県下障害者の自立支援への貢献として
- 事業所名
- 日鉄住金プラント株式会社
- 所在地
- 和歌山県和歌山市
- 事業内容
- 新日鐵住金グループのエンジニアリングを担うとともに、総合エンジニアリングメーカーとして事業展開
- 従業員数
- 1,929名
- うち障害者数
- 23名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 営業関連 肢体不自由 8 システム管理、工具管理、その他管理 内部障害 12 設計、営業関連、その他管理 知的障害 2 事務所、福利厚生施設等の清掃 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
当社は、新日鐵住金を中心に国内外にて鉄鋼プラント、環境エネルギープラント、一般産業機械プラントなどの生産設備及びその付帯設備である電気・計装設備の設計・施工及び各種のコンピューターシステム開発を行っている。また、プラントのメンテナンスでは、新日鐵住金和歌山等を主体とする各種プラント機械・電気・計装設備の保守等製鉄所で培った総合エンジニアリングメーカーである。
経営基本方針に、「お客様の満足を第一に、信頼される会社」を掲げ、生産設備の重要課題である「安全基本方針」、社会的責任である「企業行動規範」、品質・環境目標を明確にした「マネジメントシステム方針」、次世代の育成支援取り組みとして「男性の育児参加に対しての宣言」を柱として、未来を創造するトータルエンジニアリングソリューションを提供している。
(2)障害者雇用の経緯
① 障害者雇用までの経緯
従来から、独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構において実施されている障害者職業生活相談員資格認定講習を総務部より毎年受講し、その講習を修了して(現在修了者5名)、障害者雇用に関する知識を深いものとする努力を行ってきた。
具体的に障害者雇用に至る経緯は、当初は、障害のない者が内部疾患等で中途障害者となり、障害者法定雇用率については達成していたが、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が発行する「働く広場」の他、行政が発行する「ハローワークだより」や「福祉わかやま」の冊子を毎号拝読し、障害者雇用に係る情報収集を行っていた。また、セミナー等にも積極的に参加することにより、県下の障害者が求職活動している現状・実態を知り、「出来れば貢献したい」との思いを持っていた。そんな折り、平成17年6月にハローワークの担当者から熱意ある薦めを受け、危険な設備が多い当社ではじめて知的障害者の人を雇用する方向で検討することとなり、具体的には総務部を中心に知的障害者雇用に関し、下記の事項について検討会を実施した。
- 職務の創出
- 通勤対策
- 勤務の時間帯
- 1人作業の問題点
その結果、雇用した障害者の担当職務は、事務所内、更衣室、浴場等の清掃業務に決定した。
また、全般的な障害者雇用についての社内の環境づくりとして、役員や管理職に対して役員会・管理職会報等を通じて企業に於ける社会的責任の理解促進を図った。
なお、平成17年6月に、初めて知的障害者雇用に着手したが、当初は不安もあった為、トライアル雇用制度等の支援策についてハローワークの担当者から説明を受け、理解を深めた。
このように関係各位の協力と援助、社内の理解を得た結果、平成17年11月1日に知的障害者の雇用が初めて実現した。
② 事業所としての姿勢
当社における知的障害者の業務は、事務所及び福利厚生施設の清掃等の業務であるが、敷地内には危険を伴う設備も多い。そのような状況でも、ジョブコーチの支援(ジョブコーチ支援制度)をはじめとして従業員等周囲の協力・理解を得て現在2名が従事している。
ジョブコーチ支援制度については、下記の順を追って実施した。
- 集中支援期 平成17年11月1日~30日
週3~5日 障害者及び従業員の支援 - 移行支援期 平成17年12月1日~平成18年1月31日
週1~2日 障害者及び従業員の支援 - 移行支援期終了後も適時に支援
日常管理面についても、日々の業務で本人が達成感を感じられるよう就業日誌等に工夫をするなどの配慮をし、また家族との連携についても就業日誌等により連絡を密にし、家族を含め障害者が安心して働ける環境となっている。
また、平成20年2月に、会社内の浴場に「てすり」を設置して、身体障害者が入浴しやすいよう設備面の改善にも取り組んでいる。
2. 取り組みの内容
(1)業務内容及び障害者の業務
現在、当社には23名の障害者が在籍し、その内訳は身体障害(聴覚障害)が1名、身体障害(肢体不自由)が8名、身体障害(内部障害)が12名、知的障害が2名となっている。
身体障害者は、当初は障害のない者として入社したが、在籍中に内臓疾患等を患い障害認定を受けている人がほとんどである。
