第3セクター方式の重度障害者多数雇用モデル企業として
- 事業所名
- 愛知玉野情報システム株式会社
(玉野総合コンサルタント株式会社の特例子会社) - 所在地
- 愛知県名古屋市
- 事業内容
- コンピュータ情報処理サービス、測量業務
- 従業員数
- 22名
- うち障害者数
- 15名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 2 システム設計・開発・構築 肢体不自由 13 各種図面のデータ作成・編集
航空写真測量、既存資料の電子化内部障害 知的障害 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要
(1)設立の経緯
- 昭和56年の国際障害者年を契機として、障害者対策への関心が高まり、国は昭和58年4月「第三セクター方式による重度障害者雇用支援企業モデル事業実施方針」を作成した。
- 国の施策に合わせて、愛知県では昭和61年3月「第三セクター方式による重度障害者多数雇用企業の育成事業推進のためのマスタープラン」を作成し、県内での重度障害者雇用企業の設立を進めることとなった。
- 障害者雇用の取り組みを検討していた、玉野総合コンサルタント株式会社創業者の思いと、国・愛知県の障害者雇用施策の取り組みが一致し、愛知県、名古屋市、玉野総合コンサルタント株式会社との共同出資により、昭和62年10月、愛知玉野情報システム株式会社が設立された。
- 昭和63年4月に創業し、翌年の平成元年5月、障害者雇用促進法に基づく特例子会社として認定され、今日に至る。
- 創業時は、重度障害者10名でスタートしたが、徐々に増員して現在は重度障害者15名を雇用している。
(2)業務内容
- コンピュータなどの情報機器を使う地理情報関連の情報処理やシステム設計などの業務を中心に行っている。
具体的には、既存資料の電子化、システム設計・開発・構築、遺跡測量、各種図面の作成、調査・分析など。 - 業務の大半は、親会社(玉野総合コンサルタント株式会社)からの受注に依存しているが、時代の変化に合わせて親会社の業務内容が変化してくることから、当社が手がけることができる業務も親会社の業務内容に合わせて広げていくことが課題となっている。
(3)従業員数
22名(重度障害者15名、障害のない者7名)




2. 障害者の雇用状況と採用経路、障害者の働きやすい職場づくりに向けた取り組み
(1)障害者の雇用状況と採用経路
① 雇用状況
障害者の平成24年3月31日現在の雇用状況は、以下の通りである。
- 障害種別:身体障害者15名(肢体不自由者13名、聴覚者2名)
- 障害程度:1級5名、2級10名
- 車いす利用者:6名(全員車通勤)
- 車通勤者:9名(隣接駐車場を確保)
- 平均勤続年数:15.4年(最長24年、最短2年)
- 平均年齢:39.3歳(最年長60歳、最年少25歳)
- 親会社の障害者実雇用率:4.32%(平成23年6月1日現在)
② 採用経路
ハローワークを通じて採用しているが、具体的な採用経路は、国・県が主催する「障害者就職面接会」への積極的な参加や、国立・県立の障害者職業能力開発校との連携を密にしながらその修了生を採用している。
(2)障害者の働きやすい職場づくりに向けた取り組み
① 職場環境の整備
設立当時から身体障害者、特に車いす利用者に配慮した職場環境づくりを積極的に進めている。
- 建物内外のスロープの設置
- エレベーターの設置(1階から2階執務室への移動用)
- 車いすで通行できる通路幅の確保
- 2階(執務室)から1階への緊急避難用スロープの設置
- 車いす用トイレの設置(1階および2階)
- 車通勤者用駐車場の確保(隣接地で借用)
② 福利厚生面の整備
障害者の健康面に配慮した特別休暇等を設けるなど、働きやすい制度面での就業環境づくりにも努めている。
- 障害に伴い定期的に医師の診断を受ける場合の特別休暇の付与
- 通勤が負担となる社員に対する在宅勤務制度の創設
- 社外活動(スポーツ大会など)に参加するための特別休暇の付与
- 職務上有用な資格を取得することによる資格手当の支給(測量士、情報処理技術者など)
③ その他の取り組み
- 初任給の決定
本人の経歴および既雇用者との均衡に配慮して個別に決定している。 - 人事評価
年1回勤務評定を行い、その結果を昇給やボーナスに反映している。また、同時期に役員との面談により、意見・要望などの聴取を行い、今後の取り組みに活かすべく努めている。 - 能力開発
セミナーへの参加、職務に係る資格の取得促進、国・県主催の障害者技能競技大会への参加勧奨、OJTによる計画的な技術指導などを実施している。
また、平成24年7月から職務に関係した知識・技術の自己啓発を促進するため、自己啓発援助制度を創設した。 - 職業コンサルタントの配置
