苦手なことにも時間をかけてチャレンジ
「できる楽しさ」が頑張る原動力に
- 事業所名
- すみでんフレンド株式会社
- 所在地
- 兵庫県伊丹市
- 事業内容
- 観葉植物のレンタル及びメンテナンス・観葉植物の社員向け販売
緩衝材の製作・販促品のラッピング・機密書類の廃棄処理
社内書類封筒の作成・電子データ化など - 従業員数
- 21名
- うち障害者数
- 12名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 12 全員が全ての業務に従事 精神障害 - 目次


写真提供:すみでんフレンド株式会社
1. 事業所の設立経緯、行動指針及び指導方針
(1)事業所の設立経緯
すみでんフレンド株式会社は、親会社である住友電気工業株式会社が創業110年を機に制定した「住友電工グループ社会貢献基本理念」の下、2008年7月に設立した特例子会社である。
設立時、住友電気工業株式会社の障害者雇用は既に法定雇用率1.8%を上回っていたが、基本理念の下で「Glorious Excellent Company」を目指す住友電気工業グループにとってふさわしい、社会貢献に積極的かつ具体的に取り組むために設立したのが特例子会社すみでんフレンド株式会社である。
事業所は住友電気工業株式会社伊丹製作所内に置き、雇用する障害者は全て知的障害者である(設立時は5名)。先述のように設立時の親会社の障害者雇用率は達成していたが、雇用する障害者は全て身体障害者(主に聴覚障害者と内部疾患障害者)で、知的障害者及び精神障害者の雇用は進んでいなかった。また特例子会社設立に向けた相談を行っていたハローワークの紹介もあり知的障害者を採用することとした。障害のある人もない人も一緒になり、自立と社会参加を積極的に支援するために設立した会社である。“すみでん”は親会社である住友電気工業株式会社の住電(すみでん)を表しており、“フレンド”は「友として仲間として、笑顔で互いに協力し合いながら、一人ひとりが生き生きと積極的に行動する会社をめざす」との思いが込められている。
(2)行動指針及び指導方針
【行動指針】
○大きな声で挨拶をする 挨拶も仕事!
○正しいラジオ体操をする ラジオ体操の習得が仕事の習得に通じる!
【指導方針】
○会社で取り組む全ての仕事を社員全員ができるようにする!
○できない仕事はできるまでとことん指導する!
○できるように教え方、道具を工夫する!
【行動指針】と【指導方針】に共通するのは、全ての従業員は得意・不得意で担当業務を振り分けることなく、「時間の差はあっても全員に全ての仕事をやってもらう」という方針を掲げて色々なことにチャレンジするということである。サポートする側の努力を惜しまず、できる楽しさを感じて仕事に取り組んでもらうというのが、すみでんフレンドの方針である。
“苦手なことにも時間をかけてチャレンジ”
「できる楽しさ」が頑張る原動力に
また、仕事以外にも全員が交代で当番になり、朝礼の司会、昼食時の「いただきます」や「ごちそうさまでした」の掛け声、休憩時間の開始・終了の合図など、責任を持って取り組んでいる。特に挨拶、ラジオ体操は仕事の基本として徹底的に練習を行っている。
∞明るくてきれいで働きやすい職場∞
全社員参加で、明るく、仲良く、楽しく働ける会社をめざす。




∞すみでんフレンドの一日∞
仕事以外も毎日全員で取り組んでいる。




2. 緑化事業への取組経緯、業務内容及び受託・サービス事業について
(1)緑化事業への取組経緯、業務内容
① 取組経緯
2007年に特例子会社の設立準備を進める中、雇用する障害者は知的障害者だけとする方針と、住友電工グループとしてふさわしい“安全でクリーン”というコンセプトから最初に立ち上げる事業は観葉植物を取り扱う緑化事業と決めた。
2008年設立時は、住友電気工業伊丹製作所内に温室棟1棟を建て事業を開始、ノウハウを習得しながら順次事業拡大を計画していたが、同年11月に起きたリーマンショックの影響による、親会社をはじめグル—プ会社各社の投資抑制方針に合わせ事業拡大を延期した。その後2011年に元々の計画であった本社、続いて此花の大阪製作所と順次事業を拡大し、その事業拡大に合わせて新たに知的障害者を7名雇用し、2011年11月に2棟目の温室棟及び新本社屋(作業所も含む)を設置し、1年遅れで当初計画通りの規模となった。
なおこの2棟目の温室棟及び新本社屋の設置については、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金を活用した。
② 業務内容
- 観葉植物の各事業所への搬入、回収及びメンテナンス業務
各貸し出し先へは水やり等のメンテナンスを週1回、観葉植物の交換を月1回実施している。配送車3台を使用しドライバー(障害のない社員)と障害者社員がペアを組み事業所内の事務所、応接室及び会議室等に出向いている。なお、現時点で貸し出ししている観葉植物は約800鉢ある。 - 温室等でのメンテナンス作業
温室棟内の温度・湿度を最適に保ち、いつでも貸し出しができるように水やりや剪定などのメンテナンスを行う。
温室棟は50㎡/1棟で現在は2棟設置。 - 観葉植物の貸し出し、販売について
現時点では住友電気工業グループの関連会社を含め10カ所へ貸し出しを行っている。また、住友電気工業グループ各社社員からの多数の要望もあり社員向けに鉢植えの花々及び観葉植物の販売事業も開始した。 - メンテナンス業務の工夫
例えば水やりについて鉢の大きさに応じて水の量を調整する作業は簡単ではなく、当初は鉢の大きさに合わせて、ジョウロに目盛りをつけたが、ジョウロの口から水をこぼしたり、目盛りのところで水をちょうど止めたりすることが難しく、色々なやり方を試した結果、現在では鉢の大きさに合わせたペットボトル1本分の水をやることにした。また、事業所に訪問した時のメンテナンスについては、作業終了後「水よし」「葉っぱよし」「位置よし」「床面よし」と一鉢毎に指差しコールを行い、点検漏れのないように心がけている。 - 全社員がローテーションを組んで訪問業務を行う
各事業所に出向く障害者社員は前述した通り向き不向きに関わらず全社員がローテーションを組み担当する。一般業者は“そっと入室さっと退室”が普通のパターンだと思うが、すみでんフレンドでは入室時の挨拶はもちろん元気いっぱいの姿を見せることを心がけて業務を行っている。




(2)受託・サービス事業について
① 袋詰め緩衝材の製作
グループ会社の出荷時に利用する緩衝材の製作については、当初は決められた袋に定量の発泡材を入れられず、また袋とじも両端を揃え真っ直ぐに閉じることが難しい社員もいたが、時間と道具の工夫で1年後には全員が製品として問題なく出荷できるようになった。
○ 緩衝材の袋詰めの工夫
袋に入れる緩衝材の量を誰がやっても一定になるように専用容器を作る。また出来上がった袋を150個ずつ大袋に入れるため、10個の枠がついたマス目状のシートを作り、それぞれの枠に緩衝材が入った袋を並べ、これを15回繰り返すことで全員が150個を数えて大袋へ入れる作業ができるようになった。


② 書類の電子データ化
紙ベースで保存されている図面や資料をスキャンしてパソコンに取り込む作業。書類の保管スペースの削減や資料を取りだす時の容易さから、親会社、グループ会社の各部門からの依頼が増加中である。なお、この業務は社員12名の内8名が交代で担当している。

③ 機密書類の分別とシュレッダー溶解処理
廃棄対象のバインダーなどを紙と樹脂やクリップなどの金属とに分別し、取り出した紙はすみでんフレンドの作業所に設置した専用のシュレッダー溶解機に投入することで完全な機密処理を行っている。また処理後の溶解済み品は製紙メーカーでトイレットペーパーに再生される。

