2012年度作成

事業所名

株式会社リースサンキュー

所在地

静岡県沼津市

事業内容

＜リース部門＞高級おしぼり・ロールタオル・玄関マット・芳香剤・エコシステム(トイレ洗浄)
＜販売部門＞料理道具・消耗雑貨・和洋食器厨房機器・レトルト食材・各種紙製品・各種業務用洗剤
＜リネン部門＞ユニフォームレンタル

従業員数

72名

うち障害者数

25名

 

（内訳）

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	1	軽作業
内部障害
知的障害	24	おしぼりの洗浄・包装
精神障害

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 取り組みの効果、今後の展望と課題

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

株式会社リースサンキューは、おしぼりや玄関マット等を扱うリース部門と、業務用消耗雑貨や洗剤を扱う販売部門と、ユニフォームレンタル等を行うリネン部門からなる総合商社である。

創業は昭和39年6月。当初は、先代がリネンの営業に回っていた際に親しくなった病院の院長から工場を借りて、事業を行っていた。

その後、院長に現在の本社工場の場所を紹介され、昭和42年に工場を移転。そのとき病院側から、精神病の患者をリハビリを兼ねて働かせてもらえないかとの依頼があったため、施設外就労に近い形で彼らを受け入れた。彼らにはソーシャルワーカーが1名付き、サポートにあたっていた。そのころはまだ機械化されていなかったが、昭和62年初めて障害者を雇用したと同時に、工場のオートメーション化にも取り組み、大型洗濯機で洗浄したおしぼりをコンベアーラインで包装まで移送するシステムが徐々に出来上がっていった。

平成19年、新工場を建設するとともに、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金を使って最新鋭の設備を導入。回収から出荷までの10以上の工程がオートメーション化された。

平成21年には、静岡県沼津市大諏訪に産業用クリーニング工場を建設。こちらの工場にも障害者が雇用されており、ユニフォームやリネンタオル、玄関マットのクリーニングを行っている。

平成23年12月にはNPO法人静岡県障がい者自立支援センターを立ち上げ、翌月1月に就労継続A型事業所「アイサンキュー」を開所。ここでは16名の障害者が一般就労を目指して日々訓練を受けている。

現在、株式会社リースサンキューの従業員数は72名。このうち知的・発達障害者は24名、身体障害者は1名。そのうち、重度障害者は10名おり、平成18年に重度障害者多数雇用事業所の認定を受けている。障害者とともに、安心で衛生的なおしぼりを、県下全域に提供し続けている。

（2）障害者雇用の経緯

初めて障害者を雇用したのは昭和62年。仕事をしながら自立させる場を提供したいという思いから、知的障害者の雇用に踏み切った。彼らは家庭や施設で就労に必要な訓練をしっかり受けていたので、毎日休まず出社し、一生懸命仕事を習得しようと本人たちが努力した結果、職場定着が成功することが出来た。

その後、平成13年頃から徐々に障害者の受け入れを増やし、現在に至っている。障害者の採用は、障害者支援施設であるあしたか太陽の丘や特別支援学校・聴覚特別支援学校高等部からの紹介、ハローワーク等主催の合同面接会からの採用が主である。

2. 取り組みの内容

平成17年に、雇用している障害者の数が15名に達したころから、社長と取締役の2名で彼らの管理や指導をすることに限界が見え始めた。会社の方針として、今後も障害者を受け入れる計画があったため、社長は多くの障害者の特性や心の中を理解するためには専門的な知識のある人が必要だと考えた。

そこで障害者職業生活相談員の雇用を決断し、平成19年4月、社会福祉士と精神保健福祉士の資格を持つ女性を採用した。数多くの候補者の中から彼女を採用した理由について、社長は、「彼女には、ただ単に障害者に仕事を教えるのではなく、1人の従業員として会社の戦力になるように育て、自立させたいという強い思いがあり、その思いが会社の考えと一致したため」と話している。

一般的に障害者職業生活相談員は、自分の仕事もしつつ、障害者のサポートもしている、という状況にあることが多い。しかし、株式会社リースサンキューでは、障害者職業生活相談員を障害者の教育・生活面の指導も含む管理業務に専念させている。それは、障害者が働く現場の状況を常に把握し、瞬時に対応できる体制を整えるためである。

現在、当社で働いている障害者の勤続年数は平均7．2年。当社が初めて雇用した障害者は、勤続26年目になる。このように、障害者の長期雇用を可能にしている背景には、障害者職業生活相談員が実践する徹底した社内教育が挙げられる。

まず、障害者が雇用されると、障害者職業生活相談員は会社で働く上で必要な様々なルールを教える。障害者職業生活相談員の指導・指示が一貫していれば、障害者たちは会社がどういう行動を求めているのかを理解することが容易になり、後輩が入社してきた時、新入社員に対して障害者自身が先輩としてアドバイスできるようになるのだという。

要するに、障害者を指導するにあたって重要なことは、全てにおいて一貫性を持つことである。特に、人を傷つけることや、人として間違っていることに関しての指導は、全ての障害者に対して一貫した指導内容にしているそうである。また、指導する際は、面談という形で個別に指導するか、仕事中にオープンに注意をするか、対象障害者や状況や内容によって選択している。

指導後は、それが理解できたかを確認するために、彼らの様子を細かく観察し、良い兆候が見られたときは、すかさず褒める。このように、「指導・注意」と「褒める」を上手く使い分けることが、彼らの成長を促すために重要なのである。