重度障害者の健康面や業務面での個別の相談に対応するため、職業コンサルタントの有資格者4名を擁し、うち2名をコンサルタントの業務に配置し、日常的に相談・指導できる体制をとっている。
日常的に行っている職業コンサルタントの主な業務は、時間外勤務が続くことにより体調を崩すことが多い障害者の健康面などに注意しつつ、無理のない勤務体制を組むなどの雇用管理を行っている。また、業務面の悩み事にも親身になって相談に乗るなど、メンタル面でのケアを含めた取り組みを行っている。 - 助成制度の活用
上記の通り、障害者の働きやすい職場づくりに向けた各種取り組みを実施し、各人の能力と適性が発揮されるよう努めているが、雇用を継続していくためには会社経営の安定が基本となる。
そこで、経営の安定に資するべく、以下の助成制度を活用している。
- 障害者介助等助成金
- 重度障害者等通勤対策助成金(駐車場の賃借)
- 試行雇用奨励金
- 特定求職者雇用開発助成金
- 障害者雇用調整金 など
3. 取り組みの効果、今後の展望と課題
(1)取り組みの効果
上記、2.(1)①雇用状況でも記載した通り、創業25年の当社で平均勤続年数が15.4年、最長勤続者は創業以来25年目に入った重度障害者が4人に達するなど、「障害者の働きやすい職場づくりに向けた取り組み」の効果が如実に現れているものと判断している。
そうした効果が見られる大きな要因には、重度障害者が同じ部屋で仕事をしているため、悩み事が共有でき、意見・要望が伝えやすいということが考えられる。
障害者がそれぞれのフロアや違う職場に一人、二人という単位で配属される場合は、多くの障害のない人の中で仕事をすることになり、障害者としての悩みや課題を共有できる人が少なくなり、孤立感を抱きやすいと考えられるが、そういうことがないのも長期勤続者を出している要因と考えている。
長期勤続者を輩出する指導者の存在
<Aさんの場合>
Aさんは、創業以来の社員で高い技術力と暖かい人柄であり、障害者として初めて課長に昇格し、後進の指導にも大いに力を発揮してきた。平成24年3月で定年を迎え、現在は契約社員として職業コンサルタントの業務に従事し、障害者の悩み事や仕事上の相談・指導に包容力のある人柄を如何なく発揮して、若い社員に安心感を与えている。
こうしたAさんのような社員の存在が、社員の定着率を高める要因の一つとなっていると考えている。
公的大会に参加する社員を特別休暇の付与により支援
<Bさんの場合>
バイク事故で下半身付随となり、車いすの生活を余儀なくされたBさんは、入院中に接したパワーリフティングの魅力に惹かれ、次々と記録を伸ばしてきた。国内の大会では、絶えず優勝候補の筆頭に挙げられるBさんは、初めて参加した北京パラリンピックで8位入賞し、平成24年開催のロンドンパラリンピックでは6位入賞を果たした。
当社では、こうしたスポーツ大会への参加を積極的に後押しし、遠征期間中の特別休暇の付与や、親会社が開催する激励会での記念品の贈呈などの支援を行っている。
能力向上の熱心さが若い社員に好影響を与える社員
<Cさんの場合>
向上心旺盛なCさんは、業務に必要な有用な資格の取得に極めて積極的であり、職業能力の開発にも前向きに取り組んでいる。そうした高い能力向上意欲が障害者技能競技大会への参加を前向きにさせ、毎年、障害者技能競技大会に参加し、平成24年には銅メダルを取る好成績を挙げた。
こうした高い能力向上意欲が若い社員にも伝播し、Cさんの働きかけで、当社から3〜4人が同競技大会に参加している。
(2)今後の展望と課題
当社の業務は、これまで親会社から安定した業務量が発注され、慣れた仕事を着実に消化することで業績を挙げてきた。しかし、社会環境の変化により、当社が受注できるこれまでの業務が縮小傾向にある。
このため、これまでは受注する機会のなかった業務であっても、積極的に業務を受注しなければならない状況になり、社員一人ひとりの能力向上の取り組みが、これまで以上に重要な課題となってきた。
そうした状況を踏まえて、平成24年度から社員の能力向上を図る取り組みを強化してきたが、この取り組みを一層高めていくことにより、安定した業務の確保を図っていくことの必要性が高まってきた。
社会の中に障害者雇用の機運を高め、今後、ますます障害者雇用の場を広げていくためにも、当社のようなモデル企業が社会の評価を高めていくことが重要と考え、障害者多数企業であっても、障害者一人ひとりの能力を高めることにより、一般企業と肩を並べる高い技術力と社会からの信頼を得ていくことが当社に求められている課題であると考えている。
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