2012年度作成

事業所名

株式会社桑原組

所在地

滋賀県高島市

事業内容

総合建設業（建築・土木・舗装工事等）
建設資材製造販売業（生コンクリート・アスファルトコンクリート・リサイクル骨材）

従業員数

253名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	2	運搬、事務
内部障害
知的障害	2	運搬、道路補修
精神障害

目次

1. 会社の沿革と事業概要、障害者雇用の経緯と現状
2. 会社の対応
3. 今後の方針と課題、取材を終えて

1. 会社の沿革と事業概要、障害者雇用の経緯と現状

（1）会社の沿革と事業概要

株式会社桑原組は近江商人の「三方よし」を経営理念とし、企業の社会的責任（CSR）を果たすべく、「人が集い暮らしを営む快適な街づくり」を目指している。

昭和34年に滋賀県の湖西地区に位置する安曇川にて創業、その後、滋賀県全域、福井県、岐阜県と営業地域を拡大し、事業内容も、①土地造成からダム工事、トンネル工事までの土木事業部門、②公共施設からマンション建築等の建設事業部門、③各種道路の維持修繕、改良舗装工事等の道路工事部門、④生コンクリート、アスファルトコンクリート、リサイクルプラント等の生産事業部門と多岐にわたる地域の総合建設業として、創業以来54年を迎え今日に至っている。

（2）障害者雇用の経緯と現状

株式会社桑原組の障害者雇用の歴史は創業時までさかのぼる。

太平洋戦争で負傷された人の採用や中途障害者等を自然体で採用しており、途中で退職した人もいれば、無事定年まで勤めあげた人もいて、さまざまであった。

障害者雇用率については、多少は気にしていたものの、正直、納付金を事務的に支払っていた状況であり、あまり特別に意識することも無く、縁があれば採用するという状態であった。建設業という業態の性格上、常に職場（現場）が一定ではないことに加えて常に危険が伴う仕事であるにもかかわらず障害者雇用に踏み込んでいるのは、上述の経営理念「三方よし」をベースとした企業としての社会的責任や地域貢献が大きく影響していることがうかがえる。

また、平成20年に知り得たとのことであるが、障害者雇用率が2％を越えると滋賀県の入札において企業評価の評価点が加算されるシステムがある。

価格競争が激しく厳しいこの業界で入札での優位性のみならず企業収益面にもプラスになることが地域貢献にも資することと思料し、早速、職場の点検を行ない障害者雇用についてさらなる可能性を見出すことに取り組んだとのことであった。

さて、当社における具体的な障害者雇用の現状についてであるが、他社で業務中に軽度の身体障害を負われたAさんは、勤続18年のベテランとして建設資材の運搬の仕事に携わっている。

5年前に採用した軽度の知的障害のBさんは道路補修の仕事に携わっている。AさんとBさんが自然体での採用者であり、当時の雇用率は1％以下であった。その後、受け入れ可能な業務を見出すことで3年前に新規採用したのが軽度の知的障害者のCさんである。Aさんのパートナーとして建設資材の運搬の仕事をしている。

その後も採用に努力したが適材がみつからずやっと昨年に採用したのがDさんである。重度身体障害者のDさんは事務の仕事に従事している。

さらに今春もう1名採用したのが重度身体障害者（聴覚）のEさんである。土木工事における積算業務を担当させるべく大学新卒で採用した。

これで雇用する障害者は一挙に5名となったが、残念ながらEさんは職場に馴染めずまもなく退職した。

現在の障害者雇用数は4名であり、実雇用率は2％である。

2. 会社の対応

一人の退職者を出し障害者雇用は4名になったが、今後も適材適所の職場配置を進め、やる意欲のある者については障害があるなしにかかわらず積極的に採用していく方針であるとのことであった。

この会社の大きな特徴は、「障害者としての特別扱いはされていない」ということである。勤務時間、待遇も障害のない社員と差別はしていない。障害はあくまでも適材適所の「適材」の一種と受け止め配置しているとのことであった。とはいいつつも、配慮すべき部分については一定の理解を示している。例えば、知的障害者については修得したことをすばらしい集中力と持続力で仕事をこなす一方、同時に二つのことや、学習していないことに対するとっさの判断ができずにパニック状態に陥ることがあるので、その点の配慮は十分に行なっているとのことであった。

3. 今後の方針と課題、取材を終えて

（1）今後の方針と課題

建設業という性格柄、どうしても職場（現場）が一定ではなく、又常に危険が伴う仕事なので今までは躊躇する部分もあったが、一方でこれまでの経験もあり十分に対応できるという自信も生まれており、企業の社会的責任（CSR）を果たすべく地域貢献を目指す会社としている以上、障害者雇用の分野においてもその責をしっかりと果たしていきたいとのことであった（なお、桑原組は無事故記録を更新中とのことである。）。

当社は、本業の総合建設業としての業務の他にグループとしてガソリンスタンド、自動車販売・修理、ゴルフ練習場、サウナ風呂、喫茶店等も経営、又社員寮と社員食堂も保有しており障害者雇用の機会・可能性はまだまだあると思われる。

今までは自然体でも問題を起こすことなく来られたが、今後更に多くの障害者を雇用し定着させる過程では、様々な問題や課題が発生してくるものと思われる。

ついては、専門的知識を持った社員の育成や外部機関との交流・活用も必要になってくることから、その環境整備にも早急に取り組むとのことであり、さしあたっては、今秋実施される障害者職業生活相談員資格認定講習会に社員を参加させたいとのことであった。

（2）取材を終えて

地域のリーディングカンパニ－として、かねてより障害者雇用をしている会社として見てきたが、ここまで奥が深く障害者雇用の可能性を秘めていることに加え、企業としてもさらに障害者雇用へ一歩ずつ前進しようとしている姿勢があることもうかがうことができ、認識を新たにした。

しかしながら、仕事はあってもそれに適した人材の発掘、送り込む体制の問題等、ニーズとシーズのマッチングの大切さを痛感した。

特に桑原組では「資格を持った人（例えば危険物取扱責任者）」大歓迎とのことであり、そのような視点で障害者就業・生活支援センターの利用者に接してきたか、目からうろこであった。今後は、更に一層企業とコミュニケーションを深めて適材を送り込めるよう努力していきたい。また、雇用が拡大していけば、定着に向けてのさまざまな課題も出てくるであろうと思われるので、今後のフォローについても十分に行なっていかなければと決意した次第である。

雇用の成功事例というよりも、企業カラーについての好事例紹介、障害者雇用に向けて前進しようとしている企業紹介の内容となってしまったが、今後更に一層地域に貢献する企業として障害者雇用への取り組みを前進していただけることを期待する。

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