当社では工場内のいたるところで障害者が働いているが、特におしぼりの包装作業に従事する人が多い。彼らは、洗い上がったおしぼりにシミや破れがないか検品しながら、1枚ずつひろげて、3つ折り包装機にセットする。すると、機械が自動的に3つ折りにたたみ、包装してくれる。このような単純反復作業が向いている障害者は意外と多い。

おしぼりは清潔であることが大前提なので、日頃から衛生面に関しては充分教育しているという。彼らの目標は1時間に1,400枚のおしぼりを処理すること。この目標値は障害の程度にかかわらず同じ数値に設定しているが、目標に達するまでの期間に差をつけているという。彼らが1日に包装した数は、それぞれの機械についているカウンターで把握できるようになっている。

当初はこの数値を障害者職業生活相談員が記録し、折れ線グラフにして、目標値の1,400枚のところに赤いラインを引き、個人の生産性がひと目で見てわかるように工夫していた。しかし、そのような取り組みを繰り返すうちに、彼らが数値の意味を理解できるようになったので、現在は彼ら自身が毎日評価表に数値を記録し、1日の反省を書き、それに対して障害者職業生活相談員がコメントを記入するという形になっている。このような取り組みは、自分自身の作業を振り返り、反省する力を育てるとともに、彼らのモチベーションの維持にも一役かっている。ある者は、目標値を1日1万本に設定し、毎日の数値を家族に報告して、褒められたり励まされたりしながら家族は障害者たちを毎朝会社に送り出してくれる。このように、家庭と会社が連携して彼らをサポートすることにより、安定した就業生活が実現するのである。

当社では、障害者職業生活相談員が障害者の採用や配属にも携わっている。配属に関しては、苦手なことより得意なことに注目するよう心がけているという。一つの作業をすべてできる人は少ないため、得意な分野をみんなで分担し、一つの仕事を完成させるようにしている。配属後は障害者の様子を注意深く観察し、辛抱強く指導する。しかし、根気強く指導しても結果が出ない場合や、人間関係の相性が悪い場合は配置転換を行うとのことである。

以上のような取り組みと同時に、当社は積極的に機械化を推し進めてきた。創業当初は、おしぼりを洗濯機で洗浄したあと脱水機まで運んで脱水するという手間のかかる作業を行っていたが、徐々にオートメーション化に取り組んだ結果、現在では、回収されたおしぼりを予洗1槽、温洗4槽、すすぎ4槽の計9槽の連続洗濯機で洗浄し、プレス脱水機で脱水後、タンブラーでほぐして仕上げ工程ラインに運ぶという一連の作業を、すべてコンピューター制御で行えるようになった。こうして高品質に洗い上げられたおしぼりは、障害者が三つ折り包装機にセットすることで自動的に包装され、その後目視検査を経て梱包される。その数は1日30万本にのぼるという。

3. 取り組みの効果、今後の展望と課題

（1）取り組みの効果

障害者職業生活相談員を雇用し、専属で障害者の指導にあたらせることによって、会社は、障害者の状況を的確に把握できるようになった。又、障害者職業生活相談員が障害者と頻繁に会話する機会を持ち、彼らの良き理解者になることによって、両者の間に強い信頼関係が構築された。その信頼関係のもと、厳しい指導と、褒める指導を繰り返しながら教育していくことにより、彼らは多くのことを学び、一人前の従業員として育っていった。今では、障害者職業生活相談員が見ていなくてもしっかり働くことができているという。障害者ひとりひとりと向き合い、根気強く指導していくことによって、障害があっても充分会社の戦力となりうることが証明されたのである。

さらに、工場を機械化することにより、障害者でも一度に大量のおしぼりを、簡単な操作で安全に、高品質に処理することが可能となった。当社のおしぼりのパッケージには、社団法人全国重度障害者雇用事業所協会の会員であることを示す「ハートフルマーク」とともに、厚生省衛生管理基準済の製品にのみ付けることが許される信頼のシンボルとして、全国おしぼり協同組合連合会が制定する「衛生マーク」がプリントされている。障害者の特性を生かしながら指導・教育することで、厳しい衛生基準をクリアした製品を供給し続けることが出来るのである。このように、ソフト面とハード面を充実させることによって、個人の能力を最大限に引き出すことが可能となった。入社当時、障害者職業生活相談員に依存していた彼らも、集団の中での様々な経験を通して社会人としてのルールや仕事に対する姿勢を学び、自立へ向けて歩き出すことができたのである。

（2）今後の展望と課題

おしぼりを三つ折り包装機にセットする仕事は、障害者の特性にマッチしている仕事であるが、残念ながら当社では、現在はその部署に空きがなく、今後更なる雇用は難しいという。そこで、一人でも多くの障害者を就労に結び付けたいとの思いから、平成23年12月、NPO法人静岡県障害者自立支援センターを立ち上げ、翌年1月、就労継続A型事業所「アイサンキュー」を開所した。ここには、以前リースサンキューに施設外就労に来ていた人や、ハローワークの紹介で採用した人など16名の障害者が在籍しており、一般就労に向けて訓練している。まだ定員を満たしておらず、引き続き障害者の雇用に力を入れていくとのことである。

当社では今後も障害者雇用を続けながら、世間に対して、おしぼりが安全で衛生面に優れた商品であることをPRしていきたいと思っている。そして、障害者が生産に携わったとしても、工夫次第でその品質が落ちることが無いのだということを証明していきたいと考えている。

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