【障害者雇用状況】

“「人の出会い」そして「会話」を大切に”をモットーとし、人権尊重に関する基本方針の中に、“社員一人ひとりが、かけがえのない存在として尊重される差別のない企業、個性や能力をいかして自己実現を図ることのできる豊かな人権文化を創造できる企業、差別を「しない」「させない」「ゆるさない」を基本とした、明るい職場づくりができる企業、人権感覚を高め、あらゆる差別の解消に向け積極的に取り組む社員を育成できる企業でありたい”としている。

国籍・民族・宗教・性別・年齢・出身門地・社会的身分・障害の有無等の理由によって、個人の尊厳を傷つけることなく、人権尊重を基本とした企業活動を推進するために、差別のない職場づくりに努める、その企業ポリシーからも社会に貢献する企業を目指されていることが伺える。

昭和54年に創業し、以降30年にわたりソフトウエアの設計・開発やコンピュータシステムの運用管理業務を行ってきた。

昨今問題となっている「個人情報の漏洩」や「機密情報の漏洩」などのリスクを軽減するために、客先にて直接作業をするケースが多くなり、それが1つの要因として障害者の雇用を受け入れる職場がつくれず、障害者雇用に対して前向きな姿勢があったものの、会社での業務の特性もあり、障害者雇用を推進できない状況であった。

平成21年では0．54％、平成22年では0．70％という状況でなかなか障害者法定雇用率を達成できなかった。

そうした中、昨年の春に、空きスペースとなっている部屋を障害者雇用に有効活用できないかという意見が社内から出てきた。行政や民間の障害者の職業紹介会社などからアドバイスもあり、そのスペースを利用して、それまでやっていなかったホームページの作成や保守などを請負う新しい事業を平成23年からスタートし、その中で障害者を雇用することにした。

長年、障害者雇用率が大幅に下回っていた状況から、その取組みによって雇用率が前年のおよそ倍となる、1．52％となった。

会社紹介の中にこのようなことが書かれていた。

「『技術力』も大切ですが、人と話すことが大好き。様々な人との出会いにワクワクする。一見、IT業界に就職するにはあまりピンとこないかもしれませんが、当社はそこに人財に対する大きな『魅力』と可能性を感じます。人と出会うことで人間力の幅が広がり、会話をすることでその人の考え方が理解できるようになる。これは皆さんの今後の人生において必ず大きな財産になります。いろんな業界の仕事が世の中にはありますが、全ての原点は『出会い』、そして『会話』。そして、あなたの持つ『個性』を最大限に大津コンピュータという環境でアピールしてみませんか」とあった。

IT業界には珍しく『人との出会い』を大切にしており、それが障害者雇用への意欲増大につながったのだと思う。

障害者雇用納付金制度では、これまで、納付金の申告や調整金の支給について、「常用雇用労働者数301人以上の事業主」のみを対象としてきた。しかし、近年、障害者の就労意欲が高まり、企業における障害者雇用も着実に進んできている一方、中小企業での障害者の雇用は低い水準にとどまっている。

そこで、障害者にとって身近な雇用の場である中小企業において、障害者の雇用をさらに促進していくため、平成22年7月から、障害者雇用納付金制度の対象事業主が「常時雇用労働者数が200人を超える事業主」に拡大され、障害者雇用推進がより強く中小企業に求められてきたことも当社の障害者雇用を拡大する大きな要因となった。

平成23年4月、車いすを利用されている人を採用するということで、事務所の入口を引き戸に改装した。それにあわせての電気・電話・LANなどの配線工事を行う必要があるのと同時に、新しく取り組むホームページ作成の事業に必要なパソコン・ソフトウエアの購入についての助成金申請も受理されて、床一面に段差ができないように配慮するなど様々な環境整備を実行した。また、障害者の担当実務内容はデータ入力やホームページの作成等の仕事に従事しているが、技術者がそばにいていつでも支援できる体制を整え、業務をスムーズに行えるようにとの配慮もされている。

勤務時間は実働8時間勤務。就業規則等は障害者も区別なく、同じ規則体系である。

個々の能力向上については、自己学習を中心に行われているが、やはり現場で技術者がそばにいて支援をすることでしっかりと能力開発に役立っていると考えられる。教育訓練は一般的な入社時研修等で、配慮はするが障害がある人も区別なく体制が整っているとのことである。また、採用後に体調不良等で就労が困難な状態になった場合は、ハローワークを通じ職場復帰に向けて、ケアできる体制も整えている。

退職者が出た場合、コンピュータの専門的な知識、技術を要する業務であるなど、次の人材を確保することが困難な状況が出てきている。このような場合を想定し、今後、適正人員や実習者の受入れなどですぐにでも補充できる人材発掘を進めるため、計画的に行う必要がある。また、今後の展望として、まだまだ法定雇用率を達成しておらず、まず大きな目標としては法定雇用率の達成を目指していきたい。そのためにも「障害者雇用は総務の担当」という意識をなくし、個々の社員が障害者雇用に対する認識を高める必要があると考える。ただ雇用するだけではなく採用した障害者の人達に、「仕事に対する責任感」や「仕事をすることの楽しさ・大変さ」などを実感してもらえる企業でありたいとの話をされていた。