務補助、聴覚障害の人は倉庫で通い箱の清掃をしている。
• 知的障害者のうち2名は製品組み立てに従事し、2名は敷地内の環境整備と清掃を行なっている。
• 精神障害者と発達障害者はパソコン操作の特技を活かし、事務補助として、データ入力作業を行なっている。

2. 取り組みの内容

（1）採用について

• 関連会社の各職場からの業務委託を受け調整し、ハローワークを通して求人募集を行っている。
• 飯伊圏域障害者総合支援センターとも連携して、障害特性に応じた業務や環境作りを行なっている。また、主に知的障害者は雇用前の訓練を実施し、トライアル雇用を経て、常用雇用としている。
• 地域の特別支援学校の就職希望者の実習を積極的に受け入れ、障害の状況に応じた職場の調整をし、雇用にも前向きに対応している。
• 障害者就職相談会等の障害者向けの企業説明会に参加し、働く意欲のある障害者の雇用を検討している。また、障害種別にこだわることなく、どのような障害でも対応できるよう心がけている。

（2）働きやすい職場環境作りについて

• 知的障害者には日程や作業手順をわかりやすく表示し、また作業が円滑に行なわれるよう作業現場で具体的な目印の表示も行なっている。通勤ラッシュを避けるように通勤時間帯の配慮も行なっている。

• 精神障害者には、集中力が維持できるように作業内容の工夫や、対人関係に配慮した職場配置をしている。
• 発達障害者には、一人で落ち着いて作業が出来るよう室内環境と作業量に配慮している。
• 聴覚障害者には、通常はホワイトボードを使用してコミュニケーションを図っているが、必要時は手話通訳者を派遣している。

（3）職場定着と社内教育について

• 職場定着については、指導員や同じ職場の上司が日々の業務確認を行ない、課題があれば、その都度指導している。また月1回の個人面接を実施し、仕事や私生活についての相談に応じている。私生活での相談も行なう事により、より社員の状況がわかり信頼関係も築けている。
• 飯伊圏域障害者総合支援センターとも連携し、社内での課題解決の相談、生活に関する相談や支援を実施している。
• 職場定着に関して、必要があればジョブコーチ支援の活用も考えている。
• 社内教育については、基本的に関連会社の社員と同様に行なっており、不足分は個々の障害特性に応じて個別に実施している。

（4）福利厚生について

• 会社独自の交流会のほか、多摩川精機グループで行なうスポーツイベントや、毎年行なわれる飯田市のお祭り「飯田りんごん」にもグループの一員として参加し、障害のない人達と交流を深め、一緒に楽しんでいる。
• 安全教室や避難訓練もグループで行い、一緒に参加している。健康管理に関しても同様に行なっている。
• 社内行事以外の個々の余暇活動でも、参加しているスポーツチームの応援に行くことや、太鼓の発表会を観賞するなどして、社員同士の社外交流も深めている。

（5）啓発活動について

• 障害者就労支援施設職員との懇談会や、障害者就労支援セミナーに企業の立場として講演する等、障害者雇用の啓発活動にも積極的に参加している。

3. 取り組みの効果、今後の展望

（1）取り組みの効果

障害のある社員は、仕事に対する責任感が芽生え、また障害のない社員から感謝される事により働く喜びを感じ、意欲的に取り組むようになっている。特に一人で業務をまかされた社員は、仕事に責任を持つ事と共にやりがいを感じるようになり、気候の変化や家庭の問題で多少の体調不良があっても、仕事を休みたくないという気持ちで出勤している。清掃業務に従事している社員は、「きれいになってありがとう」との感謝の言葉をかけられることが多く、働く喜びを感じることができ、意欲的に取り組むようになった。

障害者同士でも気配りや助言することが出来るようになり、仕事上で問題が起こると、指導員が介入する前に助言をして解決する等、お互いに気付き高めあう姿勢も見られるようになった。

グループ企業の社員も障害者と接する機会が多くなる中で、障害者への理解が深まり、気配りが出来るようになった。例を挙げると、一人で重たい資料を運んでいる障害者を見て、一緒に運ぶのを手伝ってくれたことや、昼食時食堂で障害者が献立選びで悩んでいても、あせらせる事なく待ってくれたこと、厨房職員も早めに注文できるよう配慮してくれたこと等、自然に配慮する姿が随所に見られるようになってきた。

避難訓練の際には障害者（特に聴覚障害者への連絡方法を検討）の誘導をグループ会社全体で検討したり、ヘルメットの色を変えれば、避難の確認が出来る等細部まで提案をしてくれた。また、障害者が毎朝元気にあいさつすることにより、障害のない人達もあいさつの大切さを再認識し、皆で声をかけあうようになった等、グループ全体の志気が高まってきた。

（2）今後の展望

会社を設立して1年半余り、効果も見え始めてきているが、まだ現在の障害のある社員が確実に業務を遂行できるまでには至っていない。まずは、現在の職域の中での業務を確実に実施でき、充実させる事を目標に取り組みたい。

多摩川精機グループの企業としては、経済状況の不安定さや、海外進出のことを考えると、製品組み立てなどの本来業務での障害者雇用は厳しい状況になっている。しかしながら、障害者雇用の基本方針に基づき、主に清掃作業やパソコン操作でのデータ整理など、可能な分野での障害者雇用の拡大に努めていきたい。また、指導員の増員も視野に入れ、障害者がより働きやすく、さらに意欲的に働き続ける事が出来るように職場環境も整えたい。

更には、多摩川精機グループの障害者雇用中核企業としてのみでなく、飯田・下伊那地域における障害者雇用の中核企業としての役割を果たしていきたいと思っている。

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