身体障害者の現在の仕事は、システム管理・その他管理業務、または営業関連業務であり、勤務年数も長く、ベテランが多い。仕事については、それぞれの人が仕事の手順・手法等を工夫しているため、特段の支障は生じていない。なお、障害により通院が必要な場合は、職場配置、就業時間を配慮するなど、きめ細かい雇用管理を行っている。
知的障害者については、平成17年に障害者の雇用計画推進の対象に決定したが、従来、知的障害者に対する雇用面の実績がなかったこともあり、様々な課題解決のため、全社を挙げて取り組んできた。
知的障害者2名は、事務所内、更衣室、浴場等の清掃業務を行っている。この清掃業務については、長年清掃業務に携わっていた従業員(当時80歳)とペアでスタートした。
知的障害者の日常管理において配慮した点は、以下のとおりである。
① | 毎朝大きな声で「ご安全に」と挨拶の励行を指導 |
② | 業務の指導、指示は責任者より一元管理している(責任者から状況を聞き、担当より本人に伝える場合もある) |
③ | 日々の業務内容について、過重労働と感じた曜日については作業項目を減らすなど、自主的に清掃する時間を設け、達成感を感じてもらうように試行した。 |
③の試行の結果として、「就業日誌」を新たに作成することにした。「就業日誌」を各人が毎日記入することにより、密度の濃い業務を行えるようになるとともに、自主的に自立して仕事ができるようになった。
また、作業日誌には日々の目標の設定項目として、Aさん・Bさんそれぞれ具体的な行動目標を25項目列挙し、そのうち、どれか一つを抜粋して、日々の目標とするよう指導している。
【就業日誌の内容】
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(2)就業以外のフォロー
当社では、「就業日誌」の様式のなかに、「ご家族の皆様記入欄」を設けている。 この欄を活用することにより、ご家族とのコミュニケーションを緊密にとることを心掛け、家族も含め障害者が安心して働ける環境となっている。ご家族も、毎日の仕事状況を本人が記入した内容で確認することが出来、仕事が順調に進んでいることが手に取るように確認できるので、安心することができると好評である。
また、知的障害者の仕事をスムーズに進めるため、様々な試行錯誤を重ねた結果、「連絡ボックス」の設置を行った。この「連絡ボックス」の設置場所にも工夫を凝らし、職場内の奥とした。これにより、仕事の開始・終了にあたり、職場の人と必然的に顔を合わせることが多くなり、社会人のマナーとして大切な朝・夕の「挨拶」の励行を確実に行うことを意図した。その結果、現在は自然に挨拶できるようになっている。
快適な職場生活を送る上で、仕事の仲間とのコミュニケーションを図ることは大切なことである。仕事にも慣れた頃合いをみて、時折行われている総務部部内の「懇親会」にも声かけを行った。仕事場を離れたところで、楽しく語り合える時間を過ごすことができ、職場内の人との有意義な親睦を深めている。今後とも、毎日の仕事を楽しくより確実に行うことに繋がっていくよう、コミュニケーションの場を作っていきたく考えている。

(タイルの掃除はブラシでしっかり)

3. 障害者の処遇、今後の課題と展望
(1)障害者の処遇
知的障害者2名の勤務形態は、下記の通りである。
A:AM8:30~PM4:00 休憩時間1時間 勤続年数7年
B:AM9:00~PM4:00 休憩時間1時間 勤続年数2年
仕事内容は、事務所内、更衣室、浴場等の清掃業務であり、当初は既従業員とAさんのペア勤務体制であったが、その先輩が年齢を理由に平成22年6月に退職したことによって、現在はAさんとBさんとのペア勤務体制にて無理のない勤務形態となっている。
身体障害者21名については、通常の勤務形態にて就労、従事している。障害に伴う治療のための「通院」等に関する時間的な配慮など、業務を遂行する上でのきめ細かな対策を講じている。21名いずれの人も、それぞれの職場において、能力を発揮しており、当社の重要なポスト・役割を担い重要な戦力になっている。
(2)今後の課題と展望
平成17年から本格的かつ計画的な障害者雇用に取り組み、約7年が経過したが、事前の入念な準備体制を取ったこととその後のジョブコーチ支援制度の活用等、ハローワーク及び支援機関との良好な関係を深めることができ、現在、スムーズな運営体制で、順調に推移している。
これからの時代において、企業に求められるであろう、職場におけるダイバーシティ体制の構築として、多種多様な雇用形態を取り入れることが出来るよう、今後の労務管理環境の変化に柔軟、且つ迅速に対応できる体制を作っていきたい。
そのためにも、これまで培った障害者雇用のノウハウを活かし、今後とも業務改善の観点からも推し進められるようにし、一歩一歩、その障害者雇用基盤を固めていきたい。
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