④ ラッピング
住友電気工業グループがお客様に差し上げる贈答品の包装作業。一つひとつ丁寧に心をこめて社員がラッピングする。
⑤ 製本
住友電気工業グループの社内用教育のテキスト等の製本
⑥ メール封筒の製作
社内間の書類送付用封筒への宛名用紙の糊つけ
⑦ こよりの製作
薄紙を細くよって機械の穴掃除に使用するこよりを製作
②~⑦の業務は、すみでんフレンド社員が観葉植物の搬入、回収及び水やりなどで住友電気工業本社やグループ会社を訪問している時に、獲得した仕事である。全社員が営業マンとして訪問時の挨拶から継続的な会話ができるよう指導し、職場ニーズを見つけ出し業務の拡大を図っている。
3. 親会社から見るすみでんフレンド、その他活動の紹介
(1)親会社から見るすみでんフレンド
親会社である住友電気工業株式会社代表取締役社長松本正義氏が2011年に竣工した、すみでんフレンドの新本社屋及び2棟目の温室棟の完成記念式典での祝辞をブログで語っているので付け加えたい。
“毎週「トントン」とドアをノックする音と「こんにちは」と元気な大きな声の挨拶とともに、淀屋橋の社長室に飾っている観葉植物のお世話に来ていただきます。植物には水を遣り、私には元気をいただき、いつも感謝しています。この3年間は戸惑うことや苦労する事が多くあったと思いますが、今後も熱意を持って、温かみのある会社に育ててほしいこと。当社グループでは、全ての人が明るく元気に楽しく働ける職場づくりを目指していますが、すみでんフレンドがその中心的な役割を果たしてほしいこと。伝教大師様の「一隅を照らす、これ則ち国宝なり」の言葉とおり、組織の歯車に埋没することなく、元気で仕事をして欲しいと願います。”
とブログで語っており、すみでんフレンドという会社を住友電工グループで支え、より一層の障害者雇用に取り組み社会貢献活動を推進する姿勢がうかがえる。
(2)その他活動の紹介
○見学者の受入
すみでんフレンドでは、学校関係者、作業施設の利用者、支援者、保護者など様々な人を対象に、すみでんフレンドの見学会を実施している。2008年10月から2012年7月までに約1,500名の人達が訪れ「障害者の社員が働きやすい職場環境」「生産現場の取組」を見学された。
○企業実習の受入
すみでんフレンドでは、受け入れた実習生に対して朝のラジオ体操・朝礼から社員と一緒に業務に取り組んでもらうこととしている。、2010年から2012年7月までの間に、特別支援学校の生徒や作業施設の利用者など25名が実習を行った。
○芋ほり大会の実施
毎年10月に実施される住友電気工業伊丹製作所・緑花祭で、すみでんフレンドは芋(さつまいも)ほり大会を開催している。5月に社員みんなでスコップとクワを使い苗床を作り、さつまいもの苗を1本ずつ植え付けて大切に育てている。このさつまいもは大きく美味しいと評判で、毎年近隣に住む多くの子供たちにも参加してもらい賑わっている。


※ | 芋ほり大会が催されている畑は、昔は雑木や雑草などが生えっぱなしの土地であったが、すみでんフレンド社員がみんなで開墾し、今では立派な畑に変身した。さつまいも以外にもジャガイモ、玉ねぎ、夏にはキュウリ、トマトなども育てて、一部は社員食堂へも提供している。 |
<最後に>
すみでんフレンド株式会社大樂社長のコメント
「入社した障害者全員が会社の全ての業務を習得する事を目指します。先入観を持たず、一人ひとりの個性をよく見て、それぞれに合った指導・育成に努めることで、少しずつですがスキルが向上していきます。業務習得に時間が掛かる社員をそのままにして前に進むのではなく、業務習得が早い人も遅い人も、また障害のあるなしに関わらず、全員で一緒に前を向いて歩いていくことが大切だと考え、日々取り組んでいます」
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