2012年度作成

事業所名

株式会社岸本製作所

所在地

奈良県北葛城郡

事業内容

金属製品(自動車内装部品、エアバッグ部品等)

従業員数

82名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害	2	組立工場（マーシャリング） 機械加工(タップ)
肢体不自由	1	労務管理、配線等電気工事一般
内部障害
知的障害	1	機械セット(溶接ロボットオペレーター)
精神障害

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 障害者の従事業務・職場配置、当社の求める人材像
3. 取り組みの効果、今後の課題

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

当社は昭和51年10月に岸本製作所として金属プレス加工業として創業した。現在、自動車部品メーカーの協力会社として自動車関連部品を製造している。その内でも重要保安部品といわれるシートベルト部品、エアバッグ部品、電動シェード部品、センサー部品等が90％を占めており、その他オートバイ、農業機械、建築金物等の金属部品の製造をしている。

近年のゆとりと豊かさの追求は、消費生活から生産現場にまで浸透し、特に3Kの職場からは、人々が離れていく傾向にある。その中で当社では働きやすい職場環境、人間性を尊重した魅力ある明るい職場づくりを目指している。また製造業に要求される低コストでの多機能、高品質な製品の生産を実現すべく取り組んでいる。

（2）障害者雇用の経緯

当社が障害者を雇用したのは、30年位前に当時のハローワークの熱心な働きかけに始まる。その時は経験のある現場作業者を募集していたこともあり数名採用した。

しかし、残念ながら障害者同士での人間関係の問題から円滑には続かなかった。

その後も「働きやすい職場環境、人間性を尊重した魅力ある明るい職場づくり」を目指し、障害者を積極的に受け入れ、障害者と障害のない者が一緒に気持ちよく働けるような職場環境の整備に努めてきた。それを可能にするのは、障害者を職場に迎え、その職務遂行を支え、時間をかけ何度も教育する上司、同僚の温かいサポートである。

また、障害者自身とその家族を含めて、密接に付き合いサポートしていく日々の積み重ねである。

2. 障害者の従事業務・職場配置、当社の求める人材像

（1）障害者の従事義務・職場配置

下肢障害を持つYさんは電気会社を早期退職後の平成12年に入社し、香芝工場でプレス・ナイロンコーティング等に従事し、課長に就任し、その後は製造部長として率先して仕事に取り組んだ。持ち前の勤勉さから周囲に厚く信頼され、又、部下の指導にも熱心であり、会社にとって必要な人材であることから、60歳で定年後も引き続き顧問として本社で労務管理や会社の設備全体のメンテナンスを主に担当し、設備（配線、電気工事、機械レイアウトなど）の安全衛生管理を行っている。

障害を持った人に仕事内容を伝える事で肝要な事は、手順を書いてまず相手に説明し、実際に相手が理解するまで何度も作業をやってみせ、工程一つ一つを納得するまで教えることであり、これは障害者に限らず仕事を理解してもらう最短の方法でもある。

Yさんは中国人実習生の世話も担当し、通訳に筆談も交えながら習慣の違いなど、まだ言葉を理解出来ない彼らに伝達する際に、この経験は生かされているとのことである。

聴覚障害を持つFさんは、入社7年目であり、ナイロンコーティングに配置後組立工場で検査の段取りのリーダーとして働いている。

Fさんは話をすることはできるが、補聴器をつけていても朝礼など大勢の中で他者の声が聞き取りにくい。Fさんは決められた手順を守り、担当した仕事を着実にこなすことができ、途中、急な割り込みの作業が入っても適切に処理することができる。

職務転換で他の部署に配置されたこともあったが、Fさんが抜けたことによりたちまち現場が乱雑になってしまったことがあったため、再びリーダーとして組立の段取り作業を任されている。

Fさん自身が真面目で熱心に業務に精励したため今日があるが、それに加えて職場で彼を温かく見守り、その職業人としての成長のため指導し、その能力を認め、サポートした上司と同僚の存在が欠かせない。

聴覚障害を持つTさんは、関係先の会社の紹介で採用に至った。最初はプレス加工の仕事に従事したが、自分なりのやり方で進めるため、決められた手順を守らないことから他の従業員とのトラブルがあり、上司のYさんが説得することもあった。

高齢になり会社の要求するレベルの加工ができなくなり、本人は働く意欲をなくしかけたが、Tさんに可能な作業を検討した結果、マイペースでゆっくりとした作業が可能なタップ加工を行うこととなった。

Tさんとの意思疎通については、聞き取りが困難なため、指示を紙面に書くことが必要でありタッピングする工程を逐一やってみせて理解してもらう、それを今度はTさんが実際に作業し、できたものを評価して指導する。

多品種な部品に応じて逐一行われる。同じ聴覚障害のFさんが段取りを書面で指示して連携して作業している。

知的障害を持つAさんは、特別支援学校の実習生として香芝工場に実地研修に来所した際、非常に熱心にスポット溶接の機械操作を希望した。

縁あって当社に入社した後、本社で教育研修を行い配置されたコーティング部署においては、手すきになる時間にうまく適応ができなかった。

学生の時の研修でスポット溶接の機械操作を希望していたことから、本人の希望する機械操作を担当させるために安全を重視し検討を重ね、同種のロボット溶接の部署に配置されることになった。

Aさんは、自分が納得するまで知りたいという意欲が強く質問を繰り返す、又、飽きることなく同じ事を繰り返し行うことに非常に熱心である。上司は、これに応え、辛抱強く説明、その都度作業の手本を示して時間をかけて教育を行った。これは、当社の自然体で仕事環境・人間関係を円滑に進める社風によるところが大きい。

ハンディキャップがあっても溶け込める環境があり、人を伸ばしてしていこうという社風である。現在ロボット溶接においてイレギュラーな箇所を素早く見つける確かな目は、周りに信頼されている。入社してまだ日も浅いが、真面目に働く姿勢は評価されている。

（2）当社の求める人材像

今後、製造業においては、ますます機械化が進み少ない人員で多様な作業内容が求められる。

当社では社員教育を重要と位置づけ、障害の有無に関係なく、与えられた仕事を熱心に遂行する能力がある人材を求めている。

3. 取り組みの効果、今後の課題

創業以来、「成せばなる  成さねばならぬ何事も  成らぬは人の成さぬなりけり」「客の身になって物を作る」「社員だけではなく社員の家族を大事にすることが重要である」を念頭に、さらに地域雇用推進を進めるうえで障害者を雇用することは、企業として当たり前のこと自然なことであると考え、積極的に取り組み人間性を尊重した魅力ある明るい職場づくりを目指し、職場環境の整備に努めている。

働きやすい職場を実現するためには、仕事に限らず社員間のコミュニケーションを円滑にすることが重要であり、福利厚生の一環としてカラオケ大会などを催している。

これらは、担当部署にかかわらず社員の個性や適性を発見したり、良い関係を構築することに役立っている。

社員一人一人の個性や特性を引き出し、仕事を通じて自己実現、自立へとつなげる。当社では、自然体でハンディキャップを受け止める社風のもと障害のある者も、上司、同僚、部下と一緒になって自分の仕事に熱心に取り組み、フルタイムの正社員としてキャリアを生かし活躍している。

今後の取り組みとして、ハローワーク、特別支援学校等を通じて障害者雇用を積極的に進めていきたい。

与えられた仕事を熱心に遂行する意思や能力については、障害のない者と変わることはない。ただ、個別に障害に応じた助力（ハード面・ソフト面で）が必要になる。障害者に限らず教育研修を通じ一人一人の能力・適性を生かした仕事環境の整備に努める。

中国等、海外との価格競争がますます熾烈な今日、海外に活路を求める企業が多いなかで、日本でのものづくり技術者の育成が衰退していく。

当社においては、日本人の雇用を大事にしたいとの思いから山口県に工場を計画している。地域に根ざした製造業として地域の人が働ける環境を提供することにより地域の振興を深めたい